ヤフー〔日本〕とグーグル〔米国〕の提携に関する公取委への申告(楽天)
明日、というか書いてる内に今日になってしまいましたが、21日は、私の所属する独禁法公正取引研究会の例会があります。今回は、ツイッターつながりでのゲスト参加者が何人か来られる予定なので賑やかになりそうです。
ということで、本題も独占禁止法の話題なのですが、本日、ネットショッピング・モール事業大手の楽天が、自社サイトで、日本のヤフーとアメリカのグーグルの提携について、公正取引委員会に独占禁止法45条1項に基づく申告書を提出した、と公表しています。新聞報道によれば、提出は10月5日のようです。
楽天によれば、「両社の提携は、Google, Inc.による情報独占につながり、これは検索のみならず、国内の多くのインターネット関連サービスの発展と成長を阻害する恐れがあります。本提携については、改めて、公正取引委員会等関係者の十分な議論と検証が必要と考えております。」とのことです。
アメリカの本家のヤフーが、昨年7月、マイクロソフト(MS)との提携を発表し、検索エンジンと広告システムをMS社製に切り替えることとなっていましたが、今年7月に、日本のヤフーは、MSのライバルであるグーグルの検索エンジンと広告システムを採用することを表明していました。
なお、日本のヤフー株式会社は、ソフトバンクとアメリカのヤフーの合弁会社であり、ソフトバンクのほうが筆頭株主になっています。だから、このような相反する選択になることも考えられるわけです。
今回、この日本のヤフーと米グーグルのインターネット検索・広告分野での提携について、楽天が、公正取引委員会に調査を求める申立を行ったということになります。独占禁止法45条1項というのは、「何人も、この法律の規定に違反する事実があると思料するときは、公正取引委員会に対し、その事実を報告し、適当な措置をとるべきことを求めることができる。」というもので、誰でも、独禁法違反事実について公正取引委員会に対して調査を求めることができる制度で、申告制度と呼ばれています。
私自身も、独禁法公正取引研究会の活動などの中で、ビールの同調的値上げの申告を行うなど、何回か、公正取引委員会への申告に関与したことがあります。申告した後は公正取引委員会にお任せ状態になってしまいますが、それでも公正取引委員会としては、調査を行って、その結論については申告者に通知しなければなりません(独禁法45条2項、3項)。独占禁止法違反の行為については(下請法も含め)、その行為によって被害をこうむっている中小企業などは表だって(名前や顔を出して)訴訟などで闘うということは現実には困難です。そんな場合には、こういった申告制度を活用することをもっと検討すべきではないかと思っています。
その意味でも、今回の楽天の申告については、今後を注目していきたいと思います。
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