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2017年1月26日 (木)

ひとまず、「PPAP」商標登録出願騒動について

 ベストライセンス社、上田育弘氏は、商標権まわりの仕事に関係している人には、以前から大変な有名どころであったわけですが、突然、ピコ太郎の「PPAP」関連で、新聞やテレビが取り上げはじめ、大騒ぎになっていてビックリしています。
 今、人気の「PPAP」だから、というのも当然あるのでしょうが、やはり、ネット炎上の拡大の速さに今さらながら感じ入るしかないというところです。

 この件について、詳しく解説する時間はとてもありませんが、テレビなどでの報道、それを見ての一般の方々のTwitterなどでの投稿を見ていると、誤解されている部分がいくつか見られますので、そこだけ簡単に指摘して、今回の記事とさせていただきます。

  1.  上田氏は、元「弁理士」で、元弁護士でも元税理士でもありません。
     「弁理士」は特許など知的財産権の登録の出願、管理などを仕事とするための国家資格を持っている人です。
  2.    
  3.  今回の「PPAP」については、ベストライセンス社が「商標登録をした」、「商標権をとった」ということではなく、商標権の登録のための「出願」をしただけで、特許庁が登録を認めたわけではありません。登録を願い出た段階にすぎません。
  4.  これまでの同様の出願からみて、おそらく出願料は特許庁に支払われていないと思います。これを支払わないと、そもそも特許庁は登録の可否についての審査を始めません。      
  5.    
  6.  今回の出願で、出願料を払っても、特許庁は登録を認めない可能性がかなり高いと言えます。      
  7.    
  8.  仮に、認められて、ベストライセンス社が商標権を得たとしても、ピコ太郎が「PPAP」を歌えなくなる(こういう見出しの記事をいくつか見ましたが)、ということはありません。

                  以上です。

【追記】(1/27)
 弁理士さんの詳しい解説記事がありましたので、ご紹介します。上の記事だけでは、根拠がわからない、という方はお読みください。かなり長いです。私が「詳しく解説する時間はとてもありませんが」と冒頭にかいたのがお分かりいただけるかと (笑)

  → 「PPAPの商標が他人に商標登録出願された問題の解説」

               (ファーイースト国際特許事務所サイト)

【追記】(1/27)

 待望してました栗原潔先生の解説が出ました。
 ぜひご覧ください。

 → 「PPAP等の大量勝手商標出願問題について整理してみる」

2017年1月 7日 (土)

アイドルの恋愛禁止条項の効力についての判決(その2)

少し遅くなりましたが、新年あけましておめでとうございます。

    本年もよろしくお願い申し上げます。

 昨年の判例時報の目次に目を通していたら、ファンと交際するなどした女性アイドルが芸能プロダクションから損害賠償を求めて訴えられていた裁判の判決で責任が肯定された、というのを見かけました。こういう判決について、ブログを書いたよなぁ、と思って探したら、ありました。1年前の記事でした。

「アイドルの恋愛禁止条項の効力についての判決」 (2016/1/18)

 これは、昨年(平成28年)の1月18日の東京地裁判決(下記第2事件)の報道に関するものでしたが、その際、上の判例時報の判決(平成27年9月18日東京地裁・下記第1事件)にも触れていましたね。ただ、この昨年1月の時点では、両判決とも判決文自体は読めていませんので、報道記事の内容と私の推測を交えた感想文になっていましたが、今回、両方の判決文を読むことができましたので、改めて記事にしておこうということで、今年最初の記事です。少し長くなりますが、タレントの契約における恋愛禁止条項の解釈について、特に第2事件については、なかなか面白い判決となっています。


【平成27年9月18日東京地裁判決(第1事件)の事案】

 被告Y1(女性アイドルタレント・15歳)が、原告X1(芸能プロダクション)との間で、芸能活動に係る専属契約を締結し、アイドルグループのメンバーとして芸能活動を行っていた。原告X2は、このアイドルグループについてX1との間でタレント共同運営契約を締結していた会社。被告Y2はY1の親権者(父親)。なお、ややこしいので、X1とX2を併せてXら、、Y1とY2を併せてYらと表記します。   
 そして、Y1が、男性ファンとラブホテルに入るなど専属契約に違反する行為をし、これにより、グループを解散せざるを得なくなり損害を被ったとして、Xらが、Y1に対しては債務不履行又は不法行為に基づき、親権者Y2に対しては民法714条1項(責任無能力者の監督義務者の責任)に基づき、合計約500万円の損害賠償金等の連帯支払を求めたという事案です。

 なお、専属契約には、Y1について「ファンとの親密な交流・交際等が発覚した場合」などの事項が発覚した場合、契約を解除して、X1はY1に損害の賠償を請求することができるものとされていました。   
 また、Y1は、専属契約締結の際、X1から「アーティスト規約事項」を受領していますが、この規約には、「私生活において、男友達と二人きりで遊ぶこと、写真を撮ること(プリクラ)を一切禁止致します。発覚した場合は即刻、芸能活動の中止及び解雇とします。 CDリリースをしている場合、残っている商品を買い取って頂きます。 異性の交際は禁止致します。ファンやマスコミなどに交際が発覚してからでは取り返しのつかないことになります。(事務所、ユニットのメンバーなどに迷惑をかけてしまいます)」という定めがありました。

