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2019年7月 3日 (水)

ベネッセの個人情報流出責任を認める判決(東京高裁)


 報道によれば、東京高裁は、ベネッセの個人情報流出事件に対する損害賠償請求訴訟の控訴審において、ベネッセと関連会社シンフォームに1人当たり2千円の支払いを命じた、とのこと(連帯でしょうね。)。この事件ではいくつも訴訟が提起されていますが、ベネッセ本体に賠償が命じられたのは初めてと報じています。報道によれば、東京地裁と横浜地裁の別の事件2件(産経の記事による)について判決が出たようで、原告は計5名とのことです。

 また、このベネッセ事件に携わっておられる金田万作弁護士のtweet弁護団ブログを拝見すると、判決は6月27日で、集団訴訟とは別の訴訟で、1件は、金田弁護士自身が原告となっていた事件で、もう1件は弁護団が控訴審から受任した事件ということです。

 この流出事件やこれまでの判決などについては、以前のこちらの記事をご覧下さい。なお、上記からすると、この私のブログ記事に掲載している東京地裁判決などは今回の控訴審判決とは別の事件だと思います。

 → 「ベネッセ個人情報流出事件の判決(東京地裁)」 (18/12/29)

 → 「ベネッセ個人情報流出事件 最高裁が差し戻し判決」 (17/10/24)

 この事件については、弁護団の集団訴訟が何件かあるうえに、金田弁護士自身が原告の訴訟、それから、個人が本人訴訟で訴えている訴訟が複数あって、それらの判決のほとんどは報道されたり、公表されたりしていませんので、整理するのは難しいですね。

 この内、昨年末のブログ記事は、今日の報道の裁判とは別のもので、顧客ら462人が原告となって、ベネッセシンフォームに計3590万円の損害賠償を求めていた集団訴訟の東京地裁判決(18/12/27)です。こちらは、シンフォームに対してのみ、1人当たり3300円の請求を認めて、ベネッセの損害賠償責任は認めませんでした(控訴)。

 最高裁から差し戻された事件については、大阪高裁で審理中と思われますが、1年半が経過しており、そろそろ差戻審判決かもしれませんね。

 また、本年4月25日には、別の集団訴訟についての東京地裁判決があり、こちらは、シンフォームに対して3300円の損害賠償を認め、ベネッセへの請求は棄却されています。

 

2019年2月19日 (火)

不倫の相手方の損害賠償責任に関する最高裁判決

 本日、最高裁で出ました不倫の相手方の損害賠償責任に関する判決が話題になっていますが、報道記事やその見出しなどは、かなりミスリーディングなものもありますので、ご注意ください。

 → 判決文(裁判所サイト)

 今回の事案は、消滅時効の問題も絡んでおり、最高裁判決だけを見ても、一般の人が理解することは容易ではありません。

 決して、不倫の相手方には、ほとんどの場合に損害賠償責任が生じない、というようなことを最高裁が言ったのではありませんので、ご注意ください。

 ちょっと、次の予定の関係で時間がありませんので、山田祥也弁護士のブログ記事をご紹介しますので、興味のある方はお読みください。

 → 【民法】第三者に対する離婚自体慰謝料に関する最高裁判決について

2018年12月29日 (土)

ベネッセ個人情報流出事件の判決(東京地裁)

 ベネッセコーポレーション(以下、ベネッセ)の顧客個人情報流出事件の判決が報じられています。顧客ら計462人が原告となって、ベネッセと関連会社シンフォームを被告として、慰謝料など計3590万円の損害賠償を求めていたものですが、本年12月27日、東京地裁で判決が出たようです。判決は、シンフォームに対してのみ、1人当たり3300円、計約150万円の請求を認め、ベネッセの損害賠償責任は認めなかったとのこと。
 なお、シンフォームは、この流出事件の後に解散しているようですので、清算手続での対応でしょうか。

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 報道によれば、情報流出は、関連会社のシンフォームで働いていた派遣社員が持ち出したものですが、派遣社員なのでシンフォームの直接の社員ではないものの、実質的な指揮監督関係があるとして、民法上の使用者責任を認めましたが、ベネッセには予見可能性はなく、指揮監督関係もないとして賠償責任を認めませんでした。

