2019年9月 8日 (日)

自民党への公取委説明の報道(芸能界と独禁法)

 当ブログでも何度か取り上げてきた、芸能事務所と芸能人との独占禁止法の問題ですが、先日(8月27日)、「どういったケースが独占禁止法上問題となり得るか、公正取引委員会が具体例をまとめた。公取委が芸能界に特化してこのような見解を示すのは初めて・・」(朝日新聞)などと、マスコミで報道がありました。

 これは、公正取引委員会が、同日に自民党競争政策調査会に説明したことについての報道なのですが、当日配布資料は公表されていません。

 ただ、実際には、特に新しいことを説明したものではなく、基本的には、芸能界やスポーツ界を含めたフリーランスの契約関係について検討された、昨年2月の公正取引委員会「人材と競争政策に関する検討会」報告書の内容やその後の取り組みなどについて自民党に対して説明をしたということのようで、先日、公正取引委員会近畿中国四国事務所の方々とお話をした機会でも、そのようなニュアンスだとお聞きしました。つまり、上記の朝日の記事でいうと、新しいのは「芸能界に特化して」見解を示した、のが初めてということですね。

 この直後の本年9月4日の公正取引委員会事務総長定例記者会見においても、この問題については、事務総長のほうからは特に触れられず(「デジタル・プラットフォーマーと個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方(案)」のパブコメと、予算概算要求の2点でした。)、リクナビ問題が中心となった記者の質問の中で、「芸能事務所と所属タレントとの関係で,自民党の競争政策調査会で出された指針を今後どう徹底されていきたいか」という質問が出ました。

 これに対して、事務総長は、「・・人材分野に関して競争政策上の考え方というのを御説明いたしました。その際に、そのベースとなりましたのは、それより前に私どもが報告をしていただいております人材と競争政策に関する検討会や、それ以降の私どもの知見を踏まえた内容を調査会に報告いたしております。その際に、昨今、芸能分野について、人材と競争政策に関わる話が問題となっておりますので、芸能人と所属事務所といいますか、そういう契約相手方との間の関係について敷衍した考え方を説明いたしております。」、「今後につきましては、芸能関係だけでなく、スポーツ関係ですとか、更に広くフリーランスとして働いておられる方々との間の取引関係というのは、私ども、競争政策上の問題として考えなければいけない点だというふうに関心を持っておりますので、それぞれの分野につきましては、まず、独占禁止法上、あるいは競争政策上の観点から、色々な問題なり、注意をしていかなければいけない点があるんだということを理解していただくよう、今申し上げた様々な分野の方々に私どもの考え方というのを御説明して、御理解していただき、更に、できるものであれば、自主的な改善を進めていただくということが望ましいというふうに考えております。」という答弁をしています。

 この問題についての当ブログ過去記事については、下記の記事とそこからのリンクをたどっていただければ、と思います。この問題に興味のある方、詳しく知りたい方はご参考まで。

 → 「元SMAPメンバーの出演への圧力行為についての公取委の注意(独禁法)」 (2019/7/17)

 


2019年7月17日 (水)

元SMAPメンバーの出演への圧力行為についての公取委の注意(独禁法)

 今夜の各社の報道によると、「SMAP」の元メンバーの3名に関して、ジャニーズ事務所が民放テレビ局などに対して、独立した3人を出演させないよう圧力をかけていた疑いがあるということで、公正取引委員会独占禁止法違反につながるおそれがあるとして、本日までにジャニーズ事務所を注意した、とのことです。

 この公正取引委員会「注意」というのは、独占禁止法違反行為に対する正式処分である排除措置命令とは異なり、法的な処置ではないため、具体的な中身が公表されないと思われますし、また、日付もはっきりしませんので、ジャニー喜多川氏の死亡の前後とかの関係もわかりませんね。

 この問題に関しては、公正取引委員会「人材と競争政策に関する検討会」(泉水文雄座長)の報告書の関連で、当ブログでも触れてきました。

 → 「人材と競争政策に関する検討会」(公取委)報告書の公表」(2018/2/15)
 → 「芸能プロ契約問題と「人材と競争政策に関する検討会」(公取委)」(2017/7/13)

 要するに移籍に関する制限の問題なんですが、この問題は「SMAP」問題に限らない問題です。芸能界では、能年玲奈(のん)さんのケースもそうですが、スポーツ界でも、ラグビーや陸上競技などでも対応が迫られたところであります。そして、芸能界に関しては、昨今の吉本興業の「闇営業」問題に関して、芸人と事務所との不明瞭な契約関係にもかかわってくる問題ですので、今回の注意で終わりではなく、今後も注視していきたいところです。

