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2017年9月19日 (火)

SNSアカウントなりすまし行為に対する損害賠償訴訟判決(大阪地裁)

 裁判所webサイトの裁判例情報に出ていた判決に「インターネット上の掲示板において,他人の顔写真やアカウント名を利用して他人になりすまし,第三者に対する中傷等を行ったことについて,名誉権及び肖像権の侵害が認められた事例」(平成29年8月30日判決 大阪地裁平成29年(ワ)第1649号 損害賠償請求事件)というのがありました。

 → 裁判所webサイトの判決本文(PDF)はこちらから

 事案を簡単に紹介しますと、あるSNSサービスにおいて、被告が、原告と同じアカウント名を設定したうえ、プロフィール画像に原告の顔写真を使用して、なりすまし行為を行ったうえで、他者に対する誹謗中傷、差別表現の投稿を多数行ったというもので、これに対して、原告が、名誉権,プライバシー権,肖像権及びアイデンティティ権を侵害されたとして,被告に対し,不法行為に基づき,慰謝料,発信者情報開示費用及び弁護士費用の合計である損害賠償金723万6000円及び遅延損害金の請求を行った、という訴訟です。請求金額の内訳は、慰謝料600万円、発信者情報開示費用(開示手続の弁護士費用)58万6千円、本件訴訟弁護士費用65万円となっています。

 結論から言うと、大阪地裁は、被告に対して、損害賠償として130万6千円(慰謝料60万円、発信者情報開示費用58万6千円、弁護士費用12万円)と遅延損害金の支払を命じています。

 裁判所の判断の詳細は、上記リンク先から判決本文を見ていただきたいのですが、原告が本件の請求の根拠としている名誉権、プライバシー権、肖像権、アイデンティティ権についての判断を見ますと、まず、「第三者に対し、原告が他者を根拠なく侮辱や罵倒して本件掲示板の場を乱す人間であるかのような誤解を与えるものであるといえる」として、名誉権の侵害は肯定されています。

 次にプライバシー権ですが、原告の主張はプロフィール画像を原告の顔写真にして公開したことがプライバシー権侵害であるというものであるところ、この顔写真は原告によって自らのプロフィール画像として公開されていたものであるから、「原告の顔写真は、原告によって第三者がアクセス可能な公的領域に置かれていたと認めるのが相当であり、他人に知られたくない私生活上の事実や情報に該当するということはできない。」として、プライバシー権によって保護するものではない、と否定されました。

 肖像権については、最高裁判例を引用して、「他人の肖像の使用が違法となるかどうかは、使用の目的、被侵害利益の程度や侵害行為の態様等を総合考慮して、その侵害が社会生活上受忍の限度を超えるかどうかを判断して決すべきである」としたうえで、「被告は、原告の顔写真を本件アカウントのプロフィール画像として使用し、原告の社会的評価を低下させるような投稿を行ったことが認められ、被告による原告の肖像の使用について、その目的に正当性を認めることはできない」「(投稿内容は)原告を侮辱し,原告の肖像権に結びつけられた利益のうち名誉感情に関する利益を侵害したと認めるのが相当である。」として、権利侵害を認めています。

