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2017年2月23日 (木)

ステマ規制に関する日弁連意見書と「昆虫表紙」マーケティング

 日本弁護士連合会(日弁連)が2月16日に「ステルスマーケティングの規制に関する意見書」を出しています。

  → 日弁連サイト (報告書本文はこのページからリンクされたPDFへ)

 詳しくは報告書を読んでいただきたいのですが、意見の趣旨は、次の通りです。

「不当景品類及び不当表示防止法第5条第3号に基づく内閣総理大臣の指定に、下記の指定を追加すべきである。

               記

 商品又は役務を推奨する表示であって次のいずれかに該当するもの   

  1. 事業者が自ら表示しているにもかかわらず,第三者が表示しているかのように誤認させるもの
  2.    
  3. 事業者が第三者をして表示を行わせるに当たり、金銭の支払その他の経済的利益を提供しているにもかかわらず、その事実を表示しないもの。      
    ただし、表示の内容又は態様からみて金銭の支払その他の経済的利益が提供されていることが明らかな場合を除く。」

 つまり、いわゆるステルスマーケティング(ステマ)の広告・表示について、景品表示法が定める不当表示のうち、「優良誤認表示」「有利誤認表示」に並んで規定されている5条3号の「告示」に基づく不当表示に追加せよ、というものです。

 この5条3号に基づく「告示」は現在、

  商品の原産国に関する不当な表示
  無果汁の清涼飲料水等についての表示
  消費者信用の融資費用に関する不当な表示
  おとり広告に関する表示
  不動産のおとり広告に関する表示
  有料老人ホームに関する不当な表示
 

の6つが出されており、これにステマに関する告示を追加しようということですね。

 ステマについては、このブログでは何度も取り上げておりますが、日弁連が具体的な規制として、景品表示法改正による規制の意見を出したことは有意義であろうと思います。


 ステマに少し関連して、もうひとつ面白い記事を見つけました。dot.という朝日新聞系のサイトに掲載された「「ジャポニカから虫が消えた」騒動は“つくられた”ものだった」という記事です。 

 一昨年末に、「ジャポニカ学習帳」の表紙から、昆虫の写真が消え、花の写真になっていた、と新聞で報じられ、その理由のひとつが「昆虫は気持ち悪いというクレームが増えたため」だった、ということで、主にネット上で論議がわき起こったものです。その後、この昆虫版は復刻され、すぐに売り切れた、ということでした。そして、今回の記事は、これにはコンサルタントによる仕掛けがあった、と紹介されています。

 昆虫の表紙がその2年ほど前に廃止されていたのは間違いないようですが、これを聞いたコンサルタントのアイデアで、社長に取材に来た新聞記者にこの昆虫の表紙の話をして、それが記事になり、目論見が当たって広く議論となって、マーケティングとしてうまくいった、ということです。

 これは、ステマとはいえないですし、虚偽の話をしたわけでもなく、直接、法的にどうこうということではないと思います。しかし、いわゆる「炎上マーケティング」的な宣伝活動であり、こういったマーケティングに不快感を持つ消費者も多いのではないかと思います。私は、このジャポニカ学習帳の件は記事で読む限りでは、特に問題があるとまでは考えませんけれども、同様の手法で、消費者が誤認するようなマーケティングが行われる可能性はあり、注意が必要ではないか、と思いますし、事業者も広告、マーケティングについてのコンプライアンスのチェックは十分に行ってほしいと思います。

 もっとも以前からのファッション界などが流行やブームを作り出す、というのも同じようなものかもしれませんが。

2016年11月15日 (火)

比嘉照夫琉大名誉教授が朝日新聞を訴えた裁判の控訴審判決(控訴棄却)

 ブログ更新ができなくてすみません。 

 この土日は、明治大学中野キャンパスでの情報ネットワーク法学会研究大会に参加して、私自身も「位置情報サービスとソーシャルゲームの法的問題」などという分科会で登壇してまいりました。要するにポケモンGOです(苦笑)

