カテゴリー「裁判」の118件の記事

2008年7月20日 (日)

ライブドア事件証人尋問傍聴記についての「著作物」性(知財高裁)

 この知的財産高等裁判所の判決は、いわゆるプロバイダ責任制限法に基づいて、「発信者情報の開示」などを求めた裁判に関するものです。ただし、この控訴審判決は、著作権法上の「著作物」の該当性の判断についてのものとなっています。
 この判決は、最高裁サイトの知的財産裁判例に掲載されています。

 平成20年7月17日知的財産高裁判決 発信者情報開示等請求控訴事件
                        (控訴棄却)

 原告が、ライブドアの刑事訴訟事件(被告人堀江貴文に関する証券取引法等被告事件)での証人尋問を傍聴した結果をまとめた「傍聴記」をインターネットを通じて公開しました。ところが、とあるブログに、原告の「傍聴記」を複製した記事が原告に無断で掲載されました。
 このブログは「Yahoo!ブログ」で、これを管理・運営するヤフー株式会社を被告とし、著作権侵害を理由として、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(通称「プロバイダ責任制限法」)4条1項に基づいて、ブログ記事の発信者の情報開示を求めるとともに、著作権法112条2項に基づいて、記事の削除を求めた、というものです。

 原判決(東京地裁)は、原告の傍聴記は著作権法2条1項1号「著作物」に該当しないという理由で、プロバイダ責任制限法4条1項及び著作権法112条2項の適用はないとして原告の請求を棄却していました。

 知財高裁の判決は、まず、「著作権法2条1項1号所定の『創作的に表現したもの』というためには,当該記述が,厳密な意味で独創性が発揮されていることは必要でないが,記述者の何らかの個性が表現されていることが必要である。言語表現による記述等の場合,ごく短いものであったり,表現形式に制約があるため,他の表現が想定できない場合や,表現が平凡かつありふれたものである場合は,記述者の個性が現われていないものとして,『創作的に表現したもの』であると解することはできない。」とし、また、
 「同条所定の『思想又は感情を表現した』というためには,対象として記述者の『思想又は感情』が表現されることが必要である。言語表現による記述等における表現の内容が,専ら「事実」(この場合における「事実」と,特定の状況,態様ないし存否等を指すものであって,例えば「誰がいつどこでどのようなことを行った」,「ある物が存在する」,「ある物の態様がどのようなものである」ということを指す。)を,格別の評価,意見を入れることなく,そのまま叙述する場合は,記述者の「思想又は感情」を表現したことにならないというべきである(著作権法10条2項参照)。」
 としました。

 そのうえで、知財高裁は、原告の傍聴記の内容を検討して、証人が実際に証言した内容を原告が聴取したとおり記述したか、又は仮に要約したものであったとしてもごくありふれた方法で要約したものであって、原告の個性が表れている部分はなく、創作性を認めることはできず、付加的表記の部分も、証言内容のまとめとして、ごくありふれた方法でされたものであったり、原告の個性が発揮されている表現部分はなく、創作性を認めることはできない、などとして、原告の傍聴記を著作物であると認めることはできず、本件ブログ記事のウエブサイトへの掲載がプロバイダ責任制限法4条1項に該当するとはいえず、著作権侵害行為ともいえない、と判断して、原告の控訴を棄却したものです。

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2008年7月17日 (木)

住民訴訟判決とガラス工芸展

 今日(7/17)は、午前中に、顧問をさせていただいている会社で朝一番からの会議があり、その後、事務所にも寄れないまま、昼過ぎの新幹線で東京地裁での裁判に向かいました。

 実は、私も代理人の1人となっている事件の判決が1時15分から大阪高裁であったのですが、上のような予定だったので、判決言い渡しには出席せず。
 一般的に言って、民事裁判では、ほとんどの場合、判決期日は、当事者の予定とは無関係に裁判所が期日を決めますので、弁護士が判決に立ち会わないことのほうが多いです。普通は当日なり、数日中に裁判所に判決書を取りに行くことができますし、特に早く結果が知りたい場合は、事務員さんに判決を聴きに行ってもらったり、判決の後で、裁判所に電話で問い合わせたり、ということになります。

 ただ、今日の判決の場合は、結果を知ったのは、帰りの新幹線の中でした。というのも、携帯で見た時事通信のニュースに出ていたからです。

 この事件は、南河内清掃施設組合(大阪府)発注のごみ焼却炉工事の談合事件に関して、住民が日立造船に同組合への損害賠償を求めた住民訴訟の控訴審判決です。結論は、約7億860万円の支払いを命じた一審判決を支持して、日立造船側の控訴を棄却しました。
 1審判決の時の当ブログ記事はこれ。
 → 「南河内ごみ焼却炉談合事件住民訴訟の判決」(07/9/14)

 さて、東京地裁の裁判が終わってから、銀座で「渡邊明展-ガラス・光色めく-」に立ち寄ってきました。渡邊明氏は、京都在住のガラス工芸作家で、同氏は小学校から高校まで同級生でした。
 銀座の和光でやっているというので(最初、和光と聞いたときは、埼玉県でやっているのかと思いましたが)、地下鉄から銀座4丁目の交差点を上がったら、和光のビルは工事中で焦りつつ、何とか近くの和光並木館(5階)にたどりつくことができ、ご本人ともお話することができました。
 芸術作品の感想を文章にする才能はありませんが、いつものことながら、切子(きりこ)による光の輝きは、見ている者の心まで澄みわたるような感動を覚えます。23日までやっているそうなので(20,21は休業)、お近くの方にはお奨めします。入場無料。
 これまで和光など入ったことなかったですが、私には全く似合わない場所ではありました(苦笑)。

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2008年7月15日 (火)

アメリカでは、イーベイの責任認めず(オークション)

 先日(7/1)、パリ商事裁判所で、アメリカのインターネット・オークション大手のイーベイ(eBay)に対して約4000万ユーロ(約66億円)の損害賠償の支払を命じる判決を行った、という記事を書きました。
 → 「偽ブランド品のオークション出品と運営者イーベイの責任(フランス)」

