2020年7月 8日 (水)

マンション管理組合と消費者安全法についてのメモ

昨日、マンション向けの製品の問題について、あるメディア関係者と話をする機会があり、いつものようにマンション管理組合(以下、管理組合)消費者法の適用についてご説明をし、また、私なりの考えを述べていました。そういった問題については、このブログで何度か書いており、最近では、以下の記事になります。

→ 「消費生活センター、マンション管理組合など昨日記事の補足」 (2019/10/6

 要するに、そのマンションが個人の居住用マンション(分譲)であっても、管理組合は団体だから、消費者安全法の対象にならない、というのはおかしいでしょ、という内容です。これは、景品表示法についても同じような議論で、管理組合向けのセールスが、消費者(個人)向けの表示とは解釈できないのか、という話になるかと思います。

 で、昨日のメディア関係者にも、そういう話をしていたので、さきほどちょっと考えてたら、ん?と思ったので、メモ書きするつもりで、この記事を書いています。なので、文章を整理する余裕がないので、箇条書きですみません。間違ってたりする点が多々あるかもしれません。法律家等各位のご指導がいただければ幸いです。


  •  管理組合が法人でない場合、管理組合が契約当事者になるとしても、共有部分に関して、物品を購入したり、何かの工事をして設備が付加されたりした場合、その物品や設備は管理組合が所有するのではなく、区分所有者個人の共有になる。
  •  だとすれば、管理組合が形式的に介在するとしても、消費者問題を考えるうえでは、区分所有者個人が契約当事者と考えてよいのではないか。
  •  消費者契約法特定商取引法の文言を厳しく解するかどうかは置いておいて、上記のブログ記事にも書いたように、消費者安全法、さらに景品表示法の対象を考えるうえでは、そのほうが法律の趣旨から考えても適当なのではないか。
  •  実際に、消費者安全法に基づいて設置されている消費者安全調査委員会は、平成26年7月18日に、居住用マンションの機械式立体駐車場で発生した事故に関する事故等原因調査報告書を公表している。


  •  もちろん、管理組合が設置工事の契約をした立体駐車場(管理組合法人所有であろうと、区分所有者個人共有であろうと)を除外するわけではなかろうし、利用者が消費者個人であるため当然。
  •  もっとも、この消費者安全調査委員会の調査は、消費者安全法「生命身体事故等」を対象とするものであり、財産的被害(同法の「多数消費者財産被害事態」)は対象とはなっていない(ですよね)。
  •  「消費者事故等」の定義の同法2条5項3号は「虚偽の又は誇大な広告その他の消費者の利益を不当に害し、又は消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある行為であって、政令で定めるものが事業者により行われた事態 」である。
  •  消費者安全法施行令3条には、政令で定める行為の1号として「商品等又は役務について、虚偽の又は誇大な広告又は表示をすること。」とする。2号以下は、消費者契約に関するものであることが明記されているが、1号には、その限定文言がない。
  •  同法2条8項は、「多数消費者財産被害事態」の定義として、2条5項3号の事態のうち、「同号に定める行為に係る取引であって次の各号のいずれかに該当するものが事業者により行われることにより、多数の消費者の財産に被害を生じ、又は生じさせるおそれのあるものをいう」とし、1号が、「消費者の財産上の利益を侵害することとなる不当な取引であって、事業者が消費者に対して示す商品、役務、権利その他の取引の対象となるものの内容又は取引条件が実際のものと著しく異なるもの」、2号が「前号に掲げる取引のほか、消費者の財産上の利益を侵害することとなる不当な取引であって、政令で定めるもの」である(2号は未指定ですかね?)。
  •  すなわち、「多数消費者財産被害事態」とは、「商品等又は役務について、虚偽の又は誇大な広告その他の消費者の利益を不当に害し、又は消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある行為であって」、「商品等又は役務について、虚偽の又は誇大な広告又は表示をする」行為のうち、「消費者の財産上の利益を侵害することとなる不当な取引であって、事業者が消費者に対して示す商品、役務、権利その他の取引の対象となるものの内容又は取引条件が実際のものと著しく異なるものに該当する」行為が「事業者により行われることにより、多数の消費者の財産に被害を生じ、又は生じさせるおそれのあるもの」ということになる。
  •  「消費者の財産上の利益を侵害することとなる不当な取引」というのは、文言からしても、厳密にその「取引」にかかる契約の当事者が個人かどうかによるものである必要はない。
  •  とすれば、「多数の消費者の財産に被害(おそれを含む)を生じ」れば、対象となることとなる。実際に購入したマンションが複数あり、かつ、広く広告宣伝を繰り広げているというような事情があるのであれば、この多数要件は満たすのではないか。
  •  したがって、生命身体には影響を及ぼさないが、財産的被害が生じる物品をマンションに売りつける行為、たとえば、この装置を取り付ければ節電効果が高く、購入代金は数年で元が取れる、というセールストークで高価な節電器(照明器具でも、空調装置でも、通信設備でも、配管工事でもいい。)を売りつける行為を続けている業者がいたとすれば、個人である区分所有者もしくは居住者の財産的被害につながるのであるから、管理組合が契約当事者であったとしても、消費者安全法の規定(40条4項勧告、5項命令、38条1、3項公表等)による対応は可能ではないか。
  •  そして、景品表示法における消費者向けの表示というのも同様に考えればいいのではないか。

