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2017年2月 3日 (金)

「ビタミンでシミを洗い流す」石けんに対する不当表示措置命令

 昨日(2/2)、消費者庁は、株式会社Xena(ジーナ・福岡市中央区)に対して、販売する「VCソープ」と称する石けんの表示について景品表示法に違反する行為(優良誤認表示および有利誤認表示)があったとして、措置命令を命じました。

 → 消費者庁公表資料(PDF)

 普通は、優良誤認表示有利誤認表示のどちらかの行為が対象となることがほとんどですが、たまに両方いわれることもあります(あの「スカスカおせち事件」も両方です  →  「バードカフェおせち事件に関する措置命令及び要請(景品表示法・消費者庁)」 (2011/2/22))。

【優良誤認表示】

 措置命令の対象となった優良誤認表示は、情報誌に掲載された石けんの広告において、

○ 「シミを『ビタミン洗顔』で洗い流しませんか?」

○ 「長年の肌悩み、あきらめる前に!」

○ 「あれ?またシミが・・・」

○ 「それにしても、ビタミンで洗うとは一体!?なんでも、長年しみついた悩みやくすみを、洗顔だけで洗い流すというのだ!」

○ 「このビタミン洗顔だからこそ、シミのもとメラニンを含む、古い角質まで洗い流せるんだとか!」

のような表示を行って、あたかも、この石けんを使用することによって、シミを解消又は軽減することができるかのように示す表示をしていた、というもの。

 この表示について、消費者庁「不実証広告制度」(景品表示法7条2項)に基づき、Xenaに対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社から資料が提出されましたが、それら資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかったため、優良誤認表示とみなされたものです。

 この不実証広告制度において、資料提出が期限が定められますが、通常は15日ですので、新たに資料を集めたり、実験を行ったりするヒマがありませんので、事業者としては、この種の広告を行うのであれば、十分な資料を事前に揃えておく必要があります。また、この根拠資料としては、かなり客観的なものを求められます。詳しくは、消費者庁「不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針」(不実証広告ガイドライン)をご覧下さい。このガイドラインに関する判決については、当ブログで書いてますし、 「実務に効く公正取引審決判例精選」(泉水文雄・長澤哲也編/有斐閣)に簡単にですが解説を書いています。

 → 当ブログ 「景表法・不実証広告規定に関する判決(東京高裁)」 (2010/11/14)

【有利誤認表示】

 有利誤認表示のほうは、情報誌に掲載された石けんの広告において、

 あたかも、その広告に記載した期限(約1ヶ月)までに対象商品を初めて購入した場合に限り、通常価格の半額で購入することができるかのように表示していたのですが、実際は、10ヶ月ほどの期間、初めて購入した場合に半額で購入できることとしていた、というもので、一年前に出された「アディーレ法律事務所事件」と同じタイプの不当表示です(※アディーレ事件について、当ブログで取り上げてなかったことに今気づきました。ちょうどブログ更新が途切れ途切れの期間だったからで、同業者を擁護しようと思ったわけでは決してございません。)。

【措置命令】

措置命令の概要は、以下の通りです。

  • 上記表示は、対象商品の内容について、優良誤認表示、有利誤認表示であり、景品表示法に違反するものである旨を一般消費者に周知徹底すること。
  •    
  • 再発防止策を講じて、これを役員及び従業員に周知徹底すること。
  •    
  • 今後、表示の裏付けとなる合理的な根拠をあらかじめ有することなく、上記表示(優良誤認表示部分)と同様の表示を行わないこと。
  •    
  • 上記表示(有利誤認部分)と同様の表示を行わないこと。

 なお、先日、三菱自動車の不当表示事件では、課徴金納付命令が出されましたが、本件は平成27年の不当表示であり、景品表示法の課徴金制度の施行は平成28年4月からですので、本件はそもそも対象とならないものです。ただし、今後はこういった事案でも、要件さえ満たしておれば、課徴金の納付を命じられる可能性があるので、事業者は、これまで以上に消費者向けの表示、広告には十分な注意が必要です。

※ 景品表示法は最近の何度かの改正で、条文番号(第○条など)が動いています。ブログなどに記載されている条文番号は当時のものですので、御注意ください。

2017年2月 1日 (水)

Google検索結果の削除を求めた仮処分についての最高裁決定

  比較的大きく各報道機関で扱われていたようですが、6年前に児童買春の疑いで逮捕され罰金の略式命令を受けた男性が、Googleで名前などを入力すると逮捕歴に関する報道内容が表示されるのはプライバシーの侵害だとして、Googleに対して検索結果の削除を求めた仮処分の申立に関して、昨日(1/31)、最高裁判所はこれを認めない決定を出しました(抗告審における棄却決定)。
 しかし、本決定は、この問題についての最高裁としては初めての判断ですし、また、場合によっては検索結果削除の請求が認められる場合もあるとして、その基準を示した点で重要な決定といえます。決定全文は以下のリンク先で読めます。 

裁判所サイト

 この事件は最初のさいたま地裁の決定(平成27年6月25日)において削除請求を認める仮処分決定が出て、それに対するGoogleの不服申立に対して、再びさいたま地裁が請求を認め(仮処分認可決定・平成27年12月22日)、それに対してGoogleが東京高裁に抗告したところ、東京高裁はGoogle側の主張を入れて男性の申立を却下したため(東京高裁平成28年7月12日決定)、男性が最高裁に抗告(許可抗告)し、これに対する判断が今回示された、という流れになります。

