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2017年10月24日 (火)

ベネッセ個人情報流出事件 最高裁が差し戻し判決

 ベネッセの個人情報流出事件に関して、自分の個人情報が流出したとして、ベネッセに対し、損害賠償を求めた事件について、昨日(10/23)最高裁で判決がありました。

 判決内容は、請求を棄却した大阪高裁判決を取り消して、高裁に差し戻す、というものでした。
 最高裁は、 「原審は,上記のプライバシーの侵害による上告人の精神的損害の有無及びその程度等について十分に審理することなく,不快感等を超える損害の発生についての主張,立証がされていないということのみから直ちに上告人の請求を棄却すべきものとしたものである。そうすると,原審の判断には,不法行為における損害に関する法令の解釈適用を誤った結果,上記の点について審理を尽くさなかった違法があるといわざるを得ない。 」 としました。
 これは、不快感や不安を超える損害がなければ損害とならない、とした高裁の判断を誤り、として、損害について審理をやりなおすように命じたものです。

 → 判決文(裁判所サイト)

 従前、個人情報大量流出事件についての被害者らからの損害賠償請求の事件として有名なのは、次の3事件です。   
 これらの事件は、いずれも、個人情報保護法施行以前に起こった情報流出に関するものです。なお、個人情報保護法自体には、情報流出についての損害賠償責任などの民事的責任が定められた規定はありません。したがって、こういった場合、通常は、民法上の不法行為、もしくは債務不履行責任の問題になります。

 ◎宇治市住民基本台帳データ流出事件
    京都地裁 13.2.23.(慰謝料1万、弁護士費用5千円)
    大阪高裁 13.12.25.(控訴棄却)
    最高裁 14.7.11.(上告不受理)

 ◎TBC事件
    東京地裁 19.2.8.
      (慰謝料1万7千円(1名)、3万円(13名)、弁護士費用5千円)
    東京高裁 19.8.28.(控訴棄却)
 ◎ヤフーBB情報漏洩事件
    大阪地裁 18.5.19.(慰謝料5千円、弁護士費用1千円)
    大阪高裁 19.6.21.(地裁判決から既払500円を減額)
    最高裁 19.12.14.(双方からの、上告棄却 上告不受理)

 この内、最後のヤフーBB事件は、私も弁護団に所属していましたので、当ブログにも判決に関していくつかの記事を書いています。高裁判決の時の記事をリンクしておきます。そこから、いくつかの記事にリンクしてますので、興味のある方はお読みください。

   → 「ヤフーBB個人情報漏洩事件控訴審判決(大阪高裁)」 (2007/6/21)

2017年9月19日 (火)

SNSアカウントなりすまし行為に対する損害賠償訴訟判決(大阪地裁)

 裁判所webサイトの裁判例情報に出ていた判決に「インターネット上の掲示板において,他人の顔写真やアカウント名を利用して他人になりすまし,第三者に対する中傷等を行ったことについて,名誉権及び肖像権の侵害が認められた事例」(平成29年8月30日判決 大阪地裁平成29年(ワ)第1649号 損害賠償請求事件)というのがありました。

 → 裁判所webサイトの判決本文(PDF)はこちらから

 事案を簡単に紹介しますと、あるSNSサービスにおいて、被告が、原告と同じアカウント名を設定したうえ、プロフィール画像に原告の顔写真を使用して、なりすまし行為を行ったうえで、他者に対する誹謗中傷、差別表現の投稿を多数行ったというもので、これに対して、原告が、名誉権,プライバシー権,肖像権及びアイデンティティ権を侵害されたとして,被告に対し,不法行為に基づき,慰謝料,発信者情報開示費用及び弁護士費用の合計である損害賠償金723万6000円及び遅延損害金の請求を行った、という訴訟です。請求金額の内訳は、慰謝料600万円、発信者情報開示費用(開示手続の弁護士費用)58万6千円、本件訴訟弁護士費用65万円となっています。

 結論から言うと、大阪地裁は、被告に対して、損害賠償として130万6千円(慰謝料60万円、発信者情報開示費用58万6千円、弁護士費用12万円)と遅延損害金の支払を命じています。

