もう1つ、菓子の名称関連の判決(商標権)
1つ前の記事は、不正競争防止法に関する民事訴訟でしたが、こっちは、商標権に関する登録取消決定に対する取消請求の訴訟です。これは特許庁を被告とする行政訴訟になります。どっちも、菓子の商品名に関する争いで、偶然、同時に最高裁サイトに出ました。
知的財産高裁平成19年10月25日判決
→ http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071026110546.pdf
この事案は、「大阪プチバナナ」(指定商品:30類・「菓子及びパン」)という商標権を原告が有していたところ、他社が、登録異議の申立をして、特許庁がその異議を認めて、商標登録を取り消す旨の決定をしましたので、今度は、原告がその取消し(つまり「取消」の「取消」)を求めたものです。
本件の争点は、「本件商標と引用商標との類似性」と「引用商標に係る商標登録が後に不使用取消審判において取り消された場合の法律関係」となっています。詳細は判決を見ていただくとして、前者の「本件商標と引用商標との類似性」について、簡単に説明しておくと、
特許庁が、登録の取消を認めたのは、「大阪プチバナナ」 は、これまでに存在した別の商標と類似しているので、商標法4条1項11号に違反する、という理由でした。この条項は、簡単にいうと、他人の商標に同一又は類似する商標は登録できない、というものです。
ここで、類似性が問題となった商標とは、上記の登録異議を申し立てた会社が有する商標で、「大阪ばな奈」(指定商品:30類・「菓子及びパン」)です。つまり、同じ指定商品で、
「大阪プチバナナ」と「大阪ばな奈」
の類似性が問題となりました。
類似判断についての原被告双方の主張と裁判所の判断は、判決本文を参照いただきたいのですが、
判決は結論として、「本件商標と引用商標は,外観は類似せず,観念はある程度類似し,称呼は共通する点があるものの異なる点もある程度」として、他の事情も総合勘案すると、本件商標登録の登録査定時点において商品の出所を誤認混同するおそれがあったとは認められず、本件商標と引用商標が類似とはいえない、と判断しました。
したがって、原告の商標登録を取り消した特許庁の処分は違法という結論になっています。
「観念」類似の判断で、「プチ」の意味について、他社の別商品などもたくさん引用して、検討してます。
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