 ところが(町村教授のブログで知ったのですが)、今日、CNET Japan や IT pro が報じているところでは、アメリカのティファニー(Tiffany)が、イーベイ(eBay)に対して、同社のオークション・サイトで販売されている偽ブランド品を巡って提訴していた訴訟で、ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所は、eBayに偽ブランド品を摘発する法的義務はない、とする判決を下した、とのことです。

 詳しいことはわかりませんし、また、法律も異なることもあって、現時点で、私に正確なコメントする能力はありません。ただ、このような法的義務がある、とするか、ない、とするか、によって、各当事者のコスト負担、リスク負担には、相当に大きな違いが出てくることには間違いがないでしょうから、各社の法務戦略も大変でしょうねぇ。

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2008年7月13日 (日)

ピンクレディが出版社の写真使用を訴えた事件の判決(東京地裁)

 マスコミでも報道されましたが、ピンクレディの写真を無断で使用した記事を女性週刊誌に掲載した出版社(光文社)を被告として、ピンクレディの2人が原告となって、不法行為(パブリシティ権侵害。民法715条)に基づいて、損害賠償金及び遅延損害金の支払を求めた裁判の判決です。最高裁サイトの知的財産裁判例集に掲載されています。

 東京地裁平成20年7月4日判決 損害賠償請求事件
                  (請求棄却)

 被告発行の週刊誌「女性自身」に、ピンクレディが「渚のシンドバッド」「ウォンテッド」「ペッパー警部」「UFO」「カルメン’77」の5つの楽曲における振り付けを利用したダイエットに関する「ピンク・レディーdeダイエット」と題する記事が掲載され、ピンクレディが写っている写真14枚も掲載されている、というものです。なお、記事の具体的な内容は判決に摘示されていますので、ご参照下さい。

 判決は、まず、「パブリシティ権」について、「人は、著名人であるか否かにかかわらず、人格権の一部として、自己の氏名、肖像を他人に冒用されない権利を有する。人の氏名や肖像は、商品の販売において有益な効果、すなわち顧客吸引力を有し、財産的価値を有することがある。このことは、芸能人等の著名人の場合に顕著である。この財産的価値を冒用されない権利は、パブリシティ権と呼ばれることがある。」としました。

 そして、他方で、「芸能人等の仕事を選択した者は、芸能人等としての活動やそれに関連する事項が大衆の正当な関心事となり、雑誌、新聞、テレビ等のマスメディアによって批判、論評、紹介等の対象となることや、そのような紹介記事等の一部として自らの写真が掲載されること自体は容認せざるを得ない立場にある。そして、そのような紹介記事等に、必然的に当該芸能人等の顧客吸引力が反映することがあるが、それらの影響を紹介記事等から遮断することは困難であることがある。」ともして、

 「芸能人等の氏名、肖像の使用行為がそのパブリシティ権を侵害する不法行為を構成するか否かは、その使用行為の目的,方法及び態様を全体的かつ客観的に考察して、その使用行為が当該芸能人等の顧客吸引力に着目し、専らその利用を目的とするものであるといえるか否かによって判断すべきである。」としました。

 そして、本件の記事や写真の掲載態様などからして、殊更原告らの肖像を強調しているものではなく、「原告らの顧客吸引力に着目し専らその利用を目的としたものと認めることはできない。」と判断し、不法行為は構成しないとして、ピンクレディの請求を棄却したものです。

 記事の現物は見てませんので、特に写真の掲載態様などがよく分からないので何とも言えませんが、判決摘示の事実関係から見て、私としては、かなり微妙な事案ではないかと思っています。

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『青丹よし』・菓子の商標権侵害請求事件判決(大阪地裁)

 菓子の商品名についての判決は、このブログでも大阪関連の菓子に関して、昨年10月25日の判決2件を紹介しました。

 → 大阪みたらし小餅の判決
 「『元祖』表示が品質表示か?の判決(不正競争)」(07/10/30)
 → 大阪プチバナナの判決
 「もう1つ、菓子の名称関連の判決(商標権)」(07/10/30)

 で、先日、大阪地裁で、また、菓子の商標権に関する判決が出ました(最高裁サイトで紹介されています。)。

 大阪地裁平成20年7月10日判決    商標権侵害差止等請求事件
                     (請求棄却)

 事案としては、菓子の商標権者が、被告の商品名が商標権を侵害しているとして使用の差止と損害賠償などを求めたものです。今回は奈良の干菓子の商品名に関するものです。

 詳細は最高裁サイトの判決を見ていただくとして、要するに、「和三盆と葛粉で短冊型に打ち固めた干菓子」に「青丹よし」という名称を付してこれを販売してきたというものです。「青丹よし」は、ご承知の通り、「奈良」にかかる枕詞ですね。奈良の干菓子の名称としても古くから使われてきたようです。

 まず、原告の登録商標は、「中央に大きく縦書き毛筆体で『青丹よし』と大きく表示され、その右側上方に比較的小さく縦書きで『元祖登録商標』と、左側下方に比較的小さく縦書きで『鶴屋徳満』とそれぞれ毛筆体で書され、上記『青丹よし』の文字の真上に、小さく毛筆体で『献上銘菓』という文字を十字に配して草の模様で囲った図形、さらに上記各文字及び図形の外周を略長方形で囲ったものである」というものでした。したがって、「青丹よし」という言葉だけが商標となっているものではありません。

 一方で、被告(複数)の商品名(標章)は、いずれも「青丹よし」との文字を含むものでした。ということで、「青丹よし」との部分が、商標権における「要部」といえるか、どうかが問題となった判決です。これが、「要部」だとすれば、その部分は全く同一ですから、商標権侵害となる可能性が高くなるわけです。