 最後にアイデンティティ権ですが、原告の主張は、憲法13条後段の幸福追求権又は人格権から、他者との関係において人格的同一性を保持する利益であるアイデンティティ権が存在するとして、本件のなりすまし投稿行為は原告のアイデンティティ権を侵害したというものです。   
 今回の大阪地裁判決では、「個人が,自己同一性を保持することは人格的生存の前提となる行為であり,社会生活の中で自己実現を図ることも人格的生存の重要な要素であるから,他者との関係における人格的同一性を保持することも,人格的生存に不可欠というべきである。したがって,他者から見た人格の同一性に関する利益も不法行為法上保護される人格的な利益になり得ると解される。」として、人格の同一性に関する利益も考えられるとしたうえで、   
「他者から見た人格の同一性に関する利益の内容、外縁は必ずしも明確ではなく、氏名や肖像を冒用されない権利・利益とは異なり、その性質上不法行為法上の利益として十分に強固なものとはいえないから、他者から見た人格の同一性が偽られたからといって直ちに不法行為が成立すると解すべきではなく、なりすましの意図・動機、なりすましの方法・態様、なりすまされた者がなりすましによって受ける不利益の有無・程度等を総合考慮して、その人格の同一性に関する利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものかどうかを判断して、当該行為が違法性を有するか否かを決すべきである。」としました。   
 そして、本件では、なりすましが正当な意図,動機によるものとは認められないけれども、「なりすましの方法,態様についてみると、本件サイトの利用者は、アカウント名・プロフィール画像を自由に変更することができることからすると、社会一般に通用し、通常は身分変動のない限り変更されることなく生涯個人を特定・識別し、個人の人格を象徴する氏名の場合とは異なり、利用者とアカウント名・プロフィール画像との結び付きないしアカウント名・プロフィール画像が具体的な利用者を象徴する度合いは、必ずしも強いとはいえない」、「原告が被告によるなりすましによって受けた不利益についても、「原告の名誉権及び肖像権の侵害による不利益については別に不法行為上の保護を受ける」し、その余の不利益についても、なりすましは本件サイト内の投稿にとどまること、投稿の直後から他の本件サイト利用者により、投稿が原告本人以外の者によるものである可能性が指摘されていたことが認められること、なりすましは短期間(約1か月余り)であったこと、などの事実を総合考慮すれば、被告のなりすまし行為(名誉権侵害行為,肖像権侵害行為は除く)による原告の人格的な利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものとまでは認められない、として、本件のなりすまし自体は違法とまではいえないという判断をしました。

 つまり、名誉権肖像権の侵害は認め、プライバシー権アイデンティティ権の侵害は認めなかったということになります。ただ、後者の2権利についても、なりすましの行為態様によっては、侵害が認められる場合もあることを示しているので、参考になろうかと思います。

2017年8月29日 (火)

「JAROの最近の審議事例にみるインターネット上の広告・表示の現状と課題」

 日本広告審査機構(JARO)が、8月22日付で、 「JAROの最近の審議事例にみるインターネット上の広告・表示の現状と課題」 (リンク先はPDF)を公表しています。

 これによると、平成28年度にJAROに寄せられたインターネット広告の苦情は1936件で、前年度比128.9%となり、今後も苦情は増えていくと予想され、その適正化は重要な課題であるとされています。

 最近の特徴としては、以前から多かった、自ら商品を販売を行う広告主が主体となる広告における表現の問題に加えて、アフィリエイターの存在が目立ってきているとしています。

 そして、平成28年度にJAROが警告を発した事例5件があげられています。詳しくは上のリンク先PDF資料を見ていただくとして、内4件が薬機法(旧薬事法)等違反に関するもので、その概要を紹介します。なお、他の1件はゲームアプリ内の課金イベントの告知表示が不適切とするものです。


【ケース1】

 健康食品事業者のケース。あるポータルサイトに、「○○症状の改善が期待できる成分A」とうたい、○○症状の要因について免疫系の働きを示唆する内容のバナー広告が掲載され、これをクリックすると、ポータルサイトとのタイアップによる記事体広告に移り、成分Aが○○症状に有効であることが研究により確認できたという内容になっていた。それだけなら商品広告にはならないので、薬機法の対象とはならないが、その記事体広告の最後にある「会社概要」をクリックすると、事業者のサイトに移動し、そこでは成分Aが配合された健康食品が購入できるようになっていた。

 これに対してJAROは、薬機法に抵触するおそれがあると指摘した。

【ケース2】

 大手ショッピングモールのメールマガジンに掲載された「気になる個所を集中ケア」などとうたうバナー広告をクリックすると、薬機法上不適切な表示が多い化粧品広告サイトに移動し、そこで購入ボタンをクリックするとショッピングモールにある広告主のショップに移る。そのショップの表示は適切。大手ショッピングモールは最初はその中間ページの内容も確認して不適切ではないと判断したようだが、その後ページを差し替えていた。

 JAROは、全体が化粧品の一連の広告に該当し、中間ページの表示は薬機法に抵触するおそれがあると指摘した。

【ケース3】 これは、アフィリエイターによるインフィード広告(twitter、facebookやニュースアプリなどのスマホのタイムライン中に出てくる広告)のケースですね。

