外国公務員に対する贈賄事件(不正競争防止法)
今朝の朝刊各紙で報道されていますが、ブリヂストンは、海上石油輸送に使用するマリンホース事業で、中南米や東南アジアなどの外国公務員に対する不適切な支払が、少なくとも1億5000万円あったと発表した、とのことです。
一部報道では、昨年5月のマリンホースをめぐる国際カルテル事件の日米欧の当局による一斉調査、関係者の逮捕などを受けて、ブリヂストンが日米の弁護士に委託して調査していた中で、今回の不適切な支払が明らかになった、とのことです。
この国際カルテル事件については、以前に「『マリンホース』の国際的価格カルテル事件」(07/5/7付)として書いています。
報道では、ブリヂストンが、この調査結果から、不正競争防止法違反(外国公務員への利益供与)の可能性があるとして、東京地検に調査内容を報告した、とされています。
公務員に対して賄賂を贈ることについて、刑法には贈賄罪(刑法198条)が昔からあるわけですが、この条文でいう「公務員」には、外国の公務員は入りません(刑法7条参照)。
しかし、企業活動のグローバル化、ボーダレス化の進展に伴い、国際的にも外国公務員への贈賄が問題となり、我が国では、不正競争防止法の平成10年改正(平成11年2月施行)において、外国公務員等に対する不正の利益の供与等を不正競争行為として、その違反者には刑罰が科されることとなりました(同法18、21条2項6号)。
しかし、このときの改正では、国内犯のみを対象とするものであったため、外国で贈賄行為を行った場合は適用されず、問題が指摘されていたため、 平成16年、不正競争防止法を改正し(平成17年1月施行)、日本国民が、海外で賄賂の申込みや供与などを行った場合についても、処罰の対象とすることとされました(同法21条6項、刑法3条参照)。
なお、この外国公務員に対する贈賄行為について、刑法ではなく、不正競争防止法の規定で対応したのは、刑法の贈賄罪は、我が国の公務員の職務の公正さとこれに対する国民の信頼を保護法益とするものであるのに対して、外国公務員に対する贈賄行為の処罰は、国際商取引における公正な競争を確保するという目的に基づくものであって、刑法の贈賄罪とは保護法益を異にし、刑法の贈収賄罪の体系に属するものでないとの理由による、とされています。
度重なる不正競争防止法の改正によって、同法が「不正競争行為」として規制する行為が追加されていきましたので、一見すると、種々雑多な行為が並んでしまっているのが面白いですね。
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