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2017年8月 6日 (日)

機能性表示食品「葛の花イソフラボン」の不当表示調査の報道

 前回記事で、薬機法(旧・薬事法)景品表示法に関連したDVDについて宣伝させていただきましたが、ちょうど関連するような報道が出ています。


 8月3日付の通販新聞が、 「機能性表示食品の広告問題 「葛の花」販売企業を〝一斉聴取〟 課徴金調査で処分不可避か」 という記事を報じています。 

 詳しい経緯は、上記のリンク先記事をご覧いただきたいですが、要するに、東洋新薬がOEM供給する「葛の花由来イソフラボン」を含む機能性表示食品の広告問題が、本年5月のスギ薬局の「お詫び社告」で明らかになりましたが、これに関し、他の多数の東洋製薬の供給先についても消費者庁が調査を行っていることに関する報道です。供給先は記事によれば26社とのことです。

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 スギ薬局の社告に関しての前回の通販新聞の記事(本年6月8日付)はこれです。

「機能性表示食品で初の処分か スギ薬局「お詫び社告」の波紋、東洋新薬「葛の花」OEMで」

 この6月の記事でも、既に他の供給先への調査の拡大について触れているのですが、今回の記事によれば、6月下旬から2週にわたり、十数社を対象に調査が行われた、とか、7月下旬から少なくとも4社に課徴金に関する調査の依頼が来たことが確認できた、などと、かなり具体的に突っ込んだ内容の報道になっています。

 消費者庁からの正式な情報があるわけではありませんので、詳細はわかりませんが、通販新聞の報道の通りだとすると、景品表示法だけではなく、薬機法違反の問題も生じてきます。薬機法違反の表示の場合は、刑事罰が科せられることもありますので、注意が必要です。つい先日も、水素水をガンに効くと宣伝したスーパーと担当社員が警視庁により書類送検されています( これについての当ブログ記事 )。

 今回、対象となっている商品は、単なる健康食品ではなくて、機能性表示食品に関するものです。健康食品などの商品広告・表示に関して、消費者庁の対応は厳しくなっており、特定保健用食品(トクホ)機能性表示食品の広告・表示についても監視を強めていることは、以前にも当ブログで触れています。

「日本サプリメントに対する措置命令及びトクホ等に関する景表法の取組要請(消費者庁)」 (2017/2/14)

 健康食品や美容サービスなどに携わる事業者は、これまで皆が同じような宣伝をやってきたから、という安易な考えは改めないと、単なる表示差止の措置命令だけではなく、高額の課徴金の支払いを消費者庁から命じられるリスクが高くなってきていることを肝に銘じて対策を取っておく必要があります(これまでにも繰り返し言ってきたことですけれども)。これは、今回のようなOEM供給製品の供給元も供給先も同じことです。

 なお、機能性表示食品について詳しく知りたい方は、この消費者庁の資料等をご参考にしてください。

 → 「機能性表示食品制度に関する情報」(消費者庁サイト)

【追記】(8/8)

 8月1日付で、葛の花イソフラボンの商品に関して、日本第一製薬が、「【葛の花イソフラボンスリム】広告表現に関するお詫びとお知らせ」を自社サイトに掲載していました。内容抜粋は以下の通りです。

 平素より日本第一製薬株式会社に格別のご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。
 弊社で販売しております機能性表示食品『お腹の脂肪に 葛の花イソフラボンスリム』のWEBページ等の広告において、葛の花由来イソフラボンには「肥満気味な方の、体重やお腹の脂肪(内臓脂肪と皮下脂肪)やウエスト周囲径を減らすのを助ける」機能がある機能性表示食品でありながら、あたかも本商品を摂取するだけで、どんな条件下でも誰もが容易に痩身効果を得られるとお客様に過度の期待を抱かせる表示を行っておりました。
このため、弊社全ての広告を見直し、逸脱した表現を速やかに削除、変更する対応を進めております。広告表現が不適切でありましたことを深くお詫び申し上げます。

【追記】(11/7)

11月7日に、本件で消費者庁より措置命令が出されましたので、別記事を追加いたしました。

 → 「葛の花イソフラボン」を含む機能性表示食品に対する措置命令(不当表示)」 (11/7)