 裁判所の判断の詳細は、上記リンク先から判決本文を見ていただきたいのですが、原告が本件の請求の根拠としている名誉権、プライバシー権、肖像権、アイデンティティ権についての判断を見ますと、まず、「第三者に対し、原告が他者を根拠なく侮辱や罵倒して本件掲示板の場を乱す人間であるかのような誤解を与えるものであるといえる」として、名誉権の侵害は肯定されています。

 次にプライバシー権ですが、原告の主張はプロフィール画像を原告の顔写真にして公開したことがプライバシー権侵害であるというものであるところ、この顔写真は原告によって自らのプロフィール画像として公開されていたものであるから、「原告の顔写真は、原告によって第三者がアクセス可能な公的領域に置かれていたと認めるのが相当であり、他人に知られたくない私生活上の事実や情報に該当するということはできない。」として、プライバシー権によって保護するものではない、と否定されました。

 肖像権については、最高裁判例を引用して、「他人の肖像の使用が違法となるかどうかは、使用の目的、被侵害利益の程度や侵害行為の態様等を総合考慮して、その侵害が社会生活上受忍の限度を超えるかどうかを判断して決すべきである」としたうえで、「被告は、原告の顔写真を本件アカウントのプロフィール画像として使用し、原告の社会的評価を低下させるような投稿を行ったことが認められ、被告による原告の肖像の使用について、その目的に正当性を認めることはできない」「(投稿内容は)原告を侮辱し,原告の肖像権に結びつけられた利益のうち名誉感情に関する利益を侵害したと認めるのが相当である。」として、権利侵害を認めています。

 最後にアイデンティティ権ですが、原告の主張は、憲法13条後段の幸福追求権又は人格権から、他者との関係において人格的同一性を保持する利益であるアイデンティティ権が存在するとして、本件のなりすまし投稿行為は原告のアイデンティティ権を侵害したというものです。   
 今回の大阪地裁判決では、「個人が,自己同一性を保持することは人格的生存の前提となる行為であり,社会生活の中で自己実現を図ることも人格的生存の重要な要素であるから,他者との関係における人格的同一性を保持することも,人格的生存に不可欠というべきである。したがって,他者から見た人格の同一性に関する利益も不法行為法上保護される人格的な利益になり得ると解される。」として、人格の同一性に関する利益も考えられるとしたうえで、   
「他者から見た人格の同一性に関する利益の内容、外縁は必ずしも明確ではなく、氏名や肖像を冒用されない権利・利益とは異なり、その性質上不法行為法上の利益として十分に強固なものとはいえないから、他者から見た人格の同一性が偽られたからといって直ちに不法行為が成立すると解すべきではなく、なりすましの意図・動機、なりすましの方法・態様、なりすまされた者がなりすましによって受ける不利益の有無・程度等を総合考慮して、その人格の同一性に関する利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものかどうかを判断して、当該行為が違法性を有するか否かを決すべきである。」としました。   
 そして、本件では、なりすましが正当な意図,動機によるものとは認められないけれども、「なりすましの方法,態様についてみると、本件サイトの利用者は、アカウント名・プロフィール画像を自由に変更することができることからすると、社会一般に通用し、通常は身分変動のない限り変更されることなく生涯個人を特定・識別し、個人の人格を象徴する氏名の場合とは異なり、利用者とアカウント名・プロフィール画像との結び付きないしアカウント名・プロフィール画像が具体的な利用者を象徴する度合いは、必ずしも強いとはいえない」、「原告が被告によるなりすましによって受けた不利益についても、「原告の名誉権及び肖像権の侵害による不利益については別に不法行為上の保護を受ける」し、その余の不利益についても、なりすましは本件サイト内の投稿にとどまること、投稿の直後から他の本件サイト利用者により、投稿が原告本人以外の者によるものである可能性が指摘されていたことが認められること、なりすましは短期間(約1か月余り)であったこと、などの事実を総合考慮すれば、被告のなりすまし行為(名誉権侵害行為,肖像権侵害行為は除く)による原告の人格的な利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものとまでは認められない、として、本件のなりすまし自体は違法とまではいえないという判断をしました。