  そして、昨日月曜の夜は、京都産業大学の消費者法研究会と消費者ネット関西の共同企画で、 「『健康食品』ウソ・ホント」(講談社ブルーバックス)の著者としても有名な高橋久仁子先生の講演会に参加してきました。ハードスケジュールでしたが、どちらも大変勉強になりました。


 さて、比嘉照夫琉球大学名誉教授が、「EM菌」に関する朝日新聞の記事に対して、著作権侵害であるうえ、不法行為に当たるとして、損害賠償や謝罪広告を求めていた裁判の一審東京地裁判決(請求棄却)については、当ブログで紹介しました。

 → 「いわゆるEM菌に関する記事が著作権侵害等に当たるとして朝日新聞を訴えた裁判の判決」(2016/5/11)

  この判決に対して、比嘉教授が控訴していたわけですが、それからちょうど半年経過した先日(11/10)に東京高裁で控訴審判決が出ました。結果は、比嘉教授の控訴は認められず、控訴棄却となりました。 

 → 知的財産高等裁判所平成28年11月10日判決

  この知財高裁は、要するに、著作権に関しては、比嘉教授のブログ記事と朝日新聞記事とが共通するのは、「重力波と想定される」、「波動による(もの)」との部分であるが、これは著作物性は認められないので、著作権(複製権、同一性保持権、著作者人格権)侵害とはならない、という点と、比嘉教授の「朝日新聞が比嘉教授を取材せずに記事を掲載したのは不法行為」という主張に対して、「朝日新聞記者行動基準」に抵触しうる行為であり、慎重な配慮に欠ける、とは認めたものの、それは社内の自律的処理の対象となることは別として、「その態様,記事の内容及び趣旨,控訴人の学者としての社会的地位,本件記事1及び2の掲載により負うこととなった控訴人の負担等を総合考慮すると,本件記事1及び2の掲載行為により控訴人の被った精神的苦痛が社会通念上受忍すべき限度を超えるとまではいい難く,これを不法行為法上違法なものであるということはできない。」としました。 

 基本的には、一審東京地裁判決と同様の判断を下したものといえると思います。

2016年5月11日 (水)

いわゆるEM菌に関する記事が著作権侵害等に当たるとして朝日新聞を訴えた裁判の判決

 琉球大学名誉教授であり、いわゆるEM菌の研究者である比嘉照夫教授(原告)が、自分の執筆したブログの一部を朝日新聞が記事に引用したことが、比嘉教授の著作権(複製権、同一性保持権)を侵害し、また、自分に取材せずに記事を掲載したことが不法行為に当たるとして、朝日新聞を被告として、損害賠償及び謝罪広告を求めていた裁判の判決が平成28年4月28日に東京地裁民事46部(知的財産部)でありました。   
 判決では、原告の請求が棄却されています。   
 この裁判については、訴訟提起時にサンケイ新聞が記事にしていましたが、今回の判決は、朝日もサンケイも他の報道機関も報じていないようですね。

  → 東京地裁平成28年4月28日判決(裁判所サイト)

 事案は以下の通り。   
 朝日新聞が、朝日新聞青森版に、平成24年7月3日付けで「EM菌効果『疑問』検証せぬまま授業」と題する記事を、同月11日付けで「科学的効果疑問のEM菌3町が町民に奨励」と題する記事をそれぞれ掲載した。

 原告のブログには、「私はEMの本質的な効果は,B先生が確認した重力波と想定される縦波の波動によるものと考えています。」と記載していた。    
朝日新聞の上記記事には、「EM菌の効果について,開発者のA・琉球大名誉教授は「重力波と想定される波動によるもの」と主張する。」「開発者のA・琉球大名誉教授は,効果は「重力波と想定される波動による」と説明する。」との記載がある。