2017年7月26日 (水)

美容クリニックの院長氏が起こした名誉毀損請求訴訟

 美容クリニックの有名院長氏が、国会議員と民進党を被告として名誉毀損の民事訴訟を起こしたようで、先日第1回口頭弁論期日があったことが報じられています。その報道によれば、第1回期日に出頭された院長氏がいろいろとおっしゃっているようですが、訴訟手続を知っていれば、いろいろと疑問なことを話しておられたらしいです。

 この点について、弁護士さんがブログで詳細に書いておられますので、ご紹介します。要するに、民事訴訟の第1回口頭弁論期日では当たり前のことがあった、というだけのことになります。

 もっとも、院長氏はそのようなことはわかった上でおっしゃってるのかも知れませんけども。

 → 弁護士三浦義隆のブログ
     「高須院長の訴訟を題材に民事訴訟手続の流れを解説しよう

 なお、この関連で、テレビ番組で、浅野元宮城県知事が、「名誉毀損は事実と違うことを提示して名誉毀損するっていうんだけど」として、院長氏を批判したらしいですが、民事にせよ、刑事にせよ、名誉毀損というのは、真実でないことを言って名誉を毀損する場合だけではなくて、それが真実であっても成立します。たとえば、私に、殺人の前科があったとして、そのことは回りの人は知らないのに、「あいつは人殺しだ。」と言いふらしたような場合には、内容は真実ではありますが、名誉毀損が成立する可能性は十分にあります(もっとも、真実であれば、責任が問われない場合もあるとか、他にいろいろと例外的なことは法的にはあるのですが、複雑になるので、ここでは全て省略します。)。

【追記】(7/27)

弁護士ドットコムにこんな記事が出てました。
 → 「高須院長「民進党は何も反論しなかった」は誤解?」 

2017年7月16日 (日)

「ラグビー トップリーグの移籍制限 公正取引委員会が調査」との報道(独禁法)

 先日ご紹介した「私の愛すべき依頼者たち」(野島梨恵弁護士著、LABO刊)が類書としては良く売れているようです。著者とは直接面識はないのですが、編集者さんが大変喜んでおられました。紹介した私もなんとなく嬉しいです(笑)


 さて、芸能人の芸能プロとの契約についてのNHKの報道に関連して、当ブログにて「芸能プロダクションと芸能人との契約について公取委が調査との報道」(7/8)と  「芸能プロ契約問題と「人材と競争政策に関する検討会」(公取委)」 (7/13)という2記事を投稿しましたが、昨日(7/15)は、またNHKが、「ラグビー トップリーグの移籍制限 公正取引委員会が調査」というニュースを流していました。
 ラグビーのトップリーグというのは、日本の実業団ラグビーの最高位のリーグで、サッカーでいえばJ1にあたるわけですが、ラグビーでは選手はプロとアマが混在しています。今回の報道は、トップリーグ規約に、旧所属チームの承諾がない場合にトップリーグのチームに移籍した選手は1年間公式試合に出場できない、とされている点が独占禁止法に違反しないか、などにつき、トップリーグを主催する日本ラグビー協会に聴き取り調査などを行う、というものです。トップリーグ規約93条(選手の移籍)ですね。( 「ジャパンラグビートップリーグ規約 5.選手」 余談ですが、ここの93条2項に、「会社更正」というのがありますが、正しくは「会社更生」ですね。)

 そして、こういった問題も先日紹介しました公取委競争政策研究センター「人材と競争政策に関する検討会」(座長 泉水文雄神戸大学教授)で検討される、ということで、芸能人の契約と同じ場で検討されることになりました。

 ただ、このラグビーの規約は、所属チームとラグビー選手の契約自体の問題ではなくて、トップリーグを主催する日本ラグビー協会が決定したトップリーグ全体についての規約ですので、事業者団体の行為に関する独占禁止法8条の問題ですね。

