2019年10月17日 (木)

即位の日の休日や来年の祝日のお話

 さて、来週22日は、天皇即位の日ですね。どうやら、台風による被害を考慮して、祝賀パレードは延期になりそうですが、即位自体は予定通りということになります。

 既にご承知のことと思いますが、この22日は休日となっています。カレンダーや手帳によっては、対応していなくて、特に記載のされていないものも多いようですので(私の手帳もそうです。)、お気を付け下さい。

 このあたりを法律的に見ていきますと、「天皇の即位の日及び即位礼正殿の儀の行われる日を休日とする法律」が、昨年12月に公布、施行され、即位の日及び即位礼正殿の儀が行われる日が休日となりました。

 この法律の本体はわずか1条だけで、「天皇の即位の日及び即位礼正殿の儀の行われる日は、休日とする。」というものです(法律のタイトルそのままですね。)。これに附則がいくつか付いていまして、その附則2条2項は、

「本則及び前項の規定により休日となる日は、他の法令(国民の祝日に関する法律を除く。 )の規定の適用(略)については、同法に規定する休日とする。」

となっていて、これにより、この日は、国民の祝日扱いとなります。

 ということは、我々弁護士の仕事に関係が深い、上訴(控訴、上告など)などの訴訟手続の期間の計算についても、国民の祝日扱いとなります。

 つまり、民事訴訟法95条3項「期間の末日が日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律(略)に規定する休日、1月2日、1月3日又は12月29日から12月31日までの日に当たるときは、期間は、その翌日に満了する。」でいう「国民の祝日に関する法律に規定する休日」に該当するわけですね。

 なお、この条文については、以前、当ブログに書きましたので、そちらもご覧下さい。10年以上前になりますが、今でも同じです。

  → 「控訴・上告期間と年末の判決」 (2008/12/23)

 さて、ついでに、祝日に関する話をご紹介しますと、

 まず、来年から、「体育の日」の名称が、「スポーツの日」に変更されます。

 これは、上にも出てきました「国民の祝日に関する法律」が改正され(施行は令和2年1月1日)、従前の「体育の日」の項が、

「スポーツの日 10月の第2月曜日 スポーツを楽しみ、他者を尊重する精神を培うとともに、健康で活力ある社会の実現を願う。」

と書き換えられたためです。

 さらに、本来「スポーツの日」は、ここにあるように10月第2月曜なんですが、来年に限っては、7月24日になります。

 そして、これも来年に限り、「海の日」(本来は、7月第3月曜なので、来年は7月20日になるはずのもの。)も7月23日とされました。

 これは、7月24日東京オリンピックの開会式となる関係で、土日も併せて、7月23日~26日まで4連休にしたものです。

 法律的には、「平成32年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法」を改正して、新たに、「第5章 国民の祝日に関する法律の特例」を加え、ここに、

第29条 平成32年の国民の祝日(国民の祝日に関する法律(略)第1条に規定する国民の祝日をいう。)に関する同法の規定の適用については、同法第2条海の日の項中「7月の第3月曜日」とあるのは「7月23日」と、同条山の日の項中「8月11日」とあるのは「8月10日」と、同条体育の日の項中「10月の第2月曜日」とあるのは「7月24日」とする。」(令和になる前にできた法律ですので、平成32年となります。)

という規定を置きました。なお、山の日が移動する8月10日は、閉会式の翌日ですね。

 なお、天皇誕生日も12月23日(本年から)から2月23日(来年は日曜なので翌日が振替休日になります。)に移りますね。

 来年のカレンダーや手帳では既に対応済みとは思いますが、お気を付け下さい。

2019年10月 4日 (金)

エディオン事件の公取委審決(独禁法)

 9月末で、これまで使っていたブログの背景デザインが使えなくなったようで変わってしまいました。他のに設定しようとしたんですが、まだうまくいきませんね(反映するのに時間がかかってるのかな。)。おいおい対応していこうと思います。こっちのほうがシンプルでいいかもしれませんね。
【追記】変更できました。しばらくはこれで行きます。


