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2019年7月 4日 (木)

「花粉を水に変える」など光触媒マスクに対する措置命令(景表法)

 昨年、当ブログの「花粉を水に変える?」 (2018/3/18)で書きました「花粉を水に変えるマスク」など光触媒の効果をうたうマスクについて、本日、消費者庁は、DR.C医薬株式会社(東京都新宿区)、アイリスオーヤマ株式会社(仙台市青葉区)、大正製薬株式会社(東京都豊島区)、玉川衛材株式会社(東京都千代田区)の4社に対して、景品表示法に違反する不当表示(優良誤認表示)であるとして、措置命令を出しました。後記の通り、不実証広告制度によるものです。

 → 消費者庁公表資料 (PDF)

 この措置命令によると、

    •  DR.C医薬は、あたかも、本件商品を装着すれば、商品に含まれるハイドロ銀チタンの効果によって、商品に付着した花粉、ハウスダスト及びカビのそれぞれに由来するアレルギーの原因となる物質並びに悪臭の原因となる物質を化学的に分解して水に変えることにより、これらの物質が体内に吸入されることを防ぐ効果が得られるかのように示す表示をしていた。
    •  アイリスオーヤマは、あたかも、本件商品を装着すれば、太陽光及び室内光下において、本件商品に含まれる光触媒の効果によって、商品表面に付着した花粉、ウイルス、細菌、ハウスダスト及び悪臭の原因となる物質を化学的に二酸化炭素と水に分解することにより、これらが体内に吸入されることを防ぐ効果が得られるかのように示す表示をしていた。
    •  大正製薬は、あたかも、本件商品を装着すれば、太陽光及び室内光下において、商品に含まれる光触媒の効果によって、3商品表面に付着した花粉由来のアレルギーの原因となる物質、細菌、ウイルス及び悪臭の原因となる物質を化学的に分解することにより、これらが体内に吸入されることを防ぐ効果が得られるかのように示す表示をしていた。

    •  玉川衛材は、あたかも、本件商品を装着すれば、太陽光下において、商品に含まれる光触媒の効果によって、商品表面に付着した花粉由来のアレルギーの原因となる物質、細菌及びウイルスを化学的に二酸化炭素と水に分解することにより、これらが体内に吸入されることを防ぐ効果が得られるかのように示す表示をしていた。

とされており、消費者庁が、景品表示法7条2項(不実証広告)に基づいて、4社に対し、それぞれ、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、4社から資料が提出されたが、提出された資料はいずれも、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められないものであった、とされました。

 この件については、上記の当ブログ記事で、消費者庁不実証広告制度を活用して対応すべきと指摘いたしました。消費者庁が私のブログを見て動いたとは思いませんが、今回妥当な処分が下されたと評価します。今後は課徴金納付命令となると思われます。なお、大正製薬は、同社のプレスリリースにおいて、今回の措置命令に対して、法的な対応を検討する、と表明していますね。

 上記当ブログ記事については、公表後、やまもといちろう氏や科学者の天羽優子先生などにも取り上げて頂きました。

 また、花粉を水に変えるマスクの問題点については、最近も、医師であるNATROM氏が「花粉を水に変えるマスク」の臨床試験の結果は早く公表されるべきというブログ記事(2019/3/29)を書かれていました。

2019年5月 9日 (木)

web雑誌「消費者情報」№488号が公開されました。

 (公財)関西消費者協会のweb雑誌「消費者情報」(2019年5月号 No.488)が、同協会webサイトに掲載されました。

「消費者情報」№488 (PDF)

 今号の特集は、「消費者庁・消費者委員会 創設10年のあゆみ」で、巻頭インタビューが元・内閣府消費者委員会事務局長原早苗さんの「消費者庁・消費者委員会創設10年に想うこと」です。

 その他、

岡村和美消費者庁長官
 「消費者庁発足10年「誰一人取り残さない」社会の実現を目指して」

髙巖内閣府消費者委員会委員長

 「消費者委員会創設10年と今後の展望」

松本恒雄国民生活センター理事長

 「消費者庁・消費者委員会創設10年のあゆみに寄せて」

拝師徳彦全国消費者行政ウォッチねっと事務局長(弁護士)

 「全国消費者行政ウオッチねっとが見た消費者庁・消費者委員会の10年」

が特集の内容となっています。

 もちろん、いつもの連載など他にも興味深い記事が満載ですが、詳しくは上記リンクからご覧下さい。

 なお、今回は、私の記事も載せていただいています。

 コンシューマー・トピック海賊版ダウンロード問題の現状と課題」 (PDF)で、マンガの海賊版サイト対策で問題となった著作権法のダウンロード規制拡大の最近の動きについて、一般の消費者問題関係の方向けに解説させていただいたものです。