 これらの記事は原告を取材せずに作成されたものであるが、朝日新聞の「朝日新聞記者行動基準」では、「記事で批判の対象とする可能性がある当事者に対しては,極力,直接会って取材する」ものとされている。

 そして、上記の原告ブログ記事が著作物であり、朝日の2記事が、この著作物の複製権又は同一性保持権を侵害するものである、というのが、原告の第1の主張です。

 朝日新聞は、このようなブログ記事の記載には著作物性は認められないし、仮にそうではないとしても、事件報道において,当該事件を構成するものを、報道の目的上正当な範囲において複製し、当該事件報道に伴って利用したものであるので、著作権法41条により許された利用に当たる、と反論しました。

 これについて、裁判所は、

「著作権法において保護の対象となるのは思想又は感情を創作的に表現したものであり(同法2条1項1号参照)、思想や感情そのものではない。本件において本件原告記載と本件被告記載1及び2が表現上共通するのは「重力波と想定される」「波動による(もの)」との部分のみであるが、この部分はEMの効果に関する原告の学術的見解を簡潔に示したものであり,原告の思想そのものということができるから,著作権法において保護の対象となる著作物に当たらない」 

として、著作物性を否定しました。

 原告の主張の第2は、朝日新聞記者が原告に取材することなく記事を掲載したことが不法行為(民709条)に該当するというものです。

 原告の主張によると、本件2記事における原告のコメント部分はかぎ括弧が用いられているが、引用元や出典が明示されていないから、一般読者は記事が原告を取材して得たコメントを掲載した記事として読むことになるが、実際には朝日新聞は原告を取材せずに掲載しており、記事で批判の対象となっている原告を取材しなかったことは、「朝日新聞記者行動基準」に定められた取材方法に違反する、これにより、自らの意思に反してコメントをねつ造されない人格的利益が侵害されており、不法行為に当たる、としています。

 これについて、裁判所は、かぎ括弧内のコメントが、一般読者に取材による記事として読まれる可能性があったというべきであり、「記者行動基準」の規定に抵触しかねない行為であったといえるとしたうえで、

「上記基準は記者が自らの行動を判断する際の指針として被告社内で定められたものであり、これに反したとしても直ちに第三者との関係で不法行為としての違法性を帯びるものでない。」とし、「公にされていた本件原告記事を参考にして執筆されたものであって、その内容はEMの本質的効果に関する原告の見解に反するものではない」、そうすると、2記事によって「原告の見解が誤って報道されたとは認められず、したがって、これにより原告が実質的な損害を被ったとみることもできない」ので、記者の「行為は不適切であったということができるとしても、不法行為と評価すべき違法性があったとはいえないと判断するのが相当である。」 

として、不法行為の成立も否定しました。

 著作物性を否定した点も不法行為の成立を否定した点も妥当な判決だと思います。

2016年3月25日 (金)

景表法違反措置命令を受けた通販会社に対する製造メーカーの法的責任

 本年3月23日、消費者庁は、有限会社ペルシャンオート(神奈川県厚木市)に対し、同社の販売する中古車の商品説明に景品表示法の規定する不当表示(優良誤認)があったとして措置命令を行っています。

 → 消費者庁公表資料(PDF)

 これは、中古車17台について、同社がヤフオク!に出品した際に、商品説明の「修復歴」欄に「なし」と記載することにより、あたかも、当該中古自動車の車体の骨格部位に修復歴がないかのように示す表示をしていましたが、実際には、同社が別のオートオークションに出品した際の出品票には、車体の骨格部位に損傷があるもの又は修復されているものを示す記号が記載された修復歴があるものであった、というものです。