 さて、ラグビーW杯の盛り上がりと関西電力の騒動の中、本日は、独占禁止法優越的地位の濫用に関する措置命令課徴金納付命令を家電量販大手のエディオンが争っていた件について、公正取引委員会の審決が出ました。結論は、排除措置命令を変更、課徴金納付命令の一部を取り消す、というものです。

 → 公取委報道発表資料

 審決書の本文(PDF)は見てませんが、優越的地位濫用の対象とされていた取引相手127社のうち、35社に対しては、優越性が認められないとして、また、契約に定められていた割戻金の一種については、課徴金の算定の基準となる購入額から控除すべきとした、ものです。その結果、課徴金については、約40億円から約30億円へと、約10億円が減額されています。

2019年9月18日 (水)

「デジタル時代の競争政策」(杉本和行・公取委委員長)を読んで

 最近、公正取引委員会が積極的な発言・活動を行っているように思えます。

 GAFAなど国際的な巨大プラットフォーム事業者への対応はもちろんのこと、昨年の「人材と競争政策に関する検討会」報告書以降の芸能人、スポーツ選手を含むフリーランスを対象とする独占禁止法適用や、コンビニ24時間営業問題に関連した一連の動き、また、現在、意見募集中の「デジタル・プラットフォーマーと個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方(案)」の公表など、これまで、あまり独占禁止法の対象とみられなかった分野(公正取引委員会の人は以前から外してません、と言われますが)に踏み込んできた感があります。

 このような中で、杉本和行公正取引委員会委員長が、 「デジタル時代の競争政策」(日本経済新聞出版社)を出版されました。

 公正取引委員会のトップの著書ではありますが、本書は、上記のような公正取引委員会の現代社会における役割について、わかりやすく書かれています。

 本書は3章の構成になっていて、第1章では、現在までの競争政策の動きが書かれており、第2章では、現在の独占禁止法行政(競争政策)について基本的な規制内容の平易な解説付で書かれていますので、独占禁止法、競争政策について、あまり知識のない方が独占禁止法の現在を知るのにも適当ではないか、と思います。そして、それらを踏まえて、第3章では、本書のタイトル「デジタル時代の競争政策」について、冒頭に掲げたような、経済のグローバル化、デジタル・プラットフォーム、フリーランス人材問題、独占禁止法改正などの諸問題の解説がなされています。

 一般向けの内容ではありますが、現在の諸問題に広く触れられているうえに、企業結合問題や、アメリカでの競争法違反への刑事事案など、あまり独占禁止法の教科書や新聞に大きく扱われていない部分にも比較的触れられているなど、一応独占禁止法を理解している法律家にとっても興味深く読めるのではないか、と思います。

【追記】(2019/9/19)

昨日午後に当記事をアップしたのですが、同じ頃に、杉本委員長が日本記者クラブで記者会見をされていて、その際に、「フェイクニュースやヘイトスピーチ、犯罪をあおる情報にさらされた消費者には不利益が生じる」と指摘して、競争政策の観点から、適切なニュースが提供される競争環境を最優先に整えるべきだとの問題意識を示した、と報道されています。短い新聞記事で、前後の発言や質問がわからないため、現段階でのコメントは控えますが、これも新しい動きのひとつになるかもしれませんね。
フェイクニュースなどで興味を引いてサイトに人を集めて、事業や広告で収益を上げるというような場合は、確かに競争上も問題になりますね。消費者を含めた取引先を騙して、というような不当な事業活動は(ネット上に限らず)、公正取引委員会も積極的に、例えば独占禁止法「欺まん的顧客誘引」の規制を活用するなどして、取り締まってほしいところです。

2019年7月17日 (水)

元SMAPメンバーの出演への圧力行為についての公取委の注意(独禁法)

