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2017年6月21日 (水)

消費者支援機構関西が特定適格消費者団体の認定を受けました。

 本日、特定非営利活動法人「消費者支援機構関西」(略称「KC's」〔ケーシーズ〕)に対して、消費者庁は、特定適格消費者団体の認定を行いました。

  → 消費者庁サイト

  → 消費者支援機構関西サイト

 特定適格消費者団体は、昨年(平成28年)10月1日に施行された「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」に基づく集団的消費者被害救済訴訟の原告となることができる団体で、これは、これまで消費者契約法に基づいて認定され、同法や特定商取引法景品表示法食品表示法の違反行為に対して差止訴訟を提起することができる「適格消費者団体」(現在16団体)の中から申請に基づいて認定されます。
 これまでに、消費者機構日本(COJ)特定適格消費者団体の第1号として認定を受けており、今回の消費者支援機構関西が2団体目です。他にも認定を目指す団体はあろうかと思いますが、現時点では他に申請を行ったところはないと思います。

 消費者支援機構関西は、私も少しお手伝いしており、今回の認定に至るまでのご苦労を近くで見ていた者として感慨深いものがあり、関係者の皆さんに敬意を表します。ただし、実際にこの集団的消費者被害救済訴訟を担当していくことは様々な困難があると予想され、今後の一層の頑張りが必要になってきます。なお、今のところ、実際にこの訴訟は提起されていません。

 集団的消費者被害救済訴訟の制度はちょっとややこしい2段階構造になっているので、ここでは説明を省略しますが、興味のある方は、以下のサイトをご覧下さい。

  → 政府公報「消費者団体訴訟制度の活用を」! 
      (差止訴訟と被害回復訴訟の両方の一般広報)

  → 政府インターネットテレビ「新たな消費者団体訴訟制度」 (動画)

  → 消費者庁サイト
      (集団的消費者被害救済制度の法令の他、Q&Aにリンク)

  → 消費者機構日本(COJ)サイト「消費者団体訴訟制度とは」

      (差止訴訟と被害回復訴訟の解説)

2017年6月13日 (火)

美容室などを対象とした民事調停一斉申立(JASRAC)

 日本音楽著作権協会(JASRAC)が、公式サイトで、本日、BGMを利用する美容室などの店舗に対して全国一斉に法的措置(簡易裁判所への民事調停申立)を行ったことを公表しています。

 これは最近話題になった音楽教室から使用料を徴収する方針の件とは別の問題です。

 「BGMを利用していながら、著作権の手続きをしていない美容室など」に対して調停申立を行ったとのことですので、おそらくは、CDやダウンロードした音源を営業時にBGMとして顧客向けに流していたのではないかと思われます。調停の具体的内容は記載されていませんが、過去の使用料相当分の支払いと今後の契約締結でしょうね。調停や裁判にはなりませんでしたが、JASRACからこのような要求が来た、という相談は何度か受けたことがあります。

 本日の公表によれば、今回の一斉調停申立は、178事業者、352店舗に対して行われたとのことであり、そのうち163事業者、205店舗が美容室ということですので、美容室を主なターゲットにしたもののようです。

 JASRACは、昨年6月にも美容室を主な対象としてに一斉調停申立を行っています(プレスリリース)。このときは、187事業者、212店舗に対する調停申立で、そのうち132事業者、151店舗が美容室とのことです。

 この2016年6月のプレスリリースには、「BGMを流す施設の著作権管理を開始した14年前(2002年)は、有線音楽放送などの業務用BGMの利用が主流であり、著作権の手続きはそれらを提供している事業者が施設に代わって行っていたことから、ほとんどの施設が個別にJASRACに手続きをする必要はありませんでした。近年、BGMの音源が多様化(市販のCD、携帯音楽プレーヤー、パソコン、インターネットラジオ等)しており、こうしたBGMの利用については、施設ごとに著作権の手続きを行っていただく必要があります。」との記載がありますね。

