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2017年8月23日 (水)

消費者被害防止ネットワーク東海とジャニーズ事務所との差止請求に関する協議が成立

 昨年、ジャニーズのファンクラブの規約に関して適格消費者団体から是正の申し入れがあったことについて、当ブログで以下の通り書きました。   

 → 「適格消費者団体によるジャニーズファミリークラブへの規約是正の申入」 (2016/11/17)
 → 「この機会に適格消費者団体による差止請求の説明でも」 (2016/11/19)

 その後、いろいろとやり取りがあって、ひとまず決着がついたようで、協議内容が本日、消費者庁サイトに掲載されました。

 → 消費者被害防止ネットワーク東海と株式会社ジャニーズ事務所との差止請求に関する協議が調ったことについて (PDF)

 これまでの経緯については、消費者被害防止ネットワーク東海のサイトの「申入れ是正の活動(終了したもの)」に記載されています。

 消費者庁サイトの本日の公表の概要は次の通りです。ジャニーズ事務所は、申し入れられた契約条項変更を受け入れたようですね。


 消費者被害防止ネットワーク東海と株式会社ジャニーズ事務所との差止請求に関する協議が調ったことについて下記の事項を公表する。    

(1)事案の概要    
 適格消費者団体「消費者被害防止ネットワーク東海」が、ジャニーズ事務所に対して、ジャニーズ事務所に所属するタレントを応援することを目的とするファンクラブであるジャニーズファミリークラブに関し、ジャニーズ事務所同クラブの会申込者、会員との間で用いられる会員規約について、次のように契約条項の変更を申し入れた事案である。

(申入れの概要)   

  • 「本件規約は予告なく改訂されることがあり、改訂された本件規約は、閲覧可能となった時点から効力を有するものとする契約条項」が、消費者契約法10条に条項に該当し無効であるとして、その変更
  •    
  • 会員が本件規約に定める会員資格の各条件を満たしている場合でも、会員を退会処分とする場合があり、「退会処分とされた会員は損害賠償等の一切の権利行使ができないとする契約条項」及び「ジャニーズ事務所は本件クラブのサービスに関しいかなる責任も負わないものとする契約条項」が、それぞれ消費者契約法8条1項1号及び3号に該当し無効であるとして、その変更
  •    
  • 「会員が資格を喪失した場合、理由のいかんを問わず、支払済みの入会金及び年会費の返還ができないとする契約条項」が、消費者契約法9条1号に該当し無効であるとして、その変更

(2)結果

 平成29年6月1日、ジャニーズ事務所は、消費者被害防止ネットワーク東海に対し、上記の申入れに係る契約条項の改定について連絡した。    
これを受けて、平成29年7月25日、消費者被害防止ネットワーク東海は、申入れの趣旨に沿う内容の改定がなされたものとして、ジャニーズ事務所に対し、申入れ終了の連絡をした。

2017年7月13日 (木)

芸能プロ契約問題と「人材と競争政策に関する検討会」(公取委)

 先日、NHKの報道に関して、 「芸能プロダクションと芸能人との契約について公取委が調査との報道」 (2017/7/ 8)を書きましたが、今日は朝日新聞が関連記事を報じています。

 これは、芸能タレントやスポーツ選手、コンピュータープログラマーなど、特殊な技能を持つ人と企業などとの契約について、公正取引委員会が有識者会議を来月から開催し、早ければ今年度中に報告書を公表する、としているものです。

 おそらく、公正取引委員会競争政策研究センター(CPRC)が昨日(7/12)公表した 「「人材と競争政策に関する検討会」の開催について」「人材と競争政策に関する検討会」のことかと思われます。

 公表内容では、特に、芸能、スポーツなどに絞ってはいませんが、アメリカや欧州でのスポーツ選手の移籍問題や、昭和38年の我が国の映画会社の事案などに触れており、オブザーバーにスポーツ庁も入っていますので、芸能、スポーツ関係も視野に入れていることは間違いないようです。

 検討会のメンバーは以下の通りです。

   荒木 尚志 東京大学大学院法学政治学研究科教授
   大橋 弘
    東京大学大学院経済学研究科教授
              (
競争政策研究センター主任研究官)
   風神 佐知子
 中京大学経済学部准教授
   川井 圭司
 同志社大学政策学部教授
   神林 龍
   一橋大学経済研究所教授
座長 泉水 文雄
 神戸大学大学院法学研究科教授
   高橋 俊介
 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授
   多田 敏明
 日比谷総合法律事務所 弁護士
   土田 和博
 早稲田大学法学学術院教授
   中窪 裕也
 一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授
   中村 天江
      リクルートワークス研究所労働政策センター長
   和久井 理子
 大阪市立大学大学院法学研究科特任教授
              (
競争政策研究センター主任研究官)

(オブザーバー)
文部科学省(スポーツ庁) 厚生労働省 経済産業省
             [五十音順,敬称略,役職は平成29年7月12日現在]

 いつもいろいろとお世話になってます神戸大学の泉水文雄教授が座長となっておられますね。今後の検討状況を注目したいです。

【追記】(7/18)