 そして、今回の最高裁決定は、

「検索事業者が,ある者に関する条件による検索の求めに応じ,その者のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL等情報を検索結果の一部として提供する行為が違法となるか否かは,当該事実の性質及び内容,当該URL等情報が提供されることによってその者のプライバシーに属する事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度,その者の社会的地位や影響力,上記記事等の目的や意義,上記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化,上記記事等において当該事実を記載する必要性など当該事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもので,その結果,当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には,検索事業者に対し,当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができるものと解するのが相当である。」

 として、検索結果を削除請求できる場合の基準を示しました。

 しかし、本件の事実関係においては、

(本件の児童買春の被疑事実で逮捕という事実は、)「他人にみだりに知られたくない抗告人のプライバシーに属する事実であるものではあるが,児童買春が児童に対する性的搾取及び性的虐待と位置付けられており,社会的に強い非難の対象とされ,罰則をもって禁止されていることに照らし,今なお公共の利害に関する事項であるといえる。また,本件検索結果は抗告人の居住する県の名称及び抗告人の氏名を条件とした場合の検索結果の一部であることなどからすると,本件事実が伝達される範囲はある程度限られたものであるといえる。   
以上の諸事情に照らすと,抗告人が妻子と共に生活し,前記1(1)の罰金刑に処せられた後は一定期間犯罪を犯すことなく民間企業で稼働していることがうかがわれることなどの事情を考慮しても,本件事実を公表されない法的利益が優越することが明らかであるとはいえない。」

として、東京高裁の判断を是認したものです。 

 平成27年12月22日のさいたま地裁での仮処分認可決定では、「忘れられる権利」があるとの判断が示されたことが話題になりましたが、これについては、当ブログで取り上げており、興味のある方はご覧下さい。ただし、東京高裁は、この「忘れられる権利」については否定し、今回の最高裁決定では、それについて特に触れられておらず、個人のプライバシー権と検索事業者の表現の自由のバランスの問題としているようですね。

  → 「「忘れられる権利」を明記した仮処分認可決定(さいたま地裁平成27年12月22日)」(2016/2/27)

 なお、この事件の男性側代理人神田知宏弁護士のブログに、以下の記事がありますので、ご参考まで。その内、今回の最高裁決定についてもお書きになるかもしれません。

「地裁決定が「忘れられる権利」に言及した理由の考察」

「忘れられる権利を否定した東京高裁平成28年7月12日決定」

2017年1月30日 (月)

先日の消費者契約法「勧誘」要件最高裁判決についての消費者庁長官コメント

 ご承知の通り、1月27日に消費者庁三菱自動車に対して、景品表示法違反行為(不当表示)に関する初めての課徴金納付命令を出しました。これについてもブログで書きたいと思うのですが、まだ、ちょっと情報が不足しているように思えますので、ちょっと様子見をしているところです。


 1月24日の消費者契約法に関する最高裁判決については、前々回の記事「広告も消費者契約法上の「勧誘」に含まれるとの新判断(最高裁)」に紹介したところですが、その翌日(25日)の岡村消費者庁長官記者会見で、次のようなコメントが述べられています。

 これは、共同通信の平田記者からの「不特定多数の消費者に向けた広告の解釈というか、状況によっては勧誘に当たることもあるということで、消費者側への影響と事業者側への影響をどう受け止めていらっしゃるかということと、逐条解説の改定とか、消費者庁として何かお考えがあれば。 」という質問に対して、岡村長官は、

 「消費者契約法の逐条解説については、平成28年の改正法の内容を踏まえて、現在改定作業を進めているところでございます。そして、昨日出されました最高裁の判決は、大変重要なものと考えておりますので、逐条解説にその内容を盛り込むとともに、現在改定作業中の逐条解説に必要な修正をした上で、広く周知を図ってまいりたいと思います。」

 「「勧誘」要件の在り方については、現在、内閣府消費者委員会の消費者契約法専門調査会において優先的に検討すべき論点とされており、現在、正に検討が行われているところでございます。したがって、消費者庁としては、今回の判決の内容も踏まえつつ、今後の消費者委員会における審議が一層充実したものとなるよう、引き続き協力してまいります。 」

と答えています。

 ここに出ている「逐条解説」は、消費者契約法が制定された直後の平成13年に出されたものです。記者から、改定はいつ頃になるのか、という質問に対しては、「担当から後で回答します。」と回答されているだけで、特に報道もされていないようですね。


※これは改正前の逐条解説です。

2017年1月24日 (火)

広告も消費者契約法上の「勧誘」に含まれるとの新判断(最高裁)

 本日、消費者契約法に関する重要な最高裁判決(平成29年1月24日 第三小法廷判決)が出されました。

判決文はこちら(裁判所サイト)

 これは、適格消費者団体である京都消費者契約ネットワーク(KCCN)が、サン・クロレラ販売株式会社に対して、「日本クロレラ療法研究会」が作成名義の新聞折込チラシを配布することが、景品表示法の優良誤認表示および消費者契約法の不実告知に該当するものとして、チラシの配布の差止等を求めた消費者団体訴訟ですが、この訴訟の上告審判決です。

 この訴訟の控訴審判決までの経緯は、当ブログでも書いておりますので、そちらをご覧いただきたいのですが、消費者契約法における「勧誘」要件についての重要判断です。

  → 「クロレラチラシ配布差止請求事件の控訴審判決」 (2016/3/4)

 消費者契約の締結について勧誘をするに際して、クロレラの本件広告チラシを配布する行為が、「消費者契約の締結について勧誘をするに際し」ての(法12条1項、2項)、不実告知行為(法4条1項1号)を行うことに当たるか否かについての争点で、これについて控訴審判決(大阪高裁)は否定しました。