 今夜の各社の報道によると、「SMAP」の元メンバーの3名に関して、ジャニーズ事務所が民放テレビ局などに対して、独立した3人を出演させないよう圧力をかけていた疑いがあるということで、公正取引委員会独占禁止法違反につながるおそれがあるとして、本日までにジャニーズ事務所を注意した、とのことです。

 この公正取引委員会「注意」というのは、独占禁止法違反行為に対する正式処分である排除措置命令とは異なり、法的な処置ではないため、具体的な中身が公表されないと思われますし、また、日付もはっきりしませんので、ジャニー喜多川氏の死亡の前後とかの関係もわかりませんね。

 この問題に関しては、公正取引委員会「人材と競争政策に関する検討会」(泉水文雄座長)の報告書の関連で、当ブログでも触れてきました。

 → 「人材と競争政策に関する検討会」(公取委)報告書の公表」(2018/2/15)
 → 「芸能プロ契約問題と「人材と競争政策に関する検討会」(公取委)」(2017/7/13)

 要するに移籍に関する制限の問題なんですが、この問題は「SMAP」問題に限らない問題です。芸能界では、能年玲奈(のん)さんのケースもそうですが、スポーツ界でも、ラグビーや陸上競技などでも対応が迫られたところであります。そして、芸能界に関しては、昨今の吉本興業の「闇営業」問題に関して、芸人と事務所との不明瞭な契約関係にもかかわってくる問題ですので、今回の注意で終わりではなく、今後も注視していきたいところです。

 そして、今回は、報道機関であるマスコミ自身も当事者の事案ですので、マスコミの自浄作用として、この問題を明らかにして報じていただきたいところですね。

 また、続報があれば、ブログに書きたいと思います。

2018年12月20日 (木)

実業団陸上の移籍禁止規程と独占禁止法

 本日、NHKが、日本実業団陸上競技連合に対して、公正取引委員会が、独占禁止法違反のおそれがあるとして調査を始めた、と報じています。

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 日本実業団陸上競技連合の規程では、所属チームの承諾なく別チームに移籍した選手は無期限で大会に出場できないとされているようで、この規程が問題とされています。

 このようなスポーツ選手と独占禁止法の問題が「人材と競争政策に関する検討会」報告書において検討されていることについては、当ブログで何回かご紹介しているところです。

 → 「人材と競争政策に関する検討会」(公取委)報告書の公表 (2018/2/15)

 → 「ラグビー トップリーグの移籍制限 公正取引委員会が調査」との報道(独禁法)
                          (2017/7/16)

 同様の移籍制限のルールは他競技にも以前からあり、上記の公正取引委員会の動きの中で、既にラグビーのトップリーグやバレーボールのVリーグなどは規程を廃止しています。こういった展開は、時代の流れというコメントが報道の中にあり、私もその通りだと思います。ただし、最近急に出始めた問題かというと、そうでもないようで、同じく実業団陸上に関して20年前のこんな記事を見つけました。

「監督・コーチの解任で揺れる ワコール陸上部 実業団規定 問題点浮き彫り」1998/9/21 京都新聞)

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 ここで、既に、独占禁止法違反の問題が指摘されたうえで、「制定当時と現在ではスポーツをめぐる環境は大きく変化している。」、「日本のスポーツ界全体が、選手側の権利も考慮した規程や規則への改変を迫られているのではないか。」と結ばれています。なお、この事案は、その後、和解にて終了したようです。

続きを読む "実業団陸上の移籍禁止規程と独占禁止法" »

2018年6月26日 (火)

公取委が日本ボクシング連盟に聞き取り調査との報道

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 報道によれば、元プロボクサーが五輪出場を制限されている問題について、公正取引委員会日本ボクシング連盟に対し、聞き取り調査を実施していた、とのことです。公正取引委員会の職員2人が連盟の大阪事務局を訪れて、プロの経験者による引退後のアマチュア登録を認めないという規定の改正も含めて、検討するよう促した模様です。なお、国際ボクシング協会(AIBA)はリオ五輪からプロ選手の出場を解禁したとのことで、元プロボクサーだけではなく、現役のプロボクサーの五輪出場の制限というのも問題になるかもしれませんね。

