フランチャイズ契約と独占禁止法(公取委)
今日は、セブンイレブンのコンビニエンスストアの値引き制限について、公正取引委員会が独占禁止法違反の疑いがあるとして調査を始めたことが、テレビや新聞で報じられています。
フランチャイズ・システムについては、独占禁止法に抵触する可能性のある点が昔から指摘されており、公正取引委員会もガイドラインを作成するなどしてきたのですが、ようやく調査に踏み切ったか、というのが素直な感想です。今回はセブンイレブンについてのようですが、同様の問題は他のコンビニにもありますし、コンビニ以外のフランチャイズも例外ではありません。
日弁連消費者問題対策委員会で私の所属している独占禁止法部会でも相当以前からフランチャイズと独占禁止法の問題に取り組んできています。
この問題について詳しく触れるにはブログは狭すぎますので、ここでは、公正取引委員会のガイドライン「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」(平成14年4月24日)と最近のフランチャイズ関係判決に関連した当ブログ記事へのリンクをしておきます。
→ 公取委サイト
フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について
→ 当ブログ過去記事
「コンビニ加盟店契約に関する最高裁判決」(08/7/4)
「フランチャイズ加盟店の当然の権利ではないかな」(08/7/6)
公取委ガイドラインのうち、今回の値引き制限の問題と関連するのは、「3フランチャイズ契約締結後の本部と加盟者との取引について」の「(3)販売価格の制限について」(一番最後の項になりますね)のところですので、ここだけ抜粋しておきます。
「販売価格については、統一的営業・消費者の選択基準の明示の観点から、必要に応じて希望価格の提示は許容される。しかし、加盟者が地域市場の実情に応じて販売価格を設定しなければならない場合や売れ残り商品等について値下げして販売しなければならない場合などもあることから、本部が加盟者に商品を供給している場合、加盟者の販売価格(再販売価格)を拘束することは、原則として一般指定の第12項(再販売価格の拘束)に該当する。また、本部が加盟者に商品を直接供給していない場合であっても、加盟者が供給する商品又は役務の価格を不当に拘束する場合は、一般指定の第13項(拘束条件付取引)に該当することとなり、これについては、地域市場の状況、本部の販売価格への関与の状況等を総合勘案して判断される。」
ニュースで、セブンイレブン本部側の記者会見での反論主張も見ましたが、どう考えても、値引き制限は、再販売価格維持行為であり、独占禁止法上、違法性の極めて高い行為であることは当然と思います。本部は、値引きによる価格競争により、加盟店の経営が悪くなるので加盟店のためなのだ、みたいな意味のことを言っていましたが、もちろん、加盟店自身の判断で、自分の店の経営を守るために値引きをしないということであれば、問題は全くないのです。そうではなくて、加盟店が経営判断として、本当は値引きをすべきと考えるのに、本部との契約上、値引きできないということが問題なのです。その結果として加盟店の経営が良くなるか悪くなるか、というのは加盟店自身の経営責任上の選択として考えれば良いことです。本部として、加盟店のために経営指導をしてあげることは結構なのですが、加盟店が値引きすれば契約解除を迫るというように強制するのは違法だと考えられます。
今日の夜9時からのNHKニュースでも取り上げていました。ただ、キャスターのコメントが、値引きせずに廃棄されるのがもったいない、という環境問題的な意味合いでのものになっていたので、不満でした。私ももったいないという点は同じ思いですけども、今回の独占禁止法上の問題は、もったいないか否かとは直接関係はありません。仮にもったいないという問題がなくても、値引き制限は原則として駄目なのです。
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