 中古車販売についての優良誤認表示は、走行キロの偽装のケースも多いですが、これは修復歴隠しですね。 


 さて、ここのところ、広告表示関連の記事では見逃せない通販新聞ですが、今日はこのようなニュースを掲載していました。 

 → ユーコー 措置命令巡りメーカー提訴も、「表示主体」巡る判断で企業間対立へ

 当ブログでの紹介はしなかったのですが、今年1月26日、消費者庁が、通信販売業者の株式会社ユーコー(東京都豊島区)に対して、その販売する「PM2.5対応プラズマ空気清浄機」について、同社が新聞広告において、「PM2.5、花粉、ウイルス、ダニ、カビ対応」などと効果を示した上で「約21畳まで対応のハイパワーで広いリビングにもこれ1台でOK!」などと記載して、21畳の広さでも効果があるかのように宣伝した行為を、優良誤認表示として措置命令を出していました。

 → 消費者庁公表資料(PDF)

 上記の通販新聞の記事はこの事案に関するもので、景品表示法での「表示主体」の問題を取り上げていますが、本件は、表示主体の判断の問題よりは、通販業者が不当表示の責任を問われた場合のメーカーの法的責任という観点の問題かと思います。かなり形は違いますが、シャンピニオンエキス事件と同様の問題ともいえなくもありませんね。

 措置命令を受けたユーコーが、当該空気清浄機のメーカーである株式会社丸隆(東京都渋谷区)に対して訴訟提起を検討している、というもので、記事では明確ではありませんが、おそらくは、損害賠償請求訴訟でしょうね。
 記事では、「ユーコーのケースは、制度導入前であり、金額も少額であるため課徴金の対象にはならない。だが、制度が始まれば、事業者間で対立に発展するリスクはより高まる。」と結んでいますが、その通りで、措置命令を受けただけでも、このケースの場合は返品対応や信用毀損などの企業損失を受けますし、課徴金の対象ともなれば、それに加えて多額の課徴金の負担という問題も出てきます。ですので、措置命令や課徴金納付命令を受けた表示主体事業者が、不当表示の元となった、その製造事業者や原材料製造販売事業者に対して、損害賠償請求を起こすというような事例は今後増えるのかもしれません。

続きを読む "景表法違反措置命令を受けた通販会社に対する製造メーカーの法的責任" »

2016年2月27日 (土)

「忘れられる権利」を明記した仮処分認可決定(さいたま地裁平成27年12月22日)

 最近では、「忘れられる権利」という言葉は、情報法関係者以外の一般の場でも用いられるようになってきました。ただし、「忘れられる権利」といっても、必ずしも定義が一定しているわけではありません。EUでの議論ではかなり広範な権利として検討されているようですが、日本では、一般的には、まだ議論が始まったばかりというところかと思います。

 しかし、最近は、こういった過去の事柄に関する事項の削除を求める裁判所への申立(訴訟や仮処分)は日本でもいくつか出てきています。この場合、インターネット上の過去の犯罪歴などの情報元の記事等自体の削除を求める場合、GoogleYahoo!などの検索サイトにおいて検索結果に出ないよう削除を求める場合、同じく検索サイトの検索サジェストの候補に出てこないように求める、など事案に応じて請求の内容、相手方は違っています。

 そして、こういった事案の裁判では、既に、削除の申立が認められている例もあるのですが、これまで裁判所が「忘れられる権利」という言葉で権利を認めたものはなかったようです。

 ところが、昨年(平成27年)12月22日のさいたま地裁での仮処分事件に関する決定で、「忘れられる権利」があるとの判断が示されたことが、本日報道されています。
 この決定は、神田知宏弁護士公式サイト(後掲)によれば、平成27年6月25日のさいたま地裁決定に対する保全異議事件の認可決定とのことです。つまり、最初の仮処分決定で、申立人の削除請求が認められたのに対して、Google側が不服を申し立てた裁判で、さいたま地裁が再び申立人の請求内容を認めた、という形になります(認可決定)。なお、この事案は、Googleの検索結果から、自身の逮捕に関する記事の削除を求めた、というものですね。