 そして、シンフォームの損害賠償額としては、原告1人当たり慰謝料3000円弁護士費用300円が相当としました。

 私も関与したヤフーBB情報流出の裁判では、ヤフー株式会社ソフトバンクBB株式会社(旧・BBテクノロジー)の2社を被告としましたが、一審大阪地裁が顧客情報を直接管理していたソフトバンクBBのみの責任を認め、ヤフーには監督義務違反はない、としました。
 しかし、控訴審大阪高裁は、ヤフーの使用者責任を認めて、両社に対して支払を命じました。控訴審での認容額は5500円(慰謝料4500円、弁護士費用1000円)です。慰謝料額が中途半端なのは、ヤフー側が事件発覚後500円の郵便振替支払通知書を原告ら顧客に送っていることをもって一部の弁済としたものですので、本来の慰謝料額は5000円という認定になります。この件については、下記のブログ記事および記事内のリンク先を参考にしてください。    
「ヤフーBB個人情報漏洩事件控訴審判決(大阪高裁)」 (2007/6/21)

 ところで、このベネッセの情報流出事件に関しては、同様の訴訟が複数起こされています。

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 そのうち、ひとつの事件(未成年者の親が原告、ベネッセが被告)では、一審神戸地裁姫路支部(平成27年12月2日判決。判例時報2351ー11)は、ベネッセの過失行為を基礎付ける具体的事情の主張立証がないとして棄却し、控訴審大阪高裁(平成28年6月29日判決。判例時報2351ー9)は過失の判断はせず、「そのような不快感や不安を抱いただけでは、これを被侵害利益として、直ちに損害賠償を求めることはできない・・・・・上記の不快感や不安を超える損害を被ったことについて主張、立証はない。」として控訴を棄却しました。
 しかし、最高裁(平成29年10月23日判決。判例時報2351ー7)は、「本件個人情報は、上告人のプライバシーに係る情報として法的保護の対象となるというべきであるところ(略)、上記事実関係によれば、本件漏えいによって、上告人は、そのプライバシーを侵害されたといえる。」「しかるに、原審は、上記のプライバシーの侵害による上告人の精神的損害の有無及びその程度等について十分に審理することなく、不快感等を超える損害の発生についての主張、立証がされていないということのみから直ちに上告人の請求を棄却すべきものとしたものである。そうすると、原審の判断には、不法行為における損害に関する法令の解釈適用を誤った結果、上記の点について審理を尽くさなかった違法があるといわざるを得ない。」として、審理を大阪高裁に差し戻しました。したがって、この裁判は、現在、大阪高裁で審理が行われているものと思われます。

 また、別の事件(原告185名、ベネッセシンフォームが被告)では、東京地裁(平成30年6月20日判決。D1-Law.com判例体系)は、被告2社の過失(注意義務違反)を認定しましたが、「・・・本件に顕れた事情を総合的に考慮すると、少なくとも現時点においては、最も多くの種類の個人情報(氏名、性別、生年月日、郵便番号、住所、電話番号、メールアドレス及び出産予定日)が漏えいした原告らであっても、民法上、慰謝料が発生する程の精神的苦痛があると認めることはできないといわざるを得ない。また、漏えいした個人情報の内容以外に、原告らにおいて考慮すべき事情に相違があったことはうかがわれないから、上記よりも少ない種類の個人情報が漏えいしたにとどまる原告らについても同様に、民法上、慰謝料が発生する程の精神的苦痛があると認めることはできない。」として、損害の発生はないという理由で、原告らの請求を棄却しています。上記の最高裁判決の後の判決ですが、損害発生を認めていない点が注目されます。

 なお、この東京地裁判決と同日の平成30年6月20日に千葉地裁でもベネッセを被告とした判決があり(金融・商事判例1548ー48。原告は1家族親子4名のようです。)、ベネッセの過失を認めず請求棄却となっています(確定)。

2018年11月 4日 (日)

「不貞慰謝料の算定事例集ー判例分析に基づく客観的な相場観ー」(新日本法規出版)

