特定商取引法改正と迷惑メール(経産省)
読売が、特定商取引法(特商法)の改正による迷惑メールの規制強化を報じています。
ただ、ネット配信の記事によれば、「メールを実際に送信した業者だけでなく、広告主に対しても罰則の網を広げることで、迷惑メール対策を強化する効果が期待できる。」とか、「新たな規制は、迷惑メールの広告主に対して刑事罰を導入するなど、「厳罰主義」で臨むことが柱だ。」とか、と表現されていますけど、一般の読者が、この文章を素直に読めば、これまでは特商法には迷惑メールの広告主に対する刑事罰がなく今回初めて新設するかのように読めますので、ちょっと誤解が生じるかも。。。
(ちょっと見てみたら、最近のこの件に関する報道は、他も似たり寄ったりの表現でした。)
以前にも書きましたが、現在、迷惑メール規制は、この経済産業省所轄の特商法による規制と、総務省所轄の迷惑メール防止法による規制の二本立てとなっています。
この2つの違いはいくつかありますが、その目的の違いから、規制の対象者が、迷惑メール防止法がメールの送信者であるのに対して、特商法のほうは、そのメールで広告している事業者つまり広告主が対象となっています(その両者が同一事業者ということもあります。)。
このように、もともと広告主は特商法による迷惑メール規制の主な対象ですし、行政からの指示・命令に従わなかった場合の罰則として罰金も懲役刑も法定されてます。
したがって、今回検討されている改正の如何にかかわらず、広告主がこれまで全く法規制や刑罰の対象になっていなかったというわけではありませんので、ご注意です。
今回の一連の改正の骨は、「同意を得ていない送り先への広告・宣伝メールの送信を、原則として禁じる」という点にあります。これまでの、いわゆるオプトアウト規制からオプトイン規制への転換です。これは総務省が検討中の迷惑メール防止法の規制強化も同じです。
具体的な改正案が、経済産業省から正式に出ていないので、これ以上正確なところはわかりませんが、この規制の強化に伴って、当然ながら、刑罰の対象も拡がることになるわけで、上の報道の意味するところはそういうことではないかと想像しています。
それと、刑罰といっても、これまでは行政命令違反に対する間接罰であったのを、違反行為そのものについての直接罰とするのかどうか、という点があります。迷惑メール送信行為が、行政の指示・命令の有無に関わりなく犯罪となるのであれば、かなり厳しくなるということがいえますね。ただ、これについては、私が見た限りでは、まだ具体的な報道がないようですね。
« マイクロソフトに追加制裁金(EU) | トップページ | 個人情報ガイドライン説明会と個人情報流出公表(経産省) »
「パソコン・インターネット」カテゴリの記事
- 「ピークパフォーマンス」(野上麻理著)のご紹介(2022.02.27)
- 「弁護士法72条違反で」とは(2021.10.18)
- メルカリなどフリマへの出品と違法行為(2021.10.13)
- 「Web相談始めました」(2021.08.08)
- 個人情報保護法(令和2年改正法)新ガイドラインの公表(2021.08.03)
「法律」カテゴリの記事
- 台風被害によるマラソン大会の中止と参加費の返金(2022.05.13)
- 「クレベリン」(大幸薬品)措置命令まとめ(2022.05.05)
- 不実証広告規制(景品表示法)を合憲とする最高裁判決(2022.03.09)
- 「判例による離婚原因の実務」中里和伸著(LABO)」(2022.01.08)
- 「弁護士法72条違反で」とは(2021.10.18)
« マイクロソフトに追加制裁金(EU) | トップページ | 個人情報ガイドライン説明会と個人情報流出公表(経産省) »
コメント