 一昨年にも一斉申立を行っていて、このときは171事業者、258施設(美容室、理容店、アパレル店、飲食店他)が対象になっており(プレスリリース)、このような一斉申立は今回が3回目とのことです。

 この使用料請求は、現在の著作権法においては、当然にできるものと考えられますので、理美容室や飲食店などの経営者の方は気をつけないと、遡って多額の請求をされる可能性がありますので御注意ください。また、今後のBGM音楽使用については著作権法の専門家に相談されたほうがよいかと思います。著作権に関するネット上の情報は、法律的にはかなり間違ったものが出回っていますので。

2017年3月 3日 (金)

「判例による不貞慰謝料請求の実務〔主張・立証編〕」(LABO刊)

 一昨年に出版された「判例による不貞慰謝料請求の実務」(中里和伸著)については、当ブログでもご紹介しました。不貞行為の慰謝料については、実際に法的な紛争になることも多く、私たち弁護士にとっては(自分自身が不貞とは無縁の人であってもです〈笑〉)関与する機会の多い分野といっても良いかと思います。実際に、私が関わっている不貞慰謝料請求の訴訟手続の中で、この本は非常に参考になりました。

 → 「書籍の紹介:「判例による不貞慰謝料請求の実務」(中里和伸著)」(2015/8/ 5)

 そして、この本の姉妹編となる「判例による不貞慰謝料請求の実務〔主張・立証編〕」(中里和伸・野口英一郎著・LABO刊)が出版とのことで、3月10日発売開始予定となっています。Amazonでは予約受付中となっていますが、ありがたいことに編集者よりご恵贈いただき、一足先に入手できましたので〔関係性明示(笑)〕、ここにご紹介させていただきます。なお、東京地裁や日弁連会館の地下の書店では既に販売が開始されているようです。

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 前の本が、不貞慰謝料に関する多くの裁判例を整理して、理論的な問題や具体的な慰謝料の算定等について紹介されていたのに対し、本書は実際の民事訴訟手続における「主張・立証」活動を対象としています。
 したがって、特に我々弁護士にとっては極めて実践的で有益な内容になっていますね。

 目次は以下の通りですが、巻末の裁判例一覧には、前の本の出版以降に出された裁判例が追補となっています。また、書式集も実務的に役立つものが掲載されています。

 序 章 不貞行為の歴史
 第1章 不貞慰謝料請求訴訟の提起から終結に至るまでの時系列の流れ
 第2章 不貞慰謝料請求訴訟における典型的な主張と反論の構造
 第3章 民事訴訟における事実認定
 第4章 不貞行為の証拠の入手方法と裁判例
 第5章 不貞慰謝料請求訴訟と渉外問題
 第6章 不貞慰謝料請求訴訟と弁護士職務基本規程

 〔裁判例一覧〕
 〔実務に役立つ書式集〕

2017年2月27日 (月)

クロレラ最高裁判決についての記事を「文化通信」より転載

 消費者契約法の「勧誘に際し」の解釈に関してのクロレラチラシ配布差止請求訴訟の最高裁判決(本年1月24日)について、2月13日付のメディア専門誌「文化通信」に拙稿が掲載されました。

 文化通信社のご了解を得て、当ブログ右上の【コラム】に追加しましたので、興味のある方はご覧ください。

【コラム3】クロレラチラシ配布差止訴訟最高裁判決が広告に与える影響

190213

 


2017年2月21日 (火)

割賦販売法上の取消権(不実告知)についての最高裁判決

 先日の消費者契約法の解釈に関する判決に引き続き、消費者と業者間の契約の取消等に関して、本日、最高裁判所が興味深い判決を出しました。クレジット契約の名義貸しの事案において、割賦販売法(割販法)に基づく取消(不実告知)に関する新しい判断を示して、高裁判決を破棄し、裁判を札幌高裁に差し戻したものです。

 本件は、資金繰りに困っていた販売業者に頼まれて、既存顧客であったクレジット名義人が上告人ら(複数)で、信販(クレジット)会社が被上告人です。もともとは、信販会社(原告)が、契約名義人の名前でクレジットの分割払いを続けていた販売業者が倒産して支払が止まったため、契約名義人を被告として、未払い分の支払を請求した裁判です(反訴もあるようですが省略します。)。

