最高裁判所の弁論と判決
今朝の日経を読んでると、法律や裁判関係の記事が満載ですね。裁判員制度やら、名古屋の地下鉄談合の起訴やら、野球選手のひき逃げ事件初公判、佐賀の殺人事件の無罪判決やら。それに、和歌山の談合防止制度の話も興味を引きますが、これは関西版だけかな。
さて、今日は2つの記事に注目しました。「NOVA敗訴の2審が確定へ・中途解約金返還訴訟」と「東芝・NECの勝訴判決変更へ・談合訴訟の上告審」です。
中途解約に関する消費者訴訟と独禁法違反についての公取審決の不服の裁判ということで、中身的にも、私にとって関心の深い事件なのですが、ここでは中身についてのコメントは無しです。
両事件とも、報道の内容は、それぞれ最高裁の判決の言い渡し日が決まった(東芝・NEC事件は弁論期日も決まった)というもの。したがって、判決の結果は、その判決日でないとわからないはずなのに、NOVAの事件は同社敗訴の2審判決が確定へ、となっていて、東芝・NECの事件は両社の勝訴判決変更へ、となっています。つまり、判決日が決まっただけなのに、判決結果の見通しが報道されているわけです。
最高裁の上告審での審理というのは、通常は、それまでの記録を基にした審理であり、弁論期日は開かれないことが多く、通常はそのまま上告棄却(元の判決内容を容認)されることが多い。ところが、最高裁が、審理の結果、元の判決内容を変更しようと思うときには、弁論期日が開かれるのです。したがって、弁論期日の指定がなく、判決言い渡し期日のみが決められたNOVAの事件は原判決が維持されるであろうし、東芝・NECの事件は弁論期日と判決言い渡し期日の両方が指定されたので原判決が変更されるだろう、という見通しになるわけです。
もちろん、理屈上は、この弁論期日での双方の新たな主張などを踏まえて判決がなされるのであって、弁論期日前に結果が決まるというのはおかしいのです。が、実際上、この段階での弁論で突然の逆転ホームランはほとんど考えられにくいですからね。もちろん上告した後、上告人側から上告の理由書が提出され、それを最高裁側も読んだうえでのことです。
そういうような事情で、高裁の判決に不服で上告したからといって、通常は、弁論期日が開かれませんので、最高裁判所まで出かけることはあまりありません。上記のように、逆転判決になる予定の場合だけ、弁論期日が開かれ、それに出て行くことになりますので、弁護士を長くやっていても現実に最高裁で弁論する機会はほとんどないというのが実際です。
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