 今年2月公表の公取委「人材と競争政策に関する検討会」報告書や、公正取引委員会事務局のアンケート調査などの結果のうち、スポーツ選手に関するものについて、当ブログでも取り上げています。既にラグビートップリーグ規約のチーム移籍に関する制限条項の改定が行われたことは、ここで触れました。

 → 「「人材と競争政策に関する検討会」(公取委)報告書の公表」 (2/15)

 → スポーツ界の契約実態についてのヒアリング・アンケート結果(公取委) (2/20)

 今回の件は、移籍(独立)・転職に対する制限の一種で、優越的地位の濫用の観点からの問題が検討されるのだろうと思われます。前述の現役プロボクサーの五輪出場制限であれば、専属義務の問題ということになるかと思います。

 なお、検討会報告書では、2017年12月に欧州委員会が、国際スケート連盟(ISU)が、ISUが承認していないスピードスケート競技会に参加した選手に対し厳格なペナルティー(無期限追 放を上限とする)を課すことは競争法違反であると決定して、 違法行為を取りやめることを命じた、という事例を紹介しています。

 今回の報道に関して、デイリースポーツによれば、元プロボクサーで、世界主要4団体のチャンピオンになった高山勝成氏が、「ボクシング競技発展のためにも、アスリートに対する不当な制限は撤廃してほしい」とのコメントを発表したと報じています。

2018年4月 5日 (木)

日本相撲協会と公益財団法人

 日本相撲協会の舞鶴巡業において、土俵上で挨拶中の舞鶴市長が突然倒れたため(クモ膜下出血だったようですが)、観客の中の女性が土俵上に上がり心臓マッサージを始めたところ、協会側から女性は土俵を降りるようにアナウンスされたということが報道されています。

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 その後、協会側から、人命上の問題であり、アナウンスは不適当であったというような発表がなされたようですが、以前から、日本相撲協会は土俵上は女人禁制という伝統があるということで、女性の立ち入りを禁止してきました。森山真弓氏が官房長官時代に内閣総理大臣杯を、太田房江氏が大阪府知事時代に府知事賞を、それぞれ優勝力士に手渡すため土俵に上がることを申し入れた際にも、協会は「伝統」を理由にいずれの時も拒否をしています。

 ここのところ日本相撲協会は、モンゴル出身力士同士の暴行事件やそれに関連した貴乃花親方の処分、立行司式守伊之助のセクハラ事件など、いろいろとあまりよろしくない話題が続いているところのこの事件ですね。

 まず、土俵の女人禁制というのが「伝統」であるのか、ですが、少なくとも明治時代までは女性の相撲興行があったわけですので(もっと後までかな?)、当然ながら女性も土俵にあがっていたものです。その意味では、夫婦同姓の「伝統」と変わらないような感じですね。

 日本相撲協会は単なる民間のスポーツ団体ではなく、2014年に文部科学省により「公益財団法人」の認定を受けている団体です。そもそも、税制上の優遇措置を受けることのできる公益財団法人が営利の競技を主催すること自体が本来はおかしいと思うのですが、それは置くとしても、土俵上の女人禁制というようなルールを維持し続けるというのは、公益的活動を行うための公益財団法人の趣旨からも疑問ではないかと思います。

 実は、日本相撲協会が財団法人から公益財団法人に移行する前に、当ブログでは、関連の記事を書いています。

 → 「日本相撲協会と公益法人制度改革」 (2011/2/6)

 これは、当時、八百長問題で、大阪場所が中止になるというような大騒動の時に書いたものです。この翌年に現在の公益財団法人の認定を受けるのですが、この記事を読み返してみて、当時から何の反省もされず来たのかな、と思ってしまいました。

