カテゴリー「芸能・アイドル」の6件の記事

2008年7月13日 (日)

ピンクレディが出版社の写真使用を訴えた事件の判決(東京地裁)

 マスコミでも報道されましたが、ピンクレディの写真を無断で使用した記事を女性週刊誌に掲載した出版社(光文社)を被告として、ピンクレディの2人が原告となって、不法行為(パブリシティ権侵害。民法715条)に基づいて、損害賠償金及び遅延損害金の支払を求めた裁判の判決です。最高裁サイトの知的財産裁判例集に掲載されています。

 東京地裁平成20年7月4日判決 損害賠償請求事件
                  (請求棄却)

 被告発行の週刊誌「女性自身」に、ピンクレディが「渚のシンドバッド」「ウォンテッド」「ペッパー警部」「UFO」「カルメン’77」の5つの楽曲における振り付けを利用したダイエットに関する「ピンク・レディーdeダイエット」と題する記事が掲載され、ピンクレディが写っている写真14枚も掲載されている、というものです。なお、記事の具体的な内容は判決に摘示されていますので、ご参照下さい。

 判決は、まず、「パブリシティ権」について、「人は、著名人であるか否かにかかわらず、人格権の一部として、自己の氏名、肖像を他人に冒用されない権利を有する。人の氏名や肖像は、商品の販売において有益な効果、すなわち顧客吸引力を有し、財産的価値を有することがある。このことは、芸能人等の著名人の場合に顕著である。この財産的価値を冒用されない権利は、パブリシティ権と呼ばれることがある。」としました。

 そして、他方で、「芸能人等の仕事を選択した者は、芸能人等としての活動やそれに関連する事項が大衆の正当な関心事となり、雑誌、新聞、テレビ等のマスメディアによって批判、論評、紹介等の対象となることや、そのような紹介記事等の一部として自らの写真が掲載されること自体は容認せざるを得ない立場にある。そして、そのような紹介記事等に、必然的に当該芸能人等の顧客吸引力が反映することがあるが、それらの影響を紹介記事等から遮断することは困難であることがある。」ともして、

 「芸能人等の氏名、肖像の使用行為がそのパブリシティ権を侵害する不法行為を構成するか否かは、その使用行為の目的,方法及び態様を全体的かつ客観的に考察して、その使用行為が当該芸能人等の顧客吸引力に着目し、専らその利用を目的とするものであるといえるか否かによって判断すべきである。」としました。

 そして、本件の記事や写真の掲載態様などからして、殊更原告らの肖像を強調しているものではなく、「原告らの顧客吸引力に着目し専らその利用を目的としたものと認めることはできない。」と判断し、不法行為は構成しないとして、ピンクレディの請求を棄却したものです。

 記事の現物は見てませんので、特に写真の掲載態様などがよく分からないので何とも言えませんが、判決摘示の事実関係から見て、私としては、かなり微妙な事案ではないかと思っています。

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2008年3月23日 (日)

AKB48の企画中止と独占禁止法

 一般紙などには報道されてないので気づかなかったのですが、独占禁止法がらみで面白いのを見つけました。ひさしぶりの芸能ネタでもあります。
 昨年末の紅白にも出た人気女性アイドルグループの「AKB48」に関するものです。ファンにとっては古いニュースかも知れませんけども。

 AKB48のシングルCD「桜の花びらたち2008」(2月27日発売)について、公式サイト上で2月25日に、秋葉原「AKB48劇場」での先行販売分(2月26日から)に、特別プレゼントとしてメンバー全員分のソロポスター44種類がもらえ、全種類集めると特別のイベント「春の祭典」に招待されるという特典が発表されました。
 これは、CD1枚購入でポスターが1枚付くというもので、しかもポスターの種類は指定できずランダムで渡されるので、全種類集めるためには相当数のCDを買う必要があったものです(最低でも44枚必要ですが、確率的にはすごい枚数を買わなきゃ独力では無理でしょうね)。

 いくつかのネット上の報道を見ると、この企画については、ネット上でもファンから批判が相次き、また、ポスターがネットオークションに多数出品されるなどの騒動にもなったようです。

 そして、CD発売の翌日の2月28日には、発売元のデフスターレコーズ(ソニー・ミュージックエンタテインメント系列)は、サイト上で、「AKB48劇場販売限定特典ポスター・コンプリート購入者ほか対象『春の祭典』ご招待施策中止のご案内」を発表するに至りました。
 そこでは、上記の企画が、ファンの過熱を招いたことを謝罪したうえで、「当企画の『桜の花びらたち2008』発売に伴う『春の祭典』ご招待施策が『独占禁止法』上の『不公正な取引』に抵触する恐れがありましたので、AKB48『春の祭典』の実施を含め、施策を中止とさせていただきます。」として、企画の取りやめを発表しています。また、AKB48劇場でCD複数枚を購入した人には希望により返品等の処置をとる(3月末日まで)、とのことです(詳しくは上記発表内容参照)。