 そして、今回は、報道機関であるマスコミ自身も当事者の事案ですので、マスコミの自浄作用として、この問題を明らかにして報じていただきたいところですね。

 また、続報があれば、ブログに書きたいと思います。

2019年7月 4日 (木)

「花粉を水に変える」など光触媒マスクに対する措置命令(景表法)

 昨年、当ブログの「花粉を水に変える?」 (2018/3/18)で書きました「花粉を水に変えるマスク」など光触媒の効果をうたうマスクについて、本日、消費者庁は、DR.C医薬株式会社(東京都新宿区)、アイリスオーヤマ株式会社(仙台市青葉区)、大正製薬株式会社(東京都豊島区)、玉川衛材株式会社(東京都千代田区)の4社に対して、景品表示法に違反する不当表示(優良誤認表示)であるとして、措置命令を出しました。後記の通り、不実証広告制度によるものです。

 → 消費者庁公表資料 (PDF)

 この措置命令によると、

    •  DR.C医薬は、あたかも、本件商品を装着すれば、商品に含まれるハイドロ銀チタンの効果によって、商品に付着した花粉、ハウスダスト及びカビのそれぞれに由来するアレルギーの原因となる物質並びに悪臭の原因となる物質を化学的に分解して水に変えることにより、これらの物質が体内に吸入されることを防ぐ効果が得られるかのように示す表示をしていた。
    •  アイリスオーヤマは、あたかも、本件商品を装着すれば、太陽光及び室内光下において、本件商品に含まれる光触媒の効果によって、商品表面に付着した花粉、ウイルス、細菌、ハウスダスト及び悪臭の原因となる物質を化学的に二酸化炭素と水に分解することにより、これらが体内に吸入されることを防ぐ効果が得られるかのように示す表示をしていた。
    •  大正製薬は、あたかも、本件商品を装着すれば、太陽光及び室内光下において、商品に含まれる光触媒の効果によって、3商品表面に付着した花粉由来のアレルギーの原因となる物質、細菌、ウイルス及び悪臭の原因となる物質を化学的に分解することにより、これらが体内に吸入されることを防ぐ効果が得られるかのように示す表示をしていた。

    •  玉川衛材は、あたかも、本件商品を装着すれば、太陽光下において、商品に含まれる光触媒の効果によって、商品表面に付着した花粉由来のアレルギーの原因となる物質、細菌及びウイルスを化学的に二酸化炭素と水に分解することにより、これらが体内に吸入されることを防ぐ効果が得られるかのように示す表示をしていた。

とされており、消費者庁が、景品表示法7条2項(不実証広告)に基づいて、4社に対し、それぞれ、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、4社から資料が提出されたが、提出された資料はいずれも、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められないものであった、とされました。

 この件については、上記の当ブログ記事で、消費者庁不実証広告制度を活用して対応すべきと指摘いたしました。消費者庁が私のブログを見て動いたとは思いませんが、今回妥当な処分が下されたと評価します。今後は課徴金納付命令となると思われます。なお、大正製薬は、同社のプレスリリースにおいて、今回の措置命令に対して、法的な対応を検討する、と表明していますね。

 上記当ブログ記事については、公表後、やまもといちろう氏や科学者の天羽優子先生などにも取り上げて頂きました。

 また、花粉を水に変えるマスクの問題点については、最近も、医師であるNATROM氏が「花粉を水に変えるマスク」の臨床試験の結果は早く公表されるべきというブログ記事(2019/3/29)を書かれていました。

2018年8月 4日 (土)

「ダークツーリズム」(井出明著)を読んで

 知人の井出明金沢大准教授が、このほど、 「ダークツーリズム 悲しみの記憶を巡る旅」(幻冬舎新書)を出版されたので、読みました。

 井出先生は、観光学者ですが、法学修士、情報学博士でもあります。

 ダークツーリズムという言葉はまだ日本では耳なじみがありません。私も、井出先生の研究をうかがって初めて知った次第です。

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 ダークツーリズムとは? という点は、第一章を見ていただくとして、本書では、井出先生が実際に各地(小樽、オホーツク(北海道)、西表島、熊本、長野、栃木・群馬、そしてインドネシア、韓国・ベトナム)を巡ったダークツーリズムの実践がまとまめられ、最後にダークツーリズムのこれから、が語られています。