 よろしければ、ご興味のある方は是非ご覧下さい。

2019年4月26日 (金)

消費者法ニュース「特集 ニセ科学」など

 本日、平成最後(たぶん)の措置命令が出ました。株式会社BLI(静岡市清水区)が販売する商品「RIDDEX PLUS」に関し、楽天市場上の自社webサイトにおける表示について、景品表示法に違反する不当表示(優良誤認)に該当するとして、消費者庁が措置命令を行ったものです。

 → 消費者庁公表資料 (PDF)

 この商品の写真と弱っているゴキブリのイラストとともに、「あれ!?ゴキブリどこいった??」、「正規品 シリアルナンバー付 RIDDEX PLUS 総合害虫駆除」及び「部屋からゴキブリ消える!」と記載するなどして、あたかも、商品を設置するだけで、ゴキブリやヒアリ等を建物から駆除することができるかのように示す表示をしていたものです。この表示について、消費者庁が、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社から資料が提出されましたが、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められないものであった、として優良誤認表示とされたものです(不実証広告制度)。


 さて、消費者法ニュース4月号が発行されました(もっとも、定期購読者への発送は連休明けのようで、手元にはないのですが)。

 今回の特集のひとつは、ニセ科学です。この企画の最初の段階で少しお手伝いをしたのですが、なかなかの豪華執筆陣であり、面白い内容になっていると思いますので、ご興味おありの方は是非お読みください。

 他の特集その他もいつものように盛りだくさんです(上記リンク先の目次をご覧ください)。

 なお、次号(7月号)は、毎年恒例の消費者法白書が掲載される号ですが、今年も、独占禁止法・景品表示法の項は、私が執筆しますので、そちらもよろしくお願いいたします。もっとも、この原稿は、明日からの連休に書き上げるつもりとなっております。発行されましたら、またお知らせいたします。

2019年3月20日 (水)

産経新聞社の過大景品提供に対する措置命令(大阪府)

 先日(2/13)産経新聞大阪本社に、大阪府消費生活センター景品表示法違反の疑いで立入検査に入ったことは、当ブログで取り上げました。

 → 「新聞購読勧誘の不当景品に関する立入検査報道」 (2/14)

 そして、昨日(3/19)、大阪府は、株式会社産業経済新聞社(東京都千代田区)産經新聞松原南専売所(個人経営)、産経新聞若江岩田・花園専売所(個人経営)に対して、産経新聞の販売にあたって、景品表示法に違反する不当景品(過大な景品類)の提供が認められたとして、措置命令を行いました。

 → 大阪府報道発表資料

 新聞の販売に関しては、一般の景品表示法の景品額規制とは異なり、「新聞業における景品類の提供に関する事項の制限」(告示)の基準によることは、上記の当ブログ記事で説明した通りで、本件の場合は、取引の価額の8%又は6か月分の購読料金の8%のいずれか低い金額の範囲ということになります。

 産経新聞社は、大阪本社販売局内に関係事業者(景品類の仕入れ先)のFAXを設置させて、それにより各販売店からの景品類の発注を受け付け、景品の代金は、一旦産経新聞社が立て替えて関係事業者に支払い、それを産経新聞社が各販売店に請求して回収しており、本件では、景品に、電動アシスト自転車(81,000円相当)をはじめとする告示制限の範囲を超える過大な景品が含まれていて、このような過大な景品を発注していた販売店の中には、産経新聞社直営の販売店や産経新聞社の子会社が運営する販売店が含まれていました。そして、本件措置命令の対象となった松原南専売所及び花園専売所は、産経新聞社大阪本社販売局内設置の関係事業者のファクシミリに景品の発注を行い、代金を産経新聞社に対して支払っていましたが、この景品には、電動アシスト自転車(81,000円相当)をはじめとする告示制限の範囲を超える過大な景品が含まれていた、というものです。

 当ブログの前回記事(3/15)で、大阪府による景品表示法違反の措置命令を書いたところですが、これで大阪府による措置命令は4件目となります。ただ、同じ景品表示法違反といっても、不当表示ではなく、不当景品の提供行為に対して正式の行政処分がなされることは珍しく、大阪府によれば「景品表示法第4条の違反(過大な景品類の提供)により措置命令が行われるのは、全国初の事例となります。」とのことです。

2019年2月14日 (木)