 結論からいうと、判決(児島章朋裁判官)は、Y1にXらへの合計約65万円の損害賠償金の支払を認め、Y2への請求は全部棄却しています。

【平成28年1月18日東京地裁判決(第2事件)の事案】

 こちらは、原告X(芸能プロダクション)が、Xとの間で専属マネージメント契約を締結した被告Y1(女性アイドルタレント・契約当時は未成年)、被告Y2,Y3(親権者・両親)、被告Y4(Y1と交際したファン)に対して、Y1とY4が交際を開始し関係を持ち(当時は両者とも成年)、共謀してイベント等への出演を一方的に放棄するなどしたとして、Y1(債務不履行又は不法行為)とY4(共同不法行為)に対しては約880万円の連帯支払、Y2とY3に対してはY1の行為について管理監督を行うべき信義則上の義務に違反したとして110万円の連帯支払を求めたという事案です。

 こちらの契約では、「XがY1の出演業務に関して第三者との間で契約を締結した場合には、Y1はXの指示に従って誠実に当該出演業務を遂行しなければならない。」、「(損害賠償請求ができる事由として)〈1〉 いかなる理由があろうと仕事や打ち合わせに遅刻、欠席、キャンセルし、原告に損害が出た場合 〈3〉 電話もしくはメールで連絡が付かず損害が出た場合 〈8〉 ファンと性的な関係をもった場合 またそれにより原告が損害を受けた場合 〈11〉 あらゆる状況下においても原告の指示に従わず進行上影響を出した場合 〈13〉 その他、原告がふさわしくないと判断した場合」という定めがありました。なお、この契約にはY2も親権者として署名押印しています。

 なお、本件契約については、Y1は、メール(平成26年7月11日)および内容証明郵便(同月26日付)で、Xに対して、グループを脱退し、契約を解除する旨の意思表示を行っています。

 こちらの判決(原克也、中野達也、藤田直規裁判官)は、全ての請求が棄却となっています。


 まず、第1事件で、裁判所が女性アイドルの責任を認めた構成ですが、Y1はグループで活動するにあたり、交際禁止条項について説明を受け、その内容を認識していた事実が優に認定できる、とし、専属契約においては、交際等がX1に発覚した場合について規定しており、規約においては、ファンへの交際発覚を含む旨を明確に記載しているから、本件の交際がファンやXらに発覚したことが交際禁止条項の違反にあたることは明らかである、としました。そして、不法行為責任についても、「異性とホテルに行った行為自体が直ちに違法な行為とはならないことは、Yらが指摘するとおりである。しかし、Y1は当時本件契約等を締結してアイドルとして活動しており、本件交際が発覚するなどすれば本件グループの活動に影響が生じ、Xらに損害が生じうることは容易に認識可能であったと認めるのが相当である。そうすると、Y1が本件交際に及んだ行為が、Xらに対する不法行為を構成することは明らかである。」とし、債務不履行および不法行為を負う、としました。

 第1事件での損害賠償額ですが、Xらそれぞれへの信用毀損(各200万円の請求)は、その事実は認められないとされ、Tシャツの作成費、レコーディング費用、レッスン費用などの費用のみが損害とされたうえで、過失割合について、「Xらが芸能プロダクションとして職業的にアイドルユニットを指導育成すべき立場にあることや、Y1が当時未だ年若く多感な少女であったことなどを踏まえると、本件交際における過失割合は、Xらが40、Y1が60とするのが相当である。」として、上記費用の6割が損害賠償額とされたものです。

 なお、第1事件での、父親Y2の責任については、「本件契約等の締結時及び本件交際当時において、Y1は15歳の未成年であったところ、Y1は、X1との間で本件契約等を締結して本件グループでアイドルとして活動していたのであるから、通常の同年齢の者が有する事理弁識能力を有していたことは明らかである。」として、Y2は、民法714条1項の監督義務者等にはあたらないから、本件において責任を負うことはない、と判断しています。

 次に第2事件の判決(全部請求棄却)の判断です。

 判決は、まず、Y1の行為は、少なくとも形式的には本件契約の上記各条に違反するように思われる、としましたが、本件契約は雇用類似の契約であり、「本件契約の規定にかかわらず、民法628条に基づき、「やむを得ない事由」があるときは、直ちに本件契約を解除することができる」とし、本件では、この「やむを得ない事由」があったとして、内容証明郵便が到達した平成26年7月27日に契約解除の効力が発生した、としました。この「やむを得ない事由」に関して、判決は、「本件契約は、「アーティスト」の「マネージメント」という体裁をとりながら、その内実はY1に一方的に不利なものであり、Y1は、生活するのに十分な報酬も得られないまま、原告の指示に従ってアイドル(芸能タレント)活動を続けることを強いられ、従わなければ損害賠償の制裁を受けるものとなっているといえる。ゆえに、本人がそれでもアイドル(芸能タレント)という他では得難い特殊な地位に魅力を感じて続けるというのであればともかくとして、それを望まない者にとっては、本件契約による拘束を受忍することを強いるべきものではないと評価される。このような本件契約の性質を考慮すれば、Y1には、本件契約を直ちに解除すべき「やむを得ない事由」があったと評価することができる。」という注目すべき判断を行っています。
 そして、この事由は、Y1の過失によって生じたものではないから、解除による損害賠償義務(民法628条後段)をY1が負うことはない、としたのです。ここのところで、判決は、恋愛禁止条項違反の場合の損害賠償義務について、興味深い判断をしていますが、これは最後に書きます。

 したがって、Y1が平成26年7月20日のライブに出演しなかった行為と解除の効力発生前の7月26日までの7日間に本件グループの活動に従事しなかった行為は、Xに対する債務不履行に該当するけれども、解除の効力発生後の活動停止については、債務不履行に該当しない、とし、業務妨害ないし債権侵害の不法行為のXの主張についても、本件契約はY1にとって一方的に不利な面が強く、やむを得ない事由があるとしてこれを解除することはY1の正当な権利行使と認められるから、そのような不法行為に該当するとは認められない、としました。