 判決では、古い文献などを検討したうえで、「『青丹よし』は、幕末又は江戸時代中期に有栖川熾仁親王ないし有栖川宮が命名したものと伝えられ、その後、主として奈良市内において複数の菓子業者によって広く製造販売されてきた『青と赤との二色を一組にした落雁と同種の干菓子』であり、その名称は奈良において製造販売されるこの種の干菓子に広く付せられてきたものである。そして、『青丹よし』という名称そのものについて商標登録が認められた例はないことからすれば、『青丹よし』という名称そのものが特定の業者の製造した上記干菓子を表示する機能を有しているとは認め難い。」として、「『青丹よし』との部分の出所識別力はきわめて弱いといわざるを得ない。」としています。

 そのうえで、被告らの各商品名(標章)は、いずれも、原告の商標に類似するとは言えず、商標権を侵害するものとは認められないとして、原告の請求を棄却したものです。

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2008年7月 8日 (火)

槇原敬之vs松本零士の歌詞裁判の報道

 「銀河鉄道999」のせりふを歌詞に無断使用したと非難され、名誉を傷つけられたとして、歌手の槙原敬之氏が、漫画家の松本零士氏に対して、著作権を侵害していないことの確認と損害賠償などを求めた訴訟について、報道されています。この事件については、随分以前に当ブログでも記事にしました(昨年3月23日付)。

 さて、今回は、東京地裁の裁判の期日に両者本人が出廷して発言している、というので、各マスコミが報道しているものです。各社の報道をネット上で、ざっと読んだのですが、法律実務家的には気持ちの悪い表現がいくつかありましたので、ちょっと、コメントというか、つまらぬツッコミをしておきます。
(なお、一般の方には,、ほとんどどうでもいいことであって、私自身、本件の訴訟手続の流れにつき具体的に知るわけでもなく、思わぬ誤解を含んでいるかもしれませんが、ご了承ください。)

 この裁判は、ごく一般的な通常の民事訴訟手続ですが、「口頭弁論期日」だけの手続に、訴訟当事者(原告、被告)本人が出廷することは少ないです。なぜなら、「口頭弁論期日」というのは、主に双方からの主張のやりとりを行う期日で、しかも、通常は書面でほぼ済ませることが多いため、双方の代理人弁護士が出廷すれば充分で、本人がわざわざ出廷する意味があまりないためです(もちろん、例外はありますし、本人が出廷する権利を持つのは当然ですが。)

 で、ここで何故、両者本人がわざわざ出廷したか、というと、「口頭弁論期日」のためではなく、(たぶん)それに引き続き行われた形式になっている「(本人)尋問期日」で尋問を受けるためです。
 それぞれの法律的な主張は、これまでの裁判の期日において、それぞれの弁護士が書面でやりとりをしたり、裁判所が主張整理をしたりしているはずで、いまさら本人が出て「主張」をする必要はまずありません。
 今回は、その主張のもととなっている事実関係を立証(証明)するための方法の1つとして、両方の本人の尋問が行われた、という手続になります。したがって、それぞれが証言をした、というのは、裁判所に向かって「主張」するためではなく、「立証」の活動のためとなります(本人の記憶に基づいて、事実を証言する)。もっとも、この「主張」「立証」の違いを一般の方にわかっていただくこと自体が難しい場合も多いのですけども。
 また、一部の記事でもわかるように、普通こういった「本人尋問」や「証人尋問」は、本人や証人、1人ずつやっていきますので、2人並べて、質問をぶつけるというような方法をとることはありません(場合によっては可能ですが、かなり稀です。)。したがって、「直接対決」という表現もちょっと違いますし、実際、今回は、先に槇原氏の尋問を行い、それが終わると槇原氏は帰っていって、松本氏の尋問をおこなっていますので、両者が向き合って丁々発止のやりとりをしているようなものでもありません。

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2008年7月 4日 (金)

コンビニ加盟店契約に関する最高裁判決

 コンビニエンスストアフランチャイズ契約に関して、今日、面白い最高裁判決が出たようです。まだ、最高裁サイトにも掲載されていないですが、判決を見ることができましたので、簡単にご紹介します。
【追記】その後、当日中に最高裁サイトに掲載されました。

 平成20年7月4日最高裁第2小法廷判決(破棄差戻)
             書類引渡等、請求書引渡等請求事件 

 事案は、セブンイレブンのコンビニのフランチャイズ・チェーンに関するもので、加盟店が原告となって、運営会社である株式会社セブン-イレブン・ジャパン及び商品の仕入先業者らを被告としています。

 請求の内容は、被告らに対して、仕入商品代金についての請求書・領収書の写しの交付、あるいは、それに代わる報告を求める、というもののようです。
 どういうことかというと、このコンビニの加盟店基本契約では、発注システムによって推薦仕入先から商品を仕入れる場合には、運営会社が、加盟店に代わって、仕入代金を支払うことになっていて、加盟店は、運営会社から一定期間毎に請求される金額を運営会社に支払う形となっています。
 それで、これでは、実際に運営会社が仕入先にどのように代金を支払っているかが具体的にはわからないので、その支払内容の報告を請求した訴訟です。

 原審の東京高裁判決は、運営会社には、加盟店にそのような報告をすべき義務はない、として、加盟店側の請求を棄却しました。

 しかし、今日の最高裁判決では、運営会社セブンーイレブン・ジャパンに対しては、原審判決を破棄して、東京高裁に差し戻しました。

 本件の契約関係からみて準委任契約についての民法656条・645条による受任者の報告義務があるとして、報告義務を負うべき報告の具体的内容について審理を尽くさせるために東京高裁に差し戻しという判断です。

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2008年7月 1日 (火)

偽ブランド品のオークション出品と運営者イーベイの責任(フランス)

 日経、ロイター、共同通信などの報道によれば、昨日(6/30)、フランスのパリ商事裁判所が、アメリカのインターネット・オークション大手のイーベイ(eBay)に対して約4000万ユーロ(約66億円)の損害賠償の支払を命じる判決を行った、とのことです(イーベイは控訴方針)。

