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2017年2月 1日 (水)

Google検索結果の削除を求めた仮処分についての最高裁決定

  比較的大きく各報道機関で扱われていたようですが、6年前に児童買春の疑いで逮捕され罰金の略式命令を受けた男性が、Googleで名前などを入力すると逮捕歴に関する報道内容が表示されるのはプライバシーの侵害だとして、Googleに対して検索結果の削除を求めた仮処分の申立に関して、昨日(1/31)、最高裁判所はこれを認めない決定を出しました(抗告審における棄却決定)。
 しかし、本決定は、この問題についての最高裁としては初めての判断ですし、また、場合によっては検索結果削除の請求が認められる場合もあるとして、その基準を示した点で重要な決定といえます。決定全文は以下のリンク先で読めます。 

裁判所サイト

 この事件は最初のさいたま地裁の決定(平成27年6月25日)において削除請求を認める仮処分決定が出て、それに対するGoogleの不服申立に対して、再びさいたま地裁が請求を認め(仮処分認可決定・平成27年12月22日)、それに対してGoogleが東京高裁に抗告したところ、東京高裁はGoogle側の主張を入れて男性の申立を却下したため(東京高裁平成28年7月12日決定)、男性が最高裁に抗告(許可抗告)し、これに対する判断が今回示された、という流れになります。

 そして、今回の最高裁決定は、

「検索事業者が,ある者に関する条件による検索の求めに応じ,その者のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL等情報を検索結果の一部として提供する行為が違法となるか否かは,当該事実の性質及び内容,当該URL等情報が提供されることによってその者のプライバシーに属する事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度,その者の社会的地位や影響力,上記記事等の目的や意義,上記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化,上記記事等において当該事実を記載する必要性など当該事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもので,その結果,当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には,検索事業者に対し,当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができるものと解するのが相当である。」

 として、検索結果を削除請求できる場合の基準を示しました。

 しかし、本件の事実関係においては、

(本件の児童買春の被疑事実で逮捕という事実は、)「他人にみだりに知られたくない抗告人のプライバシーに属する事実であるものではあるが,児童買春が児童に対する性的搾取及び性的虐待と位置付けられており,社会的に強い非難の対象とされ,罰則をもって禁止されていることに照らし,今なお公共の利害に関する事項であるといえる。また,本件検索結果は抗告人の居住する県の名称及び抗告人の氏名を条件とした場合の検索結果の一部であることなどからすると,本件事実が伝達される範囲はある程度限られたものであるといえる。   
以上の諸事情に照らすと,抗告人が妻子と共に生活し,前記1(1)の罰金刑に処せられた後は一定期間犯罪を犯すことなく民間企業で稼働していることがうかがわれることなどの事情を考慮しても,本件事実を公表されない法的利益が優越することが明らかであるとはいえない。」

として、東京高裁の判断を是認したものです。 

 平成27年12月22日のさいたま地裁での仮処分認可決定では、「忘れられる権利」があるとの判断が示されたことが話題になりましたが、これについては、当ブログで取り上げており、興味のある方はご覧下さい。ただし、東京高裁は、この「忘れられる権利」については否定し、今回の最高裁決定では、それについて特に触れられておらず、個人のプライバシー権と検索事業者の表現の自由のバランスの問題としているようですね。

  → 「「忘れられる権利」を明記した仮処分認可決定(さいたま地裁平成27年12月22日)」(2016/2/27)

 なお、この事件の男性側代理人神田知宏弁護士のブログに、以下の記事がありますので、ご参考まで。その内、今回の最高裁決定についてもお書きになるかもしれません。

「地裁決定が「忘れられる権利」に言及した理由の考察」

「忘れられる権利を否定した東京高裁平成28年7月12日決定」

2016年12月29日 (木)

今年を振り返る、のに替えて、当ブログを振り返る。

 今年もいよいよというところまで来ました。

 このブログも、更新回数が昔より減っておりますが、それでも、この記事で今年49本目で、なんとかほぼ週1本ペースとなりました。前は、平日は毎日のように更新していたのですが、数年前からSNSが普及して、そちらへの投稿で済ませてしまうようになって更新が激減していった感があります。一時は中断期間が長くなり、このまま終わるかな、と思ったりもしました。   
 しかし、最近は、またブログもSNSとの相乗効果で発信手段としての魅力はあるな、と感じ始めまして、来年はさらに気分を一新して発信していきたいと思っています。来年以降もお付き合いよろしくお願い申し上げます。