 なお、蛇足ですが(前にも書いたような気もします)、区分所有者ではなくて、ライバル(競業)業者が、不正競争防止法に基づいて、差止とか損害賠償を求めるような場合は、この議論は不要なんで、悪い業者が虚偽の広告で管理組合と契約をするため、自社の営業に影響がある、というまともな業者さんが闘おうという話があればよろしいんですが。

2020年7月 7日 (火)

消費者庁長官記者会見(次亜塩素酸水の空間噴霧などについて)

新型コロナウイルス対策にアルコールが不足していたため、次亜塩素酸水が有効か否かについて話題になっていたことについて、先日、当ブログで、関係省庁、機関(経済産業省、厚生労働省、消費者庁および製品評価技術基盤機構(NITE))による公表内容をご紹介しました。

→ 「次亜塩素酸水の新型コロナへの有効性についての関係省庁の公表」 (2020/6/27)

 これに関して、7月1日、伊藤消費者庁長官が記者会見で説明されており、メディアの記者からも質問が出て回答されたのですが、この内容が消費者庁サイトに公表されました。

→ 「伊藤消費者庁長官記者会見要旨(2020年7月1日)」 

 それほど、長い内容でもないので、(ほかのテーマのところも含めてね)興味のある皆さんには是非読んでいただきたいですが、いくつか紹介しておきます。

 読売新聞記者からの「次亜塩素酸水についてですが・・・事故情報データバンクを見ていると、3月末くらいからちらほら、噴霧したら目が痛くなったとか、そういった情報が挙がってきています。6月に入ってから、文部科学省は噴霧しないでくれというふうなことを各教育委員会に通知を出されたと思いますが、事故情報データバンクを見ると、噴霧しないでくれとか、手指に使ったとかっていうのもあったりするので、消費者庁としてそういった注意喚起ができなかったというか、しなかった理由があれば教えていただければと思います。」という質問に対して、
 長官は、「
次亜塩素酸水に限らず、空中噴霧自体は、もともとWHOを始めとして空間噴霧についてはお勧めしないということを言われておりましたので、それについては早いうちに幅広く申し上げた方が良かったかなという思いはありますが、一方で、次亜塩素酸水を含めて、その有効性等々について、ちょうどその検証が進められているところでしたので、それも併せて情報提供しないとやや分かりにくいところがあるのではないかということで、その結論を待って、併せて情報提供させていただいたということであります。できるだけ分かっていることについては早めに、正確にお伝えするように努めていきたいと思っております。」と答えており、本当は、もっと早く空間噴霧について問題を指摘したほうが良かったが、NITEの検証を待った、というような感じの回答になっています。

 また、フジテレビ記者から「次亜塩素酸水についてですが、一部の業界団体は空間噴霧について、NITEで実験していないのにお勧めしないと表記していることについて批判をしておりますが、それについての受け止めがあればよろしくお願いします。」との質問に対して、
 長官は、「空間噴霧については、WHO新型コロナウイルスに対する消毒に関する見解の中で、室内空間で日常的に物品等の表面に対する消毒剤の空間噴霧や、燻煙をすることは推奨されないと。また、消毒剤を人体に対して空間噴霧することは、いかなる状況であっても推奨されないと言っております。これは次亜塩素酸水ということに限らず、ほかのアルコールも含めて、消毒・除菌に係るもの一般に言われていることでございますので、そうした国際的な知見を踏まえて、厚生労働省では、消毒剤やその他ウイルスの量を減少させる物質について、目や皮膚に付着し吸い込むおそれのある場所での空間噴霧はお勧めしないというふうにしているところでありますので、私どもとしても3省庁連名でそういったチラシについて書かせていただいているということだと思っております。」と答えています。

