08年独占禁止法改正(その3 不公正な取引方法)
今回の独占禁止法の改正案では、「不公正な取引方法」の扱いに関してはガラガラと変わっています。マスコミは、気楽に「不当廉売に課徴金」などといってますが、そう単純でもないですね。
現在の独禁法では、「不公正な取引方法」の具体的な規制対象行為は、独禁法自体に規定されず、公正取引委員会の指定によるという形式になっています。そして、公取委は、一般指定と特殊指定というのを告示してますけど、一般指定は全ての業種が対象となります。そこに、「不当廉売」や「優越的地位の濫用」や「再販売価格維持」などが規定されています。
しかし、今回の改正案の「不公正な取引方法」への課徴金の導入については、告示に任せるわけにもいかないので、独禁法本体に、課徴金対象行為を明定しました。
だから、従前の一般指定に規定されてきた「不当廉売」「優越的地位の濫用」「再販売価格維持」などが、そのまま課徴金対象になったのではなくて、後で述べる通り、これまでの一般指定とは別に新たに独禁法本体に規定された行為の内、悪質なものについて、課徴金が付されることになったものです。
今回の改正案は、独禁法2条9項の「不公正な取引方法」の定義規定を大幅に変えて、従前の一般指定に列挙されていた行為の内、「共同取引拒絶(共同ボイコット)」、「差別対価」、「不当廉売」、「再販売価格維持」、「優越的地位の濫用」を、ほぼそのまま法律上の規定に移しました。
そのうえで、20条に枝番を一杯付ける形で、それらを課徴金対象行為としたのですが、2条9項に規定された行為要件に、行為の繰り返しや継続というような要件が加わったものについて課徴金が課されるということになっています。
詳しくは、「共同取引拒絶(共同ボイコット)」(20条の2)、「差別対価」(20条の3)、「不当廉売」(20条の4)、「再販売価格維持」(20条の5)、「優越的地位の濫用」(20条の6)の各条文をご覧ください。
→ 改正案(新旧条文対照)
となると、これまでの一般指定(公取委告示)も、上の5つを抜くなどの改正がされることになるのでしょうね。
この改正案シリーズもう少し続ける予定です(たぶん)。
〈関連記事〉
→ 「08年独占禁止法改正(その2 閣議決定と法案公表)」(3/11)
【追記】(09/6/12)
上記は、結局廃案となった平成20年提出の改正案についてのものです。成立した平成21年改正案(成立)と共通する部分も多いですが、ご注意ください。
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