 (なので、ちょっとずれますが、)スポーツ選手と所属チームとの契約に関しては、プロ野球の契約関係で、従前、請負契約ではなくて雇用契約であり、労働契約については独占禁止法の適用はないから云々、という見解がとられていました(参考: 公取委事務総長定例会見記録 平成24年3月28日 同年4月4日 いずれも質疑応答を参照してください。)。しかし、そんなことはないだろうという意見も強く、例えば、今回の上記検討会の座長である泉水文雄教授のご見解植村幸也弁護士のご見解も同様です。ここらは、芸能人の契約問題とも関係してくるかもしれませんね。今回のトップリーグの問題についていえば、事業者団体が所属企業の従業員の雇用契約内容を制限するようなものですので、独占禁止法が適用されない、と解する必要は全くないと思います。

【追記】(7/18)

トップリーグのチェアマン談話が出されました。
http://www.top-league.jp/2017/07/18/news0718/

2017年7月13日 (木)

芸能プロ契約問題と「人材と競争政策に関する検討会」(公取委)

 先日、NHKの報道に関して、 「芸能プロダクションと芸能人との契約について公取委が調査との報道」 (2017/7/ 8)を書きましたが、今日は朝日新聞が関連記事を報じています。

 これは、芸能タレントやスポーツ選手、コンピュータープログラマーなど、特殊な技能を持つ人と企業などとの契約について、公正取引委員会が有識者会議を来月から開催し、早ければ今年度中に報告書を公表する、としているものです。

 おそらく、公正取引委員会競争政策研究センター(CPRC)が昨日(7/12)公表した 「「人材と競争政策に関する検討会」の開催について」「人材と競争政策に関する検討会」のことかと思われます。

 公表内容では、特に、芸能、スポーツなどに絞ってはいませんが、アメリカや欧州でのスポーツ選手の移籍問題や、昭和38年の我が国の映画会社の事案などに触れており、オブザーバーにスポーツ庁も入っていますので、芸能、スポーツ関係も視野に入れていることは間違いないようです。

 検討会のメンバーは以下の通りです。

   荒木 尚志 東京大学大学院法学政治学研究科教授
   大橋 弘
    東京大学大学院経済学研究科教授
              (
競争政策研究センター主任研究官)
   風神 佐知子
 中京大学経済学部准教授
   川井 圭司
 同志社大学政策学部教授
   神林 龍
   一橋大学経済研究所教授
座長 泉水 文雄
 神戸大学大学院法学研究科教授
   高橋 俊介
 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授
   多田 敏明
 日比谷総合法律事務所 弁護士
   土田 和博
 早稲田大学法学学術院教授
   中窪 裕也
 一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授
   中村 天江
      リクルートワークス研究所労働政策センター長
   和久井 理子
 大阪市立大学大学院法学研究科特任教授
              (
競争政策研究センター主任研究官)

(オブザーバー)
文部科学省(スポーツ庁) 厚生労働省 経済産業省
             [五十音順,敬称略,役職は平成29年7月12日現在]

 いつもいろいろとお世話になってます神戸大学の泉水文雄教授が座長となっておられますね。今後の検討状況を注目したいです。

【追記】(7/18)

 「人材と競争政策に関する検討会」について、公取委事務総長定例会見でも触れられていたようですので、追記しておきます。
 → 事務総長会見記録(平成29年7月12日) 

2017年5月10日 (水)

米国FTCがSNSによる女優らのステマ投稿に警告

「ステマはだめ!」、InstagramインフルエンサーにFTCが警告 (ITpro)

 これは、先月4月20日の記事ですが、この中では誰に警告を送ったのかは公開されていない、とされています。

 ところが、このほどロイターが送付先の資料を入手したとして報じています。

米規制当局が女優やモデルに注意喚起、SNSでの商品推奨に (ロイター)

 これによれば、「米女優のソフィア・ベルガラ、スーパーモデルのハイディ・クルム、元プロバスケットボール選手のアレン・アイバーソンなど35人以上の著名人や40社を超える企業に対し3月に書簡を送付した」とのことですね。

 FTCの警告は、FTCの推奨・体験談(エンドースメント)に関する広告ガイドラインによるものです。当ブログでもステマの問題は何度も取り上げていますし、このFTCガイドラインについても以前書きました(ガイドラインは2015年5月に改訂されています。)。

 「ブログのステマ記事と米FTCガイドライン」 (2012/12/22)

 また、FTCは、このエンドースメントに関する広告ガイドラインとは別に、新たに いわゆるネイティブ広告(広告という形をとらない広告)についてのガイドラインを2015年12月に公表しています。