 このブログも、2006年から始まって、今年で10年を超えました。投稿記事も1433本(この記事含む。最初の頃の記事で削除したものは含まず。)。ブログは、時事的なニュースなどを取り上げることが多いので、投稿から時間を経た記事は当然ながら読まれなくなっていきますが、それでも、キーワード検索で、長い期間にわたってアクセスする人の多い記事、ベストセラー記事(?)みたいなのもあります。

 今年一年(1月1日から現時点まで)で、アクセスのあった記事ベストテンは、

  1 適格消費者団体によるジャニーズファミリークラブへの規約是正の申入 7,727
  2 
::::弁護士 川村哲二::::〈覚え書き〉::::(トップページ) 6,051
  3
この機会に適格消費者団体による差止請求の説明でも 3,700
  4
『国際ジャーナルの取材受けました』という話 2,599
  5
控訴・上告期間と年末の判決 2,599
  6
拘留と科料(引き続き軽犯罪法) 1,608
  7
マルチ大手業者に対する業務停止命令(特定商取引法)と「水素水」の効能表示 1,569
  8
KIDS-CRICコピーライト・ワールド(おじゃる丸編) 1,008
  9
最高裁判所を徳島へ、という提言 961
 10
催告後の債務承認と民法153条(時効談義:その9) 827

となります。右側の数字が、今年の各記事へのアクセス回数(PV)です。

 1位のジャニーズ記事は、つい1ヶ月ほど前の記事ですが、Twitterで拡散されて、ジャニーズファンの皆さんと思われる方々が訪問してくださり、あっというまに当ブログの一日アクセス記録を塗り替えてしまったものですね。3位の記事も、これに関連して続けて書いたものです。

 8位のおじゃる丸は、なぜかこの「コピーライトワールド」を探す人が多いのです。実は、このおじゃる丸が使われたサイトは既になくなっているのですが、これを探して当ブログにたどり着かれるようです。なので、道案内的に、今年の2月に「おじゃる丸コピーライトワールド(CRIC)は今はないですよ、という告知」という記事を書いて、リンクさせておきました。

 4位、5位、6位、8位、10位は、2007~09年にかけての古い記事ですが、当ブログでのロングセラー記事です。

 4位は、その関連記事を含め、おそらくは、国際ジャーナルなどから取材の電話勧誘があった人が検索して訪問されるのだと思われます。同社にとっては目の上のタンコブ記事かと思います。下の3年間ランキングを見ると、これが当ブログの歴代トップの記事であることがおわかりいただけるかと思います。

 5位は12月とかゴールデンウィーク前になるとアクセスが毎年増える記事です。アクセスされるのが、弁護士か一般の人かはわかりませんけど。こういった季節物ベストセラー記事としては、年明けすぐから2月上旬にかけてアクセスが毎年急増するのが、 「「恵方巻」控訴審判決と巻寿司丸かぶりの風習の由来(大阪高裁)」 (2010年)と 「丸かぶり巻きずしの商標権についての判決(「招福巻」)」 (2008年)です。

 ついでに、過去3年間(2013年12月30日~2016年12月29日)のベストテンも出してみましたが、9位にキャリーバッグ判決が何故か顔を出していること以外は、上とあまり変わりませんね。こちらのほうは、面倒なのでリンクはしてませんがご了承ください。もっとブログ開設当初からの長期間の数字を出したかったのですが、ココログの側が数年前にアクセス解析のシステムを変えましたので、これが精一杯のようでした。

  1 ::::弁護士 川村哲二::::〈覚え書き〉::::(トップページ) 17,516
  2 『国際ジャーナルの取材受けました』という話 11,266 
  3 控訴・上告期間と年末の判決 7,929
  4 適格消費者団体によるジャニーズファミリークラブへの規約是正の申入 7,727
  5 拘留と科料(引き続き軽犯罪) 4,843
  6 この機会に適格消費者団体による差止請求の説明でも 3,700
  7 KIDS-CRICコピーライト・ワールド(おじゃる丸編) 3,570
  8 ::::弁護士 川村哲二::::〈覚え書き〉::::(学問・資格カテゴリー) 3,016
  9 キャリーバッグによる転倒事故の損害賠償判決(東京地判・平27.4.24.) 2,673
 10 催涙スプレー携行と軽犯罪法(最高裁判決) 2,648