 つまり、名誉権肖像権の侵害は認め、プライバシー権アイデンティティ権の侵害は認めなかったということになります。ただ、後者の2権利についても、なりすましの行為態様によっては、侵害が認められる場合もあることを示しているので、参考になろうかと思います。

2017年8月10日 (木)

朝鮮学校無償化裁判判決についてネット炎上している裁判長代読などについて

 先日の大阪地裁での朝鮮学校の授業料無償化に関する判決について、なんだかTwitterなどネット上で炎上しているようです。

 もちろん、これに限らず、判決の内容、結論について、賛否いろんな議論がされるのは結構なんですが、今回は変なところで炎上しており、判決自体の議論の邪魔にもなるので、取り上げてみます。

 問題とされているのは、この判決の裁判長である西田隆裕裁判官が、4月1日で裁判官から検事になっており、判決当日は裁判官ではないのに、別の裁判官の代読という形で判決が言い渡されているのは違法で判決は無効ではないか、という批判です。なお、この裁判は、西田裁判官の単独の判決ではなく、3名の裁判官の合議体での判決であり、他の2名の裁判官については、そのままです。

 しかし、上記の批判はあたらない、というか、訴訟を知ってる実務家であれば、誰も疑問に思わないところだと思います。

 まず、判決言い渡しの日までに異動(転勤)や定年退官、辞職などがあった場合に、代わりの裁判官が代読するのは別に珍しいことではなく、よくあることです。特に4月の異動は多いですので、その後くらいの判決では多いですね。私もそのような判決を受けたことは何回も経験しています。退官や辞職の場合は、判決の当日には既に裁判官ではなくなっているのですが、それが違法というわけではありません。

 若干脱線しますが、弁護士から任官された裁判官が「弁護士任官どどいつ」というのをたくさん作られていますが、その中に、4月のどどいつとして、こんなのを作っておられます。

  「なんで私が テレビに映る 代わりに判決 読んだだけ」

その解説として、   
「裁判官の転勤は4月が多い。判決を書くのは結審時の裁判官なのだが、言渡しが転勤後になった場合は、後任の裁判官が代読する事になっている。社会の注目を集める判決の場合でも、法廷撮影で映るのは、実は判決に全く関与していない裁判官という事も少なくない。(略)」   
とあります。 → 弁護士任官どどいつ(7)

 それと、炎上の内容として、西田裁判長が4月に裁判官から検事に任官していることが、弾劾逃れだとか、というのもあるのですが、これも間違いです。

 今回は、西田裁判官が、4月から大阪国税不服審判所の所長に就任したのですが、この大阪国税不服審判所の所長は、これまで裁判官が就任することが通例となっています。前の所長も裁判官です。なお、東京国税不服審判所の所長は、検察官が就任するのが通例です。国税不服審判所の審判官には、裁判官、検察官、弁護士、会計士などいろんな所から任官されています。

 したがって、西田裁判官の場合も、いわば異動(転勤)みたいなもので、本人が弾劾逃れで仕事を変えたとかというものではありません。ただ、国税不服審判所は、裁判所ではありませんので、移るにあたって、いったんは裁判所から離れて(裁判官をやめて)、「検事」の肩書になるものです。何年かして、所長交代の際には、裁判所に戻るのが普通です(定年等の事情がない限り)。

 このあたりのところは、なかなか文献等はないのですが、なぜかwikipediaに具体的な説明がなされてましたので、リンクを貼っておきますね。しかし、こんなマニアックな解説を書いたのは誰なんだろうと思ってしまいました。内部の方でしょうか?

