Googleブック検索の和解案に関して2題(米司法省調査・日本の著者対応)
Googleにおるブック検索のサービスと著作権に関して提起されていたクラスアクションにおける和解案が日本でも波紋をよんでいることは、当ブログの2月25日付記事、3月4日付記事に書きました。
そして、この和解案について、アメリカの消費者団体が独占禁止法違反として司法省に書簡を送ったことについても紹介しました。
→ 「Googleブック検索をめぐる和解と独占禁止法(アメリカ)」(4/8)
この消費者団体の動きによるものかどうかはわかりませんが、日本のネット・ニュースITmediaなどが報じているところでは、ロイターやニューヨークタイムズ、ウォールストリートジャーナルなどで、Googleブック検索のクラスアクションでの和解案について、アメリカの司法省 が独占禁止法に違反する可能性があるとして調査を始めたことについて報道されているようです。
アメリカという国は、この問題に限らず、立法、行政、司法の三権(これだって、連邦と州の二重構造ですが)の相互の積極的なチェックが特徴ですね。日本も制度的には三権分立ですが、どちらかというと、お互いの領分を侵さないような抑制的なものになっています。
上記の司法省の調査に関する報道に関して、(いつまで読めるかわかりませんが)ひとまず各メディア記事をリンクしておきます。
→ ITmedia (ロイター記事の翻訳)
→ hon.jp DayWatch (ニューヨークタイムズ記事より)
→ ニューヨークタイムズ記事 (もちろん英語)
→ ウォールストリートジャーナル記事 (これも英語)
さて、上の独占禁止法の問題とは視点は別の話ですが、日本の著作権者や業者、団体などが和解案を批判したり、ブック検索対象からはずれる手続をする方針をとろうとしていることにつき、一般の著者たちに誤解があるのではないかと、町村教授がブログで批判的な立場から書いておられます。
確かにロングテール(死に筋商品、ニッチ商品、少数関係者向け商品と考えていただければ結構です。)に位置する書籍にとっては、ブック検索の対象となっているほうが営業上はかえってメリットが大きいと思われるし、Googleが行っているのは全文公開ではないので、事情もよく理解できないまま和解案に感情的に反対している著作権者なども結構いるのではないか、という点は私も同意見です。ただでさえ、理解しにくい和解案ですし。
けれども、和解の対象となることによって、少なくともGoogleが合法的に全文を複製して保存してしまうことには違いなく、たとえ現状では第三者がタダ読みできるようなシステムではないとしても、将来的なことを考えれば、複製・保存がいったんされてしまうという事実については警戒しておくべき問題が含まれていると思います。したがって、一般の著者たちが感覚的に嫌な感じを持つというところは、単に誤解ということだけで片づけられないようにも思えるのです。
【追記】(7/3)
司法省調査についての続報がありましたので、別記事にしました。
→ 「Googleブック検索についての米司法省調査(続報)」(7/3)
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