2016年11月17日 (木)

位置情報とソーシャルゲームの法律問題

 先週末(12、13日)の情報ネットワーク法学会(明治大学中野キャンパス)では、13日午後の第11分科会「位置情報とソーシャルゲーム」に登壇してまいりました。もっとも私はメインではなく、コメンテーターみたいなお気楽な立場でしたけども。

 ポケモンGOが日本で7月下旬にリリースされてから4ヶ月ほどですが、この間の拡がりは御存じの通りで、当初ほどのブームはさすがに沈静化しているとはいえ、まだまだ根強い人気があるようです。

 このポケモンGOに関する法律問題等については、既に「月刊住職」9月号で特集され大島義則弁護士がコメントされているなど、こういった新しいゲームから生じる問題については、私も実務家として関心のあるところです。また、単にポケモンGOという特定のゲームに限らず、今後、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)を活用したゲーム(だけではなく他のシステムも。)がもっと進んだ形で出てくることは間違いないと思いますので、そういった場合の問題を考えておくことは必要かと思います。この分科会だけではなく、当日午前の個別報告でも新潟大学の学生さんがポケモンGOの法律問題について報告されておりました。

 今回の情報ネットワーク法学会では、例年どおり様々なテーマの分科会が開催されていましたが、最初の夏井先生の記念講演をはじめとして、リアルとサイバーの融合(垣根がなくなっていく)という視点から将来の新しい法律の世界を考えさせられたという点で非常に興味深い研究大会でした。いつもながらお忙しい中、大変な準備作業にあたられた学会の理事者および運営にあたられた(学生さんを含めた)スタッフの方々に御礼申し上げます。

 もうひとつポケモンGOを特集している雑誌としては、情報処理学会「情報処理」11月号が挙げられます。特集は、「ゲーム産業の最前線~企画、デザインからビジネスモデルまで~」というもので、この中の特別コラム「ポケモンGOの衝撃」として9名の方々がそれぞれの分野で書かれています。法的問題については板倉陽一郎弁護士、観光との関係では井出明先生、歩きスマホ禁止に反対する立場からは神戸大学のあの塚本正彦先生など、それぞれ短いコラム形式ですが、豪華執筆陣となっていますね。

 ところで、このごろ、ポケモンを博士に送ると、しょっちゅうフリーズするようになったのですが、何故でしょうか?

2016年5月11日 (水)

いわゆるEM菌に関する記事が著作権侵害等に当たるとして朝日新聞を訴えた裁判の判決

 琉球大学名誉教授であり、いわゆるEM菌の研究者である比嘉照夫教授(原告)が、自分の執筆したブログの一部を朝日新聞が記事に引用したことが、比嘉教授の著作権(複製権、同一性保持権)を侵害し、また、自分に取材せずに記事を掲載したことが不法行為に当たるとして、朝日新聞を被告として、損害賠償及び謝罪広告を求めていた裁判の判決が平成28年4月28日に東京地裁民事46部(知的財産部)でありました。   
 判決では、原告の請求が棄却されています。   
 この裁判については、訴訟提起時にサンケイ新聞が記事にしていましたが、今回の判決は、朝日もサンケイも他の報道機関も報じていないようですね。

  → 東京地裁平成28年4月28日判決(裁判所サイト)

 事案は以下の通り。   
 朝日新聞が、朝日新聞青森版に、平成24年7月3日付けで「EM菌効果『疑問』検証せぬまま授業」と題する記事を、同月11日付けで「科学的効果疑問のEM菌3町が町民に奨励」と題する記事をそれぞれ掲載した。

 原告のブログには、「私はEMの本質的な効果は,B先生が確認した重力波と想定される縦波の波動によるものと考えています。」と記載していた。    
朝日新聞の上記記事には、「EM菌の効果について,開発者のA・琉球大名誉教授は「重力波と想定される波動によるもの」と主張する。」「開発者のA・琉球大名誉教授は,効果は「重力波と想定される波動による」と説明する。」との記載がある。