 不貞、つまり浮気(ちょっとニュアンスが違うかな)に関する慰謝料の請求の事件というのは、世の中には結構あり、我々弁護士が取り扱うことは珍しくありませんし、私もこれまで結構な数の事案を扱ってきました。
 こういった事案についての、慰謝料金額に関する法律実務の本としては、最近でも、LABO刊の 「判例による不貞慰謝料請求の実務」(中里和伸 ・著) とその姉妹本である 「判例による不貞慰謝料請求の実務 主張・立証編」(中里和伸 野口英一郎・著) があり、私も両書籍を当ブログでご紹介しましたので、内容については、こちらをご覧ください。この手の法律実務書にしては、よく売れていると聞きます。

 → 「書籍の紹介:「判例による不貞慰謝料請求の実務」(中里和伸著)(2015/8/ 5)

 → 「「判例による不貞慰謝料請求の実務〔主張・立証編〕」(LABO刊)」(2017/3/3)

 不貞関連のケースについての裁判や調停、交渉などの仕事の中で、実際にこれらの本の関係個所を引用して裁判で主張するなどして、活用させてもらっています。

 さて、このほど、同様の書籍が新日本法規出版から出版されました。新日本法規出版さんからご恵贈いただき、ざっと読ませていただきましたのでご紹介します。

 「不貞慰謝料の算定事例集ー判例分析に基づく客観的な相場観ー」 (久保田有子・著)です。大阪の弁護士さんたちの共著のようですね。

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 冒頭にあげたLABO版の本2冊は、どちらも裁判例の集積を体系的に整理したり、実際の裁判での主張や立証活動を念頭に置いて解説されています。

 一方、今回の新日本法規版も、多くの裁判例を分析したものであることは同様ですが、ケース毎の事例紹介に重点が置かれていて、冒頭に「状況別慰謝料索引」として、裁判において、不貞の被害を主張する原告が被告に対して不貞慰謝料を請求した裁判例を分析して、状況別に分類したものが置かれています。そして、それぞれの裁判例を順次紹介するという形になっています。

 両者それぞれ特徴があり、どちらがいいとかいうものではありませんが、損害賠償請求の法律上の体系的な整理や訴訟手続実務に関連して参照したい場合は、前者のLABO版を、具体的な事案をわかりやすく整理されたものを参照したい場合には後者の新日本法規版が適しているのではないかな、と思いました。もひとつ、LABO版がA5版の大きさであるのに対して、新日本法規版はB5版で一回り大きくなっており、本文や索引などの文字も大きくなっていますので、我々おじさんたちが、ナントカ・ルーペがなくても見やすいという点はいいですね。その分、置く場所は要りますが。

2018年9月21日 (金)

「星ドラ」ガチャの表示に関する判決

 前回記事で触れましたが、スマホゲーム「星のドラゴンクエスト」(星ドラ)において、期間限定で提供されていたガチャの説明表示に関して、プレイヤーたちが原告となって運営会社スクウェア・エニックスを被告として、ゲーム内通貨の購入金額などの支払を求める訴訟の一審判決が、9月18日に東京地裁で言い渡されました。
 結果は原告らの請求棄却(敗訴)です。この判決を読む機会がありましたので、ご紹介します。(以下は、今回の判決の記載内容に拠っています。)

 この訴訟では、「星ドラ」には「★5そうび」と称する貴重なアイテムを得ることができる「宝箱ふくびき」と称するいわゆるガチャ(ゲーム内通貨を対価とする)の表示が問題となっています。このガチャでは、「★5そうび」が一定の確率で提供されるのですが、期間限定でのみ提供される「★5そうび」(ピックアップそうび)が排出されることとなっており、その説明画面には、「※★5そうびは、上記のそうび(川村注:ビックアップそうび、のこと)の他にも排出される場合があります。」と表示されていました。
 プレイヤーである原告らは、この表示は、ピックアップそうび以外の★5そうびも排出される場合もある、という程度、すなわち、ピックアップそうび以外については低い確率で排出されるという内容であると主張し、にもかかわらず、実際には、ピックアップそうびは極めて低い確率でのみ排出されるようになっていたことに関して、   

  1. 債務不履行解除
  2.    
  3. 錯誤無効
  4.    
  5. 詐欺取消
  6.    
  7. 不実告知(消費者契約法4条1項)に基づく取消
  8.    
  9. 景品表示法違反(優良誤認および有利誤認)

により、1については原状回復請求権、2~4については不当利得返還請求権、5については不法行為に基づく損害賠償請求権により、ゲーム内通貨購入金額の返還を求めるなどしたものです。