 しかし、7日間については、Y1の債務不履行があったという判断にはなるのですが、判決は、この期間において、Xの主張するグッズの在庫、逸失利益、信用毀損などの損害が生じたとは認められない、として、結局、損害賠償請求を認めなかったものです。

 Y2、Y3(両親)の監督義務責任については、「そもそも一般的に成年に達した者が、マネージメント契約に基づきアイドル(芸能タレント)活動を行うのに際して、その者の父母が契約の相手方に対して何らかの責任を負う根拠はないと考えられる。」としたうえで、本件契約締結時Y1は既にその時点で19歳9か月であり、アイドル(芸能タレント)としての活動拠点もY2夫妻が暮らすH市から遠く離れた東京都内であった上、Y1がY4と交際を開始したと認められる平成25年12月には既に成年に達していた。」とし、「Y2夫妻は、Y1の生活及び活動状況について、原告の主張するような管理監督義務を原告に対して負うとは認められない。」としました。

 Y4(交際相手のファン)については、Y1の責任が認められない以上、当然責任を負わないことにはなるのですが、判決はこれに付言して、「異性に恋愛感情を抱くことは人としての本質の一つであり、その具体的現れとして当該異性と交際すること、さらに当該異性と合意の上で性的な関係を持つことは、人の幸福追求権の一場面といえる。まして、Y4は、一ファンに過ぎず、被告Y1と異なり、アイドルではなく、原告との関係で何らかの契約関係の拘束を負うものでもない。それゆえ、Y4においては、原告との関係で、契約上はもちろん一般的にも、Y1と交際し、さらにY1と合意の上で性的な関係を持つことを禁じられるような義務を負うものではないから、Y1と交際し、性的な関係を持った事実をもって、原告に対する違法な権利侵害と評価することはできないというほかない。」と言っています。

 この恋愛禁止条項違反行為については、判決は、Y1の責任判断の際、Y1の契約解除の効力発生時についての判断のところで、以下のように述べています。

確かに、タレントと呼ばれる職業は、同人に対するイメージがそのまま同人の(タレントとしての)価値に結びつく面があるといえる。その中でも殊にアイドルと呼ばれるタレントにおいては、それを支えるファンの側に当該アイドルに対する清廉さを求める傾向が強く、アイドルが異性と性的な関係を持ったことが発覚した場合に、アイドルには異性と性的な関係を持ってほしくないと考えるファンが離れ得ることは、世上知られていることである。それゆえ、アイドルをマネージメントする側が、その価値を維持するために、当該アイドルと異性との性的な関係ないしその事実の発覚を避けたいと考えるのは当然といえる。そのため、マネージメント契約等において異性との性的な関係を持つことを制限する規定を設けることも、マネージメントする側の立場に立てば、一定の合理性があるものと理解できないわけではない。    
 しかしながら、他人に対する感情は人としての本質の一つであり、恋愛感情もその重要な一つであるから、かかる感情の具体的現れとしての異性との交際、さらには当該異性と性的な関係を持つことは、自分の人生を自分らしくより豊かに生きるために大切な自己決定権そのものであるといえ、異性との合意に基づく交際(性的な関係を持つことも含む。)を妨げられることのない自由は、幸福を追求する自由の一内容をなすものと解される。とすると、少なくとも、損害賠償という制裁をもってこれを禁ずるというのは、いかにアイドルという職業上の特性を考慮したとしても、いささか行き過ぎな感は否めず、芸能プロダクションが、契約に基づき、所属アイドルが異性と性的な関係を持ったことを理由に、所属アイドルに対して損害賠償を請求することは、上記自由を著しく制約するものといえる。また、異性と性的な関係を持ったか否かは、通常他人に知られることを欲しない私生活上の秘密にあたる。そのため、原告が、Y1に対し、Y1が異性と性的な関係を持ったことを理由に損害賠償を請求できるのは、Y1が原告に積極的に損害を生じさせようとの意図を持って殊更これを公にしたなど、原告に対する害意が認められる場合等に限定して解釈すべきものと考える

 それぞれの立場からむずかしい微妙な問題ではあるのですが、なかなか含蓄のある判断ではないか、と思います。

2016年11月19日 (土)

この機会に適格消費者団体による差止請求の説明でも

 一昨日夜にアップした前回記事はたくさんのアクセスをいただきありがとうございました。

 適格消費者団体・消費者被害防止ネットワーク東海(Cネット東海)の申入書に記載されたジャニーズファミリークラブの回答期限は昨日だったのですが、Cネット東海のサイトによれば、昨日、ジャニーズファミリークラブから、しばらく回答を猶予してほしいというFAXが届いたようです。

 さて、せっかくの機会なので、消費者団体訴訟について、簡単に説明をしたいと思います。

 まず、現在、消費者団体が消費者のために訴訟ができる制度は2つあります。

 ① 消費者契約法に基づく差止請求と、 ② 「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」にもとづく被害回復請求、の2つです。

 消費者団体といっても、どんな消費者団体でも請求ができるわけではなく、国の認定を受けた団体でないといけません。①の差止請求ができるのは、「適格消費者団体」で、現在全国に14団体があり、今回のCネット東海もその1つです。なお、私は、大阪を本拠とする消費者支援機構関西(KC's)の活動に関わっています。
(※【追記】 一般の消費者個人や消費者団体が、このような法律上の請求権ではなく、事業者に営業活動や契約内容が違法、不当であるとして是正を求めること自体は、もちろん可能です。)