 「人材と競争政策に関する検討会」について、公取委事務総長定例会見でも触れられていたようですので、追記しておきます。
 → 事務総長会見記録(平成29年7月12日) 

2017年7月 8日 (土)

芸能プロダクションと芸能人との契約について公取委が調査との報道

〔※【追記】続報を別記事で書きましたのでご覧下さい。「芸能プロ契約問題と「人材と競争政策に関する検討会」(公取委)」 (7/13)〕

 

 先日、AKB48のメンバーの突然の結婚宣言があった際には、当ブログの今年初めの記事「アイドルの恋愛禁止条項の効力についての判決(その2)」 (2017/1/7)への訪問が増えたという現象が起こりました。

 若干それとも関連するのですが、NHKが、昨日(7月7日) 「大手芸能事務所など不公正な契約ないか調査 公取委」というニュースを報じています。(注:ニュースのリンクは一定期間経過後、切られるかと思います。)   
また、同様の内容で、NHK「クローズアップ現代」 「芸能人が事務所をやめるとき ~“契約解除”トラブルの背景を追う~」を放送しています(2017年3月1日)。

 この調査開始の報道は、公正取引委員会からの正式発表ではなく、関係者からの取材で判明、とするものですが、このNHKの報道によれば、「芸能人の所属事務所からの独立や移籍をめぐってトラブルになるケースが相次いでいることから、公正取引委員会が大手芸能事務所などを対象に独立や移籍を一方的に制限するなど、独占禁止法に抵触するような不公正な契約が結ばれていないかどうか、調査を始めた」とのことです。

 この記事の中で、「業界団体の統一契約書」というのが出てきますが、これは音楽芸能プロダクションなどの業界団体「日本音楽事業者協会(音事協:JAME)」が作成している「専属芸術家統一契約書」という標準契約書のことですね。もちろん、事業者団体の作成するこういった標準契約書は、各プロダクションに対して強制力を持つものではなく、あくまでも「ひな形」だろうと思いますが、ネットで検索しても、音事協のサイトを含めて、統一契約書は見つかりませんでした(あればご教示下されば幸いです。)。

 NHKの報道によれば、この統一契約書では、事務所と芸能人の関係について一般的な雇用関係ではなく、「互いに対等独立の当事者どうしの業務提携」と位置づけており、契約期間満了の翌日から自動的に契約が延長されるとしていて、芸能人側が契約の更新を希望しない場合であっても、事務所側が期間の延長を求めることができるとしている、とのことですし、タレントが芸能活動を休業したり事務所との契約を解除したりする際には、「事前に書面によって事務所側の承諾を得なければならない」としていて、ほかの事務所に移籍するなどして芸能活動を再開しようとする際にも、一定の期間は前の事務所の承諾を得る必要があるとしているようです。

 今回は、こういった契約内容が、独占禁止法上問題とならないか、についての調査検討を公正取引委員会が始めた、ということですね。

 なお、この動きにも関連するのだと思いますが、公正取引委員会に置かれている競争政策研究センター(CPRC)では、今年3月に、内部向け研究の一環として、フリーライターの星野陽平氏の講演を開催しており、その際の資料「独占禁止法をめぐる芸能界の諸問題」 (PDF)がサイトにあげられています。これはSMAP事件など最近の芸能界で起きた事件、芸能界の歴史、芸能事務所のビジネスモデルなどを踏まえて、アメリカの状況との比較を行って、提言がなされています。(蛇足:文中、「レッツゴー三匹」とあるのは、正しくは「レツゴー三匹」です。)

 お隣の韓国でも、以前から芸能人の契約が「奴隷契約」などと呼ばれて問題視されていますが、そういった中で、韓国の公正取引委員会は、「大衆文化芸術家標準専属契約書」を作成しており、2011年には、青少年芸能人の人権を保護する内容への改定がなされています(中央日報日本語サイト)。    
 また、先日の報道では、韓国大手芸能事務所が、芸能プロダクションと「練習生」との間の不公正な契約慣行に関して、公正取引委員会による是正措置を受けて契約内容を修正した、と報じられています(朝鮮日報日本語サイト)。

 さらに、韓国では、「大衆文化芸術産業発展法」(2014年1月公布)が作られており、これによって、上記の標準契約の普及や、女性や未成年の芸能人の人権保護が図ろうとしています。   
 → 国立国会図書館立法情報「【韓国】 大衆文化芸術産業発展法の制定」海外立法情報課藤原夏人(PDF)

 さて、日本の公正取引委員会は今後どういった動きを見せるのでしょうか。

2017年5月10日 (水)

米国FTCがSNSによる女優らのステマ投稿に警告

「ステマはだめ!」、InstagramインフルエンサーにFTCが警告 (ITpro)

 これは、先月4月20日の記事ですが、この中では誰に警告を送ったのかは公開されていない、とされています。

 ところが、このほどロイターが送付先の資料を入手したとして報じています。

米規制当局が女優やモデルに注意喚起、SNSでの商品推奨に (ロイター)