 なお、これまでのエンドースメントに関する広告ガイドラインによる勧告の事案(FTCとの和解で終了)としては、デパートのロード&テイラーに関するものがあります。

 「「広告であることを明かさないで消費者をだました」と、米連邦取引委員会が老舗デパートを罰する」 (田中善一郎)

2017年2月23日 (木)

ステマ規制に関する日弁連意見書と「昆虫表紙」マーケティング

 日本弁護士連合会(日弁連)が2月16日に「ステルスマーケティングの規制に関する意見書」を出しています。

  → 日弁連サイト (報告書本文はこのページからリンクされたPDFへ)

 詳しくは報告書を読んでいただきたいのですが、意見の趣旨は、次の通りです。

「不当景品類及び不当表示防止法第5条第3号に基づく内閣総理大臣の指定に、下記の指定を追加すべきである。

               記

 商品又は役務を推奨する表示であって次のいずれかに該当するもの   

  1. 事業者が自ら表示しているにもかかわらず,第三者が表示しているかのように誤認させるもの
  2.    
  3. 事業者が第三者をして表示を行わせるに当たり、金銭の支払その他の経済的利益を提供しているにもかかわらず、その事実を表示しないもの。      
    ただし、表示の内容又は態様からみて金銭の支払その他の経済的利益が提供されていることが明らかな場合を除く。」

 つまり、いわゆるステルスマーケティング(ステマ)の広告・表示について、景品表示法が定める不当表示のうち、「優良誤認表示」「有利誤認表示」に並んで規定されている5条3号の「告示」に基づく不当表示に追加せよ、というものです。

 この5条3号に基づく「告示」は現在、

  商品の原産国に関する不当な表示
  無果汁の清涼飲料水等についての表示
  消費者信用の融資費用に関する不当な表示
  おとり広告に関する表示
  不動産のおとり広告に関する表示
  有料老人ホームに関する不当な表示
 

の6つが出されており、これにステマに関する告示を追加しようということですね。

 ステマについては、このブログでは何度も取り上げておりますが、日弁連が具体的な規制として、景品表示法改正による規制の意見を出したことは有意義であろうと思います。


 ステマに少し関連して、もうひとつ面白い記事を見つけました。dot.という朝日新聞系のサイトに掲載された「「ジャポニカから虫が消えた」騒動は“つくられた”ものだった」という記事です。 

 一昨年末に、「ジャポニカ学習帳」の表紙から、昆虫の写真が消え、花の写真になっていた、と新聞で報じられ、その理由のひとつが「昆虫は気持ち悪いというクレームが増えたため」だった、ということで、主にネット上で論議がわき起こったものです。その後、この昆虫版は復刻され、すぐに売り切れた、ということでした。そして、今回の記事は、これにはコンサルタントによる仕掛けがあった、と紹介されています。

 昆虫の表紙がその2年ほど前に廃止されていたのは間違いないようですが、これを聞いたコンサルタントのアイデアで、社長に取材に来た新聞記者にこの昆虫の表紙の話をして、それが記事になり、目論見が当たって広く議論となって、マーケティングとしてうまくいった、ということです。

 これは、ステマとはいえないですし、虚偽の話をしたわけでもなく、直接、法的にどうこうということではないと思います。しかし、いわゆる「炎上マーケティング」的な宣伝活動であり、こういったマーケティングに不快感を持つ消費者も多いのではないかと思います。私は、このジャポニカ学習帳の件は記事で読む限りでは、特に問題があるとまでは考えませんけれども、同様の手法で、消費者が誤認するようなマーケティングが行われる可能性はあり、注意が必要ではないか、と思いますし、事業者も広告、マーケティングについてのコンプライアンスのチェックは十分に行ってほしいと思います。

 もっとも以前からのファッション界などが流行やブームを作り出す、というのも同じようなものかもしれませんが。

2016年11月15日 (火)

比嘉照夫琉大名誉教授が朝日新聞を訴えた裁判の控訴審判決(控訴棄却)

 ブログ更新ができなくてすみません。 

 この土日は、明治大学中野キャンパスでの情報ネットワーク法学会研究大会に参加して、私自身も「位置情報サービスとソーシャルゲームの法的問題」などという分科会で登壇してまいりました。要するにポケモンGOです(苦笑)

