控訴・上告期間と年末の判決
年末ですね。今年はカレンダーの関係で、裁判所の御用納めが今週の金曜(26日)ですが、私は実質上の最終日の木曜にも裁判期日が入っています。
さて、今年は大丈夫なのですが、昨年の年末には、相続がらみの不動産登記関係の民事訴訟の判決言渡し期日が入ってしまいました。この時期に判決の言渡しがあると普通よりも厄介です。判決が完全勝訴という場合はまだ良いのですが、そうでないときには、判決内容を検討して、上訴(控訴または上告・上告受理申立)をするかどうか決めなければなりません。もちろん、それは弁護士が決めるのではなく、最終的には裁判の当事者である依頼者が決めることですから、弁護士としては、判決内容や今後の見通しなどを専門家として検討したうえで、依頼者に説明して、どうするかの方針を話し合わなければなりません。
控訴などの上訴期間は、判決の送達を受けてから2週間が原則です。この、2週間の数え方ですが、判決の送達を受けた日の翌日を1日目として数えます。ですから、たとえば、水曜日に判決の送達を受ければ、2週間後の水曜日が終わるまでに控訴等をしなければ、その判決が確定してしまいます。この期間の中間にゴールデンウィークのように休日がたくさん入っていても、同じことです。ですから、12月25日に判決の送達を受ければ、来年1月8日が最終期限ということになりますので、実際上、これは大変なことになります。
ただ、2週間の期間の最終日については、民事訴訟法95条3項の規定があり、「期間の末日が日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律に規定する休日、1月2日、1月3日又は12月29日から12月31日までの日に当たるときは、期間は、その翌日に満了する。」とされています(蛇足ですが、この規定でもわかるように、正月も1月1日だけが国民の祝日で、1月2日、3日は法律上の祝日にはなっていません)。
したがって、最終日が、12月29日~1月3日の場合は、結局、その翌日である1月4日が最終日となります。つまり、12月17日に判決を受領した場合には、単純に数えると12月31日の大晦日が上訴期間となってしまいますが、上の規定により、1月4日(ただし、来年はこの日が日曜のため、1月5日)が最終日となります。最長で考えると、今年の場合は、12月13日に判決を受領したとしても、12月27日が土曜で、そこから上記の期間が続いて、来年1月4日が日曜なので、1月5日になりますね。もっとも、1月4日や5日が最終日となっても大変なんですが。。。
なお、ご注意いただきたいのは、期間の起算日は判決言渡し期日の翌日ではなく、判決の送達日の翌日からですので、年末の判決言渡しであっても、実際に判決の送達が年明けということであれば、上のようなことにはなりません。実は、冒頭に書きました昨年末の判決も送達を受けたのは正月明けでした。ただ、この場合でも、正月休みの間も、その判決のことが頭から離れないという状態になりますので(依頼者も弁護士も)、あまり歓迎すべき状況ではありません。
« 自動車用部品製造下請に関する勧告(下請法) | トップページ | 「フェアユース」規定制定の報告書(著作権) »
「裁判」カテゴリの記事
- 「食べログ」東京地裁判決と公取委実態調査報告書(2022.06.16)
- ドライヤーの広告に関する差止訴訟(ダイソンvsパナソニック)(2022.06.12)
- 台風被害によるマラソン大会の中止と参加費の返金(2022.05.13)
- 「クレベリン」(大幸薬品)措置命令まとめ(2022.05.05)
- 不実証広告規制(景品表示法)を合憲とする最高裁判決(2022.03.09)
「法律」カテゴリの記事
- 「食べログ」東京地裁判決と公取委実態調査報告書(2022.06.16)
- ドライヤーの広告に関する差止訴訟(ダイソンvsパナソニック)(2022.06.12)
- スシロー「おとり広告」で措置命令(景表法)(2022.06.09)
- 台風被害によるマラソン大会の中止と参加費の返金(2022.05.13)
- 「クレベリン」(大幸薬品)措置命令まとめ(2022.05.05)
コメント