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2007年3月 8日 (木)

民事の時効の中断事由(時効談義:その3)

 ひとまず「おふくろさん」から離れて、時効の話に戻ります。

 民事の時効の基本的な法律上の規定は、民法の第1編(総則)の第7章(時効・144条~174条の2)というところに書いてます。全部解説すると大変な事になるので、3,4回に分けて要点のみを説明する予定です(あくまでも「予定」)。

 民事の時効は、大きく分けて、「取得時効」と「消滅時効」の2つに分かれるのですが、民法では、その前に総則的な規定が置かれています(144条~161条)。これだけでもちゃんと説明するとえらい事になるので、今回は、ここのところの要点のみ。

 まず、時効というのは期間が経過すれば勝手に成立するのではなく、当事者が「援用」しないと駄目よ、というのが145条期間経過前にあらかじめ時効の利益は放棄できないよ、というのが146条。ちょっと飛んで、158条~161条に「時効の停止」という制度について規定されてますが、これは省略。

 で、簡単そうで難しいのが、その間にはさまってる時効の中断という制度(147条~157条)。実際の裁判でも、この中断に関して事実関係や法律解釈がいろいろと争われることが多く、結構やっかいです。私の顧問先の会社でも、これに関する相談がしょっちゅうあります。

 「時効の中断」というのは、簡単にいうと、取得時効でも消滅時効でもよいのですが、ある時効の期間が進行しているときに(まだ時効期間が全部経過してない時点ですね。)、ある事由があれば、時効期間が止まり、その事由が終わった時点から、再度時効期間が始まる(これまで経過した期間の途中からではなく、ゼロからです。)という制度です。この時効が止まる事由が「(時効)中断事由」です。

 中断事由については、147条を基本として、以下156条まで規定されてますが、素人判断は禁物です。例えば、147条の最初に中断事由として「請求」というのが書いてあります。これだけを見て、例えば、借金を払ってもらえないときに、請求書でも出して(あるいは電話でもして)請求さえしておれば時効にかからないのだな、と考えていると大きな間違い。しかし、実際そのように理解している人も世間には多いのです。ここでいう請求」による時効中断をするためには、原則として、訴訟提起などの法的な手続が必要です。詳細は、149条~152条ですが、実際のいろいろな法的手続(破産や民事再生などの倒産手続も含む)において、中断事由となるか、いつから中断か(始期)、いつまで中断か(終期)など難しい問題が未解決のまま残っている所も多いのです。

 では逆に、上に書いた単純な請求(訴訟などではないもの)だけでは中断しないのか、というと、そうでもありません。これは、153条にいう「催告」にあたるのですが、この規定では、催告それ自体は請求のひとつとして中断事由なので、時効が中断するのですが、「催告」から6ヶ月以内に、訴訟などの法的手続をしなければ、せっかく催告して時効を中断させた効力がなくなります。ややこしいですね。

 そして、これも誤解している人が多いのですが、この6ヶ月という期間は更新がききません。どういうことかというと、一度、催告をして、それから6ヶ月以内にまた催告をするというように、催告だけを繰り返していたのでは駄目ということです。したがって、半年毎に請求書を送付しておれば時効は止まる、という話を聞くことがありますが、全く間違いですので、注意してください。

 また、「催告」や「承認」などの事由は、口頭であっても無効ではないのですが、後で証明できなければ困るので、きちんと証拠の残る方法でしておく必要があります。できれば、専門家に相談されることをお勧めします。  

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