 → Wikipedia「国税不服審判所」 (組織)   
「なお、行政審判機関としての性格や、国税庁に対する中立性・第三者性保持の観点から、国税不服審判所本部所長には裁判官からの出向者が、主要支部である東京国税不服審判所長には検察官からの出向者が、同じく大阪国税不服審判所長には裁判官からの出向者が充てられるのが通例である。このほか、本部及び主要支部に、裁判官又は検察官からの出向者が若干名配置されている(なお、裁判官からの出向者の出向中の身分(官名)は、検察官からの出向者と同じく「検事」となるのが例である。)。」

2017年7月26日 (水)

美容クリニックの院長氏が起こした名誉毀損請求訴訟

 美容クリニックの有名院長氏が、国会議員と民進党を被告として名誉毀損の民事訴訟を起こしたようで、先日第1回口頭弁論期日があったことが報じられています。その報道によれば、第1回期日に出頭された院長氏がいろいろとおっしゃっているようですが、訴訟手続を知っていれば、いろいろと疑問なことを話しておられたらしいです。

 この点について、弁護士さんがブログで詳細に書いておられますので、ご紹介します。要するに、民事訴訟の第1回口頭弁論期日では当たり前のことがあった、というだけのことになります。

 もっとも、院長氏はそのようなことはわかった上でおっしゃってるのかも知れませんけども。

 → 弁護士三浦義隆のブログ
     「高須院長の訴訟を題材に民事訴訟手続の流れを解説しよう

 なお、この関連で、テレビ番組で、浅野元宮城県知事が、「名誉毀損は事実と違うことを提示して名誉毀損するっていうんだけど」として、院長氏を批判したらしいですが、民事にせよ、刑事にせよ、名誉毀損というのは、真実でないことを言って名誉を毀損する場合だけではなくて、それが真実であっても成立します。たとえば、私に、殺人の前科があったとして、そのことは回りの人は知らないのに、「あいつは人殺しだ。」と言いふらしたような場合には、内容は真実ではありますが、名誉毀損が成立する可能性は十分にあります(もっとも、真実であれば、責任が問われない場合もあるとか、他にいろいろと例外的なことは法的にはあるのですが、複雑になるので、ここでは全て省略します。)。

【追記】(7/27)

弁護士ドットコムにこんな記事が出てました。
 → 「高須院長「民進党は何も反論しなかった」は誤解?」 

2017年6月21日 (水)

消費者支援機構関西が特定適格消費者団体の認定を受けました。

 本日、特定非営利活動法人「消費者支援機構関西」(略称「KC's」〔ケーシーズ〕)に対して、消費者庁は、特定適格消費者団体の認定を行いました。

  → 消費者庁サイト

  → 消費者支援機構関西サイト

 特定適格消費者団体は、昨年(平成28年)10月1日に施行された「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」に基づく集団的消費者被害救済訴訟の原告となることができる団体で、これは、これまで消費者契約法に基づいて認定され、同法や特定商取引法景品表示法食品表示法の違反行為に対して差止訴訟を提起することができる「適格消費者団体」(現在16団体)の中から申請に基づいて認定されます。
 これまでに、消費者機構日本(COJ)特定適格消費者団体の第1号として認定を受けており、今回の消費者支援機構関西が2団体目です。他にも認定を目指す団体はあろうかと思いますが、現時点では他に申請を行ったところはないと思います。

 消費者支援機構関西は、私も少しお手伝いしており、今回の認定に至るまでのご苦労を近くで見ていた者として感慨深いものがあり、関係者の皆さんに敬意を表します。ただし、実際にこの集団的消費者被害救済訴訟を担当していくことは様々な困難があると予想され、今後の一層の頑張りが必要になってきます。なお、今のところ、実際にこの訴訟は提起されていません。

 集団的消費者被害救済訴訟の制度はちょっとややこしい2段階構造になっているので、ここでは説明を省略しますが、興味のある方は、以下のサイトをご覧下さい。

  → 政府公報「消費者団体訴訟制度の活用を」! 
      (差止訴訟と被害回復訴訟の両方の一般広報)

  → 政府インターネットテレビ「新たな消費者団体訴訟制度」 (動画)

  → 消費者庁サイト
      (集団的消費者被害救済制度の法令の他、Q&Aにリンク)

  → 消費者機構日本(COJ)サイト「消費者団体訴訟制度とは」

      (差止訴訟と被害回復訴訟の解説)