 新書ですので、本文にして200頁ちょっとですが、中身は大変濃厚だな、と感じさせるものです。また、私自身が子どもだった頃のいろいろな事件、災害などとも結び付くものも多く、考えさせられるものでした。

 本書には、網走刑務所の話も出てきますが、この話は、つい最近閉鎖された奈良少年刑務所の今後とも直接的に繋がる話だな、と思って読んでました。
 そういえば、奈良少年刑務所が閉鎖後に一般公開された時に井出先生も見学に行かれていて、その後で一緒に天満で飲んだことを思い出しました。なお、新書の帯にある写真は、博物館網走監獄での囚人コスプレで、一番左の人が井出先生御自身とのことです。

 また、南樺太の真岡の話は、昨年でしたか、NHKスベシャルでドキュメンタリーになっていたのを偶々見ていて、それまで知らなかった歴史でしたし、番組を見て涙したことを思い出しました。

 その他、順不同に書けば、東日本大震災と足尾銅山、ナショナルトラスト、炭鉱、労働組合、公害病、ハンセン病、朝鮮人強制連行、慰安婦、女工哀史、観光ガイド、風評被害、インド洋津波というような話が次々と展開されていて、具体的にダークツーリズムというものを学べる内容となっています。

 若い人には、多くは過去の歴史的な話かもしれませんが、かなりの問題は私が子どもだったころにも残っていた同時代的なものであり、それらは、たかだか半世紀くらい前のことになります。

 もっとも、本書は、必ずしも、深くて重いテーマの本として読む必要はないのかもしれません。   
 各章の最後には、「旅のテクニック」として交通宿泊などについてのアドバイスも書かれていて、普通の観光コースの旅行には飽きてしまったような旅行のマニア、リピーターの人には興味深い紀行エッセイとしても十分に楽しめるものとなっていると思います。

 なお、井出先生は、本書と同時に、「ダークツーリズム拡張 ─近代の再構築」(美術出版社) も出されていますので、ご紹介しておきます。

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2018年6月 5日 (火)

「八ツ橋」老舗の創業年表示についての訴訟(不正競争防止法)

 昨日、京都銘菓「八つ橋」の老舗である井筒八ッ橋本舗が、別の老舗聖護院八ッ橋総本店の「創業元禄二年」との表示が虚偽であるとして、不正競争防止法に基づき記載の差し止めと600万円の損害賠償を求める訴訟を京都地裁に起こした、と報じられています。

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 報道によれば、井筒八ッ橋本舗は文化2年(1805年)に創業しているが、聖護院八ッ橋総本店の元禄2年(1689年)創業には根拠がないと主張されているようです。

 不正競争防止法という法律は、各種の不正競争行為を禁止する規定がおかれていて、コピー商品であるとか、営業秘密不正取得であるとか、営業誹謗行為であるとか、いろんな行為を禁止しているのですが、今回は、同法2条1項14号の誤認表示行為が問題となるものと思われます。

【不正競争防止法2条1項14号】       
 商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくはその表示をして役務を提供する行為

 こういった行為につき、競争事業者は、当該行為の中止を求めたり(差止)、損害賠償の請求ができます。また、不正の目的で行った場合には、罰則が科されることもあります。

 なお、今回同様、和菓子の製造販売事業者の間で、この不正競争行為が問題となった事例(大阪高裁平成19年10月25日判決・判例タイムズ1259号311頁)があります。これは、「元祖」表示についてです。もう10年以上前ですが、当ブログにも書いていましたので、ご紹介しておきます。さて、本件と比べていかがでしょうか。
(※ この記事中の条文番号等は当時のもので、旧13号→現14号、旧14号→現15号となっていますので、お読み替えください。)

 → 「「元祖」表示が品質表示か?の判決(不正競争)」 (2007/10/30)

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 もっとも、私の子供の頃の八ツ橋は、昔からの焼き八ツ橋だったのですが、今の人は八ツ橋といえば、生八ツ橋のことを考える人が多くなったのではないでしょうか。生八ツ橋を大々的に売り出して、今のようにメジャーにしたのは「おたべ」(株式会社美十)ですね。

2018年3月 3日 (土)

徳島市が徳島市観光協会の破産手続開始を申し立てる

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 昨日(3/2)、徳島市が、阿波おどりを主催する徳島市観光協会の累積赤字が膨らんだことを理由として、同協会の破産手続の開始を徳島地裁に申し立てたことが報道されています。徳島市観光協会は、地元の徳島新聞社と共に阿波おどりを主催する公益社団法人です。

