事業者に対する販売とクーリングオフ(判決)
毎日の報道(現時点では地方版のみかもしれませんが)によると、名古屋高裁が、電話機のオフィス向けリース契約について、特定商取引法に規定されたクーリングオフの適用を認めて、1審の名古屋地裁の判断を取り消して、原告に対して支払済代金の返還を認めた、とのことです。
特定商取引法(特商法・・旧「訪問販売法」)は、本来、事業者対消費者の取引に関する消費者保護法ですので、顧客側が「営業のために締結する契約」については原則として適用されず(特商法26条1項1号)、クーリングオフ(特商法9条)もその対象外とされています。
そのために1審の名古屋地裁は、原告は事業者であることを理由にクーリングオフの適用を認めなかったようです。
今回の高裁判決では、記事によれば、原告は「1人で手作業で行う零細業者」であって一般の消費者と同程度に保護されるべきだと判断して、適用除外にはあたらないとしたようですね。
詳しい判決内容がわからないので、ここでは報道の紹介のみになりますが、特定商取引法や消費者契約法が消費者に対する取引にのみ適用されることを逆手にとった悪徳業者が、小企業をターゲットに悪質なセールスをするケースを多く聞きます。本件のような電話機をはじめとして、消火器や節電器といった商品の事案は多数にのぼります。
なお、毎日の報道では、原告代理人の話として「高裁レベルで小規模自営業者にクーリングオフを認めた判決は聞いたことがなく画期的だ」とありますが、大阪高裁の平成15年7月30日判決(1審神戸地裁平成15年3月4日判決も同様)は、同様の判断を行っています。もっとも、こちらの大阪高裁の判決では、「小規模事業者」を理由にはしていないので、その意味では名古屋の代理人コメントは正しいといえるかもしれません。
→ 大阪高裁の判断については、原審の判断と合体させて読みやすくしたものを消防庁のサイトで見ることができます。
http://www.fdma.go.jp/html/life/caution_hanrei_fuka.html
この大阪高裁の事件は、消火器に関するもので、大阪高裁は、「・・・商行為に該当する販売又は役務の提供であっても、申込みをした者、購入者若しくは役務の提供を受ける者にとって、営業のために若しくは営業として締結するものでない販売又は役務の提供は、除外事由としない趣旨であることが明白である。そこで、本件取引についてみるに、被控訴人は、各種自動車の販売、修理及びそれに付随するサービス等を業とする会杜であって、消火器を営業の対象とする会杜ではないから、消火器薬剤充填整備、点検作業等の実施契約(本件取引)が営業のため若しくは営業として締結されたということはできない。」としたものです。
(大阪高裁判決に対しては、業者側から上告受理申立がなされたが却下された模様で、判決は確定しています。)
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