 スマホ版のポータルサイトに掲載されたダイエットサプリメントに関するインフィード広告のリンク先はアフィリエイトサイトとなっていて、そのサイトの「購入はこちら」などのボタンから、サプリメント販売者の通販サイトに移動する。その通販サイトには不適切表示は少ない。しかし、アフィリエイトサイトには、飲むだけで痩身効果が得られるかのような文言や画像などの表示がされている。薬機法健康増進法は「何人も」が規制対象であるので、アフィリエイターであってもそれらに抵触するおそれがある、などと、JAROが警告を行った。

【ケース4】 これは比較ランキングサイトアフィリエイトのケースです。

 足がつる症状が改善するサプリメントのランキングを紹介するサイトで、そこが複数のサプリメントのアフィリエイト広告になっていて、商品名等をクリックすると、それぞれの商品の通販サイトに移動する。薬機法、健康増進法上問題となるおそれのある表示があるとして、JAROがサイト運営事業者に指摘をした。


 ケース3,4がアフィリエイト広告に関するものですが、景品表示法の表示規制の対象となるのは、商品やサービスを提供する事業者による表示ですので、アフィリエイターのように独自に広告を行う者は措置命令などの対象とはなりません。しかし、薬機法健康増進法の広告・表示規制は、そのような限定はなく、「何人も」となっているものです。

 今回のJAROの公表内容でも、その点を指摘しつつ、アフィリエイトサイトの不適切な表示であっても、本来の商品等提供事業者が、「表示内容に関与」した場合には、その事業者が景品表示法上の措置を受けるべき事業者に当たると考えられる、としています。このような点は、既に消費者庁「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」において指摘している点でもあります。

【追記】(8/30)

 読み直してみて、最後のところがちょっと説明不足で誤解を生じると思いますので、追記します。

 消費者庁「インターネット消費者取引に係る・・・・・留意事項」では、口コミサイトに関して、「商品・サービスを提供する事業者が、顧客を誘引する手段として、口コミサイトに口コミ情報を自ら掲載し、又は第三者に依頼して掲載させ、当該「口コミ」情報が、当該事業者の商品・サービスの内容又は取引条件について、実際のもの又は競争事業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるものである場合には、景品表示法上の不当表示として問題となる。」などとしていて、商品等供給事業者が関与している場合には景品表示法に違反する場合のあることを指摘しています。
 それで、その指摘のことを本文最後に記載したのですが、今回のJAROの公表内容は、そのような積極的な関与がなくても、場合によっては、当該事業者の不当表示に該当する、としており、より踏み込んだ内容になっていますので、その点の表現が欠けていました。

2017年8月12日 (土)

2016年度消費生活相談、危害・危険情報などの概要(国民生活センター)

 先月、当ブログで、国民生活センターの商品テスト部門を訪問したことを、 「「プエラリア・ミリフィカ」を含む健康食品の危険性(国民生活センター)」(7/21)という記事に書きました。この時、一緒に訪問したメンバーのお一人である産経新聞の平沢記者が、先日(8/7)、産経新聞「ニュースの深層」に、同じく「プエラリア・ミリフィカ」を含む健康食品に関して「「胸が大きくなる」はずが…健康被害 「女子力アップにサプリで女性ホルモン」に潜む落とし穴」という記事を書かれました。興味のある方はご一読ください。   
※なお、新聞社のサイトでは、ほとんどの記事は一定期間経過後、非公開になりますので、後日、リンク切れとなるかと思いますがご了承ください。※


 さて、その国民生活センター関連ですが、8月10日付で2016年度の相談等の概要が報告されています。 

 1.2016年度のPIO-NETにみる消費生活相談の概要

 2.2016年度のPIO-NETにみる危害・危険情報の概要

 3.2016年度の越境消費者相談の概要

の3つですが、それぞれ概要と報告書本文(PDF)が掲載されています。詳細はそちらをご覧いただくとして、いくつか紹介します。

 なお、「PIO-NET」(パイオネット)というのは、「全国消費生活情報ネットワークシステム」(Practical Living Information Online Network System)の略称で、国民生活センターと全国の消費生活センターなどを、オンラインネットワークで結び、消費生活に関する相談情報を蓄積しているデーターベースのことです。全国各地の消費生活センター(自治体等により名称は異なりますが)が受けた消費者相談のデータが集積されています。