 観光協会破産手続の開始を申し立てるというのは異常な事態だと思いますけれども、阿波おどりの運営をめぐる、徳島市徳島市観光協会徳島新聞社の3者間での問題は以前から時々マスコミなどでも取り上げられています。

 たとえば、   

  •  「阿波おどりの運営を巡るトラブルで辞職を迫られたとして、徳島市観光協会の近藤宏章会長が16日、公務員職権乱用の疑いで、同市の遠藤彰良市長に対する告発状を徳島地検に提出した。予備的に強要容疑の告訴内容も含めている。」(2017/3/16産経)      
  •    
  •  「この夏、「阿波おどり」に中止の危機 徳島の地元財界は大騒ぎ!」(2017/6/3現代ビジネス〔週刊現代サイト〕)    
  •    
  •  「徳島市の阿波踊り(8月12~15日)で演舞場の設営工事や入場券販売に関する事務が実行委の定める要領に従わずに行われているとして、徳島市の岡孝治市議が事務処理の停止を求めていた仮処分命令の申し立てについて、徳島地裁が25日までに「(停止する)理由がない」と却下する決定を出したことがわかった。徳島地裁はこの日までに、阿波踊りを主催する市観光協会徳島新聞社などの関係者に決定を送達した。」(2017/7/26毎日)      
  •    
  •  「徳島市の阿波踊りで長年続いている累積赤字解消に向け、市は21日、主催者の市観光協会へ地方自治法に基づく調査に入った。市職員や弁護士、公認会計士らが22日まで、徳島市の阿波おどり会館内にある協会事務局から資料の提供を受け、収支の疑問点がないか調べる。」(2017/11/22毎日)      
  •    
  •  「公益社団法人徳島市観光協会(近藤宏章会長)は1日、現在協会が担っている阿波おどり会館(徳島市)などを運営する次期指定管理候補者に、徳島新聞社などが選定されたことが協会に損害を与えるとして、同社社長ら2人を特別背任の疑いで徳島地検に告訴した。」(2017/12/2毎日)      
  •    
  •  「市から委託を受け、協会の累積赤字について調べていた調査団は5日に市に提出した報告書で、協会内部で赤字解消策が議論された形跡がほとんどないことなどを指摘。協会が阿波踊り事業を続けることが「極めて困難」などとした。」(2018/2/8徳島新聞)    
  •    
  •  「徳島市の阿波踊りに多額の累積赤字が発生している問題で、市は9日、主催者の一つの市観光協会に対し、清算手続きに入るよう求める通知を出した。市は本年度、協会が金融機関から借り入れた4億3600万円の損失補償をしており、年度内に協会が返済できなくなれば市が負担しなければならない恐れがある。このため、保有する財産が減る前にできる限り返済に充ててもらうとしている。」(2018/2/9徳島新聞)

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 こう見てくると、何がどうなっているのか、外部からはさっぱりわかりません。上にもあるように、徳島市は外部の弁護士、公認会計士、学者4名による「阿波おどり事業特別会計の累積赤字の解消策等に関する調査団」に調査をさせており、その調査報告書が今年2月5日付けで出されています。簡単に言うと、徳島市観光協会が多額の累積赤字を解消しつつ、阿波おどり事業を継続していくことは困難であることを指摘していますね。

 → 「阿波おどり事業特別会計の累積赤字の解消策等に関する調査報告書について」 (徳島市サイト)

2018年2月20日 (火)

芸能界の契約実態についてのヒアリング・アンケート結果(公取委)

 前回取り上げました「「人材と競争政策に関する検討会」(公取委)報告書の公表」ですが、この検討会の基礎資料とするために公正取引委員会事務局が、フリーランス、スポーツ、芸能といった各業界の事業者団体、事業者、個人、有識者など幅広くヒアリングを行い(合計91者)、また、フリーランス、スポーツ選手、芸能人などを対象に、webサイト上でアンケートを実施し、549件の回答を得ています。

 この結果については、「人材獲得競争に係る実態ヒアリング及びフリーランス等に関するウェブアンケートの結果」としてまとめられており、公正取引委員会競争政策研究センター(CPRC)の検討会ページに公表されています(「人材と競争政策に関する検討会」の「報告書」欄の「・別紙3(事務局ヒアリング及びアンケート結果)」からPDFファイルがリンクされています。

