排除措置命令違反罪についての最高裁決定
公正取引委員会が行った排除措置命令に違反すれば、50万円以下の過料に処するという規定(独占禁止法97条)があるのですが、これに関する抗告審の決定が最高裁判所から出ています。大した分量ではなく、珍しい決定なので、決定理由全文を下に貼り付けておきますが、これだけ読んでも事案が良くわかりませんね。原審決定を探したのですが、見あたりませんでした。
決定内容から見ると、景品表示法の原産国不当表示事案のようです。
平成20年3月6日最高裁決定〈平成19(行フ)6号〉
排除措置命令違反に対する過料事件の決定に対する許可抗告事件
原審 東京高等裁判所〈平成19(行タ)52号 〉 平成19年10月23日決定
裁判要旨
排除措置命令に違反した者を私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律97条の定める過料に処さないこととした原審の判断が是認された事例(抗告棄却)
〔 理 由 〕
抗告人の抗告理由について
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律97条の規定は,排除措置命令に違反したものは50万円以下の過料に処する旨を定めており,同条の趣旨に照らせば,裁判所は,審理の結果,排除措置命令に違反する行為が認められる場合には,原則として,当該行為をした者を過料に処すべきであるが,違反行為の態様,程度その他諸般の事情を考慮して,処罰を必要としないと認めるときは,上記の者を処罰しない旨の決定をすることもできるものと解するのが相当である。
これを本件についてみると,相手方は,公正取引委員会から,一般消費者の誤認を排除するための措置として,本件商品の原産国について相手方が行った表示が事実と異なるものであり,一般消費者に誤認される表示である旨を速やかに公示すること等を命じる旨の審決を受けたにもかかわらず,同審決の履行をけ怠していたものであるが,相手方が本件商品の不当表示を同審決を受ける約2年半前に取り止めた上,ウェブサイトや店頭告知で不当表示をしていた事実を公表し,商品の回収や代金の返還にも応じて,一般消費者の誤認やその結果の排除に努めていたことなど本件記録上うかがわれる事情に照らせば,相手方を処罰しないこととした原審の判断は,結論において是認することができる。論旨は採用することができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
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