 これらの記事は原告を取材せずに作成されたものであるが、朝日新聞の「朝日新聞記者行動基準」では、「記事で批判の対象とする可能性がある当事者に対しては,極力,直接会って取材する」ものとされている。

 そして、上記の原告ブログ記事が著作物であり、朝日の2記事が、この著作物の複製権又は同一性保持権を侵害するものである、というのが、原告の第1の主張です。

 朝日新聞は、このようなブログ記事の記載には著作物性は認められないし、仮にそうではないとしても、事件報道において,当該事件を構成するものを、報道の目的上正当な範囲において複製し、当該事件報道に伴って利用したものであるので、著作権法41条により許された利用に当たる、と反論しました。

 これについて、裁判所は、

「著作権法において保護の対象となるのは思想又は感情を創作的に表現したものであり(同法2条1項1号参照)、思想や感情そのものではない。本件において本件原告記載と本件被告記載1及び2が表現上共通するのは「重力波と想定される」「波動による(もの)」との部分のみであるが、この部分はEMの効果に関する原告の学術的見解を簡潔に示したものであり,原告の思想そのものということができるから,著作権法において保護の対象となる著作物に当たらない」 

として、著作物性を否定しました。

 原告の主張の第2は、朝日新聞記者が原告に取材することなく記事を掲載したことが不法行為(民709条)に該当するというものです。

 原告の主張によると、本件2記事における原告のコメント部分はかぎ括弧が用いられているが、引用元や出典が明示されていないから、一般読者は記事が原告を取材して得たコメントを掲載した記事として読むことになるが、実際には朝日新聞は原告を取材せずに掲載しており、記事で批判の対象となっている原告を取材しなかったことは、「朝日新聞記者行動基準」に定められた取材方法に違反する、これにより、自らの意思に反してコメントをねつ造されない人格的利益が侵害されており、不法行為に当たる、としています。

 これについて、裁判所は、かぎ括弧内のコメントが、一般読者に取材による記事として読まれる可能性があったというべきであり、「記者行動基準」の規定に抵触しかねない行為であったといえるとしたうえで、

「上記基準は記者が自らの行動を判断する際の指針として被告社内で定められたものであり、これに反したとしても直ちに第三者との関係で不法行為としての違法性を帯びるものでない。」とし、「公にされていた本件原告記事を参考にして執筆されたものであって、その内容はEMの本質的効果に関する原告の見解に反するものではない」、そうすると、2記事によって「原告の見解が誤って報道されたとは認められず、したがって、これにより原告が実質的な損害を被ったとみることもできない」ので、記者の「行為は不適切であったということができるとしても、不法行為と評価すべき違法性があったとはいえないと判断するのが相当である。」 

として、不法行為の成立も否定しました。

 著作物性を否定した点も不法行為の成立を否定した点も妥当な判決だと思います。

2016年5月 1日 (日)

Amazonに対する米国連邦取引委員会(FTC)の請求を連邦地裁が認める判断

 アメリカの連邦取引委員会(FTC)が、子供が親の承諾無しにアプリ内で購入した有料オプションについて、Amazon.comを訴えていた訴訟(2014年7月提訴)で、連邦地裁判事がFTCの主張を認める判断を示したことが報じられています。FTCは日本の公正取引委員会にあたる連邦政府の組織ですが、日本の消費者庁のような消費者保護機能も有しています。

 → ITproの記事

 → FTCの公表サイト(英文)

 FTC法5条に基づく訴訟でしょうか(違ったらごめんなさい。)。いずれにせよ、父権訴訟(州の司法長官が提起する訴訟)と同様に、個々の消費者に代わって、企業に対して損害賠償を求める訴訟ですね。四半世紀前に、日弁連の消費者問題特別委員会からの視察(といっても、実態は大阪の独禁法公正取引研究会のメンバーが日弁連の冠で行ったようなもんでしたけど。)で、FTCやら州(カリフォルニア州でしたっけ?)の司法省に話を聞きに行ったのが懐かしいです。