 「勧誘」には、不特定多数の消費者に向けて行う働きかけは含まれず、そのような広告は「勧誘」に当たるとは認められない、とする考え方は、この控訴審判決のみならず、消費者庁など行政側の見解でした。

 しかし、同様の特定商取引法上の「勧誘」要件と共に、広告が該当しないとの解釈には批判も多く、昨年の日本消費者法学会第9回大会「広告と消費者法」でも鹿野菜穂子慶應大教授もそのような限定をすべきではないと強調されておりました。私もその通りだと思いますし、先週1月18日に大阪弁護士会でNPO消費者ネット関西の消費者法ゼミで広告・表示について講演した際にも、その点をお話ししていたばかりです。

 今回の判決では後記の通り残念ながらKCCNによる上告は棄却されています。しかし、判決では、この「勧誘」要件について、これまで行政が、含まれないとしていた「広告」も「勧誘」に含まれうることを明らかにしました。

 今回の判決では、控訴審判決の判断は是認できない、として、以下の理由を挙げています。

「法は,消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み,消費者の利益の擁護を図ること等を目的として(1条),事業者等が消費者契約の締結について勧誘をするに際し,重要事項について事実と異なることを告げるなど消費者の意思形成に不当な影響を与える一定の行為をしたことにより,消費者が誤認するなどして消費者契約の申込み又は承諾の意思表示をした場合には,当該消費者はこれを取り消すことができることとしている(4条1項から3項まで,5条)。そして,法は,消費者の被害の発生又は拡大を防止するため,事業者等が消費者契約の締結について勧誘をするに際し,上記行為を現に行い又は行うおそれがあるなどの一定の要件を満たす場合には,適格消費者団体が事業者等に対し上記行為の差止め等を求めることができることとしている(12条1項及び2項)。」 

「上記各規定にいう「勧誘」について法に定義規定は置かれていないところ,例えば,事業者が,その記載内容全体から判断して消費者が当該事業者の商品等の内容や取引条件その他これらの取引に関する事項を具体的に認識し得るような新聞広告により不特定多数の消費者に向けて働きかけを行うときは,当該働きかけが個別の消費者の意思形成に直接影響を与えることもあり得るから,事業者等が不特定多数の消費者に向けて働きかけを行う場合を上記各規定にいう「勧誘」に当たらないとしてその適用対象から一律に除外することは,上記の法の趣旨目的に照らし相当とはいい難い。」

として、

「本件チラシの配布が不特定多数の消費者に向けて行う働きかけであることを理由に法12条1項及び2項にいう「勧誘」に当たるとは認められないとした原審の判断には,法令の解釈適用を誤った違法がある。」

と結論づけたのです。

 ただ、控訴審判決と同様に、「本件チラシの配布について上記各項にいう「現に行い又は行うおそれがある」ということはできない」として、結論的には、上告棄却となりました。

2017年1月13日 (金)

「月刊住職」1月号の法律関係記事を読んで

 当ブログの昨年秋の記事「位置情報とソーシャルゲームの法律問題」(2016/11/17)で、少しだけ触れました雑誌「月刊住職」(興山舎)ですが、バックナンバーを見てもらえばわかるように、記事のかなりの部分は法律関連の記事となっています。

 宗教関係の雑誌なのにと思うのですが、考えてみれば、仏教寺院全体が対象なので、同じ仏教とはいえども各宗派の個別の宗教的な記事は、横断的なものを除いては扱いにくいでしょうから、寺院経営の一般実務的な話題が多くなり、必然的に法律関係記事のシェアが大きいということかもしれません。当該雑誌自体も「寺院住職実務情報誌」と称しています。

 最新の2017年1月号も、法律に関連する記事としては、

「全日本仏教会の前会長の住職が「PL教団の教祖になれる」と吹聴して逮捕された真相」

「寺院が長年占有していれば国が国有地だと主張しても勝訴できる」

「葬送を怠る者や新たな葬法に法律(刑法)は機能し得るか(1)」

「寺院に預けられた少年に体罰したと批判された自称寺院住職の何が問題か」

「すでに施行されているマイナンバーの何が問題か」

「今こそ宗教と法律の問題新講座〔36〕寺院のすべてが個人情報保護法管理下におかれる法改正」

など満載ですし、毎号連載されている法律相談の今月号の質問は、

「責任役員会の決議でも実印捺印の議事録がなければ無効なのか」

「菩提寺には通用しないのを予め告知せず生前戒名を売るのは詐欺か」

というものです。

 他にも、「注目高まる「ビットコイン」はお寺でも使えるのか」などといった面白そうな記事がありますね。

 上記の記事のうち最初の、住職が逮捕された、というのは、昨年12月に住職らが大阪地検特捜部に背任などの疑いで逮捕、起訴されたという最近の事件に関するものです。早い取材だなぁというのが一番の感想ですね。

 上から2番目の寺院の土地占有による国有地の時効取得、というのは、私たちが司法試験受験時代に民法の論点のひとつとして勉強した「公物の時効取得」の問題です。弁護士になってから、そういう問題に当たったことは残念ながらありませんでしたが。

 「寺院のすべてが個人情報保護法管理下におかれる法改正」(櫻井圀郎)という記事は、今般の個人情報保護法改正全面施行の時点では、これまでの小規模事業者の適用除外の規定が撤廃されることから、小さな寺院であっても個人情報取扱事業者となることを踏まえて、改正法(政令等含む)の説明を中心に書かれているものです(次回以降に続くようです。)。
 ただ、この中の「個人情報」の定義の説明で、「したがって、寺院で扱う「檀信徒の情報」は「個人情報」に当たりますが、「過去帳」で扱う「故人の情報」は「個人情報」に該当しません。」とあります。確かに死亡した「故人」は「個人情報」の本人たりえませんが、その家族、子孫らの生存している個人とその「故人」の情報が結びつけられている場合は、全体の情報(例えば、私の亡父に関する情報)としては、生存者(私)の「個人情報」となりますので、現存する檀家の先祖の過去帳記載の情報であれば、「個人情報保護法」の適用外としてしまうことはできないことは多いと思います。

