〔著作権判決〕『愛の流刑地』に対する訴訟
このところ著作権関係が続いてますが、これも著作権関連
平成19年7月25日 東京地裁判決 損害賠償請求事件
→ http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070726132242.pdf
日経の連載小説で評判だった渡辺淳一の「愛の流刑地」につき、以前に自分が執筆し、新聞社に送った小説の表現と同一の部分があり、自分の小説の該当部分についての著作権(複製権)の侵害に当たるとして、渡辺氏を被告として、民法709条に基づき、著作権侵害の不法行為による2000万円の損害賠償を請求した事案。
問題となった実際の表現は判決文に出てこないので、よくわかりませんが、原告は、「愛の流刑地」の一部分は、被告小説の一部を抜粋したものであるなどと主張しています。
被告渡辺氏は、原告による侵害主張部分は、大半が名詞、動詞、副詞、形容詞の単語であって、日本人なら通常使用する、平凡かつありふれた言葉ばかりで、原告の思想や感情を独自に創作したものや原告の個性が表現されたものはないので、被侵害主張部分に著作物性は認められない、と主張しました。
また、被告渡辺氏は、原告小説の存在を知らず(判決文は、ここの所、原告と被告が反対ですけど、誤記?)、被告小説抜粋部分と原告小説抜粋部分の文章表現は似ていない、とも主張しました。
東京地裁は、まず、
「著作権法による保護の対象となる著作物は,思想又は感情を創作的に表現したものであることが必要である(著作権法2条1項1号)ところ,『創作的に表現したもの』というためには,作成者の何らかの個性が発揮されていれば足り,厳密な意味で,独創性が発揮されたものであることまでは必要ないが,言語からなる作品においては,表現が平凡かつありふれたものである場合や,文章が短いため,その表現方法に大きな制約があり,他の表現が想定できない場合には,作成者の個性が現れておらず,『創作的に表現したもの』ということはできないと解すべきである。」とし、
原告の主張する侵害部分の一部は、表現の同一性ではなく、アイディアの同一性を主張するものであること、また、別の部分は、同一であるとも類似しているともいえないことが明らかであって、
それ以外の被侵害主張部分は、地名を表示するものを含むほか、日常的によく使用されている、極めてありふれた表現であって(そのほとんどは、1ないし2単語の語句である。)、同部分に著作物性が認められないことが明らか、
として、原告の請求を認めませんでした。
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