 今回は、この調査結果の中から、芸能人に関するところを抜粋してご紹介したいと思います。スポーツ選手関係は、またまとめたいと思います。

 なお、これらの事項は、公正取引委員会が違法とか違法のおそれを認定したということではありません。ただ、調査結果のとりまとめで、これらの事項を掲げているということは、少なくとも違法のおそれがあるかもしれない、ということで抽出されていることは推測できると思います。
 そして、この調査結果などを踏まえて、前回ご紹介の報告書ができていますので、公正取引委員会が今後どういう形で、関与していくか、について期待したいところです。

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 すぐにどうこうはないかもしれませんが、公正取引委員会から事情聴取もされた音楽芸能プロダクションの事業者団体である日本音楽事業者協会(音事協)が、芸能プロダクションと芸能人との契約のひな型の変更を行うとの報道もなされています。

 ヒアリングやwebアンケートで寄せられた芸能関係の意見は以下のとおり。

  •  多額の報酬を示唆することに基づく芸能人の引き抜きは行わない旨の共通認識があり、実際、芸能事務所間の芸能人の引き抜きは盛んではない。

  •  業界団体において、製作者が、出演交渉の相手方を固定化して、製作者が交渉相手を頻繁に変えなくてはならない事態にならないようにするため、芸能事務所が他の芸能事務所に対して引き抜きを行わないよう指導している(ただし、芸能人が自らの意思で移籍をすることは禁止していない。)。

  •  契約満了時に芸能人が契約更新を拒否する場合でも、芸能事務所のみの判断により、契約を一度更新できることが契約上規定されており、また、芸能事務所の判断で当該規定が実施される場合がある。

  •  楽器や移動車等の多くの経費が必要な芸能人や、アイドルのようにスカウト~育成~宣伝費等,発掘から売れるようになるまで経費が莫大にかかる芸能人については、多大なコストがかかることから、芸能事務所は、その投資回収が済むまでの間、所属芸能人の移籍を認めないことがある。また、デビュー前の所属芸能人との間で、退所から一定期間は他の芸能事務所に所属できない旨を盛り込んだ契約を締結することがある。

  •  ある芸能事務所は、契約を更新しない意思表示をした芸能人に対し、これを翻意させるため、契約期間中であるにもかかわらず、報酬の支払を遅延したり、当該芸能人の業務を受託しない場合がある。

  •  ある芸能事務所は、契約期間満了に伴い芸能事務所を移籍しようとした芸能人が移籍できないようにするため、当該芸能人が移籍しようとした芸能事務所に対し圧力をかける、芸名を使用させない、芸能人としてのブランドイメージを損なわせる虚偽情報を流布する等により移籍を妨害している。

  •  ある芸能事務所は、所属芸能人に対する移籍への萎縮効果を目的として、業務委託契約に伴い離籍した芸能人に関する悪評を流布し、当該芸能人と製作者等との間の契約成立を妨害した。

  •  ある芸能事務所は、契約期間中にある芸能人と契約期間延長交渉時に、実績を踏まえ報酬額アップを交渉されても、育成投資コストの回収が終わっていないことを理由に協議に充分応じなかった。

  •  芸能人は、通常、芸能活動を行うに当たり、芸能事務所との間で「芸能人は専属芸術家業務を行うこと」及び「芸能事務所はプロダクション業務を行うこと」を内容とする契約を締結している。芸能事務所の事業者団体は、契約書の雛形を作成し、加盟する芸能事務所に対して、当該契約書の使用を推奨している。契約書の雛型には、契約満了時に芸能人が契約更新を拒否する場合でも、芸能事務所のみの判断により、契約を一度更新できることが規定されている。

  •  芸能事務所の提示する条件に応じず移籍を求めた場合には、芸能事務所とトラブルを生じたといったネガティブな印象が業界に広がり(場合によっては、芸能事務所がそのような情報を流布し)、テレビ局などが仕事を発注しなくなり、芸能活動が困難となるため、提示された条件で契約せざるを得ない。

  •  日本では、素人の新人を芸能人として育成するために、人材育成投資費用(レッスン代、オーディション代、衣食住等に係る費用)を芸能事務所が負担していることがあり、また、投資・育成期間は長期間になることがある。かかる費用の回収を図るために、芸能事務所が芸能人の移籍や独立を容易には認めない場合がある。

  •  芸能事務所の中には、芸能人の育成投資費用について、芸能人個々人ではなく、所属芸能人全体で計算していることがあり、いわゆる「売れっ子」の芸能人の売上げを、まだ育成期間中にある他の所属芸能人の費用や、売れていない・売れなかった所属芸能人に対する投資の回収に充てている。