2017年6月13日 (火)

美容室などを対象とした民事調停一斉申立(JASRAC)

 日本音楽著作権協会(JASRAC)が、公式サイトで、本日、BGMを利用する美容室などの店舗に対して全国一斉に法的措置(簡易裁判所への民事調停申立)を行ったことを公表しています。

 これは最近話題になった音楽教室から使用料を徴収する方針の件とは別の問題です。

 「BGMを利用していながら、著作権の手続きをしていない美容室など」に対して調停申立を行ったとのことですので、おそらくは、CDやダウンロードした音源を営業時にBGMとして顧客向けに流していたのではないかと思われます。調停の具体的内容は記載されていませんが、過去の使用料相当分の支払いと今後の契約締結でしょうね。調停や裁判にはなりませんでしたが、JASRACからこのような要求が来た、という相談は何度か受けたことがあります。

 本日の公表によれば、今回の一斉調停申立は、178事業者、352店舗に対して行われたとのことであり、そのうち163事業者、205店舗が美容室ということですので、美容室を主なターゲットにしたもののようです。

 JASRACは、昨年6月にも美容室を主な対象としてに一斉調停申立を行っています(プレスリリース)。このときは、187事業者、212店舗に対する調停申立で、そのうち132事業者、151店舗が美容室とのことです。

 この2016年6月のプレスリリースには、「BGMを流す施設の著作権管理を開始した14年前(2002年)は、有線音楽放送などの業務用BGMの利用が主流であり、著作権の手続きはそれらを提供している事業者が施設に代わって行っていたことから、ほとんどの施設が個別にJASRACに手続きをする必要はありませんでした。近年、BGMの音源が多様化(市販のCD、携帯音楽プレーヤー、パソコン、インターネットラジオ等)しており、こうしたBGMの利用については、施設ごとに著作権の手続きを行っていただく必要があります。」との記載がありますね。

 一昨年にも一斉申立を行っていて、このときは171事業者、258施設(美容室、理容店、アパレル店、飲食店他)が対象になっており(プレスリリース)、このような一斉申立は今回が3回目とのことです。

 この使用料請求は、現在の著作権法においては、当然にできるものと考えられますので、理美容室や飲食店などの経営者の方は気をつけないと、遡って多額の請求をされる可能性がありますので御注意ください。また、今後のBGM音楽使用については著作権法の専門家に相談されたほうがよいかと思います。著作権に関するネット上の情報は、法律的にはかなり間違ったものが出回っていますので。

2017年3月 3日 (金)

「判例による不貞慰謝料請求の実務〔主張・立証編〕」(LABO刊)

 一昨年に出版された「判例による不貞慰謝料請求の実務」(中里和伸著)については、当ブログでもご紹介しました。不貞行為の慰謝料については、実際に法的な紛争になることも多く、私たち弁護士にとっては(自分自身が不貞とは無縁の人であってもです〈笑〉)関与する機会の多い分野といっても良いかと思います。実際に、私が関わっている不貞慰謝料請求の訴訟手続の中で、この本は非常に参考になりました。

 → 「書籍の紹介:「判例による不貞慰謝料請求の実務」(中里和伸著)」(2015/8/ 5)

 そして、この本の姉妹編となる「判例による不貞慰謝料請求の実務〔主張・立証編〕」(中里和伸・野口英一郎著・LABO刊)が出版とのことで、3月10日発売開始予定となっています。Amazonでは予約受付中となっていますが、ありがたいことに編集者よりご恵贈いただき、一足先に入手できましたので〔関係性明示(笑)〕、ここにご紹介させていただきます。なお、東京地裁や日弁連会館の地下の書店では既に販売が開始されているようです。

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 前の本が、不貞慰謝料に関する多くの裁判例を整理して、理論的な問題や具体的な慰謝料の算定等について紹介されていたのに対し、本書は実際の民事訴訟手続における「主張・立証」活動を対象としています。
 したがって、特に我々弁護士にとっては極めて実践的で有益な内容になっていますね。