 この6月の政府からの公表について、次亜塩素酸水について有効性が示された、と解釈するようなSNSなどでの投稿も見られますが(業者さんのステマかもしれませんけども)、前回の(上記)ブログで書いたように、あくまでも、(空間噴霧や手指消毒ではなく)ドアノブなど物の消毒に関して、適正濃度での適正な使い方を限定しているもので、家庭や学校、一般の事業所で使うことは困難な方法に限定して書かれており、もちろん、空間噴霧の有効性は全く認められていないものですので、ご注意ください。

 なお、医薬品等として承認されていない商品について、(空間噴霧を含め)人体に吹きかけて新型コロナを殺す、などという効能効果をうたって、セールスを行うことは薬機法(旧・薬事法)にも違反し、そういった販売行為をすることは犯罪に該当する可能性が高いです。もちろん、根拠のない広告、セールストークなどは、優良誤認表示として景品表示法に違反するものとして、措置命令課徴金納付命令の対象ともなります。消費者庁も、コロナ関連の商品についての不当表示などには目を光らしておられるようですので、製造、販売する事業者の方々も、くれぐれもご注意ください。加えて言えば、事業者としては、独占禁止法(欺まん的顧客誘引)やら不正競争防止法健康増進法などの問題もありますので、ちゃんとそういった方面の専門の弁護士に相談されたうえで営業されたほうがいいと思いますよ。


2020年6月30日 (火)

大阪公立大学の英語名称「University of Osaka」

 先日、大阪府立大学大阪市立大学を統合して2022年春に開学する大学名が「大阪公立大学」と発表されました。それ自体は問題は少ないと思うのですが(個人的には、もっといい名前にしたらいいのに、と強く思うのですが、それはそれとして)、この大阪公立大学の英語名を「University of Osaka」とするとされたことが、国立の大阪大学英語の正式名である「OSAKA UNIVERSITY」と混乱するのではないかと、問題になっています。

 この問題について、大阪大学は6月26日に、総長名で、大変驚いている、と表明し、大阪公立大学の英語名称は、大阪大学の英語名称と酷似しており、「今後、受験生や本学の学生・卒業生をはじめ、一般市民の皆様、特に海外の研究者、学生に大きな混乱を招き、世界にはばたく両大学の未来にとって非常に大きな障害となることは必至です。そのような事態にならないよう憂慮しておりましたが、結果として、双方の間で意見交換が行われないまま決定がなされたことは誠に残念でなりません。」として、配慮をお願いしたい、としました。

→ 大阪大学「公立大学法人大阪が設置する新大学の英語名称について」

 そして、大阪大学は、6月29日、「大阪公立大学の英語名称とされる「University of Osaka」は、すでに海外等で大阪大学の名称として広く使用されている実態があり、本学を表すものとして一般的です。今後も、英語名称の「University of Osaka」大阪公立大学を示すものとしてではなく、大阪大学と認識されると思われますので、多くの関係者の皆様に無用の混乱を招くことのないよう、引き続き、改めて大阪公立大学の英語名称を再考いただくことを強く申し入れる所存です。」と、海外での従来の使用事例を掲げたうえで、重ねて表明しています。

→ 大阪大学「「University of Osaka」が大阪大学の英語名称として使用されている実態」

 これに対して、大阪府の吉村知事は、混乱は招かない、として英語名称は変更しないとコメントしている模様です。

 私は大阪大学の出身ですが、身びいきとかでなくて、この英語名称は、特に国内外の外国人の皆さんに混乱を招くことが明らかであり、これから名称を決める大阪公立大学側が、この英語名称に固執する理由はよくわかりません。