   → 全国の適格消費者団体の一覧(消費者庁)

 ②の集団的被害回復制度は、今年(平成28年)の10月1日から施行されたばかりで、実際に制度が利用されるのはこれからです。そして、この制度で請求ができるのは、①の適格消費者団体の中で、さらに「特定適格消費者団体」の認定を受けた団体に限られます。現在、1団体(消費者機構日本〔COJ〕)が消費者庁に対して認定申請を行っているという段階ですので、現時点では、まだ認定を受けた特定適格消費者団体はありません。

 したがって、今回の消費者団体による差止請求は、上記①の消費者契約法に基づく差止請求制度による請求行為となります。

 これは、事業者が、消費者契約法などの法律に違反する行為を行った場合に、個別の消費者個人ではなく、適格消費者団体が事業者に対して差止請求、つまり、その行為をやめることを請求できる制度です。

 消費者契約法違反だけではなく、現在は、特定商取引法、景品表示法、食品表示法の違反行為の一部についても差止請求ができることになっています。今回のCネット東海ジャニーズファミリークラブに対する差止請求は、消費者契約法違反の契約条項を止めるよう求めているわけです。なお、この制度は②の制度と異なり、損害賠償などの金銭の請求はできません。

 消費者団体訴訟とは(COJサイト)

 もっとも、現時点では訴訟が起こされているわけではなく、是正の申入(請求)活動の段階です。   
 これによって、契約内容の変更などの適切な是正措置を事業者がとれば、もちろんそれで解決します。現に、各適格消費者団体は同様の申し入れを事業者に行っており、多くのケースでは事業者側も内容を検討して是正に応じています。これらの事案については、各適格消費者団体のサイトに掲載されていますので、興味のある方はご覧ください。なお、今回の件と似たようなものとしては、今年、同じくCネット東海が、宝塚歌劇の宝塚友の会に対して、雑誌の定期購読サービスの契約が消費者契約法違反であるとして申入活動を行っていますが、宝塚友の会は、これに沿う形で改訂を行ったため、申入活動は終了となっています

 しかし、事業者側が適切な対応をせず、消費者契約法などに違反した営業活動や規約を継続するような場合は、適格消費者団体が原告となって、事業者に対して差止請求の訴訟を提起することができます。これも、これまでにいくつもの裁判が起こされています。これらの裁判における判決や訴訟上の和解については、消費者庁サイトに公表されています(消費者契約法第39条第1項に基づく公表)。

 今回のCネット東海の申入活動の今後がどのような形になっていくかは判りませんが、この機会に多くの方々にこの制度をご理解いただければいいな、と考えております。

2016年11月17日 (木)

適格消費者団体によるジャニーズファミリークラブへの規約是正の申入

 今日は、別の記事をアップしたので、これは明日に公開しようと思ったのですが、せっかく書いてしまったこともありますので、早めに出しました。

 さて、特にニュースにはなっていなかったようですが、NPO法人「消費者被害防止ネットワーク東海」(Cネット東海・杉浦市郎理事長)が、本年10月18日付にて、ジャニーズファミリークラブに対して、その会員規約の内容が消費者契約法に鑑みて不当ないし不適切な条項があるとして、規約の是正の申し入れをしていました。Cネット東海は、消費者契約法13条に基づいて内閣総理大臣の認定を受けている適格消費者団体です。

 ジャニーズファミリークラブは、Wikipediaによれば、「ジャニーズ事務所に所属する各タレントの公式ファンクラブの母体となる組織」とのことです。 Cネット東海の公式サイトには、この申し入れのお知らせとともに申入書のPDFファイルもアップしておられるのですが、どうやらファンの方々が殺到しているようでアクセスしずらい状況となっているようです。

 申入書の内容を簡単にご紹介しますと、

 第1として、会員規約2条に関して、ジャニーズファミリークラブ側が、規約を予告なく改訂でき、それが閲覧出来る状態になったときから有効となる、という点に関し、申入書では、このような一方的な規約変更は消費者契約法10条に抵触し無効であるとしています。したがって、規約変更の場合は、効力発生の相当期間前にネット等適切な方法で会員に告知した場合に効力が生じるものとすべきであり、会員の個別の同意がなく規約を変更できるのは、限定された要件(5つ挙げています。)全てを満たす場合に限られるとすべき、としています。

 第2に、会員規約4条2項、3項、5条では、退会処分とされた会員は、損害賠償等の一切の権利行使ができない、ジャニーズファミリークラブはそのサービスに関し、いかなる責任も負わない、などの規定がされており、このような免責、損害賠償の放棄の規定は消費者契約法8条1項1号、3号に抵触するので、規定を改めるよう求めています。

 そして、第3として、会員規約4条3項において、会員が資格喪失した場合、理由の如何を問わず、入会金、年会費の返還はできない、とされていることに関し、これは消費者契約法9条1項により、契約の残期間に応じた平均的損害の範囲を超えるべき部分は返還すべきであるので、規約を変更する旨求めています。

 この申入書では、ジャニーズファミリークラブに対して、その見解や対応を、11月18日(つまり明日)までに書面にて回答するよう求めていますが、さて、どんな回答がなされるのでしょうか。

 なお、申し訳ありませんが、この記事に関して、お電話やメール等でご質問等をいただいても対応することは一切できませんので、あしからずご了承ください。また、私は、他の消費者団体などには関与しておりますが、このCネット東海さんとは直接の関係はなく、公開された申入書の内容以外の状況については全く判りませんので、その点もご了解ください。