 マイナンバーの記事は、寺院実務に即したものかと期待しましたが、マイナンバー制度を批判的見地から危険性を指摘しているものでした。

 宗教法人関連の事案の法律問題を検討したいときには、ここのバックナンバーも調査しておいたほうがよさそうですね。

2017年1月12日 (木)

「お試し価格」商法に対する差止請求訴訟提起(KCCN)

京都新聞が、適格消費者団体「NPO法人京都消費者契約ネットワーク」(KCCN)」が1月11日、健康食品通販会社「BRONX(ブロンクス)」(東京都)を相手に、ホームページ上の当該広告の差し止めを求めて、京都地裁に提訴した、と報じています。現時点で、KCCNの公式サイトに公表記事は出ていませんが(※公開されました。末尾【追記】参照)、この京都新聞の報道に拠りますと、定期購入なのに「お試し価格」などと銘打って、安く1回限りの購入だと誤認させる広告を掲載していたもので、これが景品表示法違反(不当表示)であるとして、同法に基づく消費者団体の差止請求訴訟を提起したものですね。

 

KCCNの主張は、健康食品の販売に際し、ホームページ上で特定のコースで購入する場合は「定価の7割引きの980円」と表示しているが、約款では5カ月間の購入を義務付けられており、最低でも支払総額が1万4100円になってしまうのに、この約款は小さい文字でページ下部の目にとまりにくい場所に記載されていて、一般消費者からは、単価980円で購入できると誤認させている、との内容のようで、景品表示法上の「有利誤認」の主張と思われます。

 

このような「お試し価格」商法は、上記会社だけではなく、全国的に健康食品や化粧品などの事業者が存在しており、消費者がホームページなどで、商品を通常価格より安い価格(「お試し価格」)で購入したところ、実際は定期購入契約だったというトラブルが急増していることについて、昨年(2016年)6月16日付で国民生活センターが報告書を公表しています。それによれば、相談件数は年々増加傾向にあり、2015年度の相談件数(5,620件)は、2011年度(520件)の10倍以上に増えているとのことです。

 

相談急増!「お試し」のつもりが定期購入に!?

 

このような状況の下での上記KCCNの差止請求訴訟の提起ということになり、今後が注目されますが、ちょうど、昨年末に発刊された雑誌「国民生活研究(2016年12月)」(国民生活センター)にも関連の論考が出ています。この号の特集は「広告に関する消費者問題」で、この中の論文「インターネット広告に関する最近の法律問題」森亮二弁護士が、ステルスマーケティング(ステマ)やインターネット広告のプライバシー問題などと併せて、この「お試し価格」商法についても述べています。      
森弁護士の論文以外にも、この「国民生活研究(2016年12月)」は、広告問題や地方消費者行政などについて、重要な論文や報告等が掲載されており、以下に目次の抜粋を載せておきますので、興味のある方は是非ご一読ください。 

 

「国民生活研究(2016年12月)」目次

 

特集「広告に関する消費者問題」           
【特集に寄せて】広告をめぐる消費者問題と消費者関連法規      
松本 恒雄 (独立行政法人国民生活センター理事長)      
【論文】子どもに対する広告・マーケティングをめぐる新潮流   
-日本におけるガイドラインの成立-   
天野 恵美子(関東学院大学経済学部 准教授)      
【論文】インターネット広告に関する最近の法律問題      
森 亮二(弁護士)      
【報告】JAROに寄せられた広告・表示に関する苦情と処理の概況   
-平成27年度の実績から-      
黒岩 達哉   
(株式会社電通 総務局次長、公益社団法人日本広告審査機構 前審査部長)

 

【調査報告】全国都道府県における消費者行政の実態と課題      
色川 卓男(静岡大学教育学部 教授)   
梅田 智子(静岡大学教育学部 卒業生)   
佐々木 愛矢(静岡大学教育学部 卒業生)   
【制度紹介】フランス法におけるグループ訴権の導入   
-金融分野における集団的損害回復制度の研究-      
柴崎 暁(早稲田大学大学院経営管理研究科 教授)   
丸山 千賀子(金城学院大学生活環境学部 教授)

 

【追記】(2017/1/15)

 

KCCNサイトに、訴状と差止請求書が公開されました。

  KCCNサイト

2017年1月 7日 (土)

アイドルの恋愛禁止条項の効力についての判決(その2)

少し遅くなりましたが、新年あけましておめでとうございます。

    本年もよろしくお願い申し上げます。

 昨年の判例時報の目次に目を通していたら、ファンと交際するなどした女性アイドルが芸能プロダクションから損害賠償を求めて訴えられていた裁判の判決で責任が肯定された、というのを見かけました。こういう判決について、ブログを書いたよなぁ、と思って探したら、ありました。1年前の記事でした。

「アイドルの恋愛禁止条項の効力についての判決」 (2016/1/18)

 これは、昨年(平成28年)の1月18日の東京地裁判決(下記第2事件)の報道に関するものでしたが、その際、上の判例時報の判決(平成27年9月18日東京地裁・下記第1事件)にも触れていましたね。ただ、この昨年1月の時点では、両判決とも判決文自体は読めていませんので、報道記事の内容と私の推測を交えた感想文になっていましたが、今回、両方の判決文を読むことができましたので、改めて記事にしておこうということで、今年最初の記事です。少し長くなりますが、タレントの契約における恋愛禁止条項の解釈について、特に第2事件については、なかなか面白い判決となっています。