 この企画中止発表の前日のJ-CASTニュースは、この企画について、景品表示法上の「不当景品」に該当するか否かの問題を取り上げ、公正取引委員会や消費者法に詳しい村千鶴子弁護士の見解などを紹介して、景品表示法違反を法的に問うのは難しいのではないか、としていました。

 しかし、上記の企画中止発表によれば、景品表示法ではなく、独占禁止法で禁止されている不公正な取引方法に該当する恐れがあるとしています。景品表示法独占禁止法不公正な取引方法規制の特例法ではありますが、発表内容からすれば、親玉の独占禁止法自体の違反の可能性も検討されたようですね(ひょっとすると、公取委から何らかの示唆があったのかもしれません)。
 「不公正な取引方法」の一般指定のどれかに該当しそうだということになるのですが、おそらく「不当な利益による顧客誘引」(同9項)なのでしょうね(この行為の特別な規制が景品表示法の不当景品規制)。実際の宣伝の仕方によっては「欺まん的顧客誘引」(一般指定8項)も検討できるかな(こちらの行為の特別な規制が景品表示法の不当表示規制)。

 この企画中止によって、ネットオークションでのポスター落札でトラブルが生じないか、というのも心配ですね。

〈参考〉
不公正な取引方法「一般指定」(公正取引委員会告示)抜粋
8 ぎまん的顧客誘引
 自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について、実際のもの又は競争者に係るものよりも著しく優良又は有利であると顧客に誤認させることにより、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引すること。
9 不当な利益による顧客誘引
 正常な商慣習に照らして不当な利益をもつて、競争者の顧客を自己と取引するように誘引すること。

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2007年3月23日 (金)

著作権侵害不存在確認

 おふくろさん問題と同じく、著作権の関係で、槙原敬之氏が漫画家松本零士氏に対し、裁判を起こしたと報じられています。以下、推測を交えた内容ですので、間違ってたらごめんなさい。

 スポーツ紙の記事から見れば、「盗作の証拠提出を求める訴え」を起こしたとなっていますが、記事の他の部分の内容から考えて、槇原氏側は、「著作権侵害不存在確認等請求」を起こし、その裁判で松本氏側が著作権侵害だとあくまでも争うならば、どこが著作権侵害なのか主張し立証せよ、という形になっているものと推察されます。このような訴訟の場合、著作権の侵害行為については、それがあったという側(つまり、本件では被告の松本氏側)が立証責任を負うことになっています。まぁ、そのことをひっくるめて、スポーツ紙は「盗作の証拠提出を求める訴え」と表現しているのではないでしょうか。

 また、記事によれば、「証拠がない場合には、2200万円の損害賠償も求めている」とされているのですが、これもちょっとそのままは理解しにくい。これも想像を含めていえば、2つの場合が考えられのかなと思ってます。

 1つは、上に書いた著作権侵害不存在確認請求と一緒に、損害賠償請求を引っ付けている。つまり、松本氏側が槇原氏の作品は著作権侵害だと言った行為は、虚偽の事実を言いふらして槇原氏の名誉などを傷つけたり、仕事に影響を与えたりした、ということで、違法に損害を与えた、つまり不法行為(民法709条)に該当するので、損害賠償請求も行っているような場合。

 もう1つは、今の所、著作権侵害不存在確認請求だけの裁判だが、松本氏側が著作権侵害について立証できないような場合には、損害賠償請求を追加しようと準備している場合。(でも、2200万円ってはっきりと金額出てるものなぁ。やっぱり前者かな。)

 〈この事案の要旨〉

 昨年、松本氏が、槙原氏の作ったの歌詞の一部が「銀河鉄道999」のセリフを無断使用しているとした問題。槇原氏の歌詞は「夢は時間を裏切らない。時間も夢を決して裏切らない。」。松本氏の「銀河鉄道999」の「時間は夢を裏切らない。夢も時間を裏切ってはならない。」のセリフの盗作だとマスコミに主張。

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2007年3月 7日 (水)

まだ「おふくろさん」

 本日、JASRAC(社団法人日本音楽著作権協会)のホームページに、「『おふくろさん』のご利用について」というのが掲載されました。

 全文については、それぞれで見ていただくとして、要するに、付加バージョンについては、川内氏から意に反する改変に当たる旨の通知がなされ、同氏の同一性保持権(著作権法第20条1項)を侵害して作成されたものであるとの疑義が生じている、このため、改変されたバージョンを利用すると同一性保持権の侵害その他の法的責任が生じるおそれがあるので「ご留意ください」、という内容。

 さらに、あらかじめ、改変されたバージョンが利用されることが判明した場合には、利用許諾をできません・・」ともしている。そして最後に、なお、オリジナルバージョンの「おふくろさん」は、従来どおりご利用になれます

 よく読んでもらうとわかるが、JASRAC自身が、この改変を同一性保持権の侵害と認めたものではありません。川内氏からその旨の通知があり、疑義が生じている、だから、法的責任が生じる恐れがあるので留意せよ、ということ。つまり、リスクがあるから皆さん自分で注意してね、問題が起こるかもね、という注意書きですね。

 しかし、この問題、いつまでフォローすべきなのか、悩む.... 