【追記】(11/19)

 続編として、消費者団体による差止請求の簡単な説明を書きましたので、よろしければ次記事もご覧下さい。

2012年5月 6日 (日)

コンプガチャ規制問題の補足

 消費者庁がコンプガチャについて景品表示法による規制に乗り出す方針との報道は、昨日朝の読売に続いて日経など他の報道機関も流し始めました。各社の記事の中身を見る限りは消費者庁ルートの情報を元にしているものと思われます。

 昨日もリンクいたしました「やまもといちろうBLOG」でも関連の補足記事を2つほど追加されていますが、報道よりも突っ込んだ情報が記載されていますので、関心のある方は是非お読みください。
 → やまもといちろうBLOG
 ・「消費者庁がコンプガチャ禁止へ、GREE田中社長は暖かくして寝る(補足あり)」
 ・「ソーシャルゲームへの「コンプガチャ」規制関連のメモ」
 ・「さらなる補遺」

 なお、やまもといちろう氏は、課金の返還請求について触れておられますが、景品表示法違反があったからと言って、その取引が無効になったり取り消せるという効果には直接つながりません。あくまでも行政規制ですので、仮に、消費者庁が不当景品だということで措置命令を出しても、課金返金の請求権が発生するというものではありません。民法や消費者契約法などの民事法で返金が請求できる根拠が存在することが必要ですが、これは景品表示法違反というだけでは駄目ですので、ご注意ください。

 他にも、ネット上ではいろいろと今回の報道に対する反応がブログなどにあがってきていますが、法律的な見地からは、次のブログがお勧めです(というか、あまりにも著名ブログでありますが)。いくつかの重要な指摘もなされています。

 → 企業法務戦士の雑感
 「景表法は変質したのか?~「コンプリートガチャ」規制をめぐって。」

 また、今回「カード合わせ」規制がクローズアップされたため、以前のAKB48の「桜の花びらたち2008」発売の際のキャンペーンが中止されたケースについて関連した発言も目立つようです。確かに、あのときも景品表示法(当時は公正取引委員会が所管)が話題になりましたが、「カード合わせ」の突っ込んだ話にまでなっていたかどうか確かな記憶はありません。なお、AKB側の広報では、景品表示法ではなく、独占禁止法(不公正な取引方法)に違反する恐れあり、とのことで中止したとされています。
 当時の当ブログの記事をリンクしておきます。

 → 「AKB48の企画中止と独占禁止法」(08/3/23)

 当時は、AKB48が今のようなトップアイドルグループになるとは思ってませんでしたね。


【追記】(5/6)

 なお、課金返還の話に限りませんが、個別の相談などはブログでは受け付けておりませんので、コメント等にもお返事できないと思いますが、ご了承ください。わざわざ追記することでもないんですけど、そういった感じのキーワード検索でアクセスされている方もおられるようなんで、先に書いておきます。


【追記】(5/6)

 やまもといちろうBLOGの最新記事によれば、被害者の会が損害賠償訴訟を起こす動きがあるとのこと、今回の消費者庁の動きと直接関連があるものではないということです。ひとまず、ご紹介のみ。

「冗談のような「ソーシャルゲーム被害者の会」が立ち上がり、返還訴訟を起こすらしい」

 蛇足的に付け加えると、返金、損害賠償請求の可能性から考えれば、今回の「カード合わせ」の該当性の問題は本筋ではなく、ガチャ全体のシステムの暴利性、欺瞞性(公序良俗違反)みたいなものが立証できるとか、未成年取消の主張ができる、といったところが、突っ込み所ではないかと思いますね。


【追記】(5/9)

 どちらも企業法務分野の著名ブログですが、今回の問題に関連した記事が出されていますのでご紹介。

 → ビジネス法務の部屋
 
 「闘うコンプライアンス(景表法違反で御社は闘いますか?)」

 大阪の山口利昭弁護士のブログ。ガチャ問題そのものではなく、このような企業の景品表示法違反リスク一般について書かれています。

 → 企業法務マンサバイバル
  
「コンプリートガチャ問題に対する行政指導のあり方について」

 橋詰卓司氏のブログ。今回の問題に関連して、消費者庁の行政指導のあり方について懸念を示されています。


2012年2月 4日 (土)

ピンク・レディー事件【蛇足】

 前回取り上げたピンク・レディー事件は大々的に報道もされ、ワイドショーなどでも話題になっているようです。

 その一連の話題に触れていてちょっと気になる所は、一般の方には誤解を生じている部分があるのではないか、という点です。前回記事でもちょっと書いたように、この判決が結果的に著名人側が負けたということもありますし。

 まず、この事件を考える前提として、雑誌に使用された写真は、昔、正当に撮影されて、著作権も出版社側が有しているということを押さえておく必要があります。写真の著作権は被写体側にあるのではなく、撮影者側にあるというのは著作権の基本です。絵画の画家とモデルを考えてもらえば当然の話ですね。

 したがって、本件は著作権の侵害が問題になる事案ではありません。
 なので、勝手にどこかに掲載されていた写真を使用して掲載したというのであれば、パブリシティ権の問題とは別に、著作権者との間で著作権侵害の問題が生じます。本件では、写真自体のパクリはないわけです。この点は誤解のないよう注意してください。