 これによれば、「米女優のソフィア・ベルガラ、スーパーモデルのハイディ・クルム、元プロバスケットボール選手のアレン・アイバーソンなど35人以上の著名人や40社を超える企業に対し3月に書簡を送付した」とのことですね。

 FTCの警告は、FTCの推奨・体験談(エンドースメント)に関する広告ガイドラインによるものです。当ブログでもステマの問題は何度も取り上げていますし、このFTCガイドラインについても以前書きました(ガイドラインは2015年5月に改訂されています。)。

 「ブログのステマ記事と米FTCガイドライン」 (2012/12/22)

 また、FTCは、このエンドースメントに関する広告ガイドラインとは別に、新たに いわゆるネイティブ広告(広告という形をとらない広告)についてのガイドラインを2015年12月に公表しています。

 なお、これまでのエンドースメントに関する広告ガイドラインによる勧告の事案(FTCとの和解で終了)としては、デパートのロード&テイラーに関するものがあります。

 「「広告であることを明かさないで消費者をだました」と、米連邦取引委員会が老舗デパートを罰する」 (田中善一郎)

2017年1月26日 (木)

ひとまず、「PPAP」商標登録出願騒動について

 ベストライセンス社、上田育弘氏は、商標権まわりの仕事に関係している人には、以前から大変な有名どころであったわけですが、突然、ピコ太郎の「PPAP」関連で、新聞やテレビが取り上げはじめ、大騒ぎになっていてビックリしています。
 今、人気の「PPAP」だから、というのも当然あるのでしょうが、やはり、ネット炎上の拡大の速さに今さらながら感じ入るしかないというところです。

 この件について、詳しく解説する時間はとてもありませんが、テレビなどでの報道、それを見ての一般の方々のTwitterなどでの投稿を見ていると、誤解されている部分がいくつか見られますので、そこだけ簡単に指摘して、今回の記事とさせていただきます。

  1.  上田氏は、元「弁理士」で、元弁護士でも元税理士でもありません。
     「弁理士」は特許など知的財産権の登録の出願、管理などを仕事とするための国家資格を持っている人です。
  2.    
  3.  今回の「PPAP」については、ベストライセンス社が「商標登録をした」、「商標権をとった」ということではなく、商標権の登録のための「出願」をしただけで、特許庁が登録を認めたわけではありません。登録を願い出た段階にすぎません。
  4.  これまでの同様の出願からみて、おそらく出願料は特許庁に支払われていないと思います。これを支払わないと、そもそも特許庁は登録の可否についての審査を始めません。      
  5.    
  6.  今回の出願で、出願料を払っても、特許庁は登録を認めない可能性がかなり高いと言えます。      
  7.    
  8.  仮に、認められて、ベストライセンス社が商標権を得たとしても、ピコ太郎が「PPAP」を歌えなくなる(こういう見出しの記事をいくつか見ましたが)、ということはありません。

                  以上です。

【追記】(1/27)
 弁理士さんの詳しい解説記事がありましたので、ご紹介します。上の記事だけでは、根拠がわからない、という方はお読みください。かなり長いです。私が「詳しく解説する時間はとてもありませんが」と冒頭にかいたのがお分かりいただけるかと (笑)

  → 「PPAPの商標が他人に商標登録出願された問題の解説」

               (ファーイースト国際特許事務所サイト)

【追記】(1/27)

 待望してました栗原潔先生の解説が出ました。
 ぜひご覧ください。

 → 「PPAP等の大量勝手商標出願問題について整理してみる」

2017年1月 7日 (土)

アイドルの恋愛禁止条項の効力についての判決(その2)

少し遅くなりましたが、新年あけましておめでとうございます。

    本年もよろしくお願い申し上げます。

 昨年の判例時報の目次に目を通していたら、ファンと交際するなどした女性アイドルが芸能プロダクションから損害賠償を求めて訴えられていた裁判の判決で責任が肯定された、というのを見かけました。こういう判決について、ブログを書いたよなぁ、と思って探したら、ありました。1年前の記事でした。

「アイドルの恋愛禁止条項の効力についての判決」 (2016/1/18)

 これは、昨年(平成28年)の1月18日の東京地裁判決(下記第2事件)の報道に関するものでしたが、その際、上の判例時報の判決(平成27年9月18日東京地裁・下記第1事件)にも触れていましたね。ただ、この昨年1月の時点では、両判決とも判決文自体は読めていませんので、報道記事の内容と私の推測を交えた感想文になっていましたが、今回、両方の判決文を読むことができましたので、改めて記事にしておこうということで、今年最初の記事です。少し長くなりますが、タレントの契約における恋愛禁止条項の解釈について、特に第2事件については、なかなか面白い判決となっています。