 ネット・オークション運営者の法的責任に関して、日本では、このブログでも取り上げたように3月に名古屋地裁でヤフーについて詐欺被害者からの賠償請求を認めない判決がなされています。ただし、運営者にも注意義務があることは認めています。
 → 「ヤフーオークション詐欺被害訴訟の判決(名古屋地裁)」(3/28)
 → 
「ヤフーオークションの運営者の注意義務(名古屋地裁判決続報)」(4/9)

 さて、イーベイのほうですが、名古屋地裁の裁判が、オークション詐欺の被害者達からの請求だったのに対して、パリ商事裁判所の裁判は、LVMH社(ルイヴィトンやディオールなどのフランス高級ブランド大手の企業)が原告であり、偽ブランド品がオークションに出品されたことにより、損害を受けたという主張のようですね。

 報道からは、詳しい法律構成や事実認定がわかりませんので、これ以上コメントしにくいですが、偽ブランド品が出品されるについて、運営者であるイーベイが注意義務を果たしていなかった、ということなのでしょうね。賠償金額を含めて、なかなか日本ではお目にかかれない思い切った判決だとは思いました。
 日本のオークションでも偽ブランド品の出品はあるでしょうから、ヤフーなど日本の業者も他人事ではない、と思っておられるかもしれませんね。

 日経の報道では、損害賠償だけではなく、判決が「今後、こうしたブランドの取扱を禁じ」とあるのですが、取扱を禁じられたのは、偽ブランド品だけなのか、本物も含むのか、不明確ですね。不正な偽ブランド品の取扱を禁じる、というのは、日本でも商標権などに基づいて差止請求ができる場合はあるかとは思いますが。

【追記】(7/1)
 夜になって、毎日が、これをパリ発の署名記事(福井聡)で、流していますが、その中に「偽ブランドの販売者だけでなく、情報を掲載したネット運営者も有罪になった。」という表現がありました。普通の人の日常会話ならともかく、大新聞が、民事と刑事の違いを意識しないで「有罪」という記事を何のチェックもなく流すというのは、編集部も含めてどうかと思います。日本国内の民事訴訟で負けた側を「有罪」と書いたら騒動になるかもしれません。

【追記の追記】(7/15)
 アメリカで、イーベイの同様の責任を認めなかった判決が出たようなので、別記事にしました。
 → 「アメリカでは、イーベイの責任認めず(オークション)」
                       (7/15)

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2008年6月26日 (木)

正当防衛に関する最高裁決定をもう一つ

 別に私は刑事事件の正当防衛に特に関心を持つわけではないのですが、このブログで正当防衛に関する裁判例を2件ばかり紹介してきました。
 → 直近記事は「『自招危難』に正当防衛を認めなかった最高裁決定」(5/27)
 で、正当防衛に関する最高裁の昨日の決定が最高裁サイトで公表されてましたので、成り行き上(?)ご紹介しておきます。「正当防衛」と「過剰防衛」については、条文だけ挙げておきますね。
 今回の事案は、暴行が2段階に分かれていて、結果的に死亡に至ったのは最初の暴行であった、というのと、最初の暴行と2番目の暴行との間の性質が異なる、という点がポイントです。

刑法36条
1項(※正当防衛※)
 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
2項(※過剰防衛※)
 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。

  平成20年6月25日最高裁第一小法廷決定
               傷害被告事件(上告棄却)

【事案】
 以前にも被告人に対して因縁を付けて暴行を加えたことがあった甲(被害者)が、被告人に対し「ちょっと待て。話がある。」と呼び掛けた。少し移動した所で、被告人は、甲からいきなり殴り掛かられ、これをかわしたものの、腰付近を持たれて付近のフェンスまで押し込まれた。甲は更に被告人をフェンスに押し付けて、ひざや足で数回けったため、被告人も甲の足を絡めたり、けり返したりした。
 その現場に甲の知人2名が近付いてきたため、被告人は、甲の知人らに対し「おれはやくざだ。」と威嚇し、甲の顔面を1回殴打した。
 次に、甲は、アルミ製灰皿(高さ60㎝)を被告人に投げつけた。被告人は、灰皿を避けて、反動で体勢を崩していた甲の顔面を殴打したため、甲は頭部から転倒して、後頭部をタイルの敷き詰められた地面に打ち付け、動かなくなった。(ここまでの被告人の暴行を「第1暴行」という)

 被告人は憤激の余り、動かなくなった甲に対し、「おれを甘く見ているな。おれに勝てるつもりでいるのか。」などと言い、その腹部等を足げにしたり、足で踏み付けたりし、さらに、腹部にひざをぶつけるなどの暴行を加えた。(この暴行を「第2暴行」という)

 甲は、第2暴行により、肋骨骨折、脾臓挫滅、腸間膜挫滅等の傷害を負った。救急車で搬送され、数時間後に頭部打撲による頭蓋骨骨折に伴うクモ膜下出血で死亡したが、この傷害は第1暴行によって生じたものであった。

【1審判決】
 過剰防衛による傷害致死罪が成立するとして、懲役3年6月の刑。

【原判決(東京高裁)】
 被告人の第1暴行については正当防衛が成立するが(つまり第1暴行による傷害致死は無罪)、第2暴行については,甲の侵害は明らかに終了している上、防衛の意思も認められず、正当防衛ないし過剰防衛が成立する余地はないから、被告人は第2暴行によって生じた傷害の限度で責任を負うべきであるとして、被告人の正当防衛行為により転倒して動かなくなった甲に対し、その腹部等を足げにしたりなどし、さらに腹部にひざをぶつけるなどの暴行を加えて、肋骨骨折等の傷害を負わせたもので、傷害罪が成立するとして、懲役2年6月の刑。
 死亡の結果と第2暴行は関係ないので傷害致死罪ではなく、結果的に1審より軽い刑となった。