 なお、上記記事中にもありますが、子供によるアプリ購入についての同様の問題では、既に2年前に、アップルグーグルFTCと和解し、消費者に金銭を返還しています。

  → アップルについての記事

  → グーグルについての記事

 外国の制度が常に良い、というつもりはありませんが、日本でも、消費者庁公正取引委員会が、アメリカのように主体的・積極的に消費者救済に乗り出してほしいものです。

 日本では、特定適格消費者団体による集団的消費者被害救済の訴訟制度が今年の10月に導入されますので、特定適格消費者団体の認定を目指す団体では、準備が進められています。私が会員として関与している消費者支援機構関西(KC's)も認定を目指しているところです。   
 しかし、この新しい訴訟制度は、FTC司法長官による父権訴訟、あるいは、私訴の1つであるアメリカのクラスアクションとも制度的にはかなり違っており、この訴訟制度が消費者被害の救済に活用できるかどうかは今後の問題です。

2016年4月13日 (水)

「発信者情報開示請求の手引」(電子商取引問題研究会)

 大阪の弁護士有志をメンバーとする電子商取引問題研究会が、このほど、「発信者情報開示請求の手引―インターネット上の名誉毀損・誹謗中傷等対策」(電子商取引問題研究会)を民事法研究会から出版しました。

 なお、電子商取引問題研究会には、私も所属していますが、この本については全く書いておりません。また、関係者ではありますが、もらってません(笑)

 先日、Amazonの書評コメント(レビュー)への投稿が名誉毀損にあたるとして、日本法人のアマゾンジャパンに対して発信者情報開示請求を行った訴訟で、アマゾンのサイト運営がアマゾンジャパンであることを同社が認めたため、東京地裁がアマゾンジャパンに発信者情報の開示を命じる判決を行ったことが報じられました。

 プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求の一例ですが、こういった請求は現在はかなり多数行われています。そして、これに関する裁判例や請求の書式も、今回の書籍では広く紹介しており、参考になるものと思われます。

 出版の中心人物のひとり、壇俊光弁護士がご自分のサイトで紹介されているので、そちらもご覧下さい。

 → 壇弁護士の事務室   
    「【出版】 発信者情報開示請求の手引─インターネット上の名誉毀損・誹謗中傷等対策」

2016年4月 9日 (土)

「個人情報保護法の知識〈第3版〉」(岡村久道著・日経文庫)

 岡村久道弁護士の「個人情報保護法の知識」(日経文庫) の第3版が出ました。

 この本の初版は、個人情報保護法の全面施行の直前の2005年2年に出版されたもので、当時から、一般向けの個人情報保護法の基本的な解説書として定評がありました。

 今回は、個人情報保護法の大改正に合わせて第3版が出されたものですので、当然ながら、内容的には一新されています。岡村久道弁護士は国立情報学研究所客員教授でもあり、個人情報保護法に関しては有数の専門家であることはいうまでもありませんが、日経文庫の一冊ですので、近著の「番号利用法――マイナンバー制度の実務のような専門家向けの書籍ではなく、従前の版の本書と同様、仕事などの関係で個人情報を扱うなど、個人情報保護法を理解しておくべき一般的な人が、個人情報保護法の全体像や今回の改正点を把握するのに最適な本かと思います。

 本書は、最初に、個人情報保護法が制定される経緯や今回大改正されるに至った事情から丁寧に説き起こされており、その後に個人情報保護法の中身、特に同法第4章の民間事業者の責務の部分を中心に解説がされています。

 専門家でない人は、個人情報保護法が、「個人情報」「個人データ」「保有個人データ」の定義を分けており、それぞれについて義務等の規定を置いているということを認識されていないことも多いのですが、本書は、それぞれに関する義務について章分けを行う形で記載されている点も理解しやすくなっているのではないか、と思います。また、今回の大改正の目玉であり、しかし理解しにくい「匿名加工情報」についても章を立てて、かなり詳しく書かれています。そして、最後に、個人情報保護法に関して企業が行うべき企業対応がまとめられている点も、事業者にとって参考になるものと思います。

 これだけの内容が本文で文庫版約250ページに収められていて、かつ、代価1080円(税込)という設定は素晴らしいと思います。

2016年3月29日 (火)