 まず、「2016年度のPIO-NETにみる消費生活相談の概要」をみると、   

  • 2016年度の相談件数は約88.7万件で、2015年度(約93.0万件)に比べ減少した。「アダルト情報サイト」や金融商品、情報通信サービスに関する相談の減少が影響している。
  • 利用した覚えのないサイト利用料の請求など「架空請求」の相談は2012年度から再び増加傾向にあり、2016年度は約8.3万件であった。
  • 契約当事者の年齢をみると70歳以上の割合は減少しているが各年代の中では最も高い。50歳代、60歳代の割合は増加している。
  • 「健康食品」「化粧品」「飲料」の相談が増加した。これら商品の定期購入に関する相談の増加が影響している。
  • 「興信所」の相談が増加した。「アダルト情報サイト」とのトラブル救済をうたう探偵業者等に関する相談の増加が影響している。
  • 「通信販売」に関する相談の全体に占める割合は約37%であり、2013年度以降、引き続き販売購入形態別で最も高かった。
  • 契約購入金額および既支払金額の合計金額は2014年度以降減少している。2016年度は契約購入金額の合計金額が4,281億円、平均金額が105万円であり、既支払金額の合計金額が1,465億円、平均金額が41万円であった。
  • 販売方法・手口をみると「還付金詐欺」が2012年度から2016年度の5年間で7倍以上も増加している。

となっています。

 次に、「2016年度のPIO-NETにみる危害・危険情報の概要」では、   

  • 「危害・危険情報」は15,153件で、対前年度比でみると0.3%増となっています。
  • 「危害情報」は11,602件で、上位3商品・役務は「健康食品」、「化粧品」、「医療サービス」でした。「危険情報」は3,551件で、上位3商品・役務は「四輪自動車」、「こんろ類」、「調理食品」でした。
  • 「危害情報」については、昨年度と比べ「調理食品」が74件減少、「美容院」が86件減少しましたが、「健康食品」が968件増加したほか、「飲料」が205件増加、「化粧品」が132件増加したことなどが影響し、964件増加しました。
  • 「危険情報」については、昨年度と比べリコールの影響で「こんろ類」が249件増加しましたが、1位の「四輪自動車」が137件、「調理食品」が159件、「菓子類」が92件それぞれ減少したことが影響し、925件減少しています。

となっています。ここでも、「健康食品」や「化粧品」の事案が多いですね。

 3つめの「2016年度の越境消費者相談の概要」には、「-越境消費者センター(CCJ)で受け付けた相談から-」という副題が付けられています。越境消費者センター(CCJ)というのは、国民生活センターが開設している海外から商品を購入した消費者と海外事業者とのトラブルについての相談窓口です。したがって、事業者間の取引(BtoB)やネットオークションなどでの個人間取引(CtoC)は取り扱っていません。    
 詳しくはこちらのサイトをご覧下さい。 → 越境消費者センター(CCJ)

こちらの報告概要によると、2016年度の傾向と特徴は、   

  • 2016年度にCCJに寄せられた越境消費者相談の件数は4,473件であり、2013年以降4,000件を超えている。
  • 相談が寄せられた取引のほとんど(98%)がオンラインショッピングに関するものであり、決済手段はクレジットカード決済が約8割を占める。
  • 2016年度に相談が多く寄せられたトラブルは、PCソフトウェアの解約トラブルである。このため、商品・サービス類型では「ソフトウェア」が、2015年度の9%から急増し、22%を占めた。また、SNSの広告を見て購入した化粧品通販トラブルも2015年度に引き続き多数の相談が寄せられた。
  • 詐欺・模倣品トラブルの相談全体に占める割合は、2015年度から12%減少し、2割弱となった。
  • 相手方事業者の所在地としては、アメリカが最も多く、続いてイギリス、中国の順で、これら3カ国で全体の約7割を占める。