  •  (取引条件等についてやむを得ず同意したのは)伝統的な慣習が大半のため。

  •  キャンセルになった仕事の分を自分で新しく探さねばならず、ひと月強ほど、収入が減少した。

  •  言われたことに納得がいかず、反発したり断ったりすると「仕事なくなるよ」等の脅迫的言辞を幾度となく言われたことがある。実際そうなると思ったし、業界丸ごとそうなっているのは事実であるから仕方なく従わざるを得ない。

  •  契約書などの書面を作成すると言っておきながら、それを数ヶ月にわたって放置される。また、書面が存在しないため、実質の責任が相手に発生しない。

  •  芸能人は、通常、芸能活動を行うに当たり、芸能事務所との間で「芸能人は専属芸術家業務を行うこと」及び「芸能事務所はプロダクション業務を行うこと」を内容とする契約を締結している。芸能事務所の事業者団体は、契約書の雛形を作成し、加盟する芸能事務所に対して、当該契約書の使用を推奨している。契約書の雛型には、契約満了時に芸能人が契約更新を拒否する場合でも、芸能事務所のみの判断により、契約を一度更新できることが規定されている。

  •  芸能事務所の提示する条件に応じず移籍を求めた場合には、芸能事務所とトラブルを生じたといったネガティブな印象が業界に広がり(場合によっては、芸能事務所がそのような情報を流布し)、テレビ局などが仕事を発注しなくなり、芸能活動が困難となるため、提示された条件で契約せざるを得ない。

  •  日本では、素人の新人を芸能人として育成するために、人材育成投資費用(レッスン代,オーディション代、衣食住等に係る費用)を芸能事務所が負担していることがあり、また、投資・育成期間は長期間になることがある。かかる費用の回収を図るために、芸能事務所が芸能人の移籍や独立を容易には認めない場合がある。

  •  芸能事務所の中には、芸能人の育成投資費用について、芸能人個々人ではなく、所属芸能人全体で計算していることがあり、いわゆる「売れっ子」の芸能人の売上げを、まだ育成期間中にある他の所属芸能人の費用や、売れていない・売れなかった所属芸能人に対する投資の回収に充てている。

  •  (取引条件等についてやむを得ず同意したのは)伝統的な慣習が大半のため。

  •  キャンセルになった仕事の分を自分で新しく探さねばならず、ひと月強ほど、収入が減少した。

  •  言われたことに納得がいかず、反発したり断ったりすると「仕事なくなるよ」等の脅迫的言辞を幾度となく言われたことがある。実際そうなると思ったし、業界丸ごとそうなっているのは事実であるから仕方なく従わざるを得ない。

2018年2月15日 (木)

「人材と競争政策に関する検討会」(公取委)報告書の公表

 注目されていた公正取引委員会「人材と競争政策に関する検討会」の報告書が本日公表されました。

 → 「人材と競争政策に関する検討会」報告書について (公正取引委員会サイト)

 報告書は本文が47頁となっており、上のリンク先からPDFファイルにリンクしています。   

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           (「報告書概要」 公取委サイトより)