  そして、昨日月曜の夜は、京都産業大学の消費者法研究会と消費者ネット関西の共同企画で、 「『健康食品』ウソ・ホント」(講談社ブルーバックス)の著者としても有名な高橋久仁子先生の講演会に参加してきました。ハードスケジュールでしたが、どちらも大変勉強になりました。


 さて、比嘉照夫琉球大学名誉教授が、「EM菌」に関する朝日新聞の記事に対して、著作権侵害であるうえ、不法行為に当たるとして、損害賠償や謝罪広告を求めていた裁判の一審東京地裁判決(請求棄却)については、当ブログで紹介しました。

 → 「いわゆるEM菌に関する記事が著作権侵害等に当たるとして朝日新聞を訴えた裁判の判決」(2016/5/11)

  この判決に対して、比嘉教授が控訴していたわけですが、それからちょうど半年経過した先日(11/10)に東京高裁で控訴審判決が出ました。結果は、比嘉教授の控訴は認められず、控訴棄却となりました。 

 → 知的財産高等裁判所平成28年11月10日判決

  この知財高裁は、要するに、著作権に関しては、比嘉教授のブログ記事と朝日新聞記事とが共通するのは、「重力波と想定される」、「波動による(もの)」との部分であるが、これは著作物性は認められないので、著作権(複製権、同一性保持権、著作者人格権)侵害とはならない、という点と、比嘉教授の「朝日新聞が比嘉教授を取材せずに記事を掲載したのは不法行為」という主張に対して、「朝日新聞記者行動基準」に抵触しうる行為であり、慎重な配慮に欠ける、とは認めたものの、それは社内の自律的処理の対象となることは別として、「その態様,記事の内容及び趣旨,控訴人の学者としての社会的地位,本件記事1及び2の掲載により負うこととなった控訴人の負担等を総合考慮すると,本件記事1及び2の掲載行為により控訴人の被った精神的苦痛が社会通念上受忍すべき限度を超えるとまではいい難く,これを不法行為法上違法なものであるということはできない。」としました。 

 基本的には、一審東京地裁判決と同様の判断を下したものといえると思います。

2016年5月11日 (水)

いわゆるEM菌に関する記事が著作権侵害等に当たるとして朝日新聞を訴えた裁判の判決

 琉球大学名誉教授であり、いわゆるEM菌の研究者である比嘉照夫教授(原告)が、自分の執筆したブログの一部を朝日新聞が記事に引用したことが、比嘉教授の著作権(複製権、同一性保持権)を侵害し、また、自分に取材せずに記事を掲載したことが不法行為に当たるとして、朝日新聞を被告として、損害賠償及び謝罪広告を求めていた裁判の判決が平成28年4月28日に東京地裁民事46部(知的財産部)でありました。   
 判決では、原告の請求が棄却されています。   
 この裁判については、訴訟提起時にサンケイ新聞が記事にしていましたが、今回の判決は、朝日もサンケイも他の報道機関も報じていないようですね。

  → 東京地裁平成28年4月28日判決(裁判所サイト)

 事案は以下の通り。   
 朝日新聞が、朝日新聞青森版に、平成24年7月3日付けで「EM菌効果『疑問』検証せぬまま授業」と題する記事を、同月11日付けで「科学的効果疑問のEM菌3町が町民に奨励」と題する記事をそれぞれ掲載した。

 原告のブログには、「私はEMの本質的な効果は,B先生が確認した重力波と想定される縦波の波動によるものと考えています。」と記載していた。    
朝日新聞の上記記事には、「EM菌の効果について,開発者のA・琉球大名誉教授は「重力波と想定される波動によるもの」と主張する。」「開発者のA・琉球大名誉教授は,効果は「重力波と想定される波動による」と説明する。」との記載がある。

 これらの記事は原告を取材せずに作成されたものであるが、朝日新聞の「朝日新聞記者行動基準」では、「記事で批判の対象とする可能性がある当事者に対しては,極力,直接会って取材する」ものとされている。