 また、本件は、「人のパブリシティ権」を最高裁が判断した最初の判決ですが、1976年の「マーク・レスター事件」(東京地裁)、1989年の「光GENJI事件」(東京地裁)、1991年の「おニャン子クラブ事件」(東京地裁)など、下級審では古くからパブリシティ権についての判決はあり、法律学の分野でもかなり議論がされていて、パブリシティ権自体は認められてきているのであって、それほど新しい権利というわけではありません。ワイドショーで、「パブリシティ権が新たに認められた」的な紹介がされていたので付言しておきます。
 なお、人ではなく、競走馬の名前に関するパブリシティ権に関しては「ダービースタリオン事件」「ギャロップレーサー事件」があり、この両事件については、最高裁はパブリシティ権を認めていません。物についてのパブリシティ権の場合は、人と違って、人格権を根拠にできませんので難しいところです。もちろん、認めるべきだという考え方もあります。

 それと、人のパブリシティ権については、著名人について問題となるのですが、それでは、著名でない一般人の肖像権はどうなるの?という点が残ります。
 例えば、昔撮影された貴方の写真が勝手に広告に使われていた、という場合に、どのような権利侵害が考えられるか、という問題になります。数年前に関西のテレビ局のローカルニュース番組で取材を受けたことがありますが、以前、素人モデルとして写真を撮られた会社員男性が、後に新聞広告に写真を使われ、個人体験談を語る人物として掲載されていた、というのがありました。もちろん、無断使用だし、そんな商品の購入や使用はしていない人で、広告を見た人からいろいろ言われて迷惑した、というケースでしたね。結構むずかしい問題です。

 また、「人」ではなく、キャラクターはどうなるの?というのもありますね。(あえて書かないでおきます。)

2012年2月 2日 (木)

ピンク・レディーvs光文社事件、上告審判決(最高裁)

 本日、ピンク・レディーの肖像写真の利用に関して、ピンク・レディー側が損害賠償を求めていた裁判で、最高裁判所の上告審判決が出ました。既に裁判所webサイトにも掲載されています。

 最高裁判所 平成24年2月2日第一小法廷判決 損害賠償請求事件

 この事件については、1,2審とも当ブログで判決時に取り上げましたので、事案の内容はそちらをごらんください。

 → 「ピンクレディvs光文社事件控訴審判決(知財高裁)」(09/8/29)

 → 「ピンクレディが出版社の写真使用を訴えた事件の判決(東京地裁)」(08/7/13)

 (※正しい表記は「ピンク・レディー」です。ご容赦ください。)

 1,2審とも、裁判所は、人格権に由来するものとして、いわゆる「パブリシティ権」があることを認めましたが、本件事案においては、記事や写真使用の態様から見て権利侵害は否定して、結論としては、いずれもピンク・レディー側の請求を認めませんでした。

 今回の最高裁の上告審判決も、基本的には同様で、商品の販売等を促進する顧客吸引力を排他的に利用する権利として「パブリシティ権」は認めましたが、本件の行為は違法とはいえないとして、上告を棄却したものです。
 この判決は、人の「パブリシティ権」を認めた初めての判決であり、それを侵害する行為が不法行為と認められるための要件を示した点で、大変重要な判例であるといえます。

 一般の方が、このニュースに触れると、判決結果を聞いて、「パブリシティ権」が認められなかったという受け取り方をする人も多いとは思いますが、法律家的には、「パブリシティ権」が認められた重要な判決、ということになると思います。面白いところです。

 今回の判決において、「パブリシティ権」については、
人の氏名,肖像等は,個人の人格の象徴であるから,当該個人は,人格権に由来するものとして,これをみだりに利用されない権利を有すると解される。
そして,肖像等は,商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合があり,このような顧客吸引力を排他的に利用する権利(以下「パブリシティ権」という。)は,肖像等それ自体の商業的価値に基づくものであるから,上記の人格権に由来する権利の一内容を構成するものということができる。」として、これを認め、その一方で、

他方,肖像等に顧客吸引力を有する者は,社会の耳目を集めるなどして,その肖像等を時事報道,論説,創作物等に使用されることもあるのであって,その使用を正当な表現行為等として受忍すべき場合もあるというべきである。」として、権利が制限される場面があることについて述べています。

 そして、肖像等を無断で使用する行為が「パブリシティ権」を侵害し、不法行為法上も違法となる場合として、

  1. 肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し,
  2. 商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し,
  3. 肖像等を商品等の広告として使用するなど,専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とする

という要件を示しました。

 これを前提として、本件の事実関係からみて、ピンク・レディーの肖像写真に顧客吸引力は有するものの、

・・・本件記事の内容は,ピンク・レディーそのものを紹介するものではなく,前年秋頃に流行していたピンク・レディーの曲の振り付けを利用したダイエット法につき,その効果を見出しに掲げ,イラストと文字によって,これを解説するとともに,子供の頃にピンク・レディーの曲の振り付けをまねていたタレントの思い出等を紹介するというものである。そして,本件記事に使用された本件各写真は,約200頁の本件雑誌全体の3頁の中で使用されたにすぎない上,いずれも白黒写真であって,その大きさも,縦2.8㎝,横3.6㎝ないし縦8㎝,横10㎝程度のものであったというのである。これらの事情に照らせば,本件各写真は,上記振り付けを利用したダイエット法を解説し,これに付随して子供の頃に上記振り付けをまねていたタレントの思い出等を紹介するに当たって,読者の記憶を喚起するなど,本件記事の内容を補足する目的で使用されたものというべきである。

として、本件行為は、もっぱらピンク・レディーの肖像の有する顧客吸引力の利用を目的とするものとはいえず、違法とはいえないとしました。

 なお、この判決には金築誠志裁判官の詳しい補足意見が付されていますので、興味のある方はご覧ください。

【追記】(2/4)

 蛇足的説明を次の別記事にして書きました。

2011年8月18日 (木)