 この認可決定の中で裁判所は、「一度は逮捕歴を報道され社会に知られてしまった犯罪者といえども,人格権として私生活を尊重されるべき権利を有し,更生を妨げられない利益を有するのであるから,犯罪の性質にもよるが,ある程度の期間が経過した後は過去の犯罪を社会から「忘れられる権利」を有するというべきである。」としてたようです(神田弁護士公式サイトによる)。

 なお、神田弁護士は既にTwitterで昨年12月24日にこの決定を報告され、今年1月2日の公式サイト記事で本決定について解説をされています。なので、マスコミ報道が今頃になってなされているのはなぜかな、とは思いますが。

 → 神田知宏公式サイト 「地裁決定が「忘れられる権利」に言及した理由の考察」

【追記】(2/29)

 報道によれば、上記認可決定に対して、Google側は不服を申し立て(保全抗告でしょうね。)、現在、東京高裁で審理中とのことです。高裁がどういう判断を示すか注目ですね。

2015年12月29日 (火)

都道府県初の景品表示法に基づく措置命令(埼玉県)

今年も残るところ後3日となりました。私の事務所は、公式には昨日で仕事納めになっていますが、私自身は本日も来客との打合せを含めて仕事モードです。


  さて、埼玉県は、12月25日付で、中古自動車販売業者株式会社ローランインターナショナル(埼玉県比企郡ときがわ町)に対し、景品表示法に基づく措置命令を出しました。    

 事案は、同社の販売する中古自動車(計61台)に修復歴があるのに、中古車情報においては、修復歴がない旨との表示(優良誤認表示)をしていたというものです。 

    → 埼玉県サイトの公表ページ 

 この埼玉県による措置命令は全国初の都道府県が行う措置命令となります。 

 昨年6月の景品表示法改正(施行昨年12月)以前は、都道府県は措置命令を出す権限はなく、調査権限と「指示」という行政指導の権限しかありませんでしたが、改正により、都道府県も措置命令を出すことができるようになっていたものです。正確にいうと、景品表示法12条11項により、消費者庁の権限の一部を政令により都道府県知事にさせることができるとされていて、この規定による政令において、合理的資料提出要求権限(景品表示法4条2項)や措置命令権限(景品表示法6条)などが都道府県で行えるようになったものです。 

 この改正は、偽装メニューが社会問題化する中で、行政の監視指導体制を強化する目的のものです。しかし、現実には、昨年12月1日の施行後の1年間、全くこの権限発動は行われてきませんでした。改正前の「指示」についても、さほど多くが行われていたわけではありませんが、最近でみると、平成20年度21件、平成21年度26件、平成22年度36件、平成23年度22件、平成24年度29件、平成25年度64件とそれなりには出されていました。しかし、中途で改正された平成26年度(改正施行前の11末まで)は、わずかに3件で、施行後の措置命令は、平成27年度を含め、上記事案に至るまで0件となっていたのです。これでは監視指導体制の強化という改正目的の逆の結果となっています。 

 しかも、都道府県のみならず、本体の消費者庁による措置命令も、先日の当ブログ記事「消費者庁は景品表示法への課徴金導入でお忙しい?」(平成27年10月25日付)でも指摘しましたように、平成27年度は平成26年度の30件からみて急減しており、このブログ記事の後で消費者庁が4件の措置命令は出しているものの、それを含めて本日まででわずかに6件となっています。9ヶ月で6件ということは年度換算すると12件ですから、昨年度の半分以下のペースですね。 

 いよいよ来年4月1日からの課徴金制度導入(こちらは、昨年11月改正によるもの)を控えているわけですが、逆に消費者庁や都道府県が萎縮することなく、不当表示等に対して権限を発動していただくことを願っています。

2015年12月26日 (土)

「独占禁止法審査手続に関する指針」の公表(公取委)

