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2007年6月10日 (日)

自動車保険に関する最高裁判決

 高速道路で自損事故後、運転者が車外に出て、路側に避難したところ、後続車にひかれて死亡したケースで、遺族が、死亡者の運転していた自動車についての自動車保険契約の搭乗者傷害条項に基づいて、保険会社に対して死亡保険金の支払を求めた裁判の最高裁判決です。
 この請求を認めた1審地裁判決を、2審仙台高裁が請求棄却の逆転判決をしたのに対して、この最高裁判決は、これを破棄自判して、1審の結論を支持したものです。つまり再逆転判決ですが、微妙な事案ですので、紹介しておきます。

 最高裁判決平成19年5月29日保険金請求事件(最高裁HP)

 高速道路で運転中、自動車が中央分離帯のガードレールに衝突して、車両が破損して走行不能になって停止したところ、運転手はすぐに車両を降りて路肩付近に避難したが、その直後に後続の貨物自動車に接触、衝突されて転倒したうえ、別の自動車にひかれて死亡したという事案です。

 本件での自家用自動車保険契約普通保険約款搭乗者傷害条項では、被保険者が保険証券記載の自動車の運行に起因する急激かつ偶然な外来の事故により身体に傷害を被った場合は、所定の保険金を支払う、となっていて、対象となる被保険者とは、(簡単にいうと)自動車内に搭乗中の者をいうとなっていました。

 原審の仙台高裁判決は、本件で、搭乗者傷害条項に基づいて、死亡保険金が支払われるためには、本件自損事故により運転者に傷害が発生したこと及びその傷害の直接の結果として死亡したことが必要であるとし、本件自損事故の傷害の程度は比較的軽微なものであり、意識状態及び運動能力に影響を及ぼすようなものであったとは認められない、死亡の結果は、自由意思で本件車両外に出て歩行した際に後続車により生じたものであって、死亡が本件自損事故による傷害の直接の結果として生じたものと認めることはできない、として請求を認めなかったものです。

 これに対して、最高裁判決は、まず、運転者が死亡保険金の支払事由にいう被保険者に該当し、自損事故は運行起因事故に該当することが明らかであるとしました。
 そして、運転者は、自損事故により、車両内にとどまっていれば後続車の衝突等により身体の損傷を受けかねない切迫した危険にさらされ、その危険を避けるために車外に避難せざるを得ない状況に置かれたものというべきであって、本件での避難行動は極めて自然なものであったと認められ、異なる行動を採ることを期待することはできなかったものというべきであるから、運行起因事故である自損事故と死亡との間には相当因果関係があると認められ、運行起因事故である本件自損事故により負傷し、死亡したものと解するのが相当であるとして、控訴審判決を取り消して、1審の判決を支持したものです。

 この判決は次のようにも述べています。
「たしかに,Aは後続車に接触,衝突されて転倒し,更にその後続車にれき過されて死亡したものであり,そのれき過等の場所は本件車両の外であって,Aが本件車両に搭乗中に重い傷害を被ったものではないことは明らかであるが,それゆえに上記死亡保険金の支払事由に当たらないと解することは,本件自損事故とAの死亡との間に認められる相当因果関係を無視するものであって,相当ではない。このことは,本件自損事故のように,運行起因事故によって車内にいても車外に出ても等しく身体の損傷を受けかねない切迫した危険が発生した場合,車内にいて負傷すれば保険金の支払を受けることができ,車外に出て負傷すれば保険金の支払を受けられないというのが不合理であることからも,肯定することができる。本件搭乗者傷害条項においては,運行起因事故による被保険者の傷害は,運行起因事故と相当因果関係のある限り被保険者が被保険自動車の搭乗中に被ったものに限定されるものではないと解すべきである。」

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