新聞購読勧誘の不当景品に関する立入検査報道

 報道によれば、昨日(2/13)、大阪府消費生活センターが、大阪府の系列販売店による景品表示法違反の疑いで、産経新聞大阪本社に立入検査に入った、とのことです。

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 複数の販売店が、電動アシスト自転車などの高額景品と引き換えに、一人暮らしの高齢者などに長期の新聞購読契約を勧誘しており、大阪府消費生活センターが、産経新聞に対し、販売店への指導を求めていたが、改善されないため、立入検査に踏み切ったとみられる、とされています。また、契約者の解約申し出に応じず、高額の解約金を要求したりなど、各地の消費者センターに多数の苦情が寄せられていた、と報じられています。

 ご承知の通り、景品表示法は、不当に高額な景品類を規制していますが、景品類の規制について景品表示法自体は具体的に定めておらず、その6条に「内閣総理大臣は、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を確保するため必要があると認めるときは、景品類の価額の最高額若しくは総額、種類若しくは提供の方法その他景品類の提供に関する事項を制限し、又は景品類の提供を禁止することができる。」としています。
 この規定に基づいて、消費者庁(33条1項による内閣総理大臣からの権限委任)による告示で、景品規制の具体的な内容を定めることになります。なお、消費者庁設置以前については、公正取引委員会の所管でしたので、以前のものについては、当時の公正取引委員会の告示がそのまま適用されることになります。

 これにより、一般的な景品規制の内容については、「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」、「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」という告示を見ることになるのですが、新聞の発行、販売の事業者については、これとは違う特別の規制がなされています。

 1つは、「新聞業における景品類の提供に関する事項の制限」(告示)です。このような業種別の景品規制告示は、新聞業の他に、雑誌業不動産業医療用医薬品業、医療機器業及び衛生検査所業の計4業種について、定められていますので、これらの事業者に関しては、こちらの規制内容を見ないといけないことになりますので、注意が必要です。

 さらに、新聞業の景品に関しては、もう1つ、新聞公正取引協議会の公正競争規約「新聞業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約」があります。公正競争規約ですので、当該協議会の加盟事業者のみを拘束するものではありますが、主要な新聞社は加盟していると思います。

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 これらの規制全体の細かい内容については省略しますが、一般的な定期購読契約の勧誘の際の景品(懸賞によらないもの)については、原則として取引価額の8%又は6ヶ月分の購読料金の8%のいずれか低い金額が上限となっています。   
したがって、例えば、1年の購読契約だとすると、6ヶ月のほうが低くなります。仮に月5000円の購読料(産経はもっと安いと思いますが)だとすると、6ヶ月で30000円で、その8%は2400円ですので、2400円を超えるような景品を提供することは違法ということになります。電動アシスト自転車などは、当然、これを上回るので景品表示法に違反することになります。
 懸賞による場合も、上記のような契約だとすると、50000円が原則上限になりますので、新品の電動アシスト自転車であれば、これを超えると思います。

 なお、今回は、消費者庁ではなく、大阪府が立入検査に入っていますが、景品表示法の権限については、消費者庁から公正取引委員会(33条2項)や都道府県知事(同条11項)に委任できることになっており、地域が限られた景品表示法違反(不当表示、不当景品)の事案については、都道府県が調査して、措置命令を発することができるようになっています。

2018年12月17日 (月)

「経済法入門」(泉水文雄著・有斐閣)

 ブログの更新ができないまま、12月も後半になってきました。

 最近は、AI技術と法律・責任などという研究イベントが続いており、大変刺激を受けています。


 さて、お世話になっている神戸大学泉水文雄教授から、新著をご恵贈いただきました。ありがとうございます。

 有斐閣の法学教室LIBRARY「経済法入門」です。

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 書名の通り、学生など入門者向けに書かれていますが、独占禁止法だけでなく、下請法景品表示法を含めた最新の経済法の情報がコンパクトにまとめられていますので、初学者でなくても有用な本だと思います。

 特徴といえば、100を超える多くの説例を用いて具体的に解説されており、イメージのつかみにくい独占禁止法の理解がしやすいものになっています。また、途中にコラム記事もたくさん挿入されていますが、コラムといいながら、かなり高レベルの内容に触れられています。

 泉水教授は、芸能人やプロスポーツ選手などと独占禁止法ということで話題になった公正取引委員会「人材と競争政策検討会」の座長を務められておられましたが、今年7月に設置された「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」(経済産業省、総務省、公正取引委員会)の座長も務められており、同検討会の中間論点整理が、この12月12日に公表されたばかりです。いわゆるGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)を代表とするインターネット上のプラットフォーム事業者に関する独占禁止法その他の問題を検討するという最先端の議論がなされていますので、興味のある方はご覧ください。