 なお、このような学校名称の類似についての裁判例としては、青山学院大学の事件があります(東京地判平成13年7月19日)。これは、不正競争防止法に基づいて、「呉青山学院中学校」の名称の差止と損害賠償を求めた裁判で、判決では名称の差止を認めました。

 また、同様の紛争としては、京都造形芸術大学(私立)が名称を京都芸術大学に変更したことに対し、京都市立芸術大学が混乱を招くとして名称差止を求めて提訴しており、現在、大阪地裁で審理がなされています。

 大阪公立大学側が方針を変えないのであれば、大阪大学としては、同様に不正競争防止法に基づいて訴訟を提起すべきだと私は思います。大学の威信とかどうとかではなく、今後、多くの人たちに混乱を招く結果となるからです。

2020年6月27日 (土)

次亜塩素酸水の新型コロナへの有効性についての関係省庁の公表

 新型コロナウイルス(以下、コロナと略します)に関して、これまであまり一般には聞きなれない「次亜塩素酸水」の有効性が話題になっていました。単なる拭き掃除とか、手指消毒だけでなく、空間噴霧とかの話まで出ていて、学校や飲食店などでの噴霧の是非も問題になりました。
 この問題はちゃんと分けて考えないといけないので(次亜塩素酸水に限りませんが)、整理する必要があります。
 次亜塩素酸水が、コロナの不活性化に有効なのか、仮に有効として、どういう濃度で、どういう使い方をすれば有効なのか。さらに、そもそも、「次亜塩素酸水」として販売されている商品にそれだけの濃度があるのか、また、これはかなり不安定な物質なのだが、保存状態はどうなのか。使い方として、手指消毒とか、空間噴霧は有効なのか、また、安全なのか。どうも、次亜塩素酸水として提供されている「水」には、そのあたりの表示がされていないことも多いようです。
 というところなので、単純に議論してもしゃあないかな、と科学素人の私でも思うわけです。
 その他に、次亜塩素酸水次亜塩素酸ナトリウムの違いという問題もありますが、ここでは省いて、あくまでも、次亜塩素酸水に絞ります。

 で、昨日(6/26)の経済産業省、厚生労働省、消費者庁および製品評価技術基盤機構(NITE)の公表について書こうと思いますが、全部きっちり書くと長くなるので、ひとまず、結論を書きます。

  1. 次亜塩素酸水で、ドアノブなどの物を拭く場合に一定の濃度以上のものであれば、有効ではある、ただし、あらかじめ、汚れをきれいに落としてから(そうでないと、次亜塩素酸水が有機物に反応して分解してしまう)、かなりヒタヒタ状態とか流水状態で使用する必要がある。
  2. NITEは、手指消毒や空間噴霧についての安全性の検証は行っていないし、効果についても何も言ってない。
  3. NITEの公表を踏まえた、経済産業省、厚生労働省、消費者庁の本日の公表では、空間噴霧について推奨しないことを明言している。

 ということで、本日の政府の発表内容(当然、皆さんですり合わせた結果と思われます)では、次亜塩素酸水の手指消毒とか空間噴霧については、お勧めしませんということが公式発表になります。Twitterなどを見ると、業界ヨイッショ!のアカウントでは、次亜塩素酸水の有効性が認められた、みたいなことを書いておられますが、上記のような政府の公表をちゃんとみれば、少なくとも、空間噴霧や手指消毒については、そうではないことは明らか過ぎる話になります。一部のマスコミの見出しが「有効性を認める」みたいになっていることをいいことに書いておられるのですが、困ったものですね。

 なお、物を洗浄する場合も、上の通りなんで、わざわざ次亜塩素酸水をジャブジャブと使わなくても、どうせ、あらかじめ汚れをきっちりと除かないといけないのならば、家庭用洗剤、食器洗剤などで、対象物をきっちりと拭き取ることをすれば、次亜塩素酸水が登場するまでもなく、OKということになるかと思います。

 もちろん、次亜塩素酸水については、これまで有効な使用法がされていたわけで、次亜塩素酸水が駄目というわけではありませんが、コロナ対策として、一般の家庭や学校が空間噴霧などで使うものではないと思います。

 なお、化学工業事業者の業界新聞と思える化学工業日報の社説(6月24日)【社説】「「次亜塩素酸水の効果」報道の危うさ」を見つけました。当然ながら業界に向けたメディアですが、ここでも、次亜塩素酸水についての一般的な擁護はされておりますが、ここでさえも、空間噴霧については否定しておられます。