 昨日(12/25)、公正取引委員会から、「独占禁止法審査手続に関する指針」(以下「指針」)が公表されました。 

 これは、公正取引委員会の行う行政調査手続(排除措置命令等の行政処分の対象となり得る独占禁止法違反被疑事件を審査するための手続)の適正性をより一層確保する観点から、これまでの実務を踏まえて行政調査手続の標準的な実施手順や留意事項等を本指針の策定により明確化しようとしたものです。 

  → 「『独占禁止法審査手続に関する指針』の公表について」 

 この公表についての報道記事の見出しが面白かったのですが(本日、私が見たネット配信記事による)、日本経済新聞「公取委、弁護士同席を一部容認」としているのに対して、時事通信「弁護士立ち会いは例外的」としています。なんだか逆のことを書いてあるようです。これについて、指針の内容を見ていきます。 

 まず、今回の指針の策定にあたって、企業(および企業側弁護士)からは、調査手続における弁護士の立ち会いを認めるよう強い要望が出されていました。それに対して、公取委がどうするかが今回の注目点のひとつとなっていました。その点については、上記リンク先の「『独占禁止法審査手続に関する指針』(案)に対する意見の概要及びそれに対する考え方」にも一部出ています。 

 そして、結局、今回の公表指針では、まず、立入検査における弁護士の立会いに関しては、 

「審査官は,立入検査場所の責任者等を立ち会わせるほか,違反被疑事業者等からの求めがあれば,立入検査の円滑な実施に支障がない範囲で弁護士の立会いを認めるものとする。ただし,弁護士の立会いは,違反被疑事業者等の権利として認められるものではないため,審査官は,弁護士が到着するまで立入検査の開始を待つ必要はない。」 

とされ、供述聴取時の弁護士等の立会いに関しては、 

「供述聴取時の弁護士を含む第三者の立会い(審査官等が供述聴取の適正円滑な実施の観点から依頼した通訳人,弁護士等を除く。),供述聴取過程の録音・録画,調書作成時における聴取対象者への調書の写しの交付及び供述聴取時における聴取対象者によるメモ(審査官等が供述聴取の適正円滑な実施の観点から認めた聴取対象者による書き取りは含まない。)の録取については,事案の実態解明の妨げになることが懸念されることなどから,これらを認めない。」 

としました。 

 つまり、立入検査時には、弁護士の到着、立ち会いを待つ必要はないし、供述聴取時にも、公取委側が供述聴取の必要上認めた弁護士等を除いては、弁護士の立ち会いを認めない、というものです。
 とすれば、上記ふたつの記事見出しのどちらが正しいかははっきりしていると私は思えるのですが。

2015年10月29日 (木)

不当な訴訟提起として慰謝料請求を認容した判決(長野地裁伊那支部・平27.10.28.)

 本日(29日)の毎日新聞朝刊に、訴訟提起が不当であるとして、反訴において原告に対する慰謝料請求を認容した判決が報じられています。

   太陽光発電所:批判封じの提訴違法 反対住民が勝訴   
   ※ 報道記事は、日数が経過するとリンク切れしますので、ご了承ください。 

 大規模太陽光発電所の建設計画への反対運動を行っていた男性を被告として、発電所設置会社(原告)が6000万円の損害賠償を求めていた訴訟で、裁判所は、この原告会社の損害賠償請求を認めず、逆に、被告男性側からの反訴の慰謝料請求につき50万円を認容したものです。 

 企業などが、その事業活動に反対したり批判したりする市民などに対して、恫喝的に提起する訴訟を「スラップ訴訟」といいますが、この判決は、原告会社の訴訟提起がそのような不当提訴であることを認めたようです。 