 まだ、公表されたばかりで、読み込めてませんが、ひとまず一部を抜粋しておきます。

 まず、労働法と独占禁止法との関係については、

「・・・・1947年の独占禁止法立法時には,「人が自分の勤労を提供することは,事業ではない」として,労働者の労働は独占禁止法2条1項の「事業」に含まれないとの解釈がなされ,公正取引委員会は,これらを踏まえて独占禁止法を運用してきた。
 しかし,前記第1の1〔1~5頁〕のとおり,就労形態が多様化する中で,独占禁止法上も労働法上も解決すべき法的問題が生じてきている。さらに,近年,労働契約以外の契約形態によって役務提供を行っている者であっても,労働組合法上の「労働者」に当たると判断される事例も生じている。このように労働契約を結んでいなくとも「労働者」と判断される者が,独占禁止法上の事業者にも当たることも考えられる。
 以上のことを踏まえると,労働者は当然に独占禁止法上の事業者には当たらないと考えることは適切ではなく,今後は,問題となる行為が同法上の事業者により行われたものであるのかどうかを個々に検討する必要がある。同様に,独占禁止法上の「取引」についても,その該当の有無を,取引の類型ごとに一律に整理するのではなく,独占禁止法上禁止されている行為(後記第5〔15~22頁〕又は第6〔22~44頁〕の行為)に該当する行為が行われていると認められる場合に,その行為のなされている取引が独占禁止法上の「取引」に該当するかどうかを個々に検討することが適切である。そして,労働法と独占禁止法の双方の適用が考えられる場合,それらの適用関係について検討する必要がある。
 そもそも独占禁止法立法時に前記のとおり労働者の労働は「事業」に含まれないとの解釈が採られたのは,使用者に対して弱い立場にある労働者保護のため,憲法の規定に基づき労働組合法,労働基準法を始めとする各種の労働法制が制定されたことを踏まえたものであった。この意義自体は現在も変わらないことからすれば,独占禁止法立法時に「労働者」として主に想定されていたと考えられる伝統的な労働者,典型的には「労働基準法上の労働者」は,独占禁止法上の事業者には当たらず,そのような労働者による行為は現在においても独占禁止法の問題とはならないと考えられる。加えて,労働法制により規律されている分野については,行為主体が使用者であるか労働者・労働者団体であるかにかかわらず,原則として,独占禁止法上の問題とはならないと解することが適当と考えられる。例えば,労働組合と使用者の間の集団的労働関係における労働組合法に基づく労働組合の行為がこのような場合に当たる。使用者の行為についても同様であり,労働組合法に基づく労働組合の行為に対する同法に基づく集団的労働関係法上の使用者の行為も,原則として独占禁止法上の問題とはならないと解される。また,労働基準法,労働契約法等により規律される労働者と使用者の間の個別的労働関係における労働者(下記囲み部分参照)に対する使用者の行為(就業規則の作成を含む。)も同様である。ただし,これらの制度の趣旨を逸脱する場合等の例外的な場合には,独占禁止法の適用が考えられる。」

 そして、スポーツ選手や芸能人の契約に関する独占禁止法の適用に関しては、以下のような記載がありました。                              

「例えば,スポーツ分野においては,複数のクラブチームが共同することで初めてプロリーグという一つの事業が成立する場合があるが,そのとき,複数のクラブチームが共同して選手の移籍を制限する行為はプロリーグの魅力を高めることを通じて消費者に対して提供するサービスの水準を維持・向上させる目的から行われているとの主張がある。
 これは,人材獲得市場における競争は阻害されるものの商品・サービス市場における競争は促進され,またこれを通じて人材獲得市場における競争も促進されるという主張と考えられる。そのような移籍制限行為が当該目的の実現に不可欠であるのか,商品・サービス市場での競争促進効果(消費者利益の向上等)の程度や,それが人材獲得市場での競争阻害効果を上回るものであるか,といった点も含めて総合的に考慮した上で判断されることになる。また,目的に比べてその手段が相当か,同様の目的を達成する手段としてより競争制限的でない他の手段は存在しないのかといった内容,手段の相当性の有無も考慮の上で判断される。」          

「例えば,芸能事務所やクラブチームが特定の者と一定期間の専属契約を締結し,その者の市場における価値の創造・拡大に資する(例えば,新人芸能人や新人選手の育成)とともに,その芸能人や選手の肖像等を芸能事務所等や本人以外の第三者が利用する取引の円滑化を図る場合があるが(後記脚注86参照),そのような事情の有無も含めて考慮した上で判断される。育成費用の回収を目的とする場合の具体的な考え方は,前記第5の3〔17~20頁〕の育成費用を回収する目的である場合と同じである。
 一方,契約期間が終了しても,既存の提供先である発注者の一方的な判断により専属義務を含む役務提供に係る契約を再度締結して役務提供を継続させる行為が,芸能事務所と芸能人の間の契約において行われる場合がある。芸能事務所と芸能人の間の契約が一度終了した後も,芸能事務所と第三者の間の当該芸能人についての契約が継続していることを理由に行われる場合,その必要性の有無も含めて考慮した上で判断される。」

「役務提供者が今後事実上移籍・転職ができなくなるほどの程度である場合,その不利益の程度は相当大きい。
 また,契約期間終了後は再契約をしないとの意向を示した役務提供者に対して,それを翻意させるために,発注者が役務提供者に対して,報酬の支払遅延や業務量の抑制などの不利益な取扱いをしたり,悪評の流布等により取引先変更を妨害し再度契約を締結させたりするといった行為についても,不利益の程度がより大きくなる場合がある。」

2017年7月13日 (木)

芸能プロ契約問題と「人材と競争政策に関する検討会」(公取委)

 先日、NHKの報道に関して、 「芸能プロダクションと芸能人との契約について公取委が調査との報道」 (2017/7/ 8)を書きましたが、今日は朝日新聞が関連記事を報じています。