円天(L&G)商法の広告塔責任の東京地裁判決(22.11.25)

 昨年11月の判決で、判決の報道があったことは少し当ブログでも書いていたのですが、判決文がちょっと前の判例時報に掲載されましたので、改めて記事にしました。

 平成22年11月25日東京地裁判決 判例時報2103号64頁~

 事案は、(株)L&G「円天」事業に出資した人たちが、この商法が大規模な組織的詐欺であり不法行為であるところ、L&Gの全国大会などでコンサートを行ったりDVDに出演していた有名芸能人を被告として、L&Gやその投資商品を宣伝して信用性を高め出資をさせるなどさせたのはL&Gとの共同不法行為、または、少なくとも幇助に当たるとして損害賠償の支払を求めたものです。

 このような芸能人などの広告塔責任については、原野商法における推奨により損害賠償が認められた高田浩吉事件(大阪地判昭和62年3月30日)以外には、認められた判決はないと思われます(抵当証券事件に関して元力士に対する東京地判平成6年7月25日など)。今回の判決も結論として、広告塔責任を認めませんでした(なお、原告側は控訴したようです。)。

 この判決は、前提として、L&G商法が不法行為を構成することを認めたうえで、被告がL&Gの主催する多数のコンサートに出演したり、会員に配布されたDVDで商品を推薦する発言をするなどして、L&Gやその商品に対する信頼をそれなりに高める結果となったことは認定しています。

 しかし、判決は、
被告のコンサートでの発言は、本件全証拠によっても、A(L&G代表者)と時々食事やゴルフに行ったことがあること、Aを「おやじ」と呼んだこと程度であって、本件全証拠によっても、それ以上にL&Gやその投資商品と密接な関係を有することを示すような具体的発言は、認められないといわざるを得ず、被告がコンサートに出演したことやそこでの発言が、原告らが主張するように、積極的にL&Gを推奨したとまでいえるものとは認められない。
として、コンサートやDVDに出演するなどした行為が、直ちに不法行為や幇助に当たるとはいえないとしました。

 また、原告らが「著名な芸能人として自己の影響力が不当に利用されないよう配慮すべき義務等があるのに、故意又は過失によりこれに違反した旨」主張した点について、判決は、L&G商法の詐欺性についての被告の故意は否定しました。
 過失については、
芸能人等有名人が、広告に出演する場合に、広告主の事業内容・商品等について、常に調査をしなければならないという一般的な注意義務を認めることは、過度の負担を強いるものであって、相当でないというべきである。有名人が、広告に出演する場合に、調査義務を負うか否か及びその程度等については、個別具体的に、当該有名人の職業の種類、知名度、経歴、広告主の事業の種類、広告内容などを総合して判断すべき」とし、
認定事実を総合すれば、
被告が、L&Gの主催するコンサート等に出演するに当たって、やや注意を欠くところがなかったとはいえないとしても、L&Gから依頼されたのは、あくまでもコンサートに出演することであり、また実際にL&Gを宣伝するような行為を行っていないことや、出資者らが被告のコンサートを見聞することと、実際に出資することとの間には直接の関連性が認められないことなどからすれば、被告がコンサートに出演するに当たり、L&Gの事業内容や信用性をあらかじめ十分に調査・確認した上でなければ、コンサートに出演してはならないという一般的な法的義務があるとは直ちには認められない
他方で、L&Gに対する出資と広告に対する信頼が全く無関係とまではいえないのも事実であり、出資者らの広告に対する信頼を保護する必要性からすれば、L&Gを事実上広告することになるコンサート等に出演する被告としては、L&Gの商法に疑念を抱くべき特別の事情があり、出資者らに不測の損害を及ぼすおそれがあることを予見し、又は予見し得た場合には、L&Gの事業実態や経済活動等について調査・確認をすべき義務があるというべきであり、かかる調査・確認を怠った場合には過失があるというべき」としたうえで、本件の具体的事情の下では、被告が、L&G商法の具体的な仕組みなどについて認識していたとは認められず、疑念を抱くべき特別の事情があったとまではいえないとして、過失を否定しました。

 余談ですが、上記判例時報のコメント中に「事業者が事業を展開するに当たって著名人を宣伝広告のため様々な媒体、機会に利用することは日常的に見られるところである(近年は、弁護士のテレビ等の広告にも著名人を利用する事例が見られる。)。」とあるのですが、括弧書きを入れたのはどういう意味でしょうね(苦笑)。 

2009年8月29日 (土)

ピンクレディvs光文社事件控訴審判決(知財高裁)

 さて、一昨日になりますが、27日、ピンクレディと光文社の裁判についての知的財産高裁の控訴審判決が出て、裁判所サイトの知的財産裁判例集に掲載されました。
 本件の原審である東京地裁判決については、当ブログでも取り上げました。
 → 「ピンクレディが出版社の写真使用を訴えた事件の判決(東京地裁)」
                               (08/7/13)

 これの控訴審判決ですが、知財高裁は、ピンクレディ側の請求を棄却した原審判決を維持して控訴を棄却しました。
 平成21年8月27日知財高裁判決 損害賠償請求控訴事件(控訴棄却)

 本件の事案は、ピンク・レディーの両名が原告(控訴人)となって、被告光文社に対し、雑誌中の記事において控訴人らの写真14枚を無断で使用したことが控訴人らのいわゆる「パブリシティ権」を侵害する不法行為になると主張して、損害賠償を求めたものです。