 控訴審判決は、本件の販売業者の告げた内容が、取消の原因となる「不実告知」に該当しないとするなどとして、契約名義人にクレジットの支払義務があると判断して、信販会社の請求を認めました。

 しかし、本日の最高裁判決は、本件告知内容は不実告知に該当するとし、さらに契約の動機や経緯に関して審理が必要として、高裁に差し戻したものです。なお、山﨑敏充裁判官の反対意見が付いています。

  → 判決文(裁判所サイト)

 本件の販売業者は,上記の依頼をするに際し,上告人らに対して、「ローンを組めない高齢者等の人助けのための契約締結」であり、「高齢者等との売買契約や商品の引渡しは実在する」ことを告げ、「支払については責任をもってうちが支払うから、絶対に迷惑は掛けない。」などと告げていたものでした。つまり、名義を借りる理由として、他の顧客が存在して、高齢者などでクレジット契約ができない人がいるから、ということを言って、自分の資金繰りの目的は言っていなかったようです。

 本件で争点は、

① 契約のうち、改正割販法の施行(平成21年12月1日)以降に締結されたもの
 については、改正割販法35条の3の13第1項により立替払契約の申込みの意
 思表示を取り消すことができるか否か、

② 改正割販法の施行前の契約については、改正前割販法30条の4第1項(抗弁
 権の接続)により本件販売業者に対して生じている売買契約の無効等の事由を
 もって被上告人に対抗することが信義則に反するか否か、

です。

 改正割販法35条の3の13第1項では、「契約の締結について勧誘をするに際し、次に掲げる事項につき不実のことを告げる行為をしたことにより当該告げられた内容が事実であるとの誤認」をした場合(不実告知)などは、契約の意思表示を取り消せる、としています。・・・上記①

 また、改正前はそのような取消権がなかったのですが、改正前割販法30条の4第1項(改正後も同内容の規定となっています。)には、信販会社に対するいわゆる抗弁権の接続の規定があり、販売業者に対して生じている事由を、信販会社に対しても主張できる、という規定になっています。この主張を行うことが、本件では信義則に反しないか、ということですね。・・・上記②

 札幌高裁の判決では、   

  1.  まず、割販法の「不実告知」の対象となる事項について、割販法30条の4第1項6号の重要事項には、「立替払契約又は売買契約に関する事項であって購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものであれば、契約内容や取引条件のみならず、契約締結の動機も含まれる。」として、契約の動機も、不実告知の対象となるとしました。この判断は、今回の最高裁判決でも維持されており、重要な判断です。      
  2.    
  3.  次に、本件において販売業者が契約名義人に対して告げた内容が、不実告知に該当するかどうか(上記①)ですが、これについては、該当しない、としました。    
     その理由は、契約締結の主たる動機は、販売業者が、契約名義人らが信販会社に対して支払う金銭を補塡すると約束した点にあり、販売業者は契約の締結時に、その支払をする意思なしに約束をしたということはできないから、販売業者が告げた内容に虚偽はない。高齢者等の人助けのための契約締結である、などと告げた内容は契約名義人らの判断に影響を及ぼすこととなる重要なものには当たらず、不実告知の対象とはならない、として、否定したものです。      
  4.    
  5.  改正前契約に関する抗弁権接続の問題に関しては、信販会社からの契約確認電話に対し、契約名義人らは、契約締結の意思があり、商品を受け取っていると回答しており、上記の通り改正後の「不実告知」の対象ともなっていない、販売業者の不正の意図を知らなかったとしても、名義貸しは一般常識に照らして不正な取引であることは認識することができたもので、販売業者との契約が無効であることを理由に信販会社に対抗することは、信義則に反する、として、これも否定しました。