 これは、芸能タレントやスポーツ選手、コンピュータープログラマーなど、特殊な技能を持つ人と企業などとの契約について、公正取引委員会が有識者会議を来月から開催し、早ければ今年度中に報告書を公表する、としているものです。

 おそらく、公正取引委員会競争政策研究センター(CPRC)が昨日(7/12)公表した 「「人材と競争政策に関する検討会」の開催について」「人材と競争政策に関する検討会」のことかと思われます。

 公表内容では、特に、芸能、スポーツなどに絞ってはいませんが、アメリカや欧州でのスポーツ選手の移籍問題や、昭和38年の我が国の映画会社の事案などに触れており、オブザーバーにスポーツ庁も入っていますので、芸能、スポーツ関係も視野に入れていることは間違いないようです。

 検討会のメンバーは以下の通りです。

   荒木 尚志 東京大学大学院法学政治学研究科教授
   大橋 弘
    東京大学大学院経済学研究科教授
              (
競争政策研究センター主任研究官)
   風神 佐知子
 中京大学経済学部准教授
   川井 圭司
 同志社大学政策学部教授
   神林 龍
   一橋大学経済研究所教授
座長 泉水 文雄
 神戸大学大学院法学研究科教授
   高橋 俊介
 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授
   多田 敏明
 日比谷総合法律事務所 弁護士
   土田 和博
 早稲田大学法学学術院教授
   中窪 裕也
 一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授
   中村 天江
      リクルートワークス研究所労働政策センター長
   和久井 理子
 大阪市立大学大学院法学研究科特任教授
              (
競争政策研究センター主任研究官)

(オブザーバー)
文部科学省(スポーツ庁) 厚生労働省 経済産業省
             [五十音順,敬称略,役職は平成29年7月12日現在]

 いつもいろいろとお世話になってます神戸大学の泉水文雄教授が座長となっておられますね。今後の検討状況を注目したいです。

【追記】(7/18)

 「人材と競争政策に関する検討会」について、公取委事務総長定例会見でも触れられていたようですので、追記しておきます。
 → 事務総長会見記録(平成29年7月12日) 

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2017年1月26日 (木)

ひとまず、「PPAP」商標登録出願騒動について

 ベストライセンス社、上田育弘氏は、商標権まわりの仕事に関係している人には、以前から大変な有名どころであったわけですが、突然、ピコ太郎の「PPAP」関連で、新聞やテレビが取り上げはじめ、大騒ぎになっていてビックリしています。
 今、人気の「PPAP」だから、というのも当然あるのでしょうが、やはり、ネット炎上の拡大の速さに今さらながら感じ入るしかないというところです。

 この件について、詳しく解説する時間はとてもありませんが、テレビなどでの報道、それを見ての一般の方々のTwitterなどでの投稿を見ていると、誤解されている部分がいくつか見られますので、そこだけ簡単に指摘して、今回の記事とさせていただきます。

  1.  上田氏は、元「弁理士」で、元弁護士でも元税理士でもありません。
     「弁理士」は特許など知的財産権の登録の出願、管理などを仕事とするための国家資格を持っている人です。
  2.    
  3.  今回の「PPAP」については、ベストライセンス社が「商標登録をした」、「商標権をとった」ということではなく、商標権の登録のための「出願」をしただけで、特許庁が登録を認めたわけではありません。登録を願い出た段階にすぎません。
  4.  これまでの同様の出願からみて、おそらく出願料は特許庁に支払われていないと思います。これを支払わないと、そもそも特許庁は登録の可否についての審査を始めません。      
  5.    
  6.  今回の出願で、出願料を払っても、特許庁は登録を認めない可能性がかなり高いと言えます。      
  7.    
  8.  仮に、認められて、ベストライセンス社が商標権を得たとしても、ピコ太郎が「PPAP」を歌えなくなる(こういう見出しの記事をいくつか見ましたが)、ということはありません。

                  以上です。

【追記】(1/27)
 弁理士さんの詳しい解説記事がありましたので、ご紹介します。上の記事だけでは、根拠がわからない、という方はお読みください。かなり長いです。私が「詳しく解説する時間はとてもありませんが」と冒頭にかいたのがお分かりいただけるかと (笑)

  → 「PPAPの商標が他人に商標登録出願された問題の解説」

               (ファーイースト国際特許事務所サイト)

【追記】(1/27)

 待望してました栗原潔先生の解説が出ました。
 ぜひご覧ください。

 → 「PPAP等の大量勝手商標出願問題について整理してみる」

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