【平成27年9月18日東京地裁判決(第1事件)の事案】

 被告Y1(女性アイドルタレント・15歳)が、原告X1(芸能プロダクション)との間で、芸能活動に係る専属契約を締結し、アイドルグループのメンバーとして芸能活動を行っていた。原告X2は、このアイドルグループについてX1との間でタレント共同運営契約を締結していた会社。被告Y2はY1の親権者(父親)。なお、ややこしいので、X1とX2を併せてXら、、Y1とY2を併せてYらと表記します。   
 そして、Y1が、男性ファンとラブホテルに入るなど専属契約に違反する行為をし、これにより、グループを解散せざるを得なくなり損害を被ったとして、Xらが、Y1に対しては債務不履行又は不法行為に基づき、親権者Y2に対しては民法714条1項(責任無能力者の監督義務者の責任)に基づき、合計約500万円の損害賠償金等の連帯支払を求めたという事案です。

 なお、専属契約には、Y1について「ファンとの親密な交流・交際等が発覚した場合」などの事項が発覚した場合、契約を解除して、X1はY1に損害の賠償を請求することができるものとされていました。   
 また、Y1は、専属契約締結の際、X1から「アーティスト規約事項」を受領していますが、この規約には、「私生活において、男友達と二人きりで遊ぶこと、写真を撮ること(プリクラ)を一切禁止致します。発覚した場合は即刻、芸能活動の中止及び解雇とします。 CDリリースをしている場合、残っている商品を買い取って頂きます。 異性の交際は禁止致します。ファンやマスコミなどに交際が発覚してからでは取り返しのつかないことになります。(事務所、ユニットのメンバーなどに迷惑をかけてしまいます)」という定めがありました。

 結論からいうと、判決(児島章朋裁判官)は、Y1にXらへの合計約65万円の損害賠償金の支払を認め、Y2への請求は全部棄却しています。

【平成28年1月18日東京地裁判決(第2事件)の事案】

 こちらは、原告X(芸能プロダクション)が、Xとの間で専属マネージメント契約を締結した被告Y1(女性アイドルタレント・契約当時は未成年)、被告Y2,Y3(親権者・両親)、被告Y4(Y1と交際したファン)に対して、Y1とY4が交際を開始し関係を持ち(当時は両者とも成年)、共謀してイベント等への出演を一方的に放棄するなどしたとして、Y1(債務不履行又は不法行為)とY4(共同不法行為)に対しては約880万円の連帯支払、Y2とY3に対してはY1の行為について管理監督を行うべき信義則上の義務に違反したとして110万円の連帯支払を求めたという事案です。

 こちらの契約では、「XがY1の出演業務に関して第三者との間で契約を締結した場合には、Y1はXの指示に従って誠実に当該出演業務を遂行しなければならない。」、「(損害賠償請求ができる事由として)〈1〉 いかなる理由があろうと仕事や打ち合わせに遅刻、欠席、キャンセルし、原告に損害が出た場合 〈3〉 電話もしくはメールで連絡が付かず損害が出た場合 〈8〉 ファンと性的な関係をもった場合 またそれにより原告が損害を受けた場合 〈11〉 あらゆる状況下においても原告の指示に従わず進行上影響を出した場合 〈13〉 その他、原告がふさわしくないと判断した場合」という定めがありました。なお、この契約にはY2も親権者として署名押印しています。

 なお、本件契約については、Y1は、メール(平成26年7月11日)および内容証明郵便(同月26日付)で、Xに対して、グループを脱退し、契約を解除する旨の意思表示を行っています。

 こちらの判決(原克也、中野達也、藤田直規裁判官)は、全ての請求が棄却となっています。


 まず、第1事件で、裁判所が女性アイドルの責任を認めた構成ですが、Y1はグループで活動するにあたり、交際禁止条項について説明を受け、その内容を認識していた事実が優に認定できる、とし、専属契約においては、交際等がX1に発覚した場合について規定しており、規約においては、ファンへの交際発覚を含む旨を明確に記載しているから、本件の交際がファンやXらに発覚したことが交際禁止条項の違反にあたることは明らかである、としました。そして、不法行為責任についても、「異性とホテルに行った行為自体が直ちに違法な行為とはならないことは、Yらが指摘するとおりである。しかし、Y1は当時本件契約等を締結してアイドルとして活動しており、本件交際が発覚するなどすれば本件グループの活動に影響が生じ、Xらに損害が生じうることは容易に認識可能であったと認めるのが相当である。そうすると、Y1が本件交際に及んだ行為が、Xらに対する不法行為を構成することは明らかである。」とし、債務不履行および不法行為を負う、としました。

 第1事件での損害賠償額ですが、Xらそれぞれへの信用毀損(各200万円の請求)は、その事実は認められないとされ、Tシャツの作成費、レコーディング費用、レッスン費用などの費用のみが損害とされたうえで、過失割合について、「Xらが芸能プロダクションとして職業的にアイドルユニットを指導育成すべき立場にあることや、Y1が当時未だ年若く多感な少女であったことなどを踏まえると、本件交際における過失割合は、Xらが40、Y1が60とするのが相当である。」として、上記費用の6割が損害賠償額とされたものです。

 なお、第1事件での、父親Y2の責任については、「本件契約等の締結時及び本件交際当時において、Y1は15歳の未成年であったところ、Y1は、X1との間で本件契約等を締結して本件グループでアイドルとして活動していたのであるから、通常の同年齢の者が有する事理弁識能力を有していたことは明らかである。」として、Y2は、民法714条1項の監督義務者等にはあたらないから、本件において責任を負うことはない、と判断しています。

