マラソンと「助力」についてのウダ話
小林祐梨子選手の話に続いて、陸上競技のネタですが。。。
先日報じられていたのですが、両足に障害があるクラスで短距離3種目の世界記録を持つ南アフリカの男子義足ランナー・ピストリウスが、北京五輪出場を求めていたところ、国際陸連が出場を認めないとの決定をしたということです。
国際陸連の拒否理由は、彼の義足が、規約で禁じる「競技力向上を手助けする人工装置」にあたるというものです。国際陸連はこの決定にあたり、本人と一般選手5人でテストをしたようで、本人は約25%少ないエネルギー消費で足りることなどの優位性が明らかになったらしい。 ドーピングなどでも同じような問題はありそうですが、障害や故障のための治療行為(薬剤投与や手術など)や用具(義足や人工関節など)の当否や限界というところは厳密に考えてみれば難しいところかもしれません。義足とはちょっと違いますが、車いすマラソンのトップ選手たちは1時間30分を切りますので、この場合は一般のマラソンと対等の競技にはなりませんね。
陸上の「助力」の問題としては、マラソン競技での「助力」禁止の判断が容易でないところが多くあります。
先日の箱根駅伝でもありましたが、倒れたランナーに監督らが手をかければ即リタイヤとなります。1908年のロンドンオリンピック(第4回)でゴール直前に倒れ役員に助けられてゴールしたため失格した「ドランドの悲劇」も同じですね。
マラソンでは、ペースメーカー(ラビット)も、長らく日本では公には認められませんでした。本当は存在してるのにもかかわらず、テレビ中継では先頭を走ってるのに実況では全く無視されるというような不思議な状態でしたが(別大マラソンでしたか、ほとんど優勝しそうなのに、遠慮してリタイヤした外人ランナーもいましたね。)、最近は堂々と公認されてますね。また、視覚障害者についての伴走も最近は認められているようです。
これの微妙なものとして、男女混合のマラソンで、上位の女子ランナーを男子ランナーがエスコートしながら走っているというのもあります。黙認されているようですが、これは疑問ですね。
ランナー同士が、水やスポンジをお互いに渡しあっているというのも、美しいスポーツマンシップと見えるのですが、助力ではないかという疑いがあります。同じ国の選手だけでのやり取りならなおさらでしょう。
それと、これも最近、特に女子マラソンで目立ちますが、監督やコーチが沿道を自転車や脚で併走して声をかけているシーン。これも、コーチが夫だったりなどして、感動を呼ぶ側面もありますが、やっぱり助力じゃないのかと思います。
私のような市民ランナーレベルでも細かいことをいえば色々あって、仲間の私設エイドでの飲食や救護などの援助は、陸上競技規則から言えば完全に違反です(ホノルルマラソンでも見られるように、市民レースでは、それもイベントの内ですが、競技マラソンとしては違反行為には違いありません。このあたりは、レースの性格やそれぞれの楽しみ方や記録に対する考え方によるのでしょうね。)。
最近の話題では、デジタルオーディオを聞くというのは許されるのか、というような議論もありました。ランナー自身がポーチなどに入れて持って走る飲食物なども、私自身も含め市民ランナーでは普通のことですが、これについてはどうなのでしょうね。考えていくとこれも微妙な所があるような気がします。
これが、刑罰法規の構成要件該当性というような問題だと、法律的な論文のひとつでも書けそうな気もしますけど、あんまり堅いこと言ってたらみんなから嫌われそうです。
まぁ、テレビ中継見ながら、そんなことにツッコミ入れながら見てるというのが一番平和かもしれません。
もうすぐ大阪国際女子マラソンですね。
【追記】(08/2/15)
冒頭に書いた両足義足の男子スプリンター、オスカー・ピストリウス(南アフリカ)が2月13日、国際陸上競技連盟(IAAF)が北京五輪出場を認めなかったことを不服として、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴したようです。
結果が注目されるところですが、その一方で、2月14日付のタイムズ紙の報道で、大気汚染が心配されている北京五輪で、英国オリンピック委員会(BOA)が、競技中の選手のマスク着用を許可する方向で準備していると報じられているようです。吸着性物質を含むマウスピース付きマスクということです。報道を見る限り陸上競技に限った話ではなさそうですが、マラソン女王のラドクリフが既に試しているということです。
普通ならば、選手がマスクをすることは邪魔なので、「助力」にはあたらないという気がしますが、この場合はどうなのでしょうね。こっちの成り行きも注目されます。
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