となっています。海外旅行で購入した商品などについても対象になるのですが、実際には、ネット通販による商品購入に関するものがほとんどのようです。

2017年8月10日 (木)

朝鮮学校無償化裁判判決についてネット炎上している裁判長代読などについて

 先日の大阪地裁での朝鮮学校の授業料無償化に関する判決について、なんだかTwitterなどネット上で炎上しているようです。

 もちろん、これに限らず、判決の内容、結論について、賛否いろんな議論がされるのは結構なんですが、今回は変なところで炎上しており、判決自体の議論の邪魔にもなるので、取り上げてみます。

 問題とされているのは、この判決の裁判長である西田隆裕裁判官が、4月1日で裁判官から検事になっており、判決当日は裁判官ではないのに、別の裁判官の代読という形で判決が言い渡されているのは違法で判決は無効ではないか、という批判です。なお、この裁判は、西田裁判官の単独の判決ではなく、3名の裁判官の合議体での判決であり、他の2名の裁判官については、そのままです。

 しかし、上記の批判はあたらない、というか、訴訟を知ってる実務家であれば、誰も疑問に思わないところだと思います。

 まず、判決言い渡しの日までに異動(転勤)や定年退官、辞職などがあった場合に、代わりの裁判官が代読するのは別に珍しいことではなく、よくあることです。特に4月の異動は多いですので、その後くらいの判決では多いですね。私もそのような判決を受けたことは何回も経験しています。退官や辞職の場合は、判決の当日には既に裁判官ではなくなっているのですが、それが違法というわけではありません。

 若干脱線しますが、弁護士から任官された裁判官が「弁護士任官どどいつ」というのをたくさん作られていますが、その中に、4月のどどいつとして、こんなのを作っておられます。

  「なんで私が テレビに映る 代わりに判決 読んだだけ」

その解説として、   
「裁判官の転勤は4月が多い。判決を書くのは結審時の裁判官なのだが、言渡しが転勤後になった場合は、後任の裁判官が代読する事になっている。社会の注目を集める判決の場合でも、法廷撮影で映るのは、実は判決に全く関与していない裁判官という事も少なくない。(略)」   
とあります。 → 弁護士任官どどいつ(7)

 それと、炎上の内容として、西田裁判長が4月に裁判官から検事に任官していることが、弾劾逃れだとか、というのもあるのですが、これも間違いです。

 今回は、西田裁判官が、4月から大阪国税不服審判所の所長に就任したのですが、この大阪国税不服審判所の所長は、これまで裁判官が就任することが通例となっています。前の所長も裁判官です。なお、東京国税不服審判所の所長は、検察官が就任するのが通例です。国税不服審判所の審判官には、裁判官、検察官、弁護士、会計士などいろんな所から任官されています。

 したがって、西田裁判官の場合も、いわば異動(転勤)みたいなもので、本人が弾劾逃れで仕事を変えたとかというものではありません。ただ、国税不服審判所は、裁判所ではありませんので、移るにあたって、いったんは裁判所から離れて(裁判官をやめて)、「検事」の肩書になるものです。何年かして、所長交代の際には、裁判所に戻るのが普通です(定年等の事情がない限り)。

 このあたりのところは、なかなか文献等はないのですが、なぜかwikipediaに具体的な説明がなされてましたので、リンクを貼っておきますね。しかし、こんなマニアックな解説を書いたのは誰なんだろうと思ってしまいました。内部の方でしょうか?