 次に第2事件の判決(全部請求棄却)の判断です。

 判決は、まず、Y1の行為は、少なくとも形式的には本件契約の上記各条に違反するように思われる、としましたが、本件契約は雇用類似の契約であり、「本件契約の規定にかかわらず、民法628条に基づき、「やむを得ない事由」があるときは、直ちに本件契約を解除することができる」とし、本件では、この「やむを得ない事由」があったとして、内容証明郵便が到達した平成26年7月27日に契約解除の効力が発生した、としました。この「やむを得ない事由」に関して、判決は、「本件契約は、「アーティスト」の「マネージメント」という体裁をとりながら、その内実はY1に一方的に不利なものであり、Y1は、生活するのに十分な報酬も得られないまま、原告の指示に従ってアイドル(芸能タレント)活動を続けることを強いられ、従わなければ損害賠償の制裁を受けるものとなっているといえる。ゆえに、本人がそれでもアイドル(芸能タレント)という他では得難い特殊な地位に魅力を感じて続けるというのであればともかくとして、それを望まない者にとっては、本件契約による拘束を受忍することを強いるべきものではないと評価される。このような本件契約の性質を考慮すれば、Y1には、本件契約を直ちに解除すべき「やむを得ない事由」があったと評価することができる。」という注目すべき判断を行っています。
 そして、この事由は、Y1の過失によって生じたものではないから、解除による損害賠償義務(民法628条後段)をY1が負うことはない、としたのです。ここのところで、判決は、恋愛禁止条項違反の場合の損害賠償義務について、興味深い判断をしていますが、これは最後に書きます。

 したがって、Y1が平成26年7月20日のライブに出演しなかった行為と解除の効力発生前の7月26日までの7日間に本件グループの活動に従事しなかった行為は、Xに対する債務不履行に該当するけれども、解除の効力発生後の活動停止については、債務不履行に該当しない、とし、業務妨害ないし債権侵害の不法行為のXの主張についても、本件契約はY1にとって一方的に不利な面が強く、やむを得ない事由があるとしてこれを解除することはY1の正当な権利行使と認められるから、そのような不法行為に該当するとは認められない、としました。

 しかし、7日間については、Y1の債務不履行があったという判断にはなるのですが、判決は、この期間において、Xの主張するグッズの在庫、逸失利益、信用毀損などの損害が生じたとは認められない、として、結局、損害賠償請求を認めなかったものです。

 Y2、Y3(両親)の監督義務責任については、「そもそも一般的に成年に達した者が、マネージメント契約に基づきアイドル(芸能タレント)活動を行うのに際して、その者の父母が契約の相手方に対して何らかの責任を負う根拠はないと考えられる。」としたうえで、本件契約締結時Y1は既にその時点で19歳9か月であり、アイドル(芸能タレント)としての活動拠点もY2夫妻が暮らすH市から遠く離れた東京都内であった上、Y1がY4と交際を開始したと認められる平成25年12月には既に成年に達していた。」とし、「Y2夫妻は、Y1の生活及び活動状況について、原告の主張するような管理監督義務を原告に対して負うとは認められない。」としました。

 Y4(交際相手のファン)については、Y1の責任が認められない以上、当然責任を負わないことにはなるのですが、判決はこれに付言して、「異性に恋愛感情を抱くことは人としての本質の一つであり、その具体的現れとして当該異性と交際すること、さらに当該異性と合意の上で性的な関係を持つことは、人の幸福追求権の一場面といえる。まして、Y4は、一ファンに過ぎず、被告Y1と異なり、アイドルではなく、原告との関係で何らかの契約関係の拘束を負うものでもない。それゆえ、Y4においては、原告との関係で、契約上はもちろん一般的にも、Y1と交際し、さらにY1と合意の上で性的な関係を持つことを禁じられるような義務を負うものではないから、Y1と交際し、性的な関係を持った事実をもって、原告に対する違法な権利侵害と評価することはできないというほかない。」と言っています。