【最高裁決定】
 弁護側は、第1暴行と第2暴行は分断せず一体のものとして評価すべきであって、前者について正当防衛が成立する以上、全体につき正当防衛を認めて無罪とすべきであるなどと主張したのに対して、
 第1暴行で転倒した甲が更なる侵害行為に出る可能性はないことを認識した上で、被告人は専ら攻撃の意思に基づいて第2暴行に及んでいるのであるから、第2暴行が正当防衛の要件を満たさないことは明らか、とし、両暴行は、甲による侵害の継続性及び被告人の防衛の意思の有無という点で、明らかに性質を異にし,被告人が前記発言をした上で抵抗不能の状態の甲に対して相当に激しい態様の第2暴行に及んでいて、その間には断絶があるというべきである。両暴行を全体的に考察して、1個の過剰防衛の成立を認めるのは相当でなく、正当防衛に当たる第1暴行については、罪に問うことはできないが、第2暴行については、正当防衛はもとより過剰防衛を論ずる余地もないのであって、これにより甲に負わせた傷害につき、被告人は傷害罪の責任を負うというべき、として、原審判決の判断を維持した。

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2008年6月25日 (水)

下請修理業者への自動車購入強制に関する損害賠償請求訴訟

 夕方に毎日が報じているものですが、奈良の自動車修理会社が今日、奈良トヨタ自動車に損害賠償を求める裁判を奈良地裁に起こした、ということです。

 修理の下請の取引継続の見返りとして自動車購入を強制されたという主張のようです。この修理会社が奈良トヨタから取引停止を通告されたため、紛争化した模様。
 報道によれば、修理会社側の主張は、「奈良トヨタは取引の優越的地位を利用し車購入を強制した。下請け業者への物品購入強制を禁じた下請法に違反している。」ということですね。ここらが、私の興味をくすぐったところです。
 独占禁止法の「不公正な取引方法」や下請法の違反の主張に基づいた民事訴訟がもっとあってもいいと、以前から思っているからです。
 実は、7月12日(土)の夜には、私が代表(形だけですが)をしている独占禁止法公正取引研究会の主催で、一橋大の松本恒雄教授をお呼びして、独占禁止法の私法的効力についての講演を予定しています。ご承知かと思いますが、松本教授は、独占禁止法の研究者ではなく、民法、消費者法の権威(という表現は怒られるかな)です。

 話を戻しますが、被告となった奈良トヨタ側も、取引停止に至った理由については、言い分があるようで、この事件について、現時点で、どちらがどうというような判断をすることはできません。
 ただ、当ブログでも、優越的地位濫用事案、下請法違反事案を紹介している通り、この種の下請業者への各種強制というのは、よくあることですので、こういった訴訟がもっとあってもいいのではないか、と思っています。

 いつも言っていることで恐縮ですが、強い立場にいる取引先から、こういった商品購入や協力金支払などを不当に求められて困っている業者の方は、もっと弁護士さんに相談してみては。。。と思います。

 そういえば、日本弁護士連合会(日弁連)消費者問題対策委員会独占禁止法部会でも、フランチャイズ契約に関して、本部側(フランチャイザー)と加盟店(フランチャイジー)の問題について話題になっておりまして、これも関連する問題ですね。 

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2008年6月24日 (火)

「アメリカ合衆国財務証券」詐欺と田原最高裁判事意見

 最高裁サイトで紹介されている最高裁判決です。先日、3つ一緒に紹介した判決同様に、第3小法廷判決です。(最高裁サイト参照)

 平成20年6月24日最高裁3小判(破棄差戻)損害賠償請求事件

 これは、大きく報道された先日の第3小法廷判決のヤミ金に対する損害賠償請求事件と同じような問題を含むものです。この判決については、今日、先に北海道大町村教授のブログでも紹介されています。

 本件は、「アメリカ合衆国財務省証券」の購入資金名下に金員を騙取された、という投資詐欺事案で、ヤミ金事案とはちょっと背景が異なると思います。

 そして、ここで問題となっているのは、投資資金に対して、いくらかの金員が配当金名目で投資者に返されており、その金額を損害から控除すべきかどうか、という点です。
 今回の判決は、「本件詐欺が反倫理的行為に該当することは明らかであるところ、被上告人は,真実は本件各騙取金で米国債を購入していないにもかかわらず、あたかもこれを購入して配当金を得たかのように装い、上告人らに対し、本件各仮装配当金を交付したというのであるから、本件各仮装配当金の交付は、専ら、上告人らをして被上告人が米国債を購入しているものと誤信させることにより、本件詐欺を実行し、その発覚を防ぐための手段にほかならないというべきである。そうすると,本件各仮装配当金の交付によって上告人らが得た利益は、不法原因給付によって生じたものというべきであり、本件損害賠償請求において損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として本件各騙取金の額から本件各仮装配当金の額を控除することは許されないものというべきである。」としました。つまり、配当金を交付しているのは、詐欺の手段に他ならないから、それを差し引くのは、不法原因給付の返還となるから差し引かない、ということです。

 これに対して、大阪弁護士会出身の田原睦夫裁判官は、反対意見を書かれています。
 先日のヤミ金判決でも田原裁判官は、補足的な意見を書いておられますね。そちらは、多数意見と同様にヤミ金から貸し付けられた形の元本部分も控除すべきではない、という結論には同調されておりながら、今回の事案は、支払われた配当金を控除すべきではない、と結論においては逆になっています。
 前にも書きましたが、この結論的には違った田原裁判官の意見を読み込むと、法律解釈の面白さが感じられます。

 ここのところは、実質的には、投資商法の道具として配当金がどのような役割があったか、というような判断に関わるのだろうと思います。本来の原則的な理屈としては、田原裁判官の反対意見が妥当と思うのですが、私自身の経験でも、豊田商事事件以降、最近の「円」なんとかの事件も含めて、まずはそれなりの多額の配当金や利益でもって信用させるというのが定番ですので、詐欺の要素が強い事案については、それに要した費用を詐欺業者側に認めてやる必要はないように思います。普通の取引での経費控除とは違います。詐欺師側の利得剥奪の点から見るか、被害者側の実損失から見るか、という問題なのかもしれません。
 そういう意味では、現在の日本の民法の損害賠償制度が被害者側の損害填補を原則としていることとも根本では関連するかもしれません。詐欺師の懲罰的な意味を重要視すれば、当然、そんな詐欺の道具部分の控除を認めてやる必要はないことになりますよね。