 スラップ訴訟としては、近年も、企業や団体が、反対活動を支援する弁護士個人を訴えるなどの事例があります。もちろん、行き過ぎた反対運動などで企業の信用毀損が生じたような場合には、企業としても損害賠償請求を行うこと自体は適法な選択肢としてあることは言うまでもありません。   
 しかし、住民運動などによる表現の自由、報道の自由を不当に抑制する目的の訴訟提起は本件のように不法行為となりえます。このような訴訟提起は当該被告のみならず、他の者の行動、言論などに対しても萎縮的に働きますし、また、仮に損害賠償請求が認められなくても、訴訟に対応するための時間や費用、精神的な負担は大きいものとなります。 

 以前、当ブログでも訴訟提起が不当として争われた事件について書いたことがありますが(スラップ訴訟ではありませんが)、その事件では、不当提訴とは認められず請求棄却となっています。

   → 「不当訴訟提起に対する損害賠償訴訟判決(請求棄却)」(2008.10.28)

 実際には、その訴訟提起がスラップ訴訟といえるかどうかは、微妙な判断となることもあり、こういった判決は珍しいと思いますので、ご参考まで。

【追記】(2016/3/7)
 「消費者法ニュース」106号に「スラップ訴訟」が特集され、上記の太陽光発電計画事件についても、取り上げられています。

   → 「消費者法ニュース106号(特集・スラップ訴訟の実態 ほか)」(2016.2.27)

2013年10月 3日 (木)

アブラハム・プライベートバンク株式会社についての金融庁への勧告(証券取引等監視委員会)

 かなり久し振りの連投になります。

 昨日あたりから、各報道機関から報じられていた、証券取引等監視委員会による「いつかはゆかし」のアブラハム・プライベートバンク株式会社(以下、アブラハム社)についての金融庁への処分勧告が公表されています。
                  
    → 証券取引等監視委員会の発表
                  
   証券取引等監視委員会と関東財務局長が、アブラハム社(投資助言・代理業)を検査した結果、法令違反の事実が認められたので、証券取引等監視委員会が、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法20条1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した、というものです。
   金融庁としては、この勧告を受けて、場合によっては業務停止等の処分を行うことになります。
                  
   法令違反の事実としては、
  1. 無登録で海外ファンドの募集又は私募の取扱いを行っている状況
  2. 著しく事実に相違する表示又は著しく人を誤認させるような表示のある広告をする行為
  3. 顧客の利益に追加するため財産上の利益を提供する行為      
の3つが挙げられております。
                  
 ここでは、この内、2番目の「著しく事実に相違する表示又は著しく人を誤認させるような表示のある広告をする行為」を取り上げてみたいと思います。
                   
   証券取引等監視委員会は、アブラハム社が、「雑誌、テレビ、電車の車内及びインターネット等において自社広告を展開することにより、近時、急速に顧客数を増加させている。」としたうえで、 これらの広告について以下のような問題のある表示が認められた、としました。                   
  •  雑誌記事広告におい て、助言サービス「いつかはゆかし」並びに国内証券会社及び国内投信会社が販売する積立商品の合計6商品を「国内外の主要積立商品比較(過去5年間の年平均利回り)」との表題の下、グラフにより比較し、6商品の中で「いつかはゆかし」が15.34%と、最も高い平均利回りを上げている                    と記載している。
                       
       しかし、過去5年間の年平均利回りとして15.34%というパフォーマ ンスを上げていた投資商品は、顧客が投資対象を選択するに当たり選択肢となり得る投資商品の一つではあるものの、アブラハム社は、当該投資商品の取得を顧客助言したことはなく、顧客がアブラハム社の助言を受けて当該投資商品を取得した事実もない。

  •  自社ウェブサイトにおいて、「類似の資産運用サービスと比較した場合、アブラハム・プライベートバンク株式会社の手数料は、業界最安値でございます。」と記載し、併せて、アブラハム社の調査に基づき作成した比較資料をその根拠として掲載している。                   
                       
       しかし、アブラハム社は、他社のサービスとの手数料比較に際して、アブラハム社の助言手数料を下回るサービスが存在することを認識しながら、あえて当該サービスを比較対象に含めず、それ以外の事業者との間でのみ手数料を比較している。               
  •  自社ウェブサイトにおいて、「金融機関や運用会社から販売手数料等はもらっていません。」と記載している。
                       