 この恋愛禁止条項違反行為については、判決は、Y1の責任判断の際、Y1の契約解除の効力発生時についての判断のところで、以下のように述べています。

確かに、タレントと呼ばれる職業は、同人に対するイメージがそのまま同人の(タレントとしての)価値に結びつく面があるといえる。その中でも殊にアイドルと呼ばれるタレントにおいては、それを支えるファンの側に当該アイドルに対する清廉さを求める傾向が強く、アイドルが異性と性的な関係を持ったことが発覚した場合に、アイドルには異性と性的な関係を持ってほしくないと考えるファンが離れ得ることは、世上知られていることである。それゆえ、アイドルをマネージメントする側が、その価値を維持するために、当該アイドルと異性との性的な関係ないしその事実の発覚を避けたいと考えるのは当然といえる。そのため、マネージメント契約等において異性との性的な関係を持つことを制限する規定を設けることも、マネージメントする側の立場に立てば、一定の合理性があるものと理解できないわけではない。    
 しかしながら、他人に対する感情は人としての本質の一つであり、恋愛感情もその重要な一つであるから、かかる感情の具体的現れとしての異性との交際、さらには当該異性と性的な関係を持つことは、自分の人生を自分らしくより豊かに生きるために大切な自己決定権そのものであるといえ、異性との合意に基づく交際(性的な関係を持つことも含む。)を妨げられることのない自由は、幸福を追求する自由の一内容をなすものと解される。とすると、少なくとも、損害賠償という制裁をもってこれを禁ずるというのは、いかにアイドルという職業上の特性を考慮したとしても、いささか行き過ぎな感は否めず、芸能プロダクションが、契約に基づき、所属アイドルが異性と性的な関係を持ったことを理由に、所属アイドルに対して損害賠償を請求することは、上記自由を著しく制約するものといえる。また、異性と性的な関係を持ったか否かは、通常他人に知られることを欲しない私生活上の秘密にあたる。そのため、原告が、Y1に対し、Y1が異性と性的な関係を持ったことを理由に損害賠償を請求できるのは、Y1が原告に積極的に損害を生じさせようとの意図を持って殊更これを公にしたなど、原告に対する害意が認められる場合等に限定して解釈すべきものと考える

 それぞれの立場からむずかしい微妙な問題ではあるのですが、なかなか含蓄のある判断ではないか、と思います。

続きを読む "アイドルの恋愛禁止条項の効力についての判決(その2)" »

2016年11月19日 (土)

この機会に適格消費者団体による差止請求の説明でも

 一昨日夜にアップした前回記事はたくさんのアクセスをいただきありがとうございました。

 適格消費者団体・消費者被害防止ネットワーク東海(Cネット東海)の申入書に記載されたジャニーズファミリークラブの回答期限は昨日だったのですが、Cネット東海のサイトによれば、昨日、ジャニーズファミリークラブから、しばらく回答を猶予してほしいというFAXが届いたようです。

 さて、せっかくの機会なので、消費者団体訴訟について、簡単に説明をしたいと思います。

 まず、現在、消費者団体が消費者のために訴訟ができる制度は2つあります。

 ① 消費者契約法に基づく差止請求と、 ② 「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」にもとづく被害回復請求、の2つです。

 消費者団体といっても、どんな消費者団体でも請求ができるわけではなく、国の認定を受けた団体でないといけません。①の差止請求ができるのは、「適格消費者団体」で、現在全国に14団体があり、今回のCネット東海もその1つです。なお、私は、大阪を本拠とする消費者支援機構関西(KC's)の活動に関わっています。
(※【追記】 一般の消費者個人や消費者団体が、このような法律上の請求権ではなく、事業者に営業活動や契約内容が違法、不当であるとして是正を求めること自体は、もちろん可能です。)

   → 全国の適格消費者団体の一覧(消費者庁)

 ②の集団的被害回復制度は、今年(平成28年)の10月1日から施行されたばかりで、実際に制度が利用されるのはこれからです。そして、この制度で請求ができるのは、①の適格消費者団体の中で、さらに「特定適格消費者団体」の認定を受けた団体に限られます。現在、1団体(消費者機構日本〔COJ〕)が消費者庁に対して認定申請を行っているという段階ですので、現時点では、まだ認定を受けた特定適格消費者団体はありません。

 したがって、今回の消費者団体による差止請求は、上記①の消費者契約法に基づく差止請求制度による請求行為となります。

 これは、事業者が、消費者契約法などの法律に違反する行為を行った場合に、個別の消費者個人ではなく、適格消費者団体が事業者に対して差止請求、つまり、その行為をやめることを請求できる制度です。

 消費者契約法違反だけではなく、現在は、特定商取引法、景品表示法、食品表示法の違反行為の一部についても差止請求ができることになっています。今回のCネット東海ジャニーズファミリークラブに対する差止請求は、消費者契約法違反の契約条項を止めるよう求めているわけです。なお、この制度は②の制度と異なり、損害賠償などの金銭の請求はできません。

 消費者団体訴訟とは(COJサイト)

 もっとも、現時点では訴訟が起こされているわけではなく、是正の申入(請求)活動の段階です。   
 これによって、契約内容の変更などの適切な是正措置を事業者がとれば、もちろんそれで解決します。現に、各適格消費者団体は同様の申し入れを事業者に行っており、多くのケースでは事業者側も内容を検討して是正に応じています。これらの事案については、各適格消費者団体のサイトに掲載されていますので、興味のある方はご覧ください。なお、今回の件と似たようなものとしては、今年、同じくCネット東海が、宝塚歌劇の宝塚友の会に対して、雑誌の定期購読サービスの契約が消費者契約法違反であるとして申入活動を行っていますが、宝塚友の会は、これに沿う形で改訂を行ったため、申入活動は終了となっています

 しかし、事業者側が適切な対応をせず、消費者契約法などに違反した営業活動や規約を継続するような場合は、適格消費者団体が原告となって、事業者に対して差止請求の訴訟を提起することができます。これも、これまでにいくつもの裁判が起こされています。これらの裁判における判決や訴訟上の和解については、消費者庁サイトに公表されています(消費者契約法第39条第1項に基づく公表)。

