米「広告ガイドライン」改訂と「隠された広告」
先に述べておくと、タイトルの「隠された広告」というのは、私の造語です。それなりの専門語がありそうな気もしますが判らないので勝手に造りました。お許しください。
さて、半月ほど前の報道ですが、アメリカのFTCが10月5日、「広告に関するガイドライン」の改訂を発表したとのことです。
まず、FTCはアメリカ連邦取引委員会の略ですね。日本の公正取引委員会にあたるものですが、日本の公正取引委員会はJFTCです。Jが付いてるだけではなくて、アメリカのほうのFは「連邦(Federal)」で、日本のFは「公正(Fair)」と違いがあります。
改訂されたガイドラインは、「広告に関するガイドライン」(Guides Concerning the Use of Endorsements and Testimonials in Advertising)で、1980年以来の改訂とのこと。報道によれば、このガイドラインでは、以前から、広告主と推奨者の間で、金品の授受といった、消費者が想定していないつながりがある場合、その旨を明示するべきだとする原則が設けられていたようですが、今回の改訂で、その原則の追加事例として、製品やサービスを勧めるブログ記事などを書いて報酬を受け取る場合も推奨行為に含まれるとしたものです。したがって、こういった場合には、広告主(販売者)との関係を開示しなければならないことになります。
ブログ記事のようなものだけではなく、有名人が、従来の宣伝以外の状況で、商品を推奨するような発言をする場合も、同様に広告主との関係を開示すべき事例とされたようです。
商品を推奨している記事の内容が、本人の率直な感想なのか、メーカーから報酬をもらって書いているか、ということは確かに重要であり、報酬をもらっているとすれば、消費者に対する欺瞞的な勧誘行為となる可能性は充分にありますね。日本でもアフィリエイトブログなどでは実際にたくさんありそうですが。このように一見して広告宣伝には見えない推奨行為を「隠された広告」と仮に名付けてみました。
実際に多数のブログ記事を規制することは困難ですが、「隠された広告」の内容によっては、日本でも、独占禁止法上の不公正な取引方法の中の「欺瞞的顧客誘引」違反を適用することは可能かと思います。さらに、広告内容が不当なものであれば、景品表示法、薬事法などの表示規制法に該当する可能性もあるでしょう。
若干話ははずれますが、テレビやラジオの番組などで、実質は広告だろ、というものを、最近多く見かけるようになりました(自社番組や関係映画、イベントも含む)。あれは、放送の公共性の問題とともに、上記のような広告の妥当性の問題も考えないといけないのではないかと感じます。映画試写会や各種イベントで有名芸能人が記者会見している風景をワイドショーなどでよく見かけますが、あれも怪しい。テレビに限らず、新聞、雑誌も同じですね。この不況下、スポンサー不足、制作費削減の影響でしょうか、出演者、取材対象者にギャラを渡すのではなく、逆に、お金を出してもらっている例をよく聞くようになりました。
日本でも、公正取引委員会なり、消費者庁でガイドラインを考えないといけないように思います。
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