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2008年6月20日 (金)

「まねきTV」事件訴訟は請求棄却(東京地裁)

 報道されている内容しかわからないので速報のみ。
 インターネットによるテレビ視聴システムの業者を、放送局が訴えている一連の事件の内、今日は、「まねきTV」事件の1審判決(東京地裁)があったようです。結果は、原告(放送局)の敗訴(請求棄却)ということです。

 この事件は、去年の3月頃にこのブログでも書きましたが、仮処分段階でも、東京地裁も東京高裁も、やはり放送局側の著作権侵害の主張を認めていませんでした。

 一方、先日(5/28)の判決で放送局側の主張が認められた、日本デジタル家電「ロクラク」のサービスについても、このブログでも取り上げましたが(6/1)、こちらは、訴訟に先立つ仮処分でも放送局側の主張が認められていました。
 → 「日本デジタル家電のテレビ録画視聴サービスの判決(東京地裁)」

 今回の判決の中身については、ある程度想像はつきますが、来週に恐らく判決が公開されると思いますので、それを確認してからご紹介します。

【追記】(6/23)
 本日、最高裁サイトに公開されました。

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2008年6月10日 (火)

ヤミ金融事件など最高裁判決3つ(最高裁)

 今日(6/10)は、最高裁判所第3小法廷の興味深い判決が3つ出されており、即日、最高裁サイトで公表されています(速い!!)。
 → 最高裁サイト 最高裁判所判例集ページ
 3つの記事にするのもしんどいので、まとめてどうぞ。

 1つは、民事訴訟法248条の損害額の裁量認定に関して、
「・・・・損害額の立証が極めて困難であったとしても,民訴法248条により,口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいて,相当な損害額が認定されなければならない。そうすると,被上告会社の上記採石行為によって上告人に損害が発生したことを前提としながら,それにより生じた損害の額を算定することができないとして,上告人の本件土地1の採石権侵害に基づく損害賠償請求を棄却した原審の上記判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」として、高裁判決を破棄して、差し戻したもの。

 次に、五菱会のヤミ金融に関して、借り主が損害賠償を求めた訴訟につき、借り入れた元本部分の金額についても損害として算定できるか、を判断したものです。たぶん、これを一番マスコミが取り上げると思いますが、最高裁判決は、
「反倫理的行為に該当する不法行為の被害者が,これによって損害を被るとともに,当該反倫理的行為に係る給付を受けて利益を得た場合には,同利益については,加害者からの不当利得返還請求が許されないだけでなく,被害者からの不法行為に基づく損害賠償請求において損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として被害者の損害額から控除することも,上記のような民法708条の趣旨に反するものとして許されないものというべきである。」とし、「・・前記事実関係によれば,著しく高利の貸付けという形をとって上告人らから元利金等の名目で違法に金員を取得し,多大の利益を得るという反倫理的行為に該当する不法行為の手段として,本件各店舗から上告人らに対して貸付けとしての金員が交付されたというのであるから,上記の金員の交付によって上告人らが得た利益は,不法原因給付によって生じたものというべきであり,同利益を損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として上告人らの損害額から控除することは許されない。」として、元本部分に関する借り主の敗訴部分を破棄して、これも高裁に差し戻しました。

 そして、預託金会員制のゴルフクラブの会員が、そのクラブの名称を用いてゴルフ場を経営していた会社の会社分割によりその事業を承継し引き続き同クラブの名称を使用している被上告人に対して、会社法22条1項が類推適用されると主張して預託金の返還等を求めた訴訟で、最高裁判決は、事業譲渡に関する最高裁判決を引用したうえで、
「・・・このことは,ゴルフ場の事業が譲渡された場合だけではなく,会社分割に伴いゴルフ場の事業が他の会社又は設立会社に承継された場合にも同様に妥当するというべきである。」として、
 会員である上告人の控訴審敗訴部分を取り消したうえで、上告人の請求を認容しました。

 最近の最高裁判決は、補足意見や反対意見も結構読み応えがあり面白いです。ただ、残念ながら、こちらもそれを全部フォローする時間がありませんです。興味のある方は、各判決の補足意見、反対意見もお読み下さい。特に法学の学生の方は是非お読みになって、各裁判官の意見をじっくり味わっていただければと思います。

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2008年6月 1日 (日)

日本デジタル家電のテレビ録画視聴サービスの判決(東京地裁)

 28日に出た日本デジタル家電「ロクラクⅡビデオデッキレンタル」と称するサービスについての判決です。この手のサービスの判決も増えてきましたが、それぞれのサービス内容なども微妙に違ってたりしていて整理して理解するのが大変ですね。判決文も長いですし。

 東京地裁判決平成20年5月28日 著作権侵害差止等請求事件
              (最高裁サイト知的財産裁判例集より)

 本件は、被告が製造したハードディスクレコーダーの親機を日本国内の保管場所に設置しておいて、これに対応する子機を海外の利用者に貸与又は譲渡して、親機側が受信・録画したテレビ放送を、子機から視聴できるというサービスです。
 NHKと民法放送局が原告となって、著作権侵害であるとして、日本デジタル家電(浜松市)に損害賠償と差止を求めていた事件です。

 なお、この事件の仮処分事件については、1年前に、このブログで紹介しています。
 → 「テレビ番組ネット転送サービスに対する仮処分認容」(07/3/31)
 → 「番組転送サービス仮処分:続報」(07/4/6)

 判決は、いわゆる「カラオケ法理」を前提としたうえで、本件サービスを成り立たせる重要な意味を有する親機の設置場所を提供して管理支配することで、日本国外の利用者が格段に利用しやすい仕組みを構築しており、この親機の果たす役割からすれば、被告は本件サービスを提供しているものということができ、テレビ番組等の複製行為を管理支配して、それによる利益を得ている、と認定し、(被告は複製行為の主体ではなく、各利用者の私的使用にすぎないとした被告の主張を斥けて)複製行為の主体が被告であるとして、著作権侵害を認めたものです。