 目次は以下の通りですが、巻末の裁判例一覧には、前の本の出版以降に出された裁判例が追補となっています。また、書式集も実務的に役立つものが掲載されています。

 序 章 不貞行為の歴史
 第1章 不貞慰謝料請求訴訟の提起から終結に至るまでの時系列の流れ
 第2章 不貞慰謝料請求訴訟における典型的な主張と反論の構造
 第3章 民事訴訟における事実認定
 第4章 不貞行為の証拠の入手方法と裁判例
 第5章 不貞慰謝料請求訴訟と渉外問題
 第6章 不貞慰謝料請求訴訟と弁護士職務基本規程

 〔裁判例一覧〕
 〔実務に役立つ書式集〕

2017年2月27日 (月)

クロレラ最高裁判決についての記事を「文化通信」より転載

 消費者契約法の「勧誘に際し」の解釈に関してのクロレラチラシ配布差止請求訴訟の最高裁判決(本年1月24日)について、2月13日付のメディア専門誌「文化通信」に拙稿が掲載されました。

 文化通信社のご了解を得て、当ブログ右上の【コラム】に追加しましたので、興味のある方はご覧ください。

【コラム3】クロレラチラシ配布差止訴訟最高裁判決が広告に与える影響

190213

 


2017年2月21日 (火)

割賦販売法上の取消権(不実告知)についての最高裁判決

 先日の消費者契約法の解釈に関する判決に引き続き、消費者と業者間の契約の取消等に関して、本日、最高裁判所が興味深い判決を出しました。クレジット契約の名義貸しの事案において、割賦販売法(割販法)に基づく取消(不実告知)に関する新しい判断を示して、高裁判決を破棄し、裁判を札幌高裁に差し戻したものです。

 本件は、資金繰りに困っていた販売業者に頼まれて、既存顧客であったクレジット名義人が上告人ら(複数)で、信販(クレジット)会社が被上告人です。もともとは、信販会社(原告)が、契約名義人の名前でクレジットの分割払いを続けていた販売業者が倒産して支払が止まったため、契約名義人を被告として、未払い分の支払を請求した裁判です(反訴もあるようですが省略します。)。

 控訴審判決は、本件の販売業者の告げた内容が、取消の原因となる「不実告知」に該当しないとするなどとして、契約名義人にクレジットの支払義務があると判断して、信販会社の請求を認めました。

 しかし、本日の最高裁判決は、本件告知内容は不実告知に該当するとし、さらに契約の動機や経緯に関して審理が必要として、高裁に差し戻したものです。なお、山﨑敏充裁判官の反対意見が付いています。

  → 判決文(裁判所サイト)

 本件の販売業者は,上記の依頼をするに際し,上告人らに対して、「ローンを組めない高齢者等の人助けのための契約締結」であり、「高齢者等との売買契約や商品の引渡しは実在する」ことを告げ、「支払については責任をもってうちが支払うから、絶対に迷惑は掛けない。」などと告げていたものでした。つまり、名義を借りる理由として、他の顧客が存在して、高齢者などでクレジット契約ができない人がいるから、ということを言って、自分の資金繰りの目的は言っていなかったようです。

 本件で争点は、

① 契約のうち、改正割販法の施行(平成21年12月1日)以降に締結されたもの
 については、改正割販法35条の3の13第1項により立替払契約の申込みの意
 思表示を取り消すことができるか否か、

② 改正割販法の施行前の契約については、改正前割販法30条の4第1項(抗弁
 権の接続)により本件販売業者に対して生じている売買契約の無効等の事由を
 もって被上告人に対抗することが信義則に反するか否か、

です。

 改正割販法35条の3の13第1項では、「契約の締結について勧誘をするに際し、次に掲げる事項につき不実のことを告げる行為をしたことにより当該告げられた内容が事実であるとの誤認」をした場合(不実告知)などは、契約の意思表示を取り消せる、としています。・・・上記①

 また、改正前はそのような取消権がなかったのですが、改正前割販法30条の4第1項(改正後も同内容の規定となっています。)には、信販会社に対するいわゆる抗弁権の接続の規定があり、販売業者に対して生じている事由を、信販会社に対しても主張できる、という規定になっています。この主張を行うことが、本件では信義則に反しないか、ということですね。・・・上記②