【平成27年9月18日東京地裁判決(第1事件)の事案】

 被告Y1(女性アイドルタレント・15歳)が、原告X1(芸能プロダクション)との間で、芸能活動に係る専属契約を締結し、アイドルグループのメンバーとして芸能活動を行っていた。原告X2は、このアイドルグループについてX1との間でタレント共同運営契約を締結していた会社。被告Y2はY1の親権者(父親)。なお、ややこしいので、X1とX2を併せてXら、、Y1とY2を併せてYらと表記します。   
 そして、Y1が、男性ファンとラブホテルに入るなど専属契約に違反する行為をし、これにより、グループを解散せざるを得なくなり損害を被ったとして、Xらが、Y1に対しては債務不履行又は不法行為に基づき、親権者Y2に対しては民法714条1項(責任無能力者の監督義務者の責任)に基づき、合計約500万円の損害賠償金等の連帯支払を求めたという事案です。

 なお、専属契約には、Y1について「ファンとの親密な交流・交際等が発覚した場合」などの事項が発覚した場合、契約を解除して、X1はY1に損害の賠償を請求することができるものとされていました。   
 また、Y1は、専属契約締結の際、X1から「アーティスト規約事項」を受領していますが、この規約には、「私生活において、男友達と二人きりで遊ぶこと、写真を撮ること(プリクラ)を一切禁止致します。発覚した場合は即刻、芸能活動の中止及び解雇とします。 CDリリースをしている場合、残っている商品を買い取って頂きます。 異性の交際は禁止致します。ファンやマスコミなどに交際が発覚してからでは取り返しのつかないことになります。(事務所、ユニットのメンバーなどに迷惑をかけてしまいます)」という定めがありました。

 結論からいうと、判決(児島章朋裁判官)は、Y1にXらへの合計約65万円の損害賠償金の支払を認め、Y2への請求は全部棄却しています。

【平成28年1月18日東京地裁判決(第2事件)の事案】

 こちらは、原告X(芸能プロダクション)が、Xとの間で専属マネージメント契約を締結した被告Y1(女性アイドルタレント・契約当時は未成年)、被告Y2,Y3(親権者・両親)、被告Y4(Y1と交際したファン)に対して、Y1とY4が交際を開始し関係を持ち(当時は両者とも成年)、共謀してイベント等への出演を一方的に放棄するなどしたとして、Y1(債務不履行又は不法行為)とY4(共同不法行為)に対しては約880万円の連帯支払、Y2とY3に対してはY1の行為について管理監督を行うべき信義則上の義務に違反したとして110万円の連帯支払を求めたという事案です。

 こちらの契約では、「XがY1の出演業務に関して第三者との間で契約を締結した場合には、Y1はXの指示に従って誠実に当該出演業務を遂行しなければならない。」、「(損害賠償請求ができる事由として)〈1〉 いかなる理由があろうと仕事や打ち合わせに遅刻、欠席、キャンセルし、原告に損害が出た場合 〈3〉 電話もしくはメールで連絡が付かず損害が出た場合 〈8〉 ファンと性的な関係をもった場合 またそれにより原告が損害を受けた場合 〈11〉 あらゆる状況下においても原告の指示に従わず進行上影響を出した場合 〈13〉 その他、原告がふさわしくないと判断した場合」という定めがありました。なお、この契約にはY2も親権者として署名押印しています。

 なお、本件契約については、Y1は、メール(平成26年7月11日)および内容証明郵便(同月26日付)で、Xに対して、グループを脱退し、契約を解除する旨の意思表示を行っています。

 こちらの判決(原克也、中野達也、藤田直規裁判官)は、全ての請求が棄却となっています。


 まず、第1事件で、裁判所が女性アイドルの責任を認めた構成ですが、Y1はグループで活動するにあたり、交際禁止条項について説明を受け、その内容を認識していた事実が優に認定できる、とし、専属契約においては、交際等がX1に発覚した場合について規定しており、規約においては、ファンへの交際発覚を含む旨を明確に記載しているから、本件の交際がファンやXらに発覚したことが交際禁止条項の違反にあたることは明らかである、としました。そして、不法行為責任についても、「異性とホテルに行った行為自体が直ちに違法な行為とはならないことは、Yらが指摘するとおりである。しかし、Y1は当時本件契約等を締結してアイドルとして活動しており、本件交際が発覚するなどすれば本件グループの活動に影響が生じ、Xらに損害が生じうることは容易に認識可能であったと認めるのが相当である。そうすると、Y1が本件交際に及んだ行為が、Xらに対する不法行為を構成することは明らかである。」とし、債務不履行および不法行為を負う、としました。

 第1事件での損害賠償額ですが、Xらそれぞれへの信用毀損(各200万円の請求)は、その事実は認められないとされ、Tシャツの作成費、レコーディング費用、レッスン費用などの費用のみが損害とされたうえで、過失割合について、「Xらが芸能プロダクションとして職業的にアイドルユニットを指導育成すべき立場にあることや、Y1が当時未だ年若く多感な少女であったことなどを踏まえると、本件交際における過失割合は、Xらが40、Y1が60とするのが相当である。」として、上記費用の6割が損害賠償額とされたものです。

 なお、第1事件での、父親Y2の責任については、「本件契約等の締結時及び本件交際当時において、Y1は15歳の未成年であったところ、Y1は、X1との間で本件契約等を締結して本件グループでアイドルとして活動していたのであるから、通常の同年齢の者が有する事理弁識能力を有していたことは明らかである。」として、Y2は、民法714条1項の監督義務者等にはあたらないから、本件において責任を負うことはない、と判断しています。