「実務解説職務発明」(商事法務)のご紹介と蛇足

 弁護士・弁理士でもあり、現在特許庁で法制専門官をされている松田誠司さんから、特許法における職務発明規定の改正に関する新刊書籍をご恵贈いただきました。

 → 実務解説 職務発明――平成27年特許法改正対応

 職務発明というのは、企業において、従業員が職務上行った発明についての権利や報酬の取扱い等について定める制度です。

 従前は、企業内の発明であっても、特許権は発明した従業員が取得するものとされ、それを前提とした制度となっていました。それが平成27年改正により、「契約、勤務規則その他の定めにおいてあらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを定めたときは、特許を受ける権利は、その発生したときから当該使用者等に帰属する。」(改正特許法35条3項)とされ、事前に企業側が対応しておけば、企業が特許を受ける権利を原始的に取得することになりました。

 この改正に関して実際に立法を担当した松田さん他の共著によるQ&A形式の実務解説が上記の書籍ですので、企業の法務担当者などは必見の本かと思います。


 ところで、ブログで書籍を紹介する場合に、その本を著者や出版社からいただいた場合、そのことを表示するかどうかは悩むところなんですが、アメリカのFTC広告ガイドラインの立場からは、書いておかないとステマとなり違法とされる可能性があります。日本ではそこまで詰めた議論にはなっていませんけれども。

 たまたま、先日、アメリカ連邦取引委員会(FTC)が、広告であることを明示しなかったということで、老舗デパートのロード&テイラー(Lord & Taylor)を罰した、という記事が出てました。記事によれば、3月16日に同デパートがFTCに従う形で和解を行った、ということのようです。

media pub (2016/3/23)

 要するに、衣料品などを全米で販売するデパートが、ネットでファッションに影響力のある女性50名に自社の衣料を贈り(報酬も)、それを着た写真を画像投稿サイトのインスタグラムに投稿させた、というものです。FTCガイドラインでは、こういった場合に、事業者との関係性を明示しなければなりません。

 FTCガイドラインやステマについては、当ブログで以前から書いてる関係上、最近は、本をいただいた、ということを明示することとしておりますので、ご了承ください。

2016年3月27日 (日)

電子商取引等準則の改訂パブコメ(経産省)

 3月24日、経済産業省が、「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」の改訂案に対する意見公募(パブコメ)を公表しています。意見受付の締切は4月23日。

 → 「電子商取引等準則」改訂案パブコメ

 なお、現行の準則は、平成27年4月改訂版です。

 今回の改訂案の内容ですが、概要は後掲の表の通りです(経産省の概要より)。用語や字句の細かな修正や条文番号の変更が多いですが、Ⅲー13「データ消失時の顧客に対する法的責任」が新たに追加されました。

 また、未成年者が詐術を用いた場合の記述の見直し、ネットオークションの項に、フリマサービス等の新たなサービス類型を追加するなど、の修正がなされています。

番 号

項 目 名

主 な 改 訂 趣 旨

Ⅰ-1-4 ワンクリック請求と契約の履行義務 ・Ⅰ-4 改訂に伴う修正
Ⅰ-4 未成年者による意思表示 ・未成年者が「詐術を用いた」とされる場合に関する記述の見直し
Ⅰ-6 インターネットショッピングモール運営者の責任 ・用語の現代化         
・引用条文の正確化
Ⅰ-7 ユーザー間取引(インターネット・オークション、フリマサービス等) ・フリマサービス等の新たなユーザー間取引の形態への対応
Ⅰ-8 インターネット上で行われる懸賞企画の取扱い ・景品表示法改正に伴う条番号修正
Ⅰ-9 共同購入クーポンをめぐる法律問題について ・景品表示法改正に伴う条番号修正
Ⅱ-1 ソーシャルメディア事業者の違法情報媒介責任 ・用語の現代化         
・裁判例の追記
Ⅱ-4-1 景品表示法による規制 ・事例の現代化
Ⅱ-9-1 インターネット上の著作物の利用          ・スクリーン投影の取扱いの追記         
・記述の整理簡素化
Ⅱ-9-2 サムネイル画像と著作権 ・Ⅱ-9-1 改訂に伴う修正
Ⅲ-11 データ集合の利用行為に関する法的取扱い ・データ集合を対象とした新たな取引形態への対応
Ⅲ-13
(新規)
データ消失時の顧客に対する法的責任 ・クラウドサービスの進展への対応
国境を越えた取引等に関する論点(国際裁判管轄及び適用される法規に関して) ・各項目が想定する取引当事者の明確化         
・以前の民事訴訟法改正等に関する記述の整理簡素化