 → 検討会中間論点整理(経済産業省)

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2018年11月 4日 (日)

「不貞慰謝料の算定事例集ー判例分析に基づく客観的な相場観ー」(新日本法規出版)

 不貞、つまり浮気(ちょっとニュアンスが違うかな)に関する慰謝料の請求の事件というのは、世の中には結構あり、我々弁護士が取り扱うことは珍しくありませんし、私もこれまで結構な数の事案を扱ってきました。
 こういった事案についての、慰謝料金額に関する法律実務の本としては、最近でも、LABO刊の 「判例による不貞慰謝料請求の実務」(中里和伸 ・著) とその姉妹本である 「判例による不貞慰謝料請求の実務 主張・立証編」(中里和伸 野口英一郎・著) があり、私も両書籍を当ブログでご紹介しましたので、内容については、こちらをご覧ください。この手の法律実務書にしては、よく売れていると聞きます。

 → 「書籍の紹介:「判例による不貞慰謝料請求の実務」(中里和伸著)(2015/8/ 5)

 → 「「判例による不貞慰謝料請求の実務〔主張・立証編〕」(LABO刊)」(2017/3/3)

 不貞関連のケースについての裁判や調停、交渉などの仕事の中で、実際にこれらの本の関係個所を引用して裁判で主張するなどして、活用させてもらっています。

 さて、このほど、同様の書籍が新日本法規出版から出版されました。新日本法規出版さんからご恵贈いただき、ざっと読ませていただきましたのでご紹介します。

 「不貞慰謝料の算定事例集ー判例分析に基づく客観的な相場観ー」 (久保田有子・著)です。大阪の弁護士さんたちの共著のようですね。

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 冒頭にあげたLABO版の本2冊は、どちらも裁判例の集積を体系的に整理したり、実際の裁判での主張や立証活動を念頭に置いて解説されています。

 一方、今回の新日本法規版も、多くの裁判例を分析したものであることは同様ですが、ケース毎の事例紹介に重点が置かれていて、冒頭に「状況別慰謝料索引」として、裁判において、不貞の被害を主張する原告が被告に対して不貞慰謝料を請求した裁判例を分析して、状況別に分類したものが置かれています。そして、それぞれの裁判例を順次紹介するという形になっています。

 両者それぞれ特徴があり、どちらがいいとかいうものではありませんが、損害賠償請求の法律上の体系的な整理や訴訟手続実務に関連して参照したい場合は、前者のLABO版を、具体的な事案をわかりやすく整理されたものを参照したい場合には後者の新日本法規版が適しているのではないかな、と思いました。もひとつ、LABO版がA5版の大きさであるのに対して、新日本法規版はB5版で一回り大きくなっており、本文や索引などの文字も大きくなっていますので、我々おじさんたちが、ナントカ・ルーペがなくても見やすいという点はいいですね。その分、置く場所は要りますが。

2018年8月 6日 (月)

「2018年消費者法白書」(消費者法ニュース116号)

 消費者法ニュース116号(2018年消費者法白書)が届きました。

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 いつものように私も書いてます。消費者法白書第10章独占禁止法・景品表示法のところです。

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 本号の内容については上記リンク先で全目次を見ることができますので、そちらを見ていただきたいのですが、消費者法白書の他にも、特集として、 「成年年齢引き下げに反対する(2)—未成年者の消費者被害・マルチ商法被害の実態—」、「仮想通貨ーその問題と法規制のあり方」、「クレプトマニア(窃盗症)とその救済」が取り上げられており、その他にも、盛りだくさんです。

 なお、この雑誌はAmazonや一般書店では取り扱っていませんので、上記リンク先からお申し込みください。

2018年8月 4日 (土)

「ダークツーリズム」(井出明著)を読んで

 知人の井出明金沢大准教授が、このほど、 「ダークツーリズム 悲しみの記憶を巡る旅」(幻冬舎新書)を出版されたので、読みました。

 井出先生は、観光学者ですが、法学修士、情報学博士でもあります。

 ダークツーリズムという言葉はまだ日本では耳なじみがありません。私も、井出先生の研究をうかがって初めて知った次第です。

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 ダークツーリズムとは? という点は、第一章を見ていただくとして、本書では、井出先生が実際に各地(小樽、オホーツク(北海道)、西表島、熊本、長野、栃木・群馬、そしてインドネシア、韓国・ベトナム)を巡ったダークツーリズムの実践がまとまめられ、最後にダークツーリズムのこれから、が語られています。