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2008年5月31日 (土)

書名「時効の管理」と著作権・不正競争行為の判決

 大阪地裁(26民)平成20年5月29日判決
   著作権侵害差止等請求事件
(最高裁サイト知的財産裁判例集より)

 時効に関する法律実務書として、「時効の管理」という文言を題号(書名)に含む書籍の著作者が、同じく「時効の管理」という文言を含む題号の書籍の発行会社、販売会社、編著作者を被告として、書籍の頒布等の差止と損害賠償(800万円)の支払を求めた裁判です。
 結論は、原告の請求が棄却されています。

 原告の請求は、被告らの行為が、
(1)原告の著作権及び著作者人格権の侵害
(2)不正競争防止法2条1項2号(主位的)、1号(予備的)該当性

というものです。

 判決は、まず、上記(1)(著作権・著作者人格権侵害行為該当性)に関して、「時効の管理」という表現は、思想又は感情を創作的に表現したものということはできず、著作物ではないとして、原告の請求を認めませんでした。

 また、上記(2)(不正競争行為該当性)に関しては、書籍の題号は、普通は出所の識別表示として用いられず、書籍内容を表示するものとして用いられるものであり、需要者(購入者等)も、普通は書籍題号を書籍内容を表示するものとして認識するが、出所の識別表示としては認識しない、としました。

 そして、需要者は、「時効の管理」の部分を、時効に関する法律書という内容を表現したと認識するにすぎず、それ以上に商品等表示と認識するものとは認められず、仮に原告書籍の存在が広く知られていたとしても、「時効の管理」の表示が原告の商品等表示として周知・著名となったとすることはできない、としています。
 また、被告書籍の題号「時効管理の実務」についても、出所を表示するもの(商品等表示)ということはできないとしました。

 つまり、原告の題号は、不正競争防止法にいう「周知商品等表示」や「著名商品等表示」ということはできないし、被告書籍の題号も同法の「商品等表示」ともいえない、ということで、不正競争防止法に基づく請求は理由がない、と結論づけています。

 なお、書籍・雑誌等の題号の著作権法不正競争防止法に関する判決としては、「スイングジャーナル事件」東京地裁平成11年2月19日判決、「おとなの特選街事件」東京地裁昭和62年10月23日判決、などがあります。また、判決ではなく、和解で終了した事件ですが、「父よ母よ!事件」東京地裁平成9年1月22日和解の東京地裁が出した和解勧告理由も参考になります。

 書籍・雑誌ではないですが、最近の事例として、アニメ「超時空要塞マクロス」のタイトルに関する同様の判決(「商品等表示」を認めず)として、知的財産高裁平成17年10月27日判決があります。

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2008年5月27日 (火)

「自招危難」に正当防衛を認めなかった最高裁決定

 たまには、刑事事件の裁判の紹介を。。。

 以前、ここで、正当防衛が認められた無罪判決を紹介しました。
 → 「正当防衛を認めた無罪判決」(07/4/24)
 これは奈良地裁の判決で、大学構内の学生同士の喧嘩における一方の傷害行為についての刑事事件で、正当防衛(刑法36条)の成否が問題となり、その要件の内、「侵害の急迫性が認められるか否か」という点が争点となったものでした。この奈良地裁判決は、侵害の確実な予期がなく、侵害の単なる可能性を予期していたにすぎないときや、不意打ちといえるほど予想外の場面で侵害を受けたときは、たとえ行為者に積極的加害意思があったとしても、急迫性は否定されない、として正当防衛の成立を認めて無罪を言い渡したものです。

 さて、今回の最高裁決定は、喧嘩ともいえるケースですが、こちらは、結論として正当防衛を認めませんでした。

 最高裁第2小判平成20年5月20日決定( 上告棄却)
 傷害被告事件

 事案は、
 本件被害者A(51)が、朝、ごみ集積所にごみを捨てていたところに徒歩で通り掛かった被告人(41)が、Aの姿を不審と感じて声を掛けるなどしたことから、言い争いとなり、被告人が、いきなりAの左ほおを手拳で1回殴打し、すぐ走って立ち去りました。
 Aは「待て。」などと言いながら自転車で被告人を追い掛け、「殴打現場から約26.5m先を左折して約60m進んだ歩道上」で被告人に追い付き、自転車に乗ったまま、後方から被告人の背中の上部又は首付近を強く殴打したため、被告人は前方に倒れました。
 起きあがった被告人は(ここからが被告人の傷害行為)、護身用に携帯していた特殊警棒を衣服から取り出し、Aの顔面や防御しようとした左手を数回殴打する暴行を加えて、加療約3週間を要する顔面挫創、左手小指中節骨骨折の傷害を負わせました。
 というものです。
 つまり、
 最初のごみ集積場での言い争い → そこでの被告人による暴行
 → 被告人の立ち去り → 被害者が自転車で追いかけて暴行
 → 起きあがって、被告人が特殊警棒による殴打(本件傷害行為)
となります。

 最高裁決定は、この事実関係によれば、「被告人は,Aから攻撃されるに先立ち,Aに対して暴行を加えているのであって,Aの攻撃は,被告人の暴行に触発された,その直後における近接した場所での一連,一体の事態ということができ,被告人は不正の行為により自ら侵害を招いたものといえる」とし、「Aの攻撃が被告人の前記暴行の程度を大きく超えるものでないなどの本件の事実関係の下においては,被告人の本件傷害行為は,被告人において何らかの反撃行為に出ることが正当とされる状況における行為とはいえないというべきである。」として、正当防衛の成立を否定した原審判決の判断は、結論において正当としたものです。

