運送事業者に関する不当減額事案(下請法と物流特殊指定)
本日、公正取引委員会は、株式会社ゼロ(川崎市幸区)に対し下請代金支払遅延等防止法(下請法)4条1項3号(下請代金の減額の禁止)に違反するとして、勧告を行っています。
→ 公取委サイト報道発表資料(PDF)
【違反事実の概要】
ゼロは、自動車製造業者が製造する自動車を出荷する前の修理及び貨物運送を業として請け負い、下請事業者に委託しているところ、自社の利益を確保するため、下請事業者に対し、「原価低減」等と称して、下請代金の額に一定率を乗じて得た額を負担するよう要請し、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請事業者に支払うべき下請代金の額を減じていた。
【勧告の概要】
ア 「原価低減」等と称して、下請代金の額から減じていた額(総額33
47万7511円)を下請事業者に対して速やかに支払うこと。
イ 前記行為が下請法に違反するものである旨及び今後、下請事業者の責
めに帰すべき理由がないのに下請代金の額を減じない旨を取締役会の決
議により確認すること。
ウ 今後、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに下請代金の額を減
じることがないよう、自社の発注担当者に対する下請法の研修を行うな
ど社内体制の整備のために必要な措置を講じるとともに、その内容等を
自社の役員及び従業員に周知徹底すること。
エ 前記に基づいて採った措置を取引先下請事業者に周知すること
上記勧告は、貨物運送業などの事業者が下請業者に対して不当減額を強いたという下請法違反事案です。
一方、公正取引委員会は、昨日、「荷主と物流事業者との取引の公正化に向けた取組について」(PDF)という報告を行っています。これは、荷主が運送事業者に対して優越的地位濫用行為を行うことを規制する観点からのものです。したがって、下請法の規制ではなく、独占禁止法の不公正な取引方法の中の「特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法」(平成16年・物流特殊指定)の違反に関するものです。そして、この報告の公表と同時に、荷主の事業者2社に対して、物流特殊指定に違反しているおそれがあるとして警告を出しています。内容的には、やはり、どちらも不当減額事案となっています。
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