 → Wikipedia「国税不服審判所」 (組織)   
「なお、行政審判機関としての性格や、国税庁に対する中立性・第三者性保持の観点から、国税不服審判所本部所長には裁判官からの出向者が、主要支部である東京国税不服審判所長には検察官からの出向者が、同じく大阪国税不服審判所長には裁判官からの出向者が充てられるのが通例である。このほか、本部及び主要支部に、裁判官又は検察官からの出向者が若干名配置されている(なお、裁判官からの出向者の出向中の身分(官名)は、検察官からの出向者と同じく「検事」となるのが例である。)。」

2017年8月 1日 (火)

「健康美容ビジネスの広告・表示のポイント」(レガシィ)発売

 恥ずかしながら、レガシィ社より、DVD(CD)にて「健康美容ビジネスの広告・表示のポイント」が発売されました。 主に健康食品の広告に関する法規制(薬機法、景品表示法など)についてしゃべっています。

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 これまでも書籍や雑誌ならば、いくつか書いてきましたし、研修や講演などで人前で法律の話をすることは多いのですが、こういった講演スタイルの映像教材的なものは初めてで、数名のスタッフ以外のいない講演というのに全く慣れておらず、一発撮りでしたので、正直なところ冷や汗ものです。

 もし、ご興味のある方がおられましたら、よろしくお願いします。

2017年7月27日 (木)

ソフトバンクのおとり広告表示に対する措置命令(消費者庁)

 消費者庁は、本日、ソフトバンク株式会社(東京都港区)に対して、おとり広告告示違反の不当表示があったとして、措置命令を行っています。

 景品表示法5条3号に基づく「おとり広告に関する表示」(平成5年公取委告示第17号)に該当する表示とされたものです。

 なお、この3号違反は、課徴金納付命令の対象にはなりません。

 → 「ソフトバンク株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について」 (PDF)

 本件は、ソフトバンクが、自社webサイトにおいて、 「いい買物の日 Apple Watch キャンペーン」、「いい買物の日 2016年11月3日(祝・木)~11月13日(日) おトクドッカーン! Apple Watch(第1世代)が! スペシャルプライスで買えるのは今だけ! 本体価格11,111円 表示価格は税抜です。」、「期間中、対象のApple Watchが11,111円でご購入いただけるキャンペー ンです。ソフトバンクのApple Watch 取り扱い店舗にて、ご購入いただけます。」等と記載するとともに、「Apple Watch(第1世代)」を取り扱う店舗及び「いい買物の日 Apple Watch キャンペーン」と称するキャンペーン(以下「本件キャンペーン」という。)の対象となる「Apple Watch(第1世代)」の一覧を掲載したwebページへのリンクを掲載することによって、各店舗において、「Apple Watch(第1世代」が税抜き11,111円で購入できるかのように表示していたが、実際には、キャンペーン初日に当該商品は用意されていなかった、というものです。

 ソフトバンクは、このwebサイトで、「在庫がなくなり次第終了」「商品によっては在庫がない場合もございます」というような注意書きもしていたようですが、これについて、消費者庁は、在庫がなくなり次第終了する、ということは初日に商品があることが前提であるし、在庫がない場合もある、との記載は、在庫がない場合が例外であるかのような表示であるとして、各店舗の在庫状況を明瞭に記載したものとはいえない、としました。

 これは、先日ご紹介した実態調査報告書の「打消し表示」がある場合でも不当表示なる一例ですね。

「「打消し表示に関する実態調査報告書」の公表(消費者庁・景表法)」 (7/14)

 おとり広告に対する措置命令については、つい先日(7/11)東京ガス子会社に対して出されるなど、最近ちょくちょくと出されています。

「東京ガス(有利誤認表示)、東京ガス子会社2社(おとり広告)に対する景表法違反措置命令(消費者庁)」 (7/11)

「神戸牛のおとり広告に対する措置命令(消費者庁)」 (2016/12/21)

2017年7月24日 (月)

「祭りくじと景品表示法」にアクセスが激増しているので

 土曜の夜あたりから、今年の4月に書いた記事のアクセス数がとんでもなく急増しているので、なんでかな、と思っていたら、この記事の元ネタであるユーチューバーのヒカル氏が新たな動画をyoutubeに投稿したのがきっかけのようですね。

   → 当ブログ記事 「祭りくじと景品表示法」 (2017/4/5)

 今回投稿された動画は直接探せませんでしたが(消されたのかも知れません)、それについて、いろんな人がネット上でコメントされているので、だいたいの内容はわかります。いろいろなコメントの中に、私の上記ブログ記事を紹介してくださる人もいて、それでアクセスが増えたようです。