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2007年3月 6日 (火)

「おふくろさん」問題つづき

 森進一氏と川内康範氏とのトラブルは、どうやら著作権の話を離れて、すっかり正統派のワイドショーネタになってしまったようですね。

 このブログ左下でリンクさせてもらってる壇弁護士のブログでも、この話題を取り上げてます。JASRACとの契約関係はさすがに私なんかより具体的に指摘されてますね。おかげで、JASRACの信託契約約款というのを初めて読むことができました。

 紅白などでの問題の歌唱内容について、同一性保持権侵害があるかどうかについては、壇弁護士の指摘通り、私もあれで侵害になるという見解には疑問を持っています。

 ただ、ワイドショーなどでも混同してるかなと思うのは・・・・・

 あの「おふくろさん」の前に別のメロディと歌詞をひっつけた作品、一応「おふくろさん+α」と命名しておきますが、

(1)この「おふくろさん+α」が、川内氏の著作権(同一性保持権)を侵害するかどうか、という問題と、

(2)川内氏が今後一切「おふくろさん」を含めた自分の作品を歌うことを森氏に禁止できるか、という問題とは

別問題であることです。まぁ、最初に書いた通り、ワイドショーでは、そんな法的にどうたらということは既に超越してしまってるようですけどね。

 (※なお、ここではややこしいので、JASRACの存在は無視します。)

 仮に「おふくろさん+α」が、川内氏の権利を侵害しているのだとすれば、当然ながら、川内氏は森氏が「おふくろさん+α」を歌うことを拒否できるでしょう。著作権侵害行為をやめろということは権利者としてできます。

 しかし、だからといって、本来の「おふくろさん」を歌うことまでやめろと言えるかどうかは法律的には別の問題になります。感情的には大きなつながりがあるでしょうけども。

 かえって、ややこしくなったかな。どっちにしても、深入りすると疲れそうな話題ですね。

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2007年2月26日 (月)

著作権騒動(「おふくろさん」)に思う

テレビの芸能ニュースを見ると、昨年末の紅白での森進一「おふくろさん」について作詞者川内康範氏が、激怒しているとのこと。

川内氏というと、なぜか私は、小さい頃に月光仮面(再放送である。念のため。)の主題歌のバックに流れる原作者の名前でしっかりと覚えている。ちなみに、この方の名前をWikipediaで調べると、いろいろな意味で凄い方であることがわかる。

事実関係を正確に把握しているわけではないので、残念ながら結論めいたことは書けない。著作権法上の問題でいうと中心的な点としては同一性保持権の問題が指摘されているようだが、JASRAC(日本音楽著作権協会)との関係や森氏が以前から同様の歌唱を行っていた事実などに関しても検討しなければならないであろう。

ところで、このような音楽(歌詞を含む)に関する著作権問題というのは、どちらかといえば、古典的な紛争である。著作権で保護される「著作物」は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」で、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」である(著作権法2条1項1号)。「創作的に表現」といっても、別に上等なものである必要はない。私のこの駄文にどなたも興味を示さなくても、ちゃんと著作物として著作権は発生する。特許権や商標権と異なり、どこかに登録したり届け出たりする必要もない。

さきほど古典的といったが、小説や絵画や音楽のような伝統的な芸術的分野での「盗作だ」、「模倣だ」というようなレベルで著作権を考えるのは比較的わかりやすいのだが、最近は、ソフトウエア(プログラム)だのデータベースだの、目や耳で直接的には感得、掌握できないようなものにまで対象が広がっているうえ、映画や音楽などの伝統的著作物でさえも、その経済的な価値が以前とはケタ違いになっていて、世界的な一大産業となっている。これもいわばデジタルコンテンツとしての価値とみることができよう。しかも、デジタルであるが故に、技術の飛躍的な進歩とあいまってコピーが容易である。さらに、インターネットを背景にしたIT社会では、そのコピーが増殖し、拡散していくのもあっという間の事である。ひとたび流出してしまえば、回収することが困難なことは、個人情報の流出の問題と同じ事である。

したがって、「おふくろさん」問題のトラブルならばいざ知らず、現代のデジタル化されたコンテンツの権利保護を、古典的な著作権法のツギハギで繕うことは限界をとっくに超えている。明らかに本来の守備範囲以上の過大な荷物を背負わされている著作権法が何だか可哀想に思えてしまう。

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