 これに対して、今回の最高裁判決は、   

  1.  上記札幌高裁判決の1の判断(契約の動機も不実告知の対象)は是認できる、としました。      
  2.    
  3.  上記2の点について、名義貸しであったとしても「それが販売業者の依頼に基づくものであり、その依頼の際、契約締結を必要とする事情、契約締結により購入者が実質的に負うこととなるリスクの有無、契約締結によりあっせん業者に実質的な損害が生ずる可能性の有無など、契約締結の動機に関する重要事項について販売業者による不実告知があった場合には、これによって購入者に誤認が生じ、その結果、立替払契約が締結される可能性もあるといえる。このような経過で立替払契約が締結されたときは、購入者は販売業者に利用されたとも評価し得るのであり、購入者として保護に値しないということはできないから、割賦販売法35条の3の13第1項6号に掲げる事項につき不実告知があったとして立替払契約の申込みの意思表示を取り消すことを認めても,同号の趣旨に反するものとはいえない。」としました。      
     そして、本件では、名義貸しを必要、とする高齢者等がいること上記高齢者等を購入者とする売買契約及び商品の引渡しがあること並びに上記高齢者等による支払がされない事態が生じた場合であっても本件販売業者において確実に改正後契約に係る上告人らの被上告人に対する支払金相当額を支払う意思及び能力があることといった、契約締結を必要とする事情、契約締結により購入者が実質的に負うこととなるリスクの有無及びあっせん業者に実質的な損害が生ずる可能性の有無に関するものということができる。したがって、上記告知の内容は、契約締結の動機に関する重要な事項に当たるものというべきである。」として、販売業者の改正後契約の契約名義人に対する告知は割販法35条の3の13第1項6号の「購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」に当たるというべき、としました。      
  4.    
  5.  以上の判断をもとに、札幌高裁上記2(不実告知)の判断、それを前提とした上記3(抗弁権の接続)の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があるので、控訴審判決は破棄し、契約名義人らの誤認の有無(争点①)、契約に応じた動機や経緯など(争点②)について、さらに審理が必要だとして、差し戻しを命じたものです。

 この判決により、札幌高裁での差戻審において、最高裁判決に示された事項について審理が続けられることになります。

2017年2月 3日 (金)

「ビタミンでシミを洗い流す」石けんに対する不当表示措置命令

 昨日(2/2)、消費者庁は、株式会社Xena(ジーナ・福岡市中央区)に対して、販売する「VCソープ」と称する石けんの表示について景品表示法に違反する行為(優良誤認表示および有利誤認表示)があったとして、措置命令を命じました。

 → 消費者庁公表資料(PDF)

 普通は、優良誤認表示有利誤認表示のどちらかの行為が対象となることがほとんどですが、たまに両方いわれることもあります(あの「スカスカおせち事件」も両方です  →  「バードカフェおせち事件に関する措置命令及び要請(景品表示法・消費者庁)」 (2011/2/22))。

【優良誤認表示】

 措置命令の対象となった優良誤認表示は、情報誌に掲載された石けんの広告において、

○ 「シミを『ビタミン洗顔』で洗い流しませんか?」

○ 「長年の肌悩み、あきらめる前に!」

○ 「あれ?またシミが・・・」

○ 「それにしても、ビタミンで洗うとは一体!?なんでも、長年しみついた悩みやくすみを、洗顔だけで洗い流すというのだ!」

○ 「このビタミン洗顔だからこそ、シミのもとメラニンを含む、古い角質まで洗い流せるんだとか!」

のような表示を行って、あたかも、この石けんを使用することによって、シミを解消又は軽減することができるかのように示す表示をしていた、というもの。

 この表示について、消費者庁「不実証広告制度」(景品表示法7条2項)に基づき、Xenaに対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社から資料が提出されましたが、それら資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかったため、優良誤認表示とみなされたものです。