 今回のCネット東海の申入活動の今後がどのような形になっていくかは判りませんが、この機会に多くの方々にこの制度をご理解いただければいいな、と考えております。

2016年11月17日 (木)

適格消費者団体によるジャニーズファミリークラブへの規約是正の申入

 今日は、別の記事をアップしたので、これは明日に公開しようと思ったのですが、せっかく書いてしまったこともありますので、早めに出しました。

 さて、特にニュースにはなっていなかったようですが、NPO法人「消費者被害防止ネットワーク東海」(Cネット東海・杉浦市郎理事長)が、本年10月18日付にて、ジャニーズファミリークラブに対して、その会員規約の内容が消費者契約法に鑑みて不当ないし不適切な条項があるとして、規約の是正の申し入れをしていました。Cネット東海は、消費者契約法13条に基づいて内閣総理大臣の認定を受けている適格消費者団体です。

 ジャニーズファミリークラブは、Wikipediaによれば、「ジャニーズ事務所に所属する各タレントの公式ファンクラブの母体となる組織」とのことです。 Cネット東海の公式サイトには、この申し入れのお知らせとともに申入書のPDFファイルもアップしておられるのですが、どうやらファンの方々が殺到しているようでアクセスしずらい状況となっているようです。

 申入書の内容を簡単にご紹介しますと、

 第1として、会員規約2条に関して、ジャニーズファミリークラブ側が、規約を予告なく改訂でき、それが閲覧出来る状態になったときから有効となる、という点に関し、申入書では、このような一方的な規約変更は消費者契約法10条に抵触し無効であるとしています。したがって、規約変更の場合は、効力発生の相当期間前にネット等適切な方法で会員に告知した場合に効力が生じるものとすべきであり、会員の個別の同意がなく規約を変更できるのは、限定された要件(5つ挙げています。)全てを満たす場合に限られるとすべき、としています。

 第2に、会員規約4条2項、3項、5条では、退会処分とされた会員は、損害賠償等の一切の権利行使ができない、ジャニーズファミリークラブはそのサービスに関し、いかなる責任も負わない、などの規定がされており、このような免責、損害賠償の放棄の規定は消費者契約法8条1項1号、3号に抵触するので、規定を改めるよう求めています。

 そして、第3として、会員規約4条3項において、会員が資格喪失した場合、理由の如何を問わず、入会金、年会費の返還はできない、とされていることに関し、これは消費者契約法9条1項により、契約の残期間に応じた平均的損害の範囲を超えるべき部分は返還すべきであるので、規約を変更する旨求めています。

 この申入書では、ジャニーズファミリークラブに対して、その見解や対応を、11月18日(つまり明日)までに書面にて回答するよう求めていますが、さて、どんな回答がなされるのでしょうか。

 なお、申し訳ありませんが、この記事に関して、お電話やメール等でご質問等をいただいても対応することは一切できませんので、あしからずご了承ください。また、私は、他の消費者団体などには関与しておりますが、このCネット東海さんとは直接の関係はなく、公開された申入書の内容以外の状況については全く判りませんので、その点もご了解ください。

【追記】(11/19)

 続編として、消費者団体による差止請求の簡単な説明を書きましたので、よろしければ次記事もご覧下さい。

2012年5月 6日 (日)

コンプガチャ規制問題の補足

 消費者庁がコンプガチャについて景品表示法による規制に乗り出す方針との報道は、昨日朝の読売に続いて日経など他の報道機関も流し始めました。各社の記事の中身を見る限りは消費者庁ルートの情報を元にしているものと思われます。

 昨日もリンクいたしました「やまもといちろうBLOG」でも関連の補足記事を2つほど追加されていますが、報道よりも突っ込んだ情報が記載されていますので、関心のある方は是非お読みください。
 → やまもといちろうBLOG
 ・「消費者庁がコンプガチャ禁止へ、GREE田中社長は暖かくして寝る(補足あり)」
 ・「ソーシャルゲームへの「コンプガチャ」規制関連のメモ」
 ・「さらなる補遺」

 なお、やまもといちろう氏は、課金の返還請求について触れておられますが、景品表示法違反があったからと言って、その取引が無効になったり取り消せるという効果には直接つながりません。あくまでも行政規制ですので、仮に、消費者庁が不当景品だということで措置命令を出しても、課金返金の請求権が発生するというものではありません。民法や消費者契約法などの民事法で返金が請求できる根拠が存在することが必要ですが、これは景品表示法違反というだけでは駄目ですので、ご注意ください。

 他にも、ネット上ではいろいろと今回の報道に対する反応がブログなどにあがってきていますが、法律的な見地からは、次のブログがお勧めです(というか、あまりにも著名ブログでありますが)。いくつかの重要な指摘もなされています。