 そして、上記の原告ブログ記事が著作物であり、朝日の2記事が、この著作物の複製権又は同一性保持権を侵害するものである、というのが、原告の第1の主張です。

 朝日新聞は、このようなブログ記事の記載には著作物性は認められないし、仮にそうではないとしても、事件報道において,当該事件を構成するものを、報道の目的上正当な範囲において複製し、当該事件報道に伴って利用したものであるので、著作権法41条により許された利用に当たる、と反論しました。

 これについて、裁判所は、

「著作権法において保護の対象となるのは思想又は感情を創作的に表現したものであり(同法2条1項1号参照)、思想や感情そのものではない。本件において本件原告記載と本件被告記載1及び2が表現上共通するのは「重力波と想定される」「波動による(もの)」との部分のみであるが、この部分はEMの効果に関する原告の学術的見解を簡潔に示したものであり,原告の思想そのものということができるから,著作権法において保護の対象となる著作物に当たらない」 

として、著作物性を否定しました。

 原告の主張の第2は、朝日新聞記者が原告に取材することなく記事を掲載したことが不法行為(民709条)に該当するというものです。

 原告の主張によると、本件2記事における原告のコメント部分はかぎ括弧が用いられているが、引用元や出典が明示されていないから、一般読者は記事が原告を取材して得たコメントを掲載した記事として読むことになるが、実際には朝日新聞は原告を取材せずに掲載しており、記事で批判の対象となっている原告を取材しなかったことは、「朝日新聞記者行動基準」に定められた取材方法に違反する、これにより、自らの意思に反してコメントをねつ造されない人格的利益が侵害されており、不法行為に当たる、としています。

 これについて、裁判所は、かぎ括弧内のコメントが、一般読者に取材による記事として読まれる可能性があったというべきであり、「記者行動基準」の規定に抵触しかねない行為であったといえるとしたうえで、

「上記基準は記者が自らの行動を判断する際の指針として被告社内で定められたものであり、これに反したとしても直ちに第三者との関係で不法行為としての違法性を帯びるものでない。」とし、「公にされていた本件原告記事を参考にして執筆されたものであって、その内容はEMの本質的効果に関する原告の見解に反するものではない」、そうすると、2記事によって「原告の見解が誤って報道されたとは認められず、したがって、これにより原告が実質的な損害を被ったとみることもできない」ので、記者の「行為は不適切であったということができるとしても、不法行為と評価すべき違法性があったとはいえないと判断するのが相当である。」 

として、不法行為の成立も否定しました。

 著作物性を否定した点も不法行為の成立を否定した点も妥当な判決だと思います。

2016年3月25日 (金)

景表法違反措置命令を受けた通販会社に対する製造メーカーの法的責任

 本年3月23日、消費者庁は、有限会社ペルシャンオート(神奈川県厚木市)に対し、同社の販売する中古車の商品説明に景品表示法の規定する不当表示(優良誤認)があったとして措置命令を行っています。

 → 消費者庁公表資料(PDF)

 これは、中古車17台について、同社がヤフオク!に出品した際に、商品説明の「修復歴」欄に「なし」と記載することにより、あたかも、当該中古自動車の車体の骨格部位に修復歴がないかのように示す表示をしていましたが、実際には、同社が別のオートオークションに出品した際の出品票には、車体の骨格部位に損傷があるもの又は修復されているものを示す記号が記載された修復歴があるものであった、というものです。

 中古車販売についての優良誤認表示は、走行キロの偽装のケースも多いですが、これは修復歴隠しですね。 


 さて、ここのところ、広告表示関連の記事では見逃せない通販新聞ですが、今日はこのようなニュースを掲載していました。 

 → ユーコー 措置命令巡りメーカー提訴も、「表示主体」巡る判断で企業間対立へ

 当ブログでの紹介はしなかったのですが、今年1月26日、消費者庁が、通信販売業者の株式会社ユーコー(東京都豊島区)に対して、その販売する「PM2.5対応プラズマ空気清浄機」について、同社が新聞広告において、「PM2.5、花粉、ウイルス、ダニ、カビ対応」などと効果を示した上で「約21畳まで対応のハイパワーで広いリビングにもこれ1台でOK!」などと記載して、21畳の広さでも効果があるかのように宣伝した行為を、優良誤認表示として措置命令を出していました。