 この不実証広告制度において、資料提出が期限が定められますが、通常は15日ですので、新たに資料を集めたり、実験を行ったりするヒマがありませんので、事業者としては、この種の広告を行うのであれば、十分な資料を事前に揃えておく必要があります。また、この根拠資料としては、かなり客観的なものを求められます。詳しくは、消費者庁「不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針」(不実証広告ガイドライン)をご覧下さい。このガイドラインに関する判決については、当ブログで書いてますし、 「実務に効く公正取引審決判例精選」(泉水文雄・長澤哲也編/有斐閣)に簡単にですが解説を書いています。

 → 当ブログ 「景表法・不実証広告規定に関する判決(東京高裁)」 (2010/11/14)

【有利誤認表示】

 有利誤認表示のほうは、情報誌に掲載された石けんの広告において、

 あたかも、その広告に記載した期限(約1ヶ月)までに対象商品を初めて購入した場合に限り、通常価格の半額で購入することができるかのように表示していたのですが、実際は、10ヶ月ほどの期間、初めて購入した場合に半額で購入できることとしていた、というもので、一年前に出された「アディーレ法律事務所事件」と同じタイプの不当表示です(※アディーレ事件について、当ブログで取り上げてなかったことに今気づきました。ちょうどブログ更新が途切れ途切れの期間だったからで、同業者を擁護しようと思ったわけでは決してございません。)。

【措置命令】

措置命令の概要は、以下の通りです。

  • 上記表示は、対象商品の内容について、優良誤認表示、有利誤認表示であり、景品表示法に違反するものである旨を一般消費者に周知徹底すること。
  •    
  • 再発防止策を講じて、これを役員及び従業員に周知徹底すること。
  •    
  • 今後、表示の裏付けとなる合理的な根拠をあらかじめ有することなく、上記表示(優良誤認表示部分)と同様の表示を行わないこと。
  •    
  • 上記表示(有利誤認部分)と同様の表示を行わないこと。

 なお、先日、三菱自動車の不当表示事件では、課徴金納付命令が出されましたが、本件は平成27年の不当表示であり、景品表示法の課徴金制度の施行は平成28年4月からですので、本件はそもそも対象とならないものです。ただし、今後はこういった事案でも、要件さえ満たしておれば、課徴金の納付を命じられる可能性があるので、事業者は、これまで以上に消費者向けの表示、広告には十分な注意が必要です。

※ 景品表示法は最近の何度かの改正で、条文番号(第○条など)が動いています。ブログなどに記載されている条文番号は当時のものですので、御注意ください。

2017年2月 1日 (水)

Google検索結果の削除を求めた仮処分についての最高裁決定

  比較的大きく各報道機関で扱われていたようですが、6年前に児童買春の疑いで逮捕され罰金の略式命令を受けた男性が、Googleで名前などを入力すると逮捕歴に関する報道内容が表示されるのはプライバシーの侵害だとして、Googleに対して検索結果の削除を求めた仮処分の申立に関して、昨日(1/31)、最高裁判所はこれを認めない決定を出しました(抗告審における棄却決定)。
 しかし、本決定は、この問題についての最高裁としては初めての判断ですし、また、場合によっては検索結果削除の請求が認められる場合もあるとして、その基準を示した点で重要な決定といえます。決定全文は以下のリンク先で読めます。 

裁判所サイト

 この事件は最初のさいたま地裁の決定(平成27年6月25日)において削除請求を認める仮処分決定が出て、それに対するGoogleの不服申立に対して、再びさいたま地裁が請求を認め(仮処分認可決定・平成27年12月22日)、それに対してGoogleが東京高裁に抗告したところ、東京高裁はGoogle側の主張を入れて男性の申立を却下したため(東京高裁平成28年7月12日決定)、男性が最高裁に抗告(許可抗告)し、これに対する判断が今回示された、という流れになります。

 そして、今回の最高裁決定は、

「検索事業者が,ある者に関する条件による検索の求めに応じ,その者のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL等情報を検索結果の一部として提供する行為が違法となるか否かは,当該事実の性質及び内容,当該URL等情報が提供されることによってその者のプライバシーに属する事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度,その者の社会的地位や影響力,上記記事等の目的や意義,上記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化,上記記事等において当該事実を記載する必要性など当該事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもので,その結果,当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には,検索事業者に対し,当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができるものと解するのが相当である。」