 → 企業法務戦士の雑感
 「景表法は変質したのか?~「コンプリートガチャ」規制をめぐって。」

 また、今回「カード合わせ」規制がクローズアップされたため、以前のAKB48の「桜の花びらたち2008」発売の際のキャンペーンが中止されたケースについて関連した発言も目立つようです。確かに、あのときも景品表示法(当時は公正取引委員会が所管)が話題になりましたが、「カード合わせ」の突っ込んだ話にまでなっていたかどうか確かな記憶はありません。なお、AKB側の広報では、景品表示法ではなく、独占禁止法(不公正な取引方法)に違反する恐れあり、とのことで中止したとされています。
 当時の当ブログの記事をリンクしておきます。

 → 「AKB48の企画中止と独占禁止法」(08/3/23)

 当時は、AKB48が今のようなトップアイドルグループになるとは思ってませんでしたね。


【追記】(5/6)

 なお、課金返還の話に限りませんが、個別の相談などはブログでは受け付けておりませんので、コメント等にもお返事できないと思いますが、ご了承ください。わざわざ追記することでもないんですけど、そういった感じのキーワード検索でアクセスされている方もおられるようなんで、先に書いておきます。


【追記】(5/6)

 やまもといちろうBLOGの最新記事によれば、被害者の会が損害賠償訴訟を起こす動きがあるとのこと、今回の消費者庁の動きと直接関連があるものではないということです。ひとまず、ご紹介のみ。

「冗談のような「ソーシャルゲーム被害者の会」が立ち上がり、返還訴訟を起こすらしい」

 蛇足的に付け加えると、返金、損害賠償請求の可能性から考えれば、今回の「カード合わせ」の該当性の問題は本筋ではなく、ガチャ全体のシステムの暴利性、欺瞞性(公序良俗違反)みたいなものが立証できるとか、未成年取消の主張ができる、といったところが、突っ込み所ではないかと思いますね。


【追記】(5/9)

 どちらも企業法務分野の著名ブログですが、今回の問題に関連した記事が出されていますのでご紹介。

 → ビジネス法務の部屋
 
 「闘うコンプライアンス(景表法違反で御社は闘いますか?)」

 大阪の山口利昭弁護士のブログ。ガチャ問題そのものではなく、このような企業の景品表示法違反リスク一般について書かれています。

 → 企業法務マンサバイバル
  
「コンプリートガチャ問題に対する行政指導のあり方について」

 橋詰卓司氏のブログ。今回の問題に関連して、消費者庁の行政指導のあり方について懸念を示されています。


2012年2月 4日 (土)

ピンク・レディー事件【蛇足】

 前回取り上げたピンク・レディー事件は大々的に報道もされ、ワイドショーなどでも話題になっているようです。

 その一連の話題に触れていてちょっと気になる所は、一般の方には誤解を生じている部分があるのではないか、という点です。前回記事でもちょっと書いたように、この判決が結果的に著名人側が負けたということもありますし。

 まず、この事件を考える前提として、雑誌に使用された写真は、昔、正当に撮影されて、著作権も出版社側が有しているということを押さえておく必要があります。写真の著作権は被写体側にあるのではなく、撮影者側にあるというのは著作権の基本です。絵画の画家とモデルを考えてもらえば当然の話ですね。

 したがって、本件は著作権の侵害が問題になる事案ではありません。
 なので、勝手にどこかに掲載されていた写真を使用して掲載したというのであれば、パブリシティ権の問題とは別に、著作権者との間で著作権侵害の問題が生じます。本件では、写真自体のパクリはないわけです。この点は誤解のないよう注意してください。

 また、本件は、「人のパブリシティ権」を最高裁が判断した最初の判決ですが、1976年の「マーク・レスター事件」(東京地裁)、1989年の「光GENJI事件」(東京地裁)、1991年の「おニャン子クラブ事件」(東京地裁)など、下級審では古くからパブリシティ権についての判決はあり、法律学の分野でもかなり議論がされていて、パブリシティ権自体は認められてきているのであって、それほど新しい権利というわけではありません。ワイドショーで、「パブリシティ権が新たに認められた」的な紹介がされていたので付言しておきます。
 なお、人ではなく、競走馬の名前に関するパブリシティ権に関しては「ダービースタリオン事件」「ギャロップレーサー事件」があり、この両事件については、最高裁はパブリシティ権を認めていません。物についてのパブリシティ権の場合は、人と違って、人格権を根拠にできませんので難しいところです。もちろん、認めるべきだという考え方もあります。

 それと、人のパブリシティ権については、著名人について問題となるのですが、それでは、著名でない一般人の肖像権はどうなるの?という点が残ります。
 例えば、昔撮影された貴方の写真が勝手に広告に使われていた、という場合に、どのような権利侵害が考えられるか、という問題になります。数年前に関西のテレビ局のローカルニュース番組で取材を受けたことがありますが、以前、素人モデルとして写真を撮られた会社員男性が、後に新聞広告に写真を使われ、個人体験談を語る人物として掲載されていた、というのがありました。もちろん、無断使用だし、そんな商品の購入や使用はしていない人で、広告を見た人からいろいろ言われて迷惑した、というケースでしたね。結構むずかしい問題です。

 また、「人」ではなく、キャラクターはどうなるの?というのもありますね。(あえて書かないでおきます。)