 札幌高裁の判決では、   

  1.  まず、割販法の「不実告知」の対象となる事項について、割販法30条の4第1項6号の重要事項には、「立替払契約又は売買契約に関する事項であって購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものであれば、契約内容や取引条件のみならず、契約締結の動機も含まれる。」として、契約の動機も、不実告知の対象となるとしました。この判断は、今回の最高裁判決でも維持されており、重要な判断です。      
  2.    
  3.  次に、本件において販売業者が契約名義人に対して告げた内容が、不実告知に該当するかどうか(上記①)ですが、これについては、該当しない、としました。    
     その理由は、契約締結の主たる動機は、販売業者が、契約名義人らが信販会社に対して支払う金銭を補塡すると約束した点にあり、販売業者は契約の締結時に、その支払をする意思なしに約束をしたということはできないから、販売業者が告げた内容に虚偽はない。高齢者等の人助けのための契約締結である、などと告げた内容は契約名義人らの判断に影響を及ぼすこととなる重要なものには当たらず、不実告知の対象とはならない、として、否定したものです。      
  4.    
  5.  改正前契約に関する抗弁権接続の問題に関しては、信販会社からの契約確認電話に対し、契約名義人らは、契約締結の意思があり、商品を受け取っていると回答しており、上記の通り改正後の「不実告知」の対象ともなっていない、販売業者の不正の意図を知らなかったとしても、名義貸しは一般常識に照らして不正な取引であることは認識することができたもので、販売業者との契約が無効であることを理由に信販会社に対抗することは、信義則に反する、として、これも否定しました。

 これに対して、今回の最高裁判決は、   

  1.  上記札幌高裁判決の1の判断(契約の動機も不実告知の対象)は是認できる、としました。      
  2.    
  3.  上記2の点について、名義貸しであったとしても「それが販売業者の依頼に基づくものであり、その依頼の際、契約締結を必要とする事情、契約締結により購入者が実質的に負うこととなるリスクの有無、契約締結によりあっせん業者に実質的な損害が生ずる可能性の有無など、契約締結の動機に関する重要事項について販売業者による不実告知があった場合には、これによって購入者に誤認が生じ、その結果、立替払契約が締結される可能性もあるといえる。このような経過で立替払契約が締結されたときは、購入者は販売業者に利用されたとも評価し得るのであり、購入者として保護に値しないということはできないから、割賦販売法35条の3の13第1項6号に掲げる事項につき不実告知があったとして立替払契約の申込みの意思表示を取り消すことを認めても,同号の趣旨に反するものとはいえない。」としました。      
     そして、本件では、名義貸しを必要、とする高齢者等がいること上記高齢者等を購入者とする売買契約及び商品の引渡しがあること並びに上記高齢者等による支払がされない事態が生じた場合であっても本件販売業者において確実に改正後契約に係る上告人らの被上告人に対する支払金相当額を支払う意思及び能力があることといった、契約締結を必要とする事情、契約締結により購入者が実質的に負うこととなるリスクの有無及びあっせん業者に実質的な損害が生ずる可能性の有無に関するものということができる。したがって、上記告知の内容は、契約締結の動機に関する重要な事項に当たるものというべきである。」として、販売業者の改正後契約の契約名義人に対する告知は割販法35条の3の13第1項6号の「購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」に当たるというべき、としました。      
  4.    
  5.  以上の判断をもとに、札幌高裁上記2(不実告知)の判断、それを前提とした上記3(抗弁権の接続)の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があるので、控訴審判決は破棄し、契約名義人らの誤認の有無(争点①)、契約に応じた動機や経緯など(争点②)について、さらに審理が必要だとして、差し戻しを命じたものです。

 この判決により、札幌高裁での差戻審において、最高裁判決に示された事項について審理が続けられることになります。

2017年2月 3日 (金)