 として、検索結果を削除請求できる場合の基準を示しました。

 しかし、本件の事実関係においては、

(本件の児童買春の被疑事実で逮捕という事実は、)「他人にみだりに知られたくない抗告人のプライバシーに属する事実であるものではあるが,児童買春が児童に対する性的搾取及び性的虐待と位置付けられており,社会的に強い非難の対象とされ,罰則をもって禁止されていることに照らし,今なお公共の利害に関する事項であるといえる。また,本件検索結果は抗告人の居住する県の名称及び抗告人の氏名を条件とした場合の検索結果の一部であることなどからすると,本件事実が伝達される範囲はある程度限られたものであるといえる。   
以上の諸事情に照らすと,抗告人が妻子と共に生活し,前記1(1)の罰金刑に処せられた後は一定期間犯罪を犯すことなく民間企業で稼働していることがうかがわれることなどの事情を考慮しても,本件事実を公表されない法的利益が優越することが明らかであるとはいえない。」

として、東京高裁の判断を是認したものです。 

 平成27年12月22日のさいたま地裁での仮処分認可決定では、「忘れられる権利」があるとの判断が示されたことが話題になりましたが、これについては、当ブログで取り上げており、興味のある方はご覧下さい。ただし、東京高裁は、この「忘れられる権利」については否定し、今回の最高裁決定では、それについて特に触れられておらず、個人のプライバシー権と検索事業者の表現の自由のバランスの問題としているようですね。

  → 「「忘れられる権利」を明記した仮処分認可決定(さいたま地裁平成27年12月22日)」(2016/2/27)

 なお、この事件の男性側代理人神田知宏弁護士のブログに、以下の記事がありますので、ご参考まで。その内、今回の最高裁決定についてもお書きになるかもしれません。

「地裁決定が「忘れられる権利」に言及した理由の考察」

「忘れられる権利を否定した東京高裁平成28年7月12日決定」

2017年1月30日 (月)

先日の消費者契約法「勧誘」要件最高裁判決についての消費者庁長官コメント

 ご承知の通り、1月27日に消費者庁三菱自動車に対して、景品表示法違反行為(不当表示)に関する初めての課徴金納付命令を出しました。これについてもブログで書きたいと思うのですが、まだ、ちょっと情報が不足しているように思えますので、ちょっと様子見をしているところです。


 1月24日の消費者契約法に関する最高裁判決については、前々回の記事「広告も消費者契約法上の「勧誘」に含まれるとの新判断(最高裁)」に紹介したところですが、その翌日(25日)の岡村消費者庁長官記者会見で、次のようなコメントが述べられています。

 これは、共同通信の平田記者からの「不特定多数の消費者に向けた広告の解釈というか、状況によっては勧誘に当たることもあるということで、消費者側への影響と事業者側への影響をどう受け止めていらっしゃるかということと、逐条解説の改定とか、消費者庁として何かお考えがあれば。 」という質問に対して、岡村長官は、

 「消費者契約法の逐条解説については、平成28年の改正法の内容を踏まえて、現在改定作業を進めているところでございます。そして、昨日出されました最高裁の判決は、大変重要なものと考えておりますので、逐条解説にその内容を盛り込むとともに、現在改定作業中の逐条解説に必要な修正をした上で、広く周知を図ってまいりたいと思います。」

 「「勧誘」要件の在り方については、現在、内閣府消費者委員会の消費者契約法専門調査会において優先的に検討すべき論点とされており、現在、正に検討が行われているところでございます。したがって、消費者庁としては、今回の判決の内容も踏まえつつ、今後の消費者委員会における審議が一層充実したものとなるよう、引き続き協力してまいります。 」

と答えています。

 ここに出ている「逐条解説」は、消費者契約法が制定された直後の平成13年に出されたものです。記者から、改定はいつ頃になるのか、という質問に対しては、「担当から後で回答します。」と回答されているだけで、特に報道もされていないようですね。