2016年3月21日 (月)

ネットショッピングでの価格誤表示と売り主の責任

 ネット通販大手のAmazonのタイムセールで、アイリスオーヤマの芝刈り機や工具箱その他の商品が、軒並み10円で出品されて、大量の注文が発生しているという情報がネット上でが昨日(3/20)流れていました。

 このようなネット通販サイトでの価格誤表示事件は、最近でも一年前に、マウスコンピューターがPCの価格を「1865円」と誤表記したというのがありましたし、その他にも過去に何度か起こっています。

 今回の件で、Amazonおよびアイリスオーヤマがどのような対応をするのか、まだ判明してません。連休中でしたので、明日あたりには何らかの公表がされるのかもしれません。

 こういった事案で古いものとしては、平成15年の丸紅ダイレクト(丸紅の直販サイト)、平成16年のカテナ(通販サイトはヤフーショッピング)のケースがあります。いずれもパソコンの通販で、通常よりかなり安く表示してしまったもので、上記の最近の事案と基本的に同じものです。

 さて、こういった場合に、安い価格を見て注文した人は、その価格で購入できるのか、言い換えると、売り主、買い主の間にどのような契約が成立するのか、しないのか、取消や無効の主張はできるのか、などという法律上の「契約」がどうなるか、ということが問題になります。

 それを全部詳しくやると長くなってしまいますし、その通販サイトの規約や注文システムなどの具体的内容にもよる部分もありますので詳細は省きますが、経済産業省「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」(平成27年4月改訂版)「Ⅰ-2-2 価格誤表示と表意者の法的責任」に詳しく検討されています。

 なお、参考となる裁判例としては、上記の平成16年(2004年)のカテナの誤表示事件に関するものがあります。

  ◎ 一審・平成17年2月23日東京簡裁判決

  ◎ 控訴審・平成17年9月2日東京地裁判決
            (判例時報1922号105頁)

 ヤフーショッピングにおいて、パソコン3台を購入した個人が、その履行がされなかったとして、カテナを被告として、債務不履行ないし不法行為に基づき、パソコン3台の代金相当額34万5000円の支払いを求めたという事案です。金額が少額であり(少額訴訟として提起)、一審は東京簡易裁判所です。

 一審判決は、原告が、本件売買契約はヤフーからの「受注通知」を原告が受領した時点で成立していると主張したのに対して、受信メールはあくまでもヤフーから発せられたものであり、カテナは後に原告の申込みに対して承諾しない旨意思表示をしているので、両者間に契約は成立しておらず、また、カテナヤフーに対して、正しい情報を提供しているので、当該表示上の誤りにつき被告に過失はない、として原告の請求を棄却しました。

 控訴審東京地方裁判所も、原告(控訴人)の請求を認めませんでした。売買契約の成立については、一審同様に、ヤフーの受注確認メールはカテナの承諾ではなく、カテナが原告の申込を承諾したとは認められないとして、これを否定しました。したがって、契約成立が前提となるカテナ側の錯誤無効の主張については判断していません。

 そして、価格の誤表示についてのカテナの注意義務違反(不法行為)に基づく請求については、カテナが本件サイト上に自ら表示をすることはできず、削除することもできないと認められること及び商品の誤った表示がされたことに対し、直ちにヤフーにその表示を削除させたのであって、誤表示を放置したとも認められないことから、被控訴人の商品の誤表示についての注意義務違反を認めることはできない、として、これも認められませんでした。

 なお、本件で、原告がパソコン3台分の通常の代金相当額約34万を請求した根拠は、パソコン3台の引渡をしないまま8か月が経過し、現在において原告はパソコン自体は不要なので、パソコンの引渡しではなく、同機種中古品3台の代金相当額を請求する、という主張になっていますね。

より以前の記事一覧