 これに対して、今回の判決では、まず、上記の「※★5そうびは、上記のそうびの他にも排出される場合があります。」という表示が意味するところについて、ピックアップそうびの出現確率が他の★5そうびよりも高いことを表示していると認識させるものとはいえず、一般通常人をして、単に、ピックアップそうび以外の★5そうびも排出する可能性があるという事実を指摘しているものと認識されるにとどまる、としました。

 そして、この判断を前提とすれば、原告らの上記1~5の主張には理由がないものとして、原告らの請求を棄却したものです。

 上記の表示についての認識内容について、原告らの主張が認められなかったということになりますが、原告団のTwitterアカウント「星ドラ集団訴訟ツイッター」によると、東京高裁への控訴を準備中とのことです。

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続きを読む "「星ドラ」ガチャの表示に関する判決" »

2018年6月30日 (土)

法律と「消費者」

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 法律において、「消費者」がどのように規定されているか、なのですが、まず、日本国憲法には「消費者」という用語は出てきません。

 現行の法律の名称に、「消費者」が使われているのは、検索してみると、以下の7つでした(検索漏れ等があればご指摘ください。以下、同じく。)。   

  • 消費者基本法
  •    
  • 消費者契約法
  •    
  • 消費者安全法
  •    
  • 電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律
  •    
  • 消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律
  •    
  • 消費者庁及び消費者委員会設置法
  •    
  • 消費者教育の推進に関する法律

 法律の条文の中に「消費者」が出てくるのは、結構多数あるのですが、その内、「消費者庁」「消費者委員会」「消費者物価指数」「消費者団体」「消費者政策」「消費者問題」という形で出てくるものを除くと、70数件の法律に「消費者」という用語が使われていました。もっとも、ほとんどは、抽象的な意味での「消費者」ですが。

 面白いことに、消費者保護法の代表的存在といえる特定商取引法には、「消費者」という言葉は「消費者庁」「適格消費者団体」「消費者委員会」「消費者契約」という形では書かれていますが、「消費者」単体では出てこないのです。これに関連して、最後のところで触れておきます。

 また、「消費者」という言葉について、法律上、一般的な定義付けはありません。各法律ごとで定義をしているものも、下記のように少数であり、多くは、定義されないまま使用されています。
 例えば、消費者政策の核となるべき消費者基本法にも、消費者向け広告表示の一般法である景品表示法にも、「消費者」の定義は書かれていません。

 定義が条文上規定されているものと見ていくと、

消費者契約法では、   

第2条(定義)       
 この法律において「消費者」とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。

 電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律(いわゆる電子契約法)では、   

第2条(定義) (2項)       
 この法律において「消費者」とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいい、(以下略)

 消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律では、   

第2条(定義)       
 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。         
 一 消費者 個人(事業を行う場合におけるものを除く。)をいう。

(以下略)

消費者安全法では、   

第2条(定義)       
 この法律において「消費者」とは、個人(商業、工業、金融業その他の事業を行う場合におけるものを除く。)をいう。

民事訴訟法では、   

第3条の4(消費者契約及び労働関係に関する訴えの管轄権)       
 消費者(個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。以下同じ。)と(以下略)

法の適用に関する通則法も、民訴法と同じ内容です。

 こうして見ると、若干表現に違いはありますが、ほぼ同じで、まず「個人」であること、つまり、法人等の団体は除外され、また、個人であっても、事業として当事者となる場合は除外されること、が要件となっています。そのため、零細な個人事業者やマンションの管理組合などの無知につけこむ悪徳業者の行為に適用されない、という問題が出てくるわけです(救済している裁判例もありますが。)。

 なお、先に述べたように、特定商取引法には「消費者」という用語が単体としては出てこないのですが、第26条(適用除外)の1項には、   

 前三節の規定は、次の販売又は役務の提供で訪問販売、通信販売又は電話勧誘販売に該当するものについては、適用しない。

一 売買契約又は役務提供契約で、第二条第一項から第三項までに規定する売買契約若しくは役務提供契約の申込みをした者が営業のために若しくは営業として締結するもの又は購入者若しくは役務の提供を受ける者が営業のために若しくは営業として締結するものに係る販売又は役務の提供         
(以下略)