消費者庁「消毒や除菌効果をうたう商品は、目的に合ったものを、正しく選びましょう。」

厚生労働省Q&A

 関係事業者の方々を含めて、真摯な反論であれば、勉強させていただきますので、よろしくお願いします。

 

2020年6月25日 (木)

「独禁法務の実践知」(長澤哲也著 有斐閣)

 長澤哲也弁護士から近刊のご著書「独禁法務の実践知」(有斐閣)をご恵贈いただきました。ありがとうございます。
 長澤弁護士は、独占禁止法などの企業法務を専門とする企業法務実務家として著名な弁護士で、独占禁止法に関する著書、論文も多くかかれています。

 この本は、独占禁止法に関する実務的な解説書なのですが、はしがきに「独禁法に定められた違反類型ごとに解説するのではなく,戦略を立案する企業の視点から,問題となる行為を再構築している。」と書かれているように、独占禁止法について、私的独占、不当な取引制限、不公正な取引方法などといった体系を順番に解説するのではなく、競争者との協調的取引、取引先間の競争阻害、競合的活動の一方的制限、第三者に対する排他的拘束、競争者に対する取引拒絶等、有利な取引条件による顧客の獲得、顧客による合理的選択の阻害、取引先に対する不利益行為という企業の行為の面に着目した体系になっています。

 これは、当ブログでも紹介したことのある長澤弁護士の「優越的地位濫用規制と下請法の解説と分析(第3版)」(商事法務)が、独占禁止法優越的地位濫用規制下請法の規制を横断的に行為類型ごとに解説するという構成であったものを、独占禁止法全体に拡げた書物ということができると思います。

 消費者問題的視点からすると、「顧客による合理的選択の阻害」の章が気になるので、そこから見てみたのですが、独占禁止法欺まん的顧客誘引とともに、景品表示法不正競争防止法による規制についても、もちろん触れられております。また、最近大きな問題となっているデジタル・プラットフォームに関しても各所で取り上げられており、最新の独占禁止法の状況を反映しているという点でも魅力的な本になっています。

 広く企業法務に携われる実務家の方にはお勧めできる1冊です。

 まったく蛇足ですが、「じっせんち」って、かな漢変換すると、「十センチ」になりますね(笑)

2020年6月21日 (日)

「花粉を水に変えるマスク」DR.C社に課徴金納付命令(景表法)

 最近の新型コロナウイルス感染問題でのマスク騒動で、すっかり忘れられていたかもしれませんが、昨年7月に消費者庁から不当表示(優良誤認)として景品表示法に基づいて措置命令が出されていた「花粉を水に変えるマスク」について、このマスクを宣伝・販売していたDR.C医薬株式会社に対して、一昨日(6/19)、消費者庁課徴金納付命令を出し、857万円課徴金の支払いを命じました。

 → 消費者庁公表資料

 昨年の措置命令は、DR.C社を含む計4社のマスクの表示について出されたものですが、詳しくは、その当時に書いた次のブログ記事やそのリンク先をご覧下さい。

 → 「「花粉を水に変える」など光触媒マスクに対する措置命令(景表法)」 (2019/7/4)

 景品表示法課徴金は、対象期間の各商品の売上高に3%をかけた金額になりますので、857万円の課徴金ということは、計算すると、対象期間である平成30年1月1日から令和元年10月12日までの約1年9ヶ月間の売上高は約2億8600万円になるのではないかと思います(計算違いがあればお教え下さい。)。著名な人気歌舞伎役者を使ったあれだけの規模の宣伝広告をしていた割には少ないような気がしました(マスク市場の規模については、全くの素人なんで、単なる個人の感想です。)。

 なお、昨年の措置命令が出された4社のうち、大正製薬については、消費者庁に対して、この措置命令が不当だとして、現在係争中(審査請求)です。大正製薬は、DR.C社の宣伝とは異なり、「花粉を水に変える」とは表現していませんので、ご注意ください(各社の表示の概要は上記の昨年のブログに書いています。)。

 他の2社について、今回、課徴金納付命令が出されなかった理由は公表されていませんが、課徴金は、計算した結果150万円未満となった場合には課せられませんので、売上が低かったのかもしれません。