 次に第2事件の判決(全部請求棄却)の判断です。

 判決は、まず、Y1の行為は、少なくとも形式的には本件契約の上記各条に違反するように思われる、としましたが、本件契約は雇用類似の契約であり、「本件契約の規定にかかわらず、民法628条に基づき、「やむを得ない事由」があるときは、直ちに本件契約を解除することができる」とし、本件では、この「やむを得ない事由」があったとして、内容証明郵便が到達した平成26年7月27日に契約解除の効力が発生した、としました。この「やむを得ない事由」に関して、判決は、「本件契約は、「アーティスト」の「マネージメント」という体裁をとりながら、その内実はY1に一方的に不利なものであり、Y1は、生活するのに十分な報酬も得られないまま、原告の指示に従ってアイドル(芸能タレント)活動を続けることを強いられ、従わなければ損害賠償の制裁を受けるものとなっているといえる。ゆえに、本人がそれでもアイドル(芸能タレント)という他では得難い特殊な地位に魅力を感じて続けるというのであればともかくとして、それを望まない者にとっては、本件契約による拘束を受忍することを強いるべきものではないと評価される。このような本件契約の性質を考慮すれば、Y1には、本件契約を直ちに解除すべき「やむを得ない事由」があったと評価することができる。」という注目すべき判断を行っています。
 そして、この事由は、Y1の過失によって生じたものではないから、解除による損害賠償義務(民法628条後段)をY1が負うことはない、としたのです。ここのところで、判決は、恋愛禁止条項違反の場合の損害賠償義務について、興味深い判断をしていますが、これは最後に書きます。

 したがって、Y1が平成26年7月20日のライブに出演しなかった行為と解除の効力発生前の7月26日までの7日間に本件グループの活動に従事しなかった行為は、Xに対する債務不履行に該当するけれども、解除の効力発生後の活動停止については、債務不履行に該当しない、とし、業務妨害ないし債権侵害の不法行為のXの主張についても、本件契約はY1にとって一方的に不利な面が強く、やむを得ない事由があるとしてこれを解除することはY1の正当な権利行使と認められるから、そのような不法行為に該当するとは認められない、としました。

 しかし、7日間については、Y1の債務不履行があったという判断にはなるのですが、判決は、この期間において、Xの主張するグッズの在庫、逸失利益、信用毀損などの損害が生じたとは認められない、として、結局、損害賠償請求を認めなかったものです。

 Y2、Y3(両親)の監督義務責任については、「そもそも一般的に成年に達した者が、マネージメント契約に基づきアイドル(芸能タレント)活動を行うのに際して、その者の父母が契約の相手方に対して何らかの責任を負う根拠はないと考えられる。」としたうえで、本件契約締結時Y1は既にその時点で19歳9か月であり、アイドル(芸能タレント)としての活動拠点もY2夫妻が暮らすH市から遠く離れた東京都内であった上、Y1がY4と交際を開始したと認められる平成25年12月には既に成年に達していた。」とし、「Y2夫妻は、Y1の生活及び活動状況について、原告の主張するような管理監督義務を原告に対して負うとは認められない。」としました。

 Y4(交際相手のファン)については、Y1の責任が認められない以上、当然責任を負わないことにはなるのですが、判決はこれに付言して、「異性に恋愛感情を抱くことは人としての本質の一つであり、その具体的現れとして当該異性と交際すること、さらに当該異性と合意の上で性的な関係を持つことは、人の幸福追求権の一場面といえる。まして、Y4は、一ファンに過ぎず、被告Y1と異なり、アイドルではなく、原告との関係で何らかの契約関係の拘束を負うものでもない。それゆえ、Y4においては、原告との関係で、契約上はもちろん一般的にも、Y1と交際し、さらにY1と合意の上で性的な関係を持つことを禁じられるような義務を負うものではないから、Y1と交際し、性的な関係を持った事実をもって、原告に対する違法な権利侵害と評価することはできないというほかない。」と言っています。

 この恋愛禁止条項違反行為については、判決は、Y1の責任判断の際、Y1の契約解除の効力発生時についての判断のところで、以下のように述べています。

確かに、タレントと呼ばれる職業は、同人に対するイメージがそのまま同人の(タレントとしての)価値に結びつく面があるといえる。その中でも殊にアイドルと呼ばれるタレントにおいては、それを支えるファンの側に当該アイドルに対する清廉さを求める傾向が強く、アイドルが異性と性的な関係を持ったことが発覚した場合に、アイドルには異性と性的な関係を持ってほしくないと考えるファンが離れ得ることは、世上知られていることである。それゆえ、アイドルをマネージメントする側が、その価値を維持するために、当該アイドルと異性との性的な関係ないしその事実の発覚を避けたいと考えるのは当然といえる。そのため、マネージメント契約等において異性との性的な関係を持つことを制限する規定を設けることも、マネージメントする側の立場に立てば、一定の合理性があるものと理解できないわけではない。    
 しかしながら、他人に対する感情は人としての本質の一つであり、恋愛感情もその重要な一つであるから、かかる感情の具体的現れとしての異性との交際、さらには当該異性と性的な関係を持つことは、自分の人生を自分らしくより豊かに生きるために大切な自己決定権そのものであるといえ、異性との合意に基づく交際(性的な関係を持つことも含む。)を妨げられることのない自由は、幸福を追求する自由の一内容をなすものと解される。とすると、少なくとも、損害賠償という制裁をもってこれを禁ずるというのは、いかにアイドルという職業上の特性を考慮したとしても、いささか行き過ぎな感は否めず、芸能プロダクションが、契約に基づき、所属アイドルが異性と性的な関係を持ったことを理由に、所属アイドルに対して損害賠償を請求することは、上記自由を著しく制約するものといえる。また、異性と性的な関係を持ったか否かは、通常他人に知られることを欲しない私生活上の秘密にあたる。そのため、原告が、Y1に対し、Y1が異性と性的な関係を持ったことを理由に損害賠償を請求できるのは、Y1が原告に積極的に損害を生じさせようとの意図を持って殊更これを公にしたなど、原告に対する害意が認められる場合等に限定して解釈すべきものと考える