 文部科学省は今回厳格な対応を行うべきかと考えます。

2018年3月28日 (水)

(続) 「eスポーツと景品表示法」(白石忠志東大教授)を読んで

 法律雑誌「ジュリスト」4月号の特集が「景品表示法の現状と課題」となっていたので、早速買ってきました。

100_2 この特集は、

  • 「景品表示法の諸課題」/白石忠志

  • 「適正な表示と景品表示法」/平山賢太郎

  • 「取引先に原因のある不当表示と景品表示法」/籔内俊輔

  • 「課徴金・返金措置制度導入後の景品表示法違反事例の検討」/染谷隆明

  • 「適正な景品と景品表示法」/内田清人

  • 「eスポーツ大会における賞金提供と景品表示法」/古川昌平

  • 「消費者契約法・景品表示法における差止めの必要性」/中田邦博

の7論文で構成されています。

 どれも興味深いものですが、なかでも古川昌平弁護士のeスポーツの賞金に関する論文は、この問題に関する白石忠志東大教授の論説「eスポーツと景品表示法」をベースにしたもので、当ブログでも昨年取り上げたものですので、特に目を引きました。

 → 「「eスポーツと景品表示法」(白石忠志東大教授)を読んで」 (2017/11/27)

 ちょうど、先日(3/23)、ネットの「東洋経済オンライン」で、 「eスポーツの高額賞金、阻んでいるのは誰か~消費者庁は「景品表示法は問題なし」との見解」(岡安 学)を読んで、消費者庁も白石教授の立場を採用するところとなったのか、と思ったところでしたので、今回の特集記事はタイムリーなものとなりました。

 この問題に関心をお持ちの方には、お薦めです。

2018年2月20日 (火)

スポーツ界の契約実態についてのヒアリング・アンケート結果(公取委)

 前回(本日朝)の「芸能界の契約実態についてのヒアリング・アンケート結果(公取委)」に引き続き、公正取引委員会「人材と競争政策に関する検討会」報告書に関連して、スポーツ選手関連の調査結果をご紹介します(詳しくは、前回の記事および前々回「「人材と競争政策に関する検討会」(公取委)報告書の公表」をご覧ください。)。

 前回同様に、これらの事項は公正取引委員会が違法とか違法のおそれを認定したということではありませんので、ご注意ください。

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 なお、この報告書の公表に関連して、昨日、日本ラグビー協会が、トップリーグの移籍に関する規約改定を発表しています。前所属チームの承諾書がないと移籍選手は一定期間公式戦に出場できなかったルールを廃止し、新たにチーム、選手双方に対して接触や交渉時の期間制限、懲罰規定を設けたというもので、次のシーズンから適用されるとのことです。これに関しては、公取委が調査をしていることについて当ブログでも昨年取り上げました。

→ 「「ラグビー トップリーグの移籍制限 公正取引委員会が調査」との報道(独禁法)」
                          
(2017/7/16) 

 ヒアリングやwebアンケートで寄せられたスポーツ関係の意見等は以下のとおり。どのスポーツかの記載はありませんが、わかる人にはわかるかもしれませんね。

  •  規約において、新人等一定の立場にある選手については、報酬額の上限を設けている。

  •  規約において、選手がマネージャーに支払うマネージメント料の上限(選手が得る賞金等に乗ずる割合の上限)が決められている(ほとんどの場合に当該上限額のマネージメント料が徴収されている。)。

  •  スポーツ選手と加盟団体との契約期間について、規約上、上限が決められている。

  •  クラブチームの承諾の無い移籍の場合は、規約上、当該選手に対し、一定期間試合に出場できないなどのペナルティが課されている。また、クラブチームの中には、契約期間が満了しているにもかかわらず、育成コストの回収を念頭に、選手に対する移籍交渉を拒否するクラブもある。