2020年6月10日 (水)

「八ッ橋」の創業年表示をめぐる訴訟の判決

 有名な京都の銘菓「八ッ橋」の老舗業者「井筒八ッ橋本舗」が、創業年を元禄2年(1689年)と表示している別の老舗業者「聖護院八ッ橋総本店」に対して、そのような根拠はないとして、表示の差し止めと損害賠償を求めた裁判で、本日、京都地方裁判所が請求を棄却する判決を言い渡しました。

 報道によれば、判決は、「京都では『生八つ橋』など歴史が新しい菓子もよく売れており、歴史の古さは必ずしも消費行動を左右するとはいえない。問題とされた表示も江戸時代に創業したようであるとの認識をもたらす程度のものにすぎず、消費者の誤解を招くとはいえない」とし、創業時期についても、「すべてにわたり誤りであるという確実な証拠はない。誤った説明で八ッ橋全体の信用性を失わせるとまで認めることはできない」としたようです。

 この裁判の提起が報じられた時に、当ブログも、原告業者の請求の根拠である不正競争防止法の規定について書いておりますので、興味のある方はご覧ください。

 → 「八ツ橋」老舗の創業年表示についての訴訟(不正競争防止法)」 (2018/6/5)

 なお、原告「井筒八ッ橋」は、控訴を検討するとのことです。

 知財関連の判決ですので、近いうちに公開されるのではないでしょうか。その時には、また追記等するかもしれません。

2020年5月22日 (金)

「Winny 天才プログラマー金子勇との7年半」(壇俊光著)

 前回に引き続き本の紹介です。

 大阪の壇俊光弁護士による「Winny 天才プログラマー金子勇との7年半」(インプレスR&D刊)。

 

 弁護士とは、Yahoo! BB個人情報流出事件ドロップシッピング被害事件の弁護団などや大阪弁護士会消費者保護委員会の電子商取引関係の部会でも長らくご一緒してきました。

 Winnyの開発者金子勇さんは、2004京都府警に逮捕され、「著作権法違反の幇助罪」という罪で起訴されて刑事裁判となりましたが、その金子さんの刑事弁護を担当する弁護団にさんが関与され、その中心メンバーとして活躍されました。

 なお、この事件の裁判については、当ブログでも取り上げています。

 → 「ブログ「あたーにーあっとろー」完結(winny金子博士と壇弁護士)」 2016/1/8)

 → 「Winny開発者に対する著作権法違反幇助事件で無罪確定(最高裁)」2011/12/21)

 ここで紹介している弁護士の「アターニーアットロー」は、この事件に関するスピンアウトブログとして書かれているもので(主ブログは「壇弁護士の事務室」)、これを基に、今回の本を出されました。

 技術的に難しいところも出てきますが、全体的には読むのに困難な内容ではありませんので、分からない人はすっ飛ばして読んでみてください。本書では、警察や検察の捜査や裁判での対応が紹介されています。詳しくは書きませんが、あれは、誇張ではなく実際に起こったことであり、我々のように刑事裁判に携わる者(私自身はほとんど刑事裁判はやりませんが)の目から見れば、極めて問題のあると言わざるを得ない現実が書かれています。

 kindle版も出ています。Winnyに興味のある方、刑事裁判に興味のある方は是非お読みください。

 金子さんは、この事件の無罪が最高裁判所で確定した201112月(逮捕から7年経過)から1年半後の20137月に42歳という若さで亡くなりました。
   合 掌

2020年5月19日 (火)

「判例による不貞慰謝料請求の実務 最新判例編vol.1」(中里和伸弁護士著)

 新型コロナ自粛で、かえってバタバタしているような感じで、ブログ更新も途切れております。

 私が担当している法科大学院の講義も今年はZOOMによる遠隔web授業となり、教室でのリアルな講義とは違った難しさやら面白さがありますが、試行錯誤で学生さんたちに助けられながら進めております(昨日、第3回をやりました)。また、弁護士会関係の会議や消費者団体の理事会などもweb会議の利用が当たり前になり、先日の某研究会でも、大阪の研究会なのに九州など遠隔地の皆さんが地元から参加され、終了後にはweb呑み会に移行するという「新しい生活様式」が始まっていたりもします。


