写真家対小学館/著作権侵害損害賠償事件判決
東京地判(29民)平成19年5月30日
平成17年(ワ)第24929号損害賠償請求事件
最高裁HP掲載
新聞でも報じられた判決ですが、原告の写真家加藤氏は、この訴訟の経緯や提出された書面を載せたサイトを公開しており、既に判決の報道記事までリンクされています。訴訟経緯や双方の主張書面を公開することについても、議論のあるところなんですが、今回はそれは置いておきます。
本件は、小学館発行の雑誌「サライ」掲載用の写真を撮影した原告が、その写真のポジフィルムを小学館にわたしたところ、
・小学館が写真の一部をデジタル化して保存したことが、原告の著作権侵害(送信可能化権、複製権)を侵害した。
・小学館がポジフィルムの一部を紛失して所有権を侵害した。
・小学館が原告の営業を妨害した(詳細は省略・判決では棄却)
ことにより、損害を被ったとして、著作権法、不法行為(民法709条)に基づき合計3000万円余りの損害賠償請求を求めたものです。
判決は、まず、著作権(送信可能化権)侵害については、小学館の行為はデジタルデータを自動公衆送信しうるようにしていたとはいえないとして、認めませんでした。
次に著作権(複製権)侵害については、ポジフィルムの一部をデジタルデータ化し、そのデータをHDDやCD-ROMなど記憶媒体に保存したことは、小学館において複製利用目的がなくても、複製権を侵害するとしました。
また、本件ポジフィルムの所有権が原告にあることを認定し、紛失についての所有権侵害も認めました。
以上に基づき、これらの行為による原告の損害を328万円として、小学館に対してその支払を命じたものです。
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