独禁法違反行為を権利乱用として主張した裁判例
最高裁サイトの判例速報(知的財産裁判例)に出ていたものです。
原告側の行為が独占禁止法違反であり権利濫用にあたるという抗弁を、被告が主張した事案ですが、裁判所は結論的にはこれを認めませんでした。
平成20年1月22日大阪地裁21民事部判決
(平成19(ワ)2366号 意匠権侵害差止等請求事件)
事案はマンホールの蓋の意匠権その他の知的財産権侵害に関するもので、権利者が原告となって、被告に対して差止と損害賠償を求めていたものです。
ここでは、権利侵害の有無や損害額についての争点は置き、被告からの独禁法違反(権利濫用)の抗弁についてのみ、簡単に触れます。
マンホールの大手企業である日之出水道機器(以下、日之出)が、上記の知的財産権の本来の権利者であり、本件原告は、日之出から各権利を信託的に承継した会社(ライセンス管理会社でしょう)です。それで、被告は、日之出の行為が独占禁止法に違反するもので、原告の本件請求は権利の濫用に当たる旨主張しました。独禁法違反の詳細は判決をお読みいただくとして、私的独占、不当な取引制限および不公正な取引方法(優越的地位の濫用)が挙げられています。
判決は、独禁法21条の従前の解釈を踏襲し、知的財産権の行使であっても、不当な権利行使については独禁法適用が除外されるものではない、としたうえで、日之出の行為に独禁法違反の行為があったとは認められず、その他、日之出又は原告において権利の濫用に当たる行為を行ったことを認めるに足りる証拠はない、として、権利濫用の抗弁を排斥しています。
◎本件と関連の裁判例として、
当事者が同じ事案で、
(まだ、ちゃんと読んでないので、上の事案と何が違うかわかりませんです)
大阪地判平成18年12月7日(平成18(ワ)1304)
→ 白石忠志教授のサイト
日之出 対 六寶産業 (債務不履行による損害賠償請求)
大阪地判平成18年1月16日(平成16(ワ)10298)
判時1947号108頁
なお、公正取引委員会は平成17年、マンホール蓋の製造販売に関して、日之出が事業活動を支配し、独禁法3条及び19条の定に違反する疑いがあったとして、独禁法の規定に基づき審査を開始していましたが、18年12月、独禁法に違反する疑いを裏付ける事実を認定するには至らなかった、として審査終了を発表しています。
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