景表法・不実証広告規定に関する判決(東京高裁)
10月29日に景品表示法に関する東京高裁判決が出ています。公正取引委員会による排除命令(平成18年10月)についての審決取消訴訟です(この場合は1審が東京高裁になります。)。この排除命令の当時は景品表示法の所管官庁は公正取引委員会でしたが、現在は消費者庁の所管法令になっています。
この判決は、景品表示法4条2項のいわゆる「不実証広告」の規定についていくつかの判断がされている点で注目されます。原告(株式会社オーシロ)である排除命令対象業者が主張している取消事由は全部で11もありますので、ここで全部紹介できませんが、少し裁判所の判断内容を紹介しておきます。結論としては、原告業者の取消事由の主張を全て排斥し、審決の取消を認めなかったものです。
なお、対象となったのは、タバコ関連商品の包装紙に書かれた表示についてです。
→ 公取委審判審決(平成21年10月28日)(PDF)
まず、判決は不実証広告(景品表示法4条2項)の趣旨については、公取委が迅速、適正な審査を行い、速やかに処分を行うことを可能にして、公正な競争を確保し、もって一般消費者の利益を保護するという景表法の目的(改正前景表法1条)を達成するために設けられた規定である、としました。
また、原告業者は、景表法4条2項の文理から優良誤認に該当する表示とみなされるのは排除命令及び審判手続においてのみであり、審決取消訴訟においては、公取委が優良誤認表示に該当する表示であることを立証しなければならないと主張しました。
これについて判決は(以下、判決文中の「被告」は「公取委」に置き換えています。)、
「審決取消訴訟は,抗告訴訟であり,その審理の対象は,原処分の処分要件の有無ということになるから,原処分の根拠とされた景表法4条2項の定める要件の有無が審理の対象となるべきことは明らかである。その上,原告の主張するところによれば,事業者は,審決取消訴訟を提起しさえずれば,当該訴訟においては,景表法4条2項の適用がないことになり,公取委が当該表示が同条1項1号に当たることを主張立証しない限り,原処分が取り消されることになるのであるから,公取委としては,取り消されることのない原処分をするためには,結局,当該表示が同号に該当するか否かまで検討せざるを得ないことになって,被告が迅速,適正な審査を行い,速やかに処分を行うことを可能とすることによって,公正な競争を確保し,もって一般消費者の利益を保護するという同法の目的を達成するという同項の立法趣旨に反する結果となる。
そして,景表法4条2項が,「第6条第1項及び第2項の規定の適用については,当該表示は同号に該当する表示とみなす」旨定めたのは,同法6条1項,2項の所定の「第4条1項の規定に違反する行為」には,同法4条2項により同条1項1号の表示とみなされた行為が含まれる旨を明らかにして,同法4条2項と6条各項の適用関係を明らかにしたものであり,訴訟について定める独禁法9章について景表法4条2項の適用を排除する趣旨を定めたものと解することはできない。」
として、審決取消訴訟においても「不実証広告」規定は適用されるものとしました。これは当然の判断ですね。
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