 本件は、正当防衛の成立に関し、いわゆる「自招危難」の場合に正当防衛を否定した事例、ということになります。

 しかし、本件の事実関係において、被害者Aが最初の現場から、100メートルほど自転車で被告人を追いかけて暴行をしたという行為が、「被告人の暴行に触発された,その直後における近接した場所での一連,一体の事態」と評価できるかどうか、というのは評価が分かれるところかもしれません。
 なお、本件事案では、仮に上記論点で(最高裁の結論とは反対に)正当防衛を否定しないとしても、被告人の行為は相当性を欠き過剰防衛ではないか(刑法36条2項参照)、などという議論もあるかと思います。

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2008年5月17日 (土)

水着のスピード社を独禁法違反で提訴(アメリカ)

 米国の水着メーカーTYRスポーツが、5月15日、話題の水着「レーザー・レーサー」のメーカーであるスピード社(英国)独占禁止法違反の疑いで、米連邦裁判所に提訴した、と報じられています。

 昨日結構記事を書いたのでどうしようかな、と思いましたが、独禁法違反での訴訟という話なので、私としても放っておけないかなということで、ひとまず、週末向けに記事にしてみました。

 訴訟の相手方(被告)が、スピード社だけでなく、アメリカの水泳連盟なども含まれているのかどうか現在の報道だけではちょっと即断できません。時事通信の報道では、原告との契約を無視し、スピード社製品を着て大会に出場した男子自由形の水泳選手も相手方としたということになっていますね。
 それにしても、現時点の報道だけでは、細かい法的な理屈が良くわかりません。また、スピード社、米国水泳連盟、コーチなどが、どのような行為を行ったのか、という肝心な事実関係もほとんど明確にはなっていません。

 そのうえ、アメリカの独占禁止法(反トラスト法・・これは、1つの法律ではありませんよ。日本の独占禁止法は、いろんな意味でかなり違います。こういったことに関して、積極的に訴訟を提起するという法的対応も、日米では全く違いますので、単純に中身についての判断はできないと思います。

 まぁ、この水着問題は、オリンピックをひかえて大きな話題にもなっていますし、単純な言葉の問題として、「スピード社の独占じゃないか!」というのは素朴な感覚とは思います。日本のメーカーも日本選手については契約上の保護はされるとしても、比べて速く泳げないとすれば、今後のイメージ的な影響は大きくなってきていますよね。
 ただ、商品がすぐれているために販路を独占したというだけでは、独占禁止法違反とはならないのは当然で、冷静に法律上の要件を満たすかどうか検討しないといけません。

 さて、原告同様に、ライバル企業として大変なことになる日本の企業は、日本の独占禁止法違反を理由として、スピード社を訴えることはできるでしょうか?もちろん、現時点では、日本の選手に関してはスピード社の水着が着られないので、アメリカのライバル企業とは、かなり立場が違いますが。
 逆に、スピード社の水着を着られない日本水泳選手からは、消費者の立場として、スピード社や日本の水泳連盟などに対して、何らかの法的な請求をすることはできるでしょうか? 具体的に、北京五輪でスピード社製の水着を着るための法的戦略は立てられないでしょうか。
 こういう相談を我々法律家が受けたとして、どう答えるべきか、なかなか良い演習問題かもしれませんね。

 一方で、いろんなスポーツの用具で日本のメーカーが大きなシェアを占めているものも多いのは事実ですから、法的構成はともかくとしても、日本企業が現実的にはこのような訴訟を起こすことは考えにくいのではないかと思います(いや、相談があれば是非ちゃんと乗りますよ。・・笑・・)。これが通るなら、逆に訴えられる日本企業も結構あるのでは?。

 もうひとつスポーツ関連の演習問題としては、協栄ジムと契約が切れた亀田一家が日本でプロボクシングができないのは独占禁止法違反か?というのは、同じような問題でしょうか。アメリカなら訴訟になるでしょうか?

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2008年5月16日 (金)

ジャパネットたかたの顧客名簿流出事件の判決

 報道によれば、昨日(5/15)、テレビ通販大手のジャパネットたかたの元社員が、約51万人分の顧客情報をコピーして流出させたとして、会社側が損害賠償請求を求めていた裁判で、大量の顧客情報を流出させたなどとして、同社が男性に1億1千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決があり、長崎地裁佐世保支部西村裁判官は、会社の請求通り、1億1千万円の支払いを命じた、とのことです。

 判決内容が詳しくはわかりませんが、報道記事などから見る限りは、 会社は、損害額について、過去の判例を基に1人当たり5千円と見積もって、計約25億7千万円に上ると試算している、とのことなので、これがその通りだとすると、この損害のうち、一部(内金請求)である1億円と弁護士費用として1000万円を請求したのではないかと思います(あくまでも想像です。)。

 1人5000円というのは、私も関与したヤフー個人情報漏洩事件の判決のことではないか、と思うのですが、あちらの原告は、個人情報を流出された顧客個人であり、その精神的損害(慰謝料)として1人5000円という結果となったものです(不満ですが)。
 → このブログの昨年6月21日付記事
  「ヤフーBB個人情報漏洩事件控訴審判決(大阪高裁)」
  (他にもありますが、興味ある方は上の記事のリンクで見て下さい)。

 しかし、今回の裁判は、原告は名簿を流出された会社の立場であり、このような1人あたりの損害額基準をそのまま使うことができるのかしら・・・・というのが、直感的な現時点での感想です。もっとも、会社は、この事件で、一時営業自粛などをしていましたので、実際の経済的損失も相当なものになったとは思うので、結果として必ずしも認容金額が高すぎるとは言えませんが。
 このあたりは、判決をきちんと読まないで決めつけることはできませんので、このへんにしておきます。

 もうひとつ気になったのが、何故、長崎地裁佐世保支部??というのだったのですが、「ジャパネットたかた」って、本店が長崎県佐世保市にあるのですねぇ。また、社名は、テレビで有名な高田明社長の姓に由来するものですが、「たかだ」ではなく、「たかた」と濁りません。
 

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2008年4月10日 (木)

フェスティ