 さて、先日発行されました「判例による不貞慰謝料請求の実務 最新判例編vol.1」(中里和伸弁護士著・LABO刊)を編集者からご恵贈いただきました。

この本は、同著者による「判例による不貞慰謝料請求の実務」「判例による不定慰謝料請求の実務 主張・立証編」2冊の続編です。この以前の本についても、当ブログでご紹介しています。

 → 「書籍の紹介:「判例による不貞慰謝料請求の実務」(中里和伸著)」 2015/8/5)

 → 「「判例による不貞慰謝料請求の実務〔主張・立証編〕」(LABO刊)」2017/3/ 3)

今回の3冊目は、上記の本の出版からそれぞれ5年、3年を経過し、その後も多くの裁判例が出ているため、その続編として、最新裁判例を集積し、分類して、解説を加えたものということになります。本の帯によれば、「平成28129.から令和元918までの最新判例全290例を新規に掲載」とのことで、不貞に関する慰謝料請求という狭い範囲のテーマで争われた裁判で、しかも、(和解などで終わらずに)判決にまで至っているものが、これだけの数があるのだ、ということに、一般の方は驚かれるかもしれません(おそらく公表されず、著者が入手できなかった判決も相当数存在すると思いますが)。

ということで、前2書より分厚くなっていて、ちょっとお高いですが、実務家、研究者、マニアの方には重要な資料かと思います。是非。

2020年4月24日 (金)

マスクの上限価格指示行為(独占禁止法)

 ブログの更新が1ヶ月ほど停まってしまいました。この1ヶ月で、我々の周りの世界はガラッと変わってしまったようですね。

新型コロナウイルス感染対策のため、マスクの買い占め、品不足、が問題となっています。なるべく必要な人、特に医療や福祉、子育てに携わる方々に優先していただきたいと思いますので、私は、不織布マスク(本来は使い捨てマスク)を洗って何度か使い回しています。

 このマスク再利用につき、京都女子大名誉教授小波秀雄先生が説明してくださっています。私もこれを参考にして、洗剤を溶かした水(湯)に付け置いてます(その後の熱湯かけはしておりません。)

→ 「使い捨てマスクを安全に再利用しよう」

 また、小波先生は、これに関連して、アルコールがなくても、一般的な石けんや洗剤による手洗いで、新型コロナウイルスは死ぬ(正確には不活化)、ということも書かれています。ご参考にしてください。

→ 「「コロナウイルス」はなぜ石けんや洗剤で殺されるのか—高校化学のレベルで解説」

 


 さて、品不足のマスクの価格が上がっていることについて、公正取引委員会は、昨日(4月23日)、webサイトにおいて、新型コロナウイルスの感染拡大が進む中で小売価格が暴騰しているマスクのような商品について、こういった状況の中、メーカーなどが小売業者に対して一定の価格以下で販売するよう指示する行為は、独占禁止法上の問題とはならない、という見解を公表しました。

→ 公取委webサイト

 独占禁止法の規制する「不公正な取引方法」の中に、「再販売価格の拘束」(再販売価格維持行為)というのがあり、一般的に、メーカーなどが、商品を販売する取引先に対して、一定の値段より安く売ってはいけない、というような強制行為を行うことは禁止されています。普通は、ブランドイメージ維持などの安売り規制が問題となるので、価格の拘束としては、下限価格が問題となることがほとんどですが、上限価格以上で売るな、という拘束も、小売業者など取引先に対して、自由な価格決定を拘束することになり、同じく、「再販売価格の拘束」に該当することになってしまいます。

 今回の公表は、現在の特殊な状況下でマスクの高額販売が問題となっている折りから、公正取引委員会が、今の状況の下で、メーカー等が小売業者に対して一定の価格以下で販売するよう指示する行為は、通常、当該商品の購入に関して消費者の利益となり、正当な理由があると認められるので、独占禁止法上問題とはならない、と表明したものです。

 なお、公正取引委員会は、一定の価格以下で販売するよう指示することによって、かえって商品の小売価格の上昇を招くような場合には、正当な理由があるとは認められない、ことも付言しています。現行の小売価格より、高い価格を上限価格とすることによって、小売価格の上昇を誘導する場合でしょうね。

 いずれにしろ、こういう特別な状況というのは、早く終わってほしいですね。

«飲食店口コミサイトの取引実態調査(公正取引委員会)

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