 それぞれの立場からむずかしい微妙な問題ではあるのですが、なかなか含蓄のある判断ではないか、と思います。

2016年12月27日 (火)

コメダ喫茶店の外観等に酷似する店舗に対し使用差止の仮処分が東京地裁で認められた事案

 人気の飲食店チェーン「コメダ珈琲店」に外観や内装が酷似しているとして株式会社コメダ(名古屋市)が、株式会社ミノスケ(和歌山市)を相手取って、ミノスケによる和歌山市内の「マサキ珈琲中島本店」の営業は、関西地方におけるコメダ珈琲店の郊外型舗と酷似した店舗外装 、内構造及び店舗外装 、内構造等を用いて行われおり、不正競争防止法の定める不正競争行為に該当することを理由として、店舗外観などの使用差止を求めていた仮処分の申し立てについて、12月19日付で、東京地裁(嶋末和秀裁判長)が差止を命じる決定をした、とのことです。

 コメダは、不正競争防止法2条1項1号(周知表示)もしくは2号(著名表示)に該当するとして申し立てたようですが、今回の決定の報道の内容から見ると、裁判所は1号該当として決定を出したのだと思われます。

 なお、チェーン店の店舗外観が不正競争防止法上問題になった事件としては、フジオフーズの事案(「まいどおおきに食堂」事件)があげられます(大阪地裁平成19年7月3日判決大阪高裁平成19年12月4日判決)。

 → コメダホールディングス公表資料(PDF) (双方の外観写真も掲載されています。)

 さて、では、申し立てたのは名古屋コメダ、相手方は和歌山ミノスケ、そして似ていると主張された店舗も和歌山所在なのに、この差止の仮処分事件は、どうして東京地裁で審理、決定されたのでしょう。以下は、その点について推測を交えて書いておきます(間違いがあればご指摘ください。)。

 仮処分や仮差押といった民事保全事件の管轄は、本案の管轄裁判所又は仮に差し押さえるべき物若しくは係争物の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する(民事保全法12条1項)、となっています。

 だとすると、通常の事件であれば、普通裁判籍(民訴4条1項)は、被告の本店所在地(住所)ですので、和歌山地裁となります。ただ、民訴5条にはその他の特別の裁判籍が規定されています。しかし、それだけだと、やはり和歌山地裁か、せいぜい名古屋地裁(義務履行地の裁判籍)しか無理そうです。

 さらに、不正競争防止法の不正競争行為に関する事件であるところから、民訴6条の2の適用がありますが、これを単純にみると、和歌山地裁に加えて大阪地裁が選択肢に入るだけですね。

 ここで行き詰まってはいけないので、コメダの上記公表資料をよく見ると、「コメダは、上記の申立と同時に、東京地方裁判所に、㈱ミノスケを相手取って、上記仮処分命令の申立と同様の差止及び損害賠償を求める本案訴訟を 訴訟を提起しており、現在もその審理が行われています。」とあります。

 つまり、差止請求だけだと、本案訴訟は東京地裁管轄にはならないはずなのですが、差止に損害賠償請求も本案訴訟では加えているために、損害賠償債権は「持参債務」として義務履行地が名古屋となり、それが民訴6条の2によって、東京地裁でも本案訴訟を提起することが可能になっているのだと思われます。この場合でも、本案訴訟の提起を後日にして、仮処分申立だけをする場合、裁判所は東京では駄目、というかもしれませんが、本件では上記の通り、同時に申し立てており、本案訴訟は東京地裁に適法に係属しますので、仮処分事件も東京地裁で審理することには何ら問題がない、ということになりますね。

2016年11月19日 (土)

この機会に適格消費者団体による差止請求の説明でも

 一昨日夜にアップした前回記事はたくさんのアクセスをいただきありがとうございました。

 適格消費者団体・消費者被害防止ネットワーク東海(Cネット東海)の申入書に記載されたジャニーズファミリークラブの回答期限は昨日だったのですが、Cネット東海のサイトによれば、昨日、ジャニーズファミリークラブから、しばらく回答を猶予してほしいというFAXが届いたようです。

 さて、せっかくの機会なので、消費者団体訴訟について、簡単に説明をしたいと思います。

 まず、現在、消費者団体が消費者のために訴訟ができる制度は2つあります。

 ① 消費者契約法に基づく差止請求と、 ② 「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」にもとづく被害回復請求、の2つです。

 消費者団体といっても、どんな消費者団体でも請求ができるわけではなく、国の認定を受けた団体でないといけません。①の差止請求ができるのは、「適格消費者団体」で、現在全国に14団体があり、今回のCネット東海もその1つです。なお、私は、大阪を本拠とする消費者支援機構関西(KC's)の活動に関わっています。
(※【追記】 一般の消費者個人や消費者団体が、このような法律上の請求権ではなく、事業者に営業活動や契約内容が違法、不当であるとして是正を求めること自体は、もちろん可能です。)

   → 全国の適格消費者団体の一覧(消費者庁)