と規定されています。   
 この「前三節の規定」とは、訪問販売、通信販売、電話勧誘販売の規制です。「営業のために」「営業として」締結する売買契約等には適用されないので、結局、(若干、異なる部分はありますが)上記の他の法律とほぼ同じようなこととなるわけです。この他、特定継続的役務提供(第50条)訪問購入(第58条の17)にも同様の規定が置かれています。    
 また、業務提供誘引販売の場合は、このような適用除外規定はないのですが、第52条第58条などで、「その業務提供誘引販売業に関して提供され、又はあつせんされる業務を事業所等によらないで行う個人に限る。」という限定がなされています。ドロップシッピング裁判の時にここが争点のひとつになりました。    
 「悪質ドロップシッピング業者に対する勝訴判決(大阪地裁)」 (2011/3/25)

2018年6月 5日 (火)

「八ツ橋」老舗の創業年表示についての訴訟(不正競争防止法)

 昨日、京都銘菓「八つ橋」の老舗である井筒八ッ橋本舗が、別の老舗聖護院八ッ橋総本店の「創業元禄二年」との表示が虚偽であるとして、不正競争防止法に基づき記載の差し止めと600万円の損害賠償を求める訴訟を京都地裁に起こした、と報じられています。

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 報道によれば、井筒八ッ橋本舗は文化2年(1805年)に創業しているが、聖護院八ッ橋総本店の元禄2年(1689年)創業には根拠がないと主張されているようです。

 不正競争防止法という法律は、各種の不正競争行為を禁止する規定がおかれていて、コピー商品であるとか、営業秘密不正取得であるとか、営業誹謗行為であるとか、いろんな行為を禁止しているのですが、今回は、同法2条1項14号の誤認表示行為が問題となるものと思われます。

【不正競争防止法2条1項14号】       
 商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくはその表示をして役務を提供する行為

 こういった行為につき、競争事業者は、当該行為の中止を求めたり(差止)、損害賠償の請求ができます。また、不正の目的で行った場合には、罰則が科されることもあります。

 なお、今回同様、和菓子の製造販売事業者の間で、この不正競争行為が問題となった事例(大阪高裁平成19年10月25日判決・判例タイムズ1259号311頁)があります。これは、「元祖」表示についてです。もう10年以上前ですが、当ブログにも書いていましたので、ご紹介しておきます。さて、本件と比べていかがでしょうか。
(※ この記事中の条文番号等は当時のもので、旧13号→現14号、旧14号→現15号となっていますので、お読み替えください。)

 → 「「元祖」表示が品質表示か?の判決(不正競争)」 (2007/10/30)

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 もっとも、私の子供の頃の八ツ橋は、昔からの焼き八ツ橋だったのですが、今の人は八ツ橋といえば、生八ツ橋のことを考える人が多くなったのではないでしょうか。生八ツ橋を大々的に売り出して、今のようにメジャーにしたのは「おたべ」(株式会社美十)ですね。

2018年5月11日 (金)

メールによる取締役会招集通知の到達

 東京地判平成29年4月13日(金融・商事判例1535号56頁)および東京高判平成29年11月15日(同号63頁)は、ロッテホールディングス(以下、「ロッテH」)の取締役会決議無効確認等請求事件の一審、二審の判決(以下、併せて「本件判決」)です。

 この事案は、社会的にも注目を受け、報道もされていますが、被告(被控訴人)ロッテHの代表取締役だった原告(控訴人)が、ロッテHの取締役会においてなされた「原告を代表取締役から解職する旨の決議」は、取締役会についての原告に対する適法な招集通知が行われなかった瑕疵により無効であると主張して、この取締役会決議が無効であることの確認を求めた裁判です。

 結果は一審、二審とも、取締役会決議は有効として、原告の請求を認めませんでした。

 ただ、本件判決では、この取締役会の招集手続において、原告に対する招集通知を欠いており、法令違反だとしました。それにもかかわらず、裁判所が決議を無効としなかったのは、仮に原告が取締役会に出席しても、決議の結果に影響がないと認めるべき特段の事情があるから、通知を欠いたという法令違反は、決議の効力に影響がなく、決議は有効であるとしたものです(これは従来の最高裁の考え方です。)。