※これは改正前の逐条解説です。

2017年1月24日 (火)

広告も消費者契約法上の「勧誘」に含まれるとの新判断(最高裁)

 本日、消費者契約法に関する重要な最高裁判決(平成29年1月24日 第三小法廷判決)が出されました。

判決文はこちら(裁判所サイト)

 これは、適格消費者団体である京都消費者契約ネットワーク(KCCN)が、サン・クロレラ販売株式会社に対して、「日本クロレラ療法研究会」が作成名義の新聞折込チラシを配布することが、景品表示法の優良誤認表示および消費者契約法の不実告知に該当するものとして、チラシの配布の差止等を求めた消費者団体訴訟ですが、この訴訟の上告審判決です。

【追記】(2/27) 「文化通信」(2/13)掲載の拙稿を、文化通信社の承諾を得て転載しました。)
 → 【コラム3】クロレラチラシ配布差止訴訟最高裁判決が広告に与える影響

 この訴訟の控訴審判決までの経緯は、当ブログでも書いておりますので、そちらをご覧いただきたいのですが、消費者契約法における「勧誘」要件についての重要判断です。

  → 「クロレラチラシ配布差止請求事件の控訴審判決」 (2016/3/4)

 消費者契約の締結について勧誘をするに際して、クロレラの本件広告チラシを配布する行為が、「消費者契約の締結について勧誘をするに際し」ての(法12条1項、2項)、不実告知行為(法4条1項1号)を行うことに当たるか否かについての争点で、これについて控訴審判決(大阪高裁)は否定しました。

 「勧誘」には、不特定多数の消費者に向けて行う働きかけは含まれず、そのような広告は「勧誘」に当たるとは認められない、とする考え方は、この控訴審判決のみならず、消費者庁など行政側の見解でした。

 しかし、同様の特定商取引法上の「勧誘」要件と共に、広告が該当しないとの解釈には批判も多く、昨年の日本消費者法学会第9回大会「広告と消費者法」でも鹿野菜穂子慶應大教授もそのような限定をすべきではないと強調されておりました。私もその通りだと思いますし、先週1月18日に大阪弁護士会でNPO消費者ネット関西の消費者法ゼミで広告・表示について講演した際にも、その点をお話ししていたばかりです。

 今回の判決では後記の通り残念ながらKCCNによる上告は棄却されています。しかし、判決では、この「勧誘」要件について、これまで行政が、含まれないとしていた「広告」も「勧誘」に含まれうることを明らかにしました。

 今回の判決では、控訴審判決の判断は是認できない、として、以下の理由を挙げています。

「法は,消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み,消費者の利益の擁護を図ること等を目的として(1条),事業者等が消費者契約の締結について勧誘をするに際し,重要事項について事実と異なることを告げるなど消費者の意思形成に不当な影響を与える一定の行為をしたことにより,消費者が誤認するなどして消費者契約の申込み又は承諾の意思表示をした場合には,当該消費者はこれを取り消すことができることとしている(4条1項から3項まで,5条)。そして,法は,消費者の被害の発生又は拡大を防止するため,事業者等が消費者契約の締結について勧誘をするに際し,上記行為を現に行い又は行うおそれがあるなどの一定の要件を満たす場合には,適格消費者団体が事業者等に対し上記行為の差止め等を求めることができることとしている(12条1項及び2項)。」 

「上記各規定にいう「勧誘」について法に定義規定は置かれていないところ,例えば,事業者が,その記載内容全体から判断して消費者が当該事業者の商品等の内容や取引条件その他これらの取引に関する事項を具体的に認識し得るような新聞広告により不特定多数の消費者に向けて働きかけを行うときは,当該働きかけが個別の消費者の意思形成に直接影響を与えることもあり得るから,事業者等が不特定多数の消費者に向けて働きかけを行う場合を上記各規定にいう「勧誘」に当たらないとしてその適用対象から一律に除外することは,上記の法の趣旨目的に照らし相当とはいい難い。」