「ビタミンでシミを洗い流す」石けんに対する不当表示措置命令

 昨日(2/2)、消費者庁は、株式会社Xena(ジーナ・福岡市中央区)に対して、販売する「VCソープ」と称する石けんの表示について景品表示法に違反する行為(優良誤認表示および有利誤認表示)があったとして、措置命令を命じました。

 → 消費者庁公表資料(PDF)

 普通は、優良誤認表示有利誤認表示のどちらかの行為が対象となることがほとんどですが、たまに両方いわれることもあります(あの「スカスカおせち事件」も両方です  →  「バードカフェおせち事件に関する措置命令及び要請(景品表示法・消費者庁)」 (2011/2/22))。

【優良誤認表示】

 措置命令の対象となった優良誤認表示は、情報誌に掲載された石けんの広告において、

○ 「シミを『ビタミン洗顔』で洗い流しませんか?」

○ 「長年の肌悩み、あきらめる前に!」

○ 「あれ?またシミが・・・」

○ 「それにしても、ビタミンで洗うとは一体!?なんでも、長年しみついた悩みやくすみを、洗顔だけで洗い流すというのだ!」

○ 「このビタミン洗顔だからこそ、シミのもとメラニンを含む、古い角質まで洗い流せるんだとか!」

のような表示を行って、あたかも、この石けんを使用することによって、シミを解消又は軽減することができるかのように示す表示をしていた、というもの。

 この表示について、消費者庁「不実証広告制度」(景品表示法7条2項)に基づき、Xenaに対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社から資料が提出されましたが、それら資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかったため、優良誤認表示とみなされたものです。

 この不実証広告制度において、資料提出が期限が定められますが、通常は15日ですので、新たに資料を集めたり、実験を行ったりするヒマがありませんので、事業者としては、この種の広告を行うのであれば、十分な資料を事前に揃えておく必要があります。また、この根拠資料としては、かなり客観的なものを求められます。詳しくは、消費者庁「不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針」(不実証広告ガイドライン)をご覧下さい。このガイドラインに関する判決については、当ブログで書いてますし、 「実務に効く公正取引審決判例精選」(泉水文雄・長澤哲也編/有斐閣)に簡単にですが解説を書いています。

 → 当ブログ 「景表法・不実証広告規定に関する判決(東京高裁)」 (2010/11/14)

【有利誤認表示】

 有利誤認表示のほうは、情報誌に掲載された石けんの広告において、

 あたかも、その広告に記載した期限(約1ヶ月)までに対象商品を初めて購入した場合に限り、通常価格の半額で購入することができるかのように表示していたのですが、実際は、10ヶ月ほどの期間、初めて購入した場合に半額で購入できることとしていた、というもので、一年前に出された「アディーレ法律事務所事件」と同じタイプの不当表示です(※アディーレ事件について、当ブログで取り上げてなかったことに今気づきました。ちょうどブログ更新が途切れ途切れの期間だったからで、同業者を擁護しようと思ったわけでは決してございません。)。

【措置命令】

措置命令の概要は、以下の通りです。

  • 上記表示は、対象商品の内容について、優良誤認表示、有利誤認表示であり、景品表示法に違反するものである旨を一般消費者に周知徹底すること。
  •    
  • 再発防止策を講じて、これを役員及び従業員に周知徹底すること。
  •    
  • 今後、表示の裏付けとなる合理的な根拠をあらかじめ有することなく、上記表示(優良誤認表示部分)と同様の表示を行わないこと。
  •    
  • 上記表示(有利誤認部分)と同様の表示を行わないこと。

 なお、先日、三菱自動車の不当表示事件では、課徴金納付命令が出されましたが、本件は平成27年の不当表示であり、景品表示法の課徴金制度の施行は平成28年4月からですので、本件はそもそも対象とならないものです。ただし、今後はこういった事案でも、要件さえ満たしておれば、課徴金の納付を命じられる可能性があるので、事業者は、これまで以上に消費者向けの表示、広告には十分な注意が必要です。

※ 景品表示法は最近の何度かの改正で、条文番号(第○条など)が動いています。ブログなどに記載されている条文番号は当時のものですので、御注意ください。

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