酒の製造・販売免許制度と果実酒
自家製果実酒を宿泊客に提供している北海道ニセコ町のペンションが、違法だとして、税務署から没収・廃棄処分を通告されているらしいですね。厳密には違法ですが、どこでもやってそうな事なんですけど、なぜか目をつけられたのですね。
だいたい、酒を勝手に造ったり売ったりしてはいけないということを法律で決めているのは、別に国民の身体の健康を守るためでもなく、酔っぱらいが危害を加えるのを防ぐためでもありません。税金を取るためです。そもそも明治政府が多額の軍事費をまかなうために酒税に目を付け、そして税収確保のために国民が勝手に作れないようにしたものです。だから、今でも、酒税法によって税務署が取り締まるわけです。
アルコールに果物を漬け込むだけで新たに発酵をさせないタイプの果実酒(普通の梅酒のようなもの)についても酒税法の対象外というわけではなく、一定の規制が及んでいます。詳しくは省略しますが、酒税法43条1項、9項、10項、11項あたり(みなし製造)をご覧ください。なお、このタイプのものを一般的には「果実酒」と言ってますが、酒税法3条8項の定義する「果実酒等」はちょっと違いますので、酒税法を読まれる場合にはご注意下さい(ワインなどです。)。
また、自分で酒造りを合法的にするために酒造免許を取ろうと思っても、法律で決められた量を製造することが免許の前提になっており、これが結構大きな数字で、とても自家製造の範囲の量ではありません。したがって、個人的に酒造免許を取ることは事実上無理です。
私も酒は好きですし、かつて実験的に自分でワインのようなものやどぶろくを作ったこともあります(もちろん時効)。発酵してブクブク泡がでてくる様子などを見ていると、「酒を醸(かも)しているんだ」というちょっと感動的な気分も味わえるし、バイオ実験として子供の教育にもなると思うのですけどね。少量の製造については、せめて自家消費だけでも規制からはずしていいと昔から思っています。
これらを規制からはずしても、実際には市販しているようなおいしいワインや酒ができるはずもありませんし、このごろの安いワインなどを考えればコスト的にも全く見合うものではありませんので、酒造業者に打撃を与えたりすることもあり得ません。また酒税収入の面から見ても影響はないでしょう。
実際にワインやどぶろくを作ってみると、業者の作っているおいしいワインや日本酒が、いかに芸術品かということがよくわかりました。くどいようですが、もちろん時効の過ぎた話ですよ(笑)。
【追記】(12/26)
これに関連した報道がまたあったので、「船場吉兆の梅酒製造販売と酒税法」というのを12月25日付で書きました。
【追記の追記】(08/5/1)
改正関連です。
→ 「『租税特別措置法』と『酒税法(^^;)』」(08/4/29)
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