 ここでは、取締役会招集通知が行われたか否か、という争点について、見ていきたいと思います。

 本件判決の認定事実によれば、ロッテHは、この招集通知を、原告を含む各取締役に対し、メール送信によって行いました。しかし、原告は、自らパソコンを操作することはなく、原告のロッテH社内におけるパソコンは、秘書室において管理されており、原告に割り当てられていたメールアドレス宛てに電子メールが送信されることはなく、秘書室も、この原告アドレスの受信状況を確認することはなかったようです。そして、通知メール送信当時の原告が、このアドレスに取締役会の招集通知が送信されることを予期し得たというべき事情はうかがわれない、と認定されています。また、このメールの送信日時は、平成27年7月27日午後11時23分で、取締役会開会は翌日28日午前9時30分と、その間隔が非常に短く、かつ、深夜のメール送信でした。

 このような通知メールの送信が適法な招集通知といえるか、というのが問題となります。(なお、法律的には、招集通知は「意思表示」か否か、という面倒な論点もありますが、ここでは踏み込みません。)

 意思表示の到達について、最高裁は、「意思表示の到達とは、相手方が意思表示を了知し得べき客観的状態を生じたことを意味すると解されている。すなわち、意思表示が相手方にとって了知可能な状態におかれたこと、換言すれば意思表示が相手方のいわゆる支配圏内におかれたことをいうと解される」としています(最判平成10年6月11日、最判昭和43年12月17日、最判昭和36年4月20日)。なので、実際に手紙に書かれている内容を読んでいなくても、自宅のポストに郵便が投函された時点で、意思表示が到達した、と考えるわけです。これらの判決の事案は、もちろん電子メールによる意思表示ではありません。

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 本件一審判決は、上記の最高裁判決を踏襲したうえで、上記のようなメール送信の実態では、「本件メールが上記アドレスに係るメールサーバに記録されたことをもって、原告の了知可能な状態に置かれた(支配圏内に置かれた)ということはできない。その他、本件メールの内容が原告の了知可能な状態に置かれたものと評価すべき事実は見当たらない。」としました。さらに、上記のように、通知メール(深夜)から取締役会開会(翌朝)までの「間隔が非常に短く、かつ、深夜のメール送信であって、メールを確認して当該会議への対応を検討するための時間的余裕がほとんどないこと等をも考慮すると、実質的に見ても、原告に対し本件取締役会の招集通知がされたと評価することは困難である。」として、原告に対する取締役会招集通知がされたということはできず、招集手続には法令違反の瑕疵があるとしたものです。

 もし、この招集通知メールが、原告が普段使っているアドレス宛に送られたというような場合であれば、原告がメールを見ていなくても、原告のメールサーバーに記録された時点で通知が到達した、と見られることになると思いますが、それにしても、ちょっと開催までの間隔は短すぎますので、その点は、通知の到達の問題と別に検討されなければならないと思います。

【参 考】

経済産業省「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」(平成29年6月改訂)3頁~

2018年3月 3日 (土)

徳島市が徳島市観光協会の破産手続開始を申し立てる

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 昨日(3/2)、徳島市が、阿波おどりを主催する徳島市観光協会の累積赤字が膨らんだことを理由として、同協会の破産手続の開始を徳島地裁に申し立てたことが報道されています。徳島市観光協会は、地元の徳島新聞社と共に阿波おどりを主催する公益社団法人です。

 観光協会破産手続の開始を申し立てるというのは異常な事態だと思いますけれども、阿波おどりの運営をめぐる、徳島市徳島市観光協会徳島新聞社の3者間での問題は以前から時々マスコミなどでも取り上げられています。

