大学合格実績水増し問題と不当表示(景表法)
全国各地の私立高校で、生徒の大学受験料を負担するなどして有名大学の合格実績を水増ししていたことが、このところ問題となっています。
今朝の朝日新聞にもその問題の特集記事があり、そこで、「法律的には問題なく、道義的な問題」という趣旨の説明があったのですが、私としては、そう言い切れることではないと思っています。
確かに、在校生がそれだけの大学に合格したという「実績」があったのは事実なので、全く虚偽の宣伝をして、新入生を募ったということではないでしょう(そうであれば、極端な場合は詐欺ということもあり得る話になりますね。下記の公取の案件には虚偽の表示も結構含まれてるようです。)。
おそらく、合格実績数の宣伝については、大学や学部で同一人の重複合格がダブってカウントされていることがある、と考えることが一般人として常識かもしれませんので、単に重複して数えて宣伝していることだけで違法、とは私も思いません(ただ、本当は、重複合格者が含まれることを明記すべきと思いますけどね)。
しかし、宣伝のために、通常の学生なら受けないであろう多数の入試を少人数の優秀な学生に(受験料まで学校が負担して)受けさせて合格させ、ことさらに多数の合格実績数を水増しした場合は、同じようには考えられません。もし、その水増し表示が、一般的には、まさかそこまでの重複カウントはないであろうという程度を超えたとなれば(線引きは難しいですが)景品表示法上の不当表示(優良誤認)には該当する可能性は充分にあると思います。
下記の案件の内、「TAC、大原学園、早稲田セミナーに対する警告」では、合格数としては間違いではないものの、重複合格をカウントしたり、短期間の講座を受けたに過ぎず受講した成果と見られない合格者もカウントしている点を問題として警告が行われた点が、上記問題と関連して、注目されると思います。
(参考)専門学校による不当表示(水増し等)に対する
最近の公取委の排除命令、警告の案件の例
◎受験Vアカデミーに対する排除命令(19年1月)
(高校合格者の水増し表示)
◎学校法人西日本松永学園に対する排除命令(18年11月)
(資格試験合格者の学校別順位の不当表示)
◎TAC、大原学園、早稲田セミナーに対する警告(18年10月)
(資格試験合格者数に短期講座受講者や重複合格者の数をカウント)
◎サンライズ学院に対する排除命令(17年2月)
(公務員採用試験合格者数の水増し表示)
◎学校法人フジ学園に対する排除命令(17年2月)
(公務員採用試験合格者数の水増し表示)
◎石川学園に対する排除命令(17年2月)
(公務員採用試験合格者の水増し表示)
◎東京リーガルマインドに対する排除命令(17年2月)
(司法試験合格者の水増し表示)
【追記】(9/5)
上を書いてから、ちょっと見てたら、朝日新聞も7/28付で、景品表示法違反との関係を記事にしていましたね。
→ http://www.asahi.com/edu/news/OSK200707270180.html
にもかかわらず、今回、法律に反していないと断定するような書き方をしたのは何故かな?
専門学校などと違って、学校法人については、景品表示法上の「事業者性」の要件に欠けるから、というような解釈なのでしょうか?
それとも、問題はあっても、「合格者数」には違いないから、違法な不当表示とまでは言えない、という立場でしょうか。でも、1人で73も合格したというのはねぇ。
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