  •  選手が二重契約をして、過度な試合数が組まれ、選手の身体的安全が損なわれることを避けるため、規約上、選手がクラブチームを移籍する場合は、所属元から移籍承諾書をもらい、管轄団体に提出することになっている。

  •  選手育成のインセンティブを確保するため(指導者がどんなに良い選手を育てても単に引き抜かれるだけの環境だと、選手を育てるインセンティブが失われ、競技自体の衰退を招いてしまうため)、規約上、契約期間満了後においても、一定の条件に該当する移籍の場合は、移籍先のクラブチームは移籍元のクラブチームに対し、一定額の育成費用を支払うことになっている。

  •  クラブチームと選手間の契約の安定性を図るため、規約上、正当な理由による契約解除の場合を除き、契約期間中における選手の移籍については、当該選手及び移籍先クラブチームが連帯して所属元クラブチームに対して賠償金(移籍金)を支払うことになっている。

  •  下位リーグから上位リーグに移籍する場合は、育成費のコストを補填する趣旨で、規約上、上位リーグのクラブチームから下位リーグのクラブチームに一定金額を支払うことになっている。

  •  選手育成のインセンティブとして、クラブチームに、契約期間が満了する所属選手との優先契約交渉権が認められており、当該クラブチームが契約交渉をしない意思を表明しない限り、その他のクラブチームは当該選手との契約交渉を行うことができない。

  •  選手に支払うべき報酬が、当該選手の出場する試合のチケットなどの現物で支払われることがある。

  •  スポーツ選手が試合等に出場するためには、当該スポーツの管轄団体に加盟するか、管轄団体に加盟している事務所、クラブチーム等の加盟団体に所属する必要がある。管轄団体や加盟団体に所属するスポーツ選手は、管轄団体が定める規約等に従う必要があり、これに従わなかったスポーツ選手に対しては一定のペナルティが課されることになっている。

2018年2月15日 (木)

「人材と競争政策に関する検討会」(公取委)報告書の公表

 注目されていた公正取引委員会「人材と競争政策に関する検討会」の報告書が本日公表されました。

 → 「人材と競争政策に関する検討会」報告書について (公正取引委員会サイト)

 報告書は本文が47頁となっており、上のリンク先からPDFファイルにリンクしています。   

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           (「報告書概要」 公取委サイトより)

 まだ、公表されたばかりで、読み込めてませんが、ひとまず一部を抜粋しておきます。

 まず、労働法と独占禁止法との関係については、

「・・・・1947年の独占禁止法立法時には,「人が自分の勤労を提供することは,事業ではない」として,労働者の労働は独占禁止法2条1項の「事業」に含まれないとの解釈がなされ,公正取引委員会は,これらを踏まえて独占禁止法を運用してきた。
 しかし,前記第1の1〔1~5頁〕のとおり,就労形態が多様化する中で,独占禁止法上も労働法上も解決すべき法的問題が生じてきている。さらに,近年,労働契約以外の契約形態によって役務提供を行っている者であっても,労働組合法上の「労働者」に当たると判断される事例も生じている。このように労働契約を結んでいなくとも「労働者」と判断される者が,独占禁止法上の事業者にも当たることも考えられる。
 以上のことを踏まえると,労働者は当然に独占禁止法上の事業者には当たらないと考えることは適切ではなく,今後は,問題となる行為が同法上の事業者により行われたものであるのかどうかを個々に検討する必要がある。同様に,独占禁止法上の「取引」についても,その該当の有無を,取引の類型ごとに一律に整理するのではなく,独占禁止法上禁止されている行為(後記第5〔15~22頁〕又は第6〔22~44頁〕の行為)に該当する行為が行われていると認められる場合に,その行為のなされている取引が独占禁止法上の「取引」に該当するかどうかを個々に検討することが適切である。そして,労働法と独占禁止法の双方の適用が考えられる場合,それらの適用関係について検討する必要がある。
 そもそも独占禁止法立法時に前記のとおり労働者の労働は「事業」に含まれないとの解釈が採られたのは,使用者に対して弱い立場にある労働者保護のため,憲法の規定に基づき労働組合法,労働基準法を始めとする各種の労働法制が制定されたことを踏まえたものであった。この意義自体は現在も変わらないことからすれば,独占禁止法立法時に「労働者」として主に想定されていたと考えられる伝統的な労働者,典型的には「労働基準法上の労働者」は,独占禁止法上の事業者には当たらず,そのような労働者による行為は現在においても独占禁止法の問題とはならないと考えられる。加えて,労働法制により規律されている分野については,行為主体が使用者であるか労働者・労働者団体であるかにかかわらず,原則として,独占禁止法上の問題とはならないと解することが適当と考えられる。例えば,労働組合と使用者の間の集団的労働関係における労働組合法に基づく労働組合の行為がこのような場合に当たる。使用者の行為についても同様であり,労働組合法に基づく労働組合の行為に対する同法に基づく集団的労働関係法上の使用者の行為も,原則として独占禁止法上の問題とはならないと解される。また,労働基準法,労働契約法等により規律される労働者と使用者の間の個別的労働関係における労働者(下記囲み部分参照)に対する使用者の行為(就業規則の作成を含む。)も同様である。ただし,これらの制度の趣旨を逸脱する場合等の例外的な場合には,独占禁止法の適用が考えられる。」