 新書ですので、本文にして200頁ちょっとですが、中身は大変濃厚だな、と感じさせるものです。また、私自身が子どもだった頃のいろいろな事件、災害などとも結び付くものも多く、考えさせられるものでした。

 本書には、網走刑務所の話も出てきますが、この話は、つい最近閉鎖された奈良少年刑務所の今後とも直接的に繋がる話だな、と思って読んでました。
 そういえば、奈良少年刑務所が閉鎖後に一般公開された時に井出先生も見学に行かれていて、その後で一緒に天満で飲んだことを思い出しました。なお、新書の帯にある写真は、博物館網走監獄での囚人コスプレで、一番左の人が井出先生御自身とのことです。

 また、南樺太の真岡の話は、昨年でしたか、NHKスベシャルでドキュメンタリーになっていたのを偶々見ていて、それまで知らなかった歴史でしたし、番組を見て涙したことを思い出しました。

 その他、順不同に書けば、東日本大震災と足尾銅山、ナショナルトラスト、炭鉱、労働組合、公害病、ハンセン病、朝鮮人強制連行、慰安婦、女工哀史、観光ガイド、風評被害、インド洋津波というような話が次々と展開されていて、具体的にダークツーリズムというものを学べる内容となっています。

 若い人には、多くは過去の歴史的な話かもしれませんが、かなりの問題は私が子どもだったころにも残っていた同時代的なものであり、それらは、たかだか半世紀くらい前のことになります。

 もっとも、本書は、必ずしも、深くて重いテーマの本として読む必要はないのかもしれません。   
 各章の最後には、「旅のテクニック」として交通宿泊などについてのアドバイスも書かれていて、普通の観光コースの旅行には飽きてしまったような旅行のマニア、リピーターの人には興味深い紀行エッセイとしても十分に楽しめるものとなっていると思います。

 なお、井出先生は、本書と同時に、「ダークツーリズム拡張 ─近代の再構築」(美術出版社) も出されていますので、ご紹介しておきます。

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2018年7月16日 (月)

「カフェパウゼで法学を-対話で見つける〈学び方〉」(横田明美著)

 横田明美先生(千葉大大学院准教授)が、主として法律を学ぶ学生向けに書かれた書籍を出版されました。

 「カフェパウゼで法学を-対話で見つける〈学び方〉」 (弘文堂)です。

 横田先生は、行政法を専門とされていますが、行政法消費者法とが交錯する分野についても研究されており、先生のブログの1つ「横田明美研究室」でも、

 「「ロボットと消費者保護 行政法の視点から」を報告しました」

 「主婦連・全地婦連が検討した法的手段~処分等の求めとは」

というような記事を読むことができます。

 消費者法というと、従来、弁護士にせよ、研究者にせよ、民事法の面からのアプローチが中心だったように思いますが、特定商取引法にしろ、景品表示法にしろ、もちろん、各種の業法にしろ、その多くは行政法でもあるわけです。なので、特定商取引法業務停止命令や、景品表示法措置命令・課徴金納付命令などなどの行政機関による権限行使、執行が、消費者問題に関しても重要な役割を果たすのですから、行政法からの視点も重視しなければならないことは当然です。横田先生には、この分野でますます活躍されること期待しています。

 さて、今回出版された本ですが、なかなか可愛らしい装丁になっています。

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 内容は、ぱうぜ先生(横田先生のハンドルネーム)と学生3名の対話を中心として、高校までの勉強と大学の研究の違い、大学での学び方、論文の書き方、進路などについて、学生たちに丁寧に指導、説明する内容になっています。構成は以下のようになっていますが、最後の第Ⅴ部から読み始めても、取っつきやすいかな、と思ったりしました。

 第Ⅰ部 大学生活を楽しもう――1年生編
 第Ⅱ部 レポートをちゃんと書いてみよう――2年生編
 第Ⅲ部 法学を学ぶあなたに――3年生編
 第Ⅳ部 卒論を書いてみよう――卒論編
 第Ⅴ部 自分の未来を作るには――進路編

 四半世紀以上も前の私の法学部生時代には、大学は今ほど学生たちに親切ではなかったですので、法学部に入ってみたものの、法律学の考え方を本当に理解できるまで結構時間がかかりましたし、大学で何をするのか、といった基本的なことも試行錯誤の世界でした。自分でつかんでいくことも、もちろん重要なのですが、基本的な方向付けは指導してもらうことができれば、余計な時間を費やしたり、方向違いを起こしたりすることは減っただろうと思います。

 法学関係の学生さんには是非読んでいただきたい一冊ですね。

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