 たとえば、   

  •  「阿波おどりの運営を巡るトラブルで辞職を迫られたとして、徳島市観光協会の近藤宏章会長が16日、公務員職権乱用の疑いで、同市の遠藤彰良市長に対する告発状を徳島地検に提出した。予備的に強要容疑の告訴内容も含めている。」(2017/3/16産経)      
  •    
  •  「この夏、「阿波おどり」に中止の危機 徳島の地元財界は大騒ぎ!」(2017/6/3現代ビジネス〔週刊現代サイト〕)    
  •    
  •  「徳島市の阿波踊り(8月12~15日)で演舞場の設営工事や入場券販売に関する事務が実行委の定める要領に従わずに行われているとして、徳島市の岡孝治市議が事務処理の停止を求めていた仮処分命令の申し立てについて、徳島地裁が25日までに「(停止する)理由がない」と却下する決定を出したことがわかった。徳島地裁はこの日までに、阿波踊りを主催する市観光協会徳島新聞社などの関係者に決定を送達した。」(2017/7/26毎日)      
  •    
  •  「徳島市の阿波踊りで長年続いている累積赤字解消に向け、市は21日、主催者の市観光協会へ地方自治法に基づく調査に入った。市職員や弁護士、公認会計士らが22日まで、徳島市の阿波おどり会館内にある協会事務局から資料の提供を受け、収支の疑問点がないか調べる。」(2017/11/22毎日)      
  •    
  •  「公益社団法人徳島市観光協会(近藤宏章会長)は1日、現在協会が担っている阿波おどり会館(徳島市)などを運営する次期指定管理候補者に、徳島新聞社などが選定されたことが協会に損害を与えるとして、同社社長ら2人を特別背任の疑いで徳島地検に告訴した。」(2017/12/2毎日)      
  •    
  •  「市から委託を受け、協会の累積赤字について調べていた調査団は5日に市に提出した報告書で、協会内部で赤字解消策が議論された形跡がほとんどないことなどを指摘。協会が阿波踊り事業を続けることが「極めて困難」などとした。」(2018/2/8徳島新聞)    
  •    
  •  「徳島市の阿波踊りに多額の累積赤字が発生している問題で、市は9日、主催者の一つの市観光協会に対し、清算手続きに入るよう求める通知を出した。市は本年度、協会が金融機関から借り入れた4億3600万円の損失補償をしており、年度内に協会が返済できなくなれば市が負担しなければならない恐れがある。このため、保有する財産が減る前にできる限り返済に充ててもらうとしている。」(2018/2/9徳島新聞)

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 こう見てくると、何がどうなっているのか、外部からはさっぱりわかりません。上にもあるように、徳島市は外部の弁護士、公認会計士、学者4名による「阿波おどり事業特別会計の累積赤字の解消策等に関する調査団」に調査をさせており、その調査報告書が今年2月5日付けで出されています。簡単に言うと、徳島市観光協会が多額の累積赤字を解消しつつ、阿波おどり事業を継続していくことは困難であることを指摘していますね。

 → 「阿波おどり事業特別会計の累積赤字の解消策等に関する調査報告書について」 (徳島市サイト)

2018年2月25日 (日)

「ライブ講義 弁護士実務の最前線 vol.1」(法友全期会編・LABO刊)

 東京弁護士会法友全期会が出された「ライブ講義 弁護士実務の最前線 vol.1」を発行所のLABOさんからご恵贈いただきました。

 法友全期会というのは東京弁護士会所属の弁護士たちの会派のひとつですが、そこが平成29年度に開催された会員向け講演会の講演録を出版されたもので、4つの講演で、講師はいずれも弁護士です。それぞれ、そのテーマに最適といえる弁護士が講師となっていますね。また、講演録ですので、コンパクトにまとまっていますし、読みやすく編集されています。

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 内容は、

 1「GPS捜査の最前線」 弁護士 亀石 倫子

 2「メンタルヘルス×労働審判への対応」 弁護士 竹花 元

 

 3「平成26年改正会社法と最近の議論状況
          ~ガバナンスを中心として」 弁護士 深山 徹

 4「システム開発紛争の取扱い」 弁護士 伊藤雅浩

となっていて、どれも時宜にかなったテーマかと思います。

 私は昨年、このうち、亀石弁護士は京都大学での情報法セミナー、伊藤弁護士は名古屋大学での情報ネットワーク法学会で、それぞれ同テーマでの講演を拝聴しておりますので、私にとっては、その時の講演の講演録ともいえます。
 亀石弁護士「GPS端末を車に『ピチョ』っと付ける」というフレーズを私は気に入っているのですが、この本にはその表現は見当たりませんでした。編集者が無粋にも削ったのかもしれません(微笑)

 弁護士向けの講演ではありますが、企業法務で上記問題の対応にあたっておられる方やロースクール生などにも読んでいただける一冊だろうと思います。

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