 ②の集団的被害回復制度は、今年(平成28年)の10月1日から施行されたばかりで、実際に制度が利用されるのはこれからです。そして、この制度で請求ができるのは、①の適格消費者団体の中で、さらに「特定適格消費者団体」の認定を受けた団体に限られます。現在、1団体(消費者機構日本〔COJ〕)が消費者庁に対して認定申請を行っているという段階ですので、現時点では、まだ認定を受けた特定適格消費者団体はありません。

 したがって、今回の消費者団体による差止請求は、上記①の消費者契約法に基づく差止請求制度による請求行為となります。

 これは、事業者が、消費者契約法などの法律に違反する行為を行った場合に、個別の消費者個人ではなく、適格消費者団体が事業者に対して差止請求、つまり、その行為をやめることを請求できる制度です。

 消費者契約法違反だけではなく、現在は、特定商取引法、景品表示法、食品表示法の違反行為の一部についても差止請求ができることになっています。今回のCネット東海ジャニーズファミリークラブに対する差止請求は、消費者契約法違反の契約条項を止めるよう求めているわけです。なお、この制度は②の制度と異なり、損害賠償などの金銭の請求はできません。

 消費者団体訴訟とは(COJサイト)

 もっとも、現時点では訴訟が起こされているわけではなく、是正の申入(請求)活動の段階です。   
 これによって、契約内容の変更などの適切な是正措置を事業者がとれば、もちろんそれで解決します。現に、各適格消費者団体は同様の申し入れを事業者に行っており、多くのケースでは事業者側も内容を検討して是正に応じています。これらの事案については、各適格消費者団体のサイトに掲載されていますので、興味のある方はご覧ください。なお、今回の件と似たようなものとしては、今年、同じくCネット東海が、宝塚歌劇の宝塚友の会に対して、雑誌の定期購読サービスの契約が消費者契約法違反であるとして申入活動を行っていますが、宝塚友の会は、これに沿う形で改訂を行ったため、申入活動は終了となっています

 しかし、事業者側が適切な対応をせず、消費者契約法などに違反した営業活動や規約を継続するような場合は、適格消費者団体が原告となって、事業者に対して差止請求の訴訟を提起することができます。これも、これまでにいくつもの裁判が起こされています。これらの裁判における判決や訴訟上の和解については、消費者庁サイトに公表されています(消費者契約法第39条第1項に基づく公表)。

 今回のCネット東海の申入活動の今後がどのような形になっていくかは判りませんが、この機会に多くの方々にこの制度をご理解いただければいいな、と考えております。

2016年11月16日 (水)

窓用断熱フィルムの不当表示に対する措置命令の取消を求めた訴訟の判決

 「窓に貼るだけで冷暖房効率が30~40%アップする」などとする窓用断熱フィルムの表示に関し、平成27年2月27日に消費者庁から景品表示法違反(優良誤認表示)として表示の差止等の措置命令を受けた翠光トップラインとその子会社が措置命令の取消と約3億円の損害賠償を求めていた訴訟について、今月10日に東京地裁の判決が出ました。結果は原告両社の請求棄却。 

 この措置命令は、いわゆる「不実証広告制度」(景品表示法7条2項・現行法)に基づいて出されたもので、消費者庁が事業者に対して、その表示についての合理的な裏付け根拠資料の提出を求め、それが期間内に提出されなかった場合(資料提出があっても、それが合理的な資料でなかった場合を含む)には、その表示が優良誤認表示であるとみなされ措置命令を出すことが認められている規定です。この提出期間は原則として15日間とされており、事業者にとっては、かなり短い期間となっていますので、予め根拠資料を用意しておく必要があり、要注意です。 

 判決そのものが未公表であるため、報道の情報によりますが、判決は、両社が提出した資料が「学術界や産業界で一般的に認められた方法の実験ではなく、根拠となる資料には当たらない」と判断した模様です。 

 不実証広告制度において求められる「合理的な根拠資料」の判断基準については、消費者庁不実証広告規制に関する指針が公表されており、その中では、①提出資料が客観的に実証された内容のものであること、②表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること、が求められており、この①の「客観的に実証された内容のもの」については、「試験・調査によって得られた結果」、「専門家、専門家団体若しくは専門機関の見解又は学術文献」のいずれかに該当するものとされています。そして、この指針の判断基準は従来の裁判例でも妥当であるとされています(オーシロ事件。東京高判平成22年10月29日。)。 

 今回の判決も、おそらくは、この指針の判断基準にのっとって、提出された資料が合理的な根拠資料には該当しない、と判断したものと思われます。 

 なお、原告の公式サイトによれば、控訴を検討しているとのことです。また、判決内容について、「判決報道において、「効果や性能を裏付ける資料がないという判断を裁判所が行った。」旨の報道がなされておりますが、正確には、・・・・「処分当時に」提出された資料では「表示」の合理的根拠として足りないという趣旨の判決になります。」としています。   
 これは、不実証広告制度に基づく措置命令を争う場合に、合理的根拠資料は、上記提出期間内に提出された資料に限定されるのか、その後、訴訟において根拠資料を提出した場合にはそれも含まれるのか、という問題があり、その点を示しているものと思われます。しかし、上記のオーシロ事件高裁判決は、この点に関して、提出期間内の提出資料が審理の対象となる、としています。このオーシロ事件判決については、私も、 「実務に効く公正取引審決判例精選」(泉水文雄・長澤哲也編/有斐閣)に簡単にですが解説を書いておりますので、よろしければお読み下さい。 

※景品表示法は最近の何度かの改正の度に条文番号が動いています。御注意ください。※

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