 今回の判決は、パブリシティ権侵害の有無について検討しているのですが、まず、

芸能人やスポーツ選手等の著名人も,人格権に基づき,正当な理由なく,その氏名・肖像を第三者に使用されない権利を有するということができるが,著名人については,その氏名・肖像を,商品の広告に使用し,商品に付し,更に肖像自体を商品化するなどした場合には,著名人が社会的に著名な存在であって,また,あこがれの対象となっていることなどによる顧客吸引力を有することから,当該商品の売上げに結び付くなど,経済的利益・価値を生み出すことになる・・」として、このような経済的利益・価値も、人格権に由来する権利として、当該著名人が排他的に支配する権利であるとし、これを「パブリシティ権」と呼んでいます。

 そして、「・・・著名人の氏名・肖像の使用が違法性を有するか否かは,著名人が自らの氏名・肖像を排他的に支配する権利と,表現の自由の保障ないしその社会的に著名な存在に至る過程で許容することが予定されていた負担との利益較量の問題として相関関係的にとらえる必要があるのであって,その氏名・肖像を使用する目的,方法,態様,肖像写真についてはその入手方法,著名人の属性,その著名性の程度,当該著名人の自らの氏名・肖像に対する使用・管理の態様等を総合的に観察して判断されるべきものということができる。」としました。

 そのうえで、本件雑誌記事の内容について、具体的に検討し、
本件記事は,昭和50年代に広く知られ,その振り付けをまねることが社会的現象になったピンク・レディーに子供時代に熱狂するなどした読者層に,その記憶にあるピンク・レディーの楽曲の振り付けで踊ることによってダイエットをすることを紹介して勧める記事ということができ,また,本件雑誌の表紙における本件記事の紹介も,その表紙右中央部に,赤紫地に白抜きの「B解説!ストレス発散“ヤセる”5曲」の見出しと大きさが縦9.6㎝,横1.7㎝のピンク色の下地に黄色で「『ピンク・レディー』ダイエット」との見出しを記載するものであって,これは,Aが解説するピンク・レディーにかかわるダイエット記事が登載されていることを告知しようとするものということができ,さらに,本件雑誌の電車等の中吊り広告及び歌唱中の控訴人らの写真1枚が付けられた新聞広告も同様の趣旨のものであるということができ,以上によると,本件写真の使用は,ピンク・レディーの楽曲に合わせて踊ってダイエットをするという本件記事に関心を持ってもらい,あるいは,その振り付けの記憶喚起のために利用しているものということができる。
 また,本件写真は,控訴人らの芸能事務所等の許可の下で,被控訴人側のカメラマンが撮影した写真であって,被控訴人において保管するなどしていたものを再利用したものではないかとうかがわれるが,その再利用に際して,控訴人らの承諾を得ていないとしても,前記したとおり,社会的に著名な存在であった控訴人らの振り付けを本件記事の読者に記憶喚起させる手段として利用されているにすぎない。
 以上を総合して考慮すると,本件記事における本件写真の使用は,控訴人らが社会的に顕著な存在に至る過程で許容することが予定されていた負担を超えて,控訴人らが自らの氏名・肖像を排他的に支配する権利が害されているものということはできない。

とし、本件記事における本件写真の使用によって控訴人らの権利又は法律上保護される利益が侵害されたということはできないとして、原審判決の結論を支持して、控訴を棄却したものです。

 要するに、本件写真使用は、ダイエット記事のために利用されたものであり、控訴人らの主張するように、ピンクレディの大きな顧客誘引力を利用したり、肖像そのものを鑑賞するグラビア記事であるとはいえず、パブリシティ権は侵害していない、と結論づけるものです。

 原審判決に対する上記当ブログ記事のときにも述べましたが、本件はかなり微妙な事案と思っていますが、控訴審でも同様の結論が出されたことは注目されます。

2009年6月 5日 (金)

元アイドルのストリップ出演禁止の仮処分

 サンケイのニュースサイトを見ていると、今日は、やたらと元グラビアアイドル小向美奈子のストリップ出演に関する騒動を詳しく報じています。

 まず、覚せい罪取締法違反で有罪判決(執行猶予)を受けた元アイドルタレントに対して、ストリップに出演しないよう、元の所属事務所から東京地裁に仮処分を申し立てられて、2日に東京地裁はこれを認める決定を出していたらしい。報道によれば、元所属事務所と元アイドルは、その種のものに出演等しない旨の書面を交わしていたとされています。

 で、今日の報道は、今日、この元アイドルが浅草ロック座のストリップに出演する予定となっていたところ、出演するのしないの、客が文句を言うの、などというような、傍目からはドタバタ劇のような状況をサンケイが刻々と報じている感じになっています。

 この途中で、浅草ロック座のコメントとして、浅草ロック座も元アイドルも、仮処分決定の事実は報道で知ったもので、裁判所から書面は元アイドルに届いていなかった、昨日、元アイドル側が決定に異議を申し立てた、というような内容が報じられていました。

 さて、ここからが問題です。

 上記の事実関係のもとで、登場人物として、元アイドル、元所属事務所、浅草ロック座のそれぞれの関係につき、民法民事保全法の観点から、法的に論じなさい。ただし、東京地裁の仮処分決定が元アイドルに送達された時期が、(1)元アイドルと浅草ロック座との出演契約以前だった場合、(2)出演契約以後、出演以前だった場合、(3)出演以降だった場合、に分けて検討すること。

 というような論文問題はどうでしょうか。3者間の関係に加えて、お客さんも入れたらいいかもしれません。基本的な問題ではありますが、ちゃんと論点を網羅して整理された答案を書こうと思うと結構難しいと思います。もちろん、私は書きませんけど(笑)。