 ただ、気になったのは、私が書いたことについて、「弁護士が景品表示法違反にならないと言っている」というような紹介をしている人が結構多いみたいです。しかし、ちゃんと読んでもらえれば、追記までしてますので、わかると思うのですが、私は、「景品表示法の不当景品規制」には該当しない、と言っておりますが、後半に書いているように、「景品表示法上の不当表示規制(有利誤認表示)」には該当するおそれがあると言ってますので、トータルとしては、景品表示法に違反する可能性が高いよ、ということになります。

 当初の4月の時点で、結構、高額商品だから景表法違反だ、という投稿が見られたので、それは違うよ、ただし、高額かどうかと関係なく、商品が当たるように書いていて当たらないなら、不当表示にはなるよ、ということで書いた記事でした。

【追記】(7/24)

 ヒカル氏は、今回、景品表示法の景品の最高額規制違反ということを、警察に主張されたようですが、不当景品にせよ、不当表示にせよ、こういった違反行為については罰則はなく犯罪にはなりません。したがって、こういう主張では、警察は動けないことになります。やるならば、詐欺だろ、と言うべきですね。

 なお、景品表示法違反行為に対して、消費者庁措置命令(差止など)を行ったのに、それを守らなかった場合は、刑事罰の規定があります。

【追記】(7/24)

 そういえば、先日、ゲーム運営事業者のグリーに措置命令が出されたのも、公表されている景品の数を下回る数しか提供しなかったという問題に対して、不当景品規制ではなく、不当表示規制(有利誤認表示)の違反でしたね。
  → 「ガンホーとグリーに対する景表法の措置命令(消費者庁)」(7/19)

2017年7月19日 (水)

ガンホーとグリーに対する景表法の措置命令(消費者庁)

 消費者庁は、本日、どちらもゲーム運営事業者であるガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社(東京都千代田区)およびグリー株式会社(東京都港区)に対し、景品表示法に違反する不当表示であるとして措置命令を出しました。

 → 消費者庁公表資料 (PDF)   
   ・ ガンホーに対する景品表示法に基づく措置命令

   ・ グリーに対する景品表示法に基づく措置命令

 まず、ガンホーは、オンラインゲーム「パズル&ドラゴンズ」(パズドラ)「ディズニーマジックキングダムズ」に関して、優良誤認表示有利誤認表示があったというもので、どういう表示かというと、

 「パズドラ」に関しては、特別のモンスターを提供する「特別レアガチャ『魔法石10個!フェス限ヒロインガチャ』」において、あたかも、13のモンスター全部が「究極進化」の対象となるかのように示す表示をしていたが、実際にはモンスター2体だけを「究極進化」の対象とし、他の11体は「究極進化」ではなく「進化」という別の対象としていたというものです(優良誤認表示)。

 また、 「ディズニーマジックキングダムズ」に関しては、表示されるバナー広告において、あたかも、複数のアイテムをパックで購入する場合の提供価格は、別々に購入する場合の合計金額に比べて安いかのように表示していたが、実際には、別々に購入する場合の合計金額に比して安くはなかったというものです(有利誤認表示)。

 グリーについては、オンラインゲームでの抽選企画に関するもので、、携帯電話向けの自社ウェブサイトの「超豪華プレゼント!年末年始キャンペーン」という懸賞企画において、例えば、「スマートグラス MOVERIO 当選本数100本」と記載するなど、あたかも、その懸賞企画においてはそれぞれの景品類について、サイト上に記載された当選本数と同数の景品類が提供されるかのように表示していたが、実際には、サイト上の記載を下回る数の景品類の提供を行っていたというものです(有利誤認表示)。「GREEコイン」と称する仮想通貨を1,000枚使用するごとに抽せん券を1枚付与するという抽選企画のようですね。
 要するに、抽選の景品を、公表していた数より少ない数しか出さなかった、ということで、雑誌の懸賞企画でも過去に不当表示(有利誤認表示)とされた事案がありました。平成25年8月20日の秋田書店に対する措置命令、平成27年3月13日の竹書房に対する措置命令、平成27年12月8日のアイアに対する措置命令ですね。

 今回は、課徴金納付命令は出てませんが、どうなるでしょうね。

2017年5月19日 (金)

