携帯電話技術に関するクアルコムへの排除措置命令(独禁法)
今朝、独占禁止法関連記事を書いたところですが、久しぶりに公正取引委員会の排除措置命令が出たようです。携帯電話(3G通信規格)に関する知的財産権がらみの拘束条件付取引です。知的財産権の無償許諾条項、非係争条項などを内容とするライセンス契約が問題となった事案です。
本日、公正取引委員会は、アメリカのクアルコム・インコーポレイテッド(以下、クアルコム)に対し、独占禁止法19条(不公正な取引方法13項〔拘束条件付取引〕)に違反するとして、排除措置命令を行っています。
→ 公取委サイト報道発表資料(PDF)
(違反行為の概要)
クアルコムは、国内端末等製造販売業者に対し、CDMA携帯無線通信に係る知的財産権の実施権等を一括して許諾するに当たり、あらかじめ適切な条件の下に非排他的かつ無差別に実施権等を許諾する旨を明らかにしているにもかかわらず、次の1から3までの全部又は一部を内容とする規定を含む契約の締結を余儀なくさせている。
- CDMA携帯電話端末等の製造、販売等のために、国内端末等製造販売業者等の知的財産権について、クアルコムに対して、その実施権等を無償で許諾する。
- CDMA携帯電話端末等の製造、販売、使用等について、当該知的財産権に基づいて、クアルコム等に対し、権利主張を行わないことを約する。
- CDMA携帯電話端末等の製造、販売等について、当該知的財産権に基づいて、クアルコムのライセンシーに対し、権利主張を行わないことを約する。
この契約により、国内端末等製造販売業者等は、知的財産権に基づいて差止訴訟の提起、ライセンス料の請求等の権利主張を行うことを制限され、このことから、国内端末等製造販売業者等の研究開発意欲が損なわれ、また、クアルコムの当該技術における市場における有力な地位が強化されることとなり、当該技術に係る市場における公正な競争が阻害されるおそれがある。
(排除措置命令の概要)
- クアルコムは、国内端末等製造販売業者との間で締結した本件ライセンス契約における上記内容の規定を廃棄しなければならない。
- クアルコムは、次の事項を、業務執行の決定機関において決議しなければならない。
ア 本件ライセンス契約における上記内容の規定を破棄する旨
イ 今後、特定携帯無線通信に係る知的財産権について、同様の行
為を行わず、また、子会社をして行わせない旨 - クアルコムは上記1,2に基づいて採った措置を、本件ライセンス契約を締結した国内端末等製造販売業者に通知しなければならない。
- クアルコムは、今後、特定携帯無線通信に係る知的財産権について、同様の行為を行ってはならず、また、子会社をして行わせてはならない。
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