        しかし、アブラハム社及び親会社AGHは、特定の海外ファンドの発行者又は運用会社から、当社顧客による海外ファンドの購入額に応じた報酬を受領している。               
                      
  そして、証券取引等監視委員会は、これらの表示行為は、広告等において、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をする行為であり、金融商品取引法37条2項に違反するとしたものです。

  この勧告に基づく金融庁の処分は行政処分ですが、上記の違法表示行為の内容からみて、勧誘行為の実態によっては、行政処分にとどまらず、各顧客に対する詐欺等の問題が生じる可能性はありえない話ではありませんね。

【追記】(10/3)
 本日の勧告に対して、アブラハム社がプレスリリースを出しています。

  → アブラハム社サイトより

 昨日の報道段階のリリースもひどかったですが、本日のも、単に「ちゃんと運用してます。」というだけで、勧告内容に対する反論にはなっておらず、要するに、勧告内容には反論できない、としか読めないことになっています。そのことだけからも、この会社の危機管理の感覚を疑わざるをえません。
 勧告のいう法令違反は、運用内容がどうこうというのではありません。この会社の営業に関わった人達には猛省を促したい。これは、某大マスコミ、某エコノミスト、などを含めてです。
 私の興味分野である広告塔、広告媒体の責任についても、考えないといけない案件かもしれませんね。

2013年9月25日 (水)

大阪弁護士会「美白化粧品白斑被害110番」9月28日実施

 カネボウ化粧品など(他に株式会社リサージ、株式会社エキップ)の美白効果をうたった化粧品の利用者に、肌がまだらに白くなる(白斑)症状が出て問題となっています。
  消費者庁もこの問題で、同庁のウェブサイトの冒頭に消費者に注意を呼びかけるバナーを掲載しています。
                 → 消費者庁ウェブサイト

  また、阿南消費者庁長官も、この問題については何度も定例記者会見で言及しており、最近の9月12日の会見でも、

               

「昨日、森大臣が、カネボウ化粧品の夏坂社長にお会いして、第三者調査の結果の総括と再発防止に向けた今後の取組について直接御報告をいただきました。大臣が夏坂社長にお話しされたとおりですが、まず、第三者調査結果において指摘されているとおり、医師等からの情報提供がありながら、これを速やかな対応にとりかかる機会として捉えることができなかったことは大きな反省点であり、今後は再発防止策をしっかりと定着させていただきたいと思います。
次に、また白斑を発症した方がきちんと回復できるように、補償も含めて更に十分なフォローに取り組んでいただきたいと思います。
消費者の皆様方においては、化粧品で白斑症状等の皮膚トラブルが起きた際には、日本皮膚科学会が公表しています医療機関の情報等を参考にして、医師の診療をしっかりと受けていただきたいと思います。また、不安に感じることがありましたら、お近くの消費生活センターに御相談いただきたいと思います。」

  と話されています。

  そして、今朝のNHKニュースでは、滋賀県内の弁護士7名が9月末にも被害者救済を目的とした弁護団を結成することが報じられており、今後、同様の動きが全国的に開始されるものと思われます。
               
  そのような中、大阪弁護士会では、9月28日(午前10時~午後4時)にこの問題についての電話110番を開催します。詳しくは下記の大阪弁護士会公表資料をご覧下さい。
               
  → 大阪弁護士会「美白化粧品白斑被害110番」の実施について

 なお、この事件については、被害発生後のカネボウ化粧品の対応についても問題があるとされており、同社は第三者委員会を作って報告書も出ています。これについては、山口利昭弁護士のブログ「ビジネス法務の部屋」の下記記事(9月13日付)をみていただくことにします。

 「カネボウは自浄能力を発揮したとは言えない-第三者委員会報告書より」

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