として、

「本件チラシの配布が不特定多数の消費者に向けて行う働きかけであることを理由に法12条1項及び2項にいう「勧誘」に当たるとは認められないとした原審の判断には,法令の解釈適用を誤った違法がある。」

と結論づけたのです。

 ただ、控訴審判決と同様に、「本件チラシの配布について上記各項にいう「現に行い又は行うおそれがある」ということはできない」として、結論的には、上告棄却となりました。

2017年1月13日 (金)

「月刊住職」1月号の法律関係記事を読んで

 当ブログの昨年秋の記事「位置情報とソーシャルゲームの法律問題」(2016/11/17)で、少しだけ触れました雑誌「月刊住職」(興山舎)ですが、バックナンバーを見てもらえばわかるように、記事のかなりの部分は法律関連の記事となっています。

 宗教関係の雑誌なのにと思うのですが、考えてみれば、仏教寺院全体が対象なので、同じ仏教とはいえども各宗派の個別の宗教的な記事は、横断的なものを除いては扱いにくいでしょうから、寺院経営の一般実務的な話題が多くなり、必然的に法律関係記事のシェアが大きいということかもしれません。当該雑誌自体も「寺院住職実務情報誌」と称しています。

 最新の2017年1月号も、法律に関連する記事としては、

「全日本仏教会の前会長の住職が「PL教団の教祖になれる」と吹聴して逮捕された真相」

「寺院が長年占有していれば国が国有地だと主張しても勝訴できる」

「葬送を怠る者や新たな葬法に法律(刑法)は機能し得るか(1)」

「寺院に預けられた少年に体罰したと批判された自称寺院住職の何が問題か」

「すでに施行されているマイナンバーの何が問題か」

「今こそ宗教と法律の問題新講座〔36〕寺院のすべてが個人情報保護法管理下におかれる法改正」

など満載ですし、毎号連載されている法律相談の今月号の質問は、

「責任役員会の決議でも実印捺印の議事録がなければ無効なのか」

「菩提寺には通用しないのを予め告知せず生前戒名を売るのは詐欺か」

というものです。

 他にも、「注目高まる「ビットコイン」はお寺でも使えるのか」などといった面白そうな記事がありますね。

 上記の記事のうち最初の、住職が逮捕された、というのは、昨年12月に住職らが大阪地検特捜部に背任などの疑いで逮捕、起訴されたという最近の事件に関するものです。早い取材だなぁというのが一番の感想ですね。

 上から2番目の寺院の土地占有による国有地の時効取得、というのは、私たちが司法試験受験時代に民法の論点のひとつとして勉強した「公物の時効取得」の問題です。弁護士になってから、そういう問題に当たったことは残念ながらありませんでしたが。

 「寺院のすべてが個人情報保護法管理下におかれる法改正」(櫻井圀郎)という記事は、今般の個人情報保護法改正全面施行の時点では、これまでの小規模事業者の適用除外の規定が撤廃されることから、小さな寺院であっても個人情報取扱事業者となることを踏まえて、改正法(政令等含む)の説明を中心に書かれているものです(次回以降に続くようです。)。
 ただ、この中の「個人情報」の定義の説明で、「したがって、寺院で扱う「檀信徒の情報」は「個人情報」に当たりますが、「過去帳」で扱う「故人の情報」は「個人情報」に該当しません。」とあります。確かに死亡した「故人」は「個人情報」の本人たりえませんが、その家族、子孫らの生存している個人とその「故人」の情報が結びつけられている場合は、全体の情報(例えば、私の亡父に関する情報)としては、生存者(私)の「個人情報」となりますので、現存する檀家の先祖の過去帳記載の情報であれば、「個人情報保護法」の適用外としてしまうことはできないことは多いと思います。

 マイナンバーの記事は、寺院実務に即したものかと期待しましたが、マイナンバー制度を批判的見地から危険性を指摘しているものでした。

 宗教法人関連の事案の法律問題を検討したいときには、ここのバックナンバーも調査しておいたほうがよさそうですね。

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