研修サービス等に関する有利誤認表示(二重価格表示事案)に対する措置命令など

 本日は、衆議院法務委員会で、いわゆる共謀罪法案が可決され、また、天皇の生前退位に関する特例法案も閣議決定されるなど、重要な法律に関するニュースが流れています。また、民法(債権法)の大改正法案も審議中で、近々成立するものと見られております。


 さて、本日、消費者庁は、株式会社日本教育クリエイト(東京都新宿区)に対し、同社が行っている「三幸福祉カレッジ」の研修サービス(「介護職員初任者研修」、「実務者研修」など3役務)、「日本医療事務協会」の講座サービス(「医療事務通学講座」、「医療事務通信講座」)に係る表示が、不当表示(有利誤認表示)に該当するとして措置命令を行っています。 

  → 消費者庁公表資料 (PDF)

 これは、同社が自社のwebサイトにおいて、「通常受講料120,000円最大受講料半額以上もお得!59,500円~(教材費込・税別)」とか、「(通常:初任者研修120,000円+実務者研修127,000円=定価247,000円)キャンペーン受講料144,500円~(テキスト代込・税別)」とか、「通常価格55,000円42,700円(教材費込・税別)」などと記載することにより、あたかも、「通常受講料」又は「定価」と称する価額が同社が通常提供している価格であって、実際の受講料が、この通常提供価格に比して安いかのように表示していたが、実際には、最近相当期間にわたり提供された実績のないものだった、というものです。

 いわゆる二重価格表示の事案ですね。

 最近、このような二重価格表示など価格表示に関する有利誤認表示についての措置命令が目立つように思いますね。同業者のアディーレさんのところも、以前ですが価格表示の有利誤認表示が対象とされてましたし。

 先日(5月12日)も、コスモ石油販売株式会社が運営する「コスモ石油サービスステーション」での車検サービスに関して、新聞折込チラシで、「通常検査費用」より安い料金でサービスを受けられるような広告をしていた行為について、有利誤認表示とされ、措置命令が出されたところです。

 → 消費者庁公表資料 (PDF)

2017年5月17日 (水)

web版「消費者情報」(関西消費者協会)

 長年にわたって関西消費者協会から発行されてきた消費者問題の専門雑誌「消費者情報」が3月をもって休刊となりましたが、今回、新たにweb版がスタートしました。年4回無料配信の予定です。

 既に、国民生活センター雑誌「国民生活」も同様にweb版となっていますが、こちらも5月号が掲載されています。

     → web版「消費者情報」(関西消費者協会)

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 このweb版「消費者情報」5月号の内容は以下の通りです。 興味のある方はご覧下さい。

【消費者情報5月号】

○消費者運動(団体)の課題と役割

  巻頭インタビュー 海外動向から見る消費者団体の課題と方向性   
               金城学院大学教授 丸山 千賀子

  今、消費者運動に必要なものは何か   
               弁護士 木村達也

  これからの消費者運動のゆくえ   
               日本消費者新聞社代表取締役・主幹 岩下道治

  消費者運動 現場からの報告Ⅰ・Ⅱ   
               全国地域婦人団体連絡協議会 会長 柿沼トミ子    
               全国消費者団体連絡会 事務局長 河野康子

○がんばれ!消費者委員会

  身元保証等高齢者サポート事業に関する消費者問題についての建議
               消費者委員会事務局

○団体訴訟への展開

  サン・クロレラチラシ差止め訴訟最高裁判決   
               京都消費者契約ネットワーク(KCCN)弁護士 志部淳之介

○消費者弁護士の肖像

  山﨑省吾 第5回(全9回予定)

○地方消費者行政の「今」を歩く

  大阪編・堺市立消費生活センター

○公正取引委員会の仕事

  不当な表示や景品に“待った”をかける   
               公正取引委員会事務総局 近畿中国四国事務所
                                 取引課長 笠原雅之

○ネット漂流

  タッチで支払い【Apple Pay】は子どもでも使えてしまう   
               NIT情報技術推進ネットワーク株式会社 篠原嘉一

○Infomatiom

  インフォメーション

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