 → 消費者庁公表資料(PDF)

 上記の通販新聞の記事はこの事案に関するもので、景品表示法での「表示主体」の問題を取り上げていますが、本件は、表示主体の判断の問題よりは、通販業者が不当表示の責任を問われた場合のメーカーの法的責任という観点の問題かと思います。かなり形は違いますが、シャンピニオンエキス事件と同様の問題ともいえなくもありませんね。

 措置命令を受けたユーコーが、当該空気清浄機のメーカーである株式会社丸隆(東京都渋谷区)に対して訴訟提起を検討している、というもので、記事では明確ではありませんが、おそらくは、損害賠償請求訴訟でしょうね。
 記事では、「ユーコーのケースは、制度導入前であり、金額も少額であるため課徴金の対象にはならない。だが、制度が始まれば、事業者間で対立に発展するリスクはより高まる。」と結んでいますが、その通りで、措置命令を受けただけでも、このケースの場合は返品対応や信用毀損などの企業損失を受けますし、課徴金の対象ともなれば、それに加えて多額の課徴金の負担という問題も出てきます。ですので、措置命令や課徴金納付命令を受けた表示主体事業者が、不当表示の元となった、その製造事業者や原材料製造販売事業者に対して、損害賠償請求を起こすというような事例は今後増えるのかもしれません。

続きを読む "景表法違反措置命令を受けた通販会社に対する製造メーカーの法的責任" »

2016年2月27日 (土)

「忘れられる権利」を明記した仮処分認可決定(さいたま地裁平成27年12月22日)

 最近では、「忘れられる権利」という言葉は、情報法関係者以外の一般の場でも用いられるようになってきました。ただし、「忘れられる権利」といっても、必ずしも定義が一定しているわけではありません。EUでの議論ではかなり広範な権利として検討されているようですが、日本では、一般的には、まだ議論が始まったばかりというところかと思います。

 しかし、最近は、こういった過去の事柄に関する事項の削除を求める裁判所への申立(訴訟や仮処分)は日本でもいくつか出てきています。この場合、インターネット上の過去の犯罪歴などの情報元の記事等自体の削除を求める場合、GoogleYahoo!などの検索サイトにおいて検索結果に出ないよう削除を求める場合、同じく検索サイトの検索サジェストの候補に出てこないように求める、など事案に応じて請求の内容、相手方は違っています。

 そして、こういった事案の裁判では、既に、削除の申立が認められている例もあるのですが、これまで裁判所が「忘れられる権利」という言葉で権利を認めたものはなかったようです。

 ところが、昨年(平成27年)12月22日のさいたま地裁での仮処分事件に関する決定で、「忘れられる権利」があるとの判断が示されたことが、本日報道されています。
 この決定は、神田知宏弁護士公式サイト(後掲)によれば、平成27年6月25日のさいたま地裁決定に対する保全異議事件の認可決定とのことです。つまり、最初の仮処分決定で、申立人の削除請求が認められたのに対して、Google側が不服を申し立てた裁判で、さいたま地裁が再び申立人の請求内容を認めた、という形になります(認可決定)。なお、この事案は、Googleの検索結果から、自身の逮捕に関する記事の削除を求めた、というものですね。

 この認可決定の中で裁判所は、「一度は逮捕歴を報道され社会に知られてしまった犯罪者といえども,人格権として私生活を尊重されるべき権利を有し,更生を妨げられない利益を有するのであるから,犯罪の性質にもよるが,ある程度の期間が経過した後は過去の犯罪を社会から「忘れられる権利」を有するというべきである。」としてたようです(神田弁護士公式サイトによる)。

 なお、神田弁護士は既にTwitterで昨年12月24日にこの決定を報告され、今年1月2日の公式サイト記事で本決定について解説をされています。なので、マスコミ報道が今頃になってなされているのはなぜかな、とは思いますが。

 → 神田知宏公式サイト 「地裁決定が「忘れられる権利」に言及した理由の考察」

【追記】(2/29)

 報道によれば、上記認可決定に対して、Google側は不服を申し立て(保全抗告でしょうね。)、現在、東京高裁で審理中とのことです。高裁がどういう判断を示すか注目ですね。

より以前の記事一覧