 そして、スポーツ選手や芸能人の契約に関する独占禁止法の適用に関しては、以下のような記載がありました。                              

「例えば,スポーツ分野においては,複数のクラブチームが共同することで初めてプロリーグという一つの事業が成立する場合があるが,そのとき,複数のクラブチームが共同して選手の移籍を制限する行為はプロリーグの魅力を高めることを通じて消費者に対して提供するサービスの水準を維持・向上させる目的から行われているとの主張がある。
 これは,人材獲得市場における競争は阻害されるものの商品・サービス市場における競争は促進され,またこれを通じて人材獲得市場における競争も促進されるという主張と考えられる。そのような移籍制限行為が当該目的の実現に不可欠であるのか,商品・サービス市場での競争促進効果(消費者利益の向上等)の程度や,それが人材獲得市場での競争阻害効果を上回るものであるか,といった点も含めて総合的に考慮した上で判断されることになる。また,目的に比べてその手段が相当か,同様の目的を達成する手段としてより競争制限的でない他の手段は存在しないのかといった内容,手段の相当性の有無も考慮の上で判断される。」          

「例えば,芸能事務所やクラブチームが特定の者と一定期間の専属契約を締結し,その者の市場における価値の創造・拡大に資する(例えば,新人芸能人や新人選手の育成)とともに,その芸能人や選手の肖像等を芸能事務所等や本人以外の第三者が利用する取引の円滑化を図る場合があるが(後記脚注86参照),そのような事情の有無も含めて考慮した上で判断される。育成費用の回収を目的とする場合の具体的な考え方は,前記第5の3〔17~20頁〕の育成費用を回収する目的である場合と同じである。
 一方,契約期間が終了しても,既存の提供先である発注者の一方的な判断により専属義務を含む役務提供に係る契約を再度締結して役務提供を継続させる行為が,芸能事務所と芸能人の間の契約において行われる場合がある。芸能事務所と芸能人の間の契約が一度終了した後も,芸能事務所と第三者の間の当該芸能人についての契約が継続していることを理由に行われる場合,その必要性の有無も含めて考慮した上で判断される。」

「役務提供者が今後事実上移籍・転職ができなくなるほどの程度である場合,その不利益の程度は相当大きい。
 また,契約期間終了後は再契約をしないとの意向を示した役務提供者に対して,それを翻意させるために,発注者が役務提供者に対して,報酬の支払遅延や業務量の抑制などの不利益な取扱いをしたり,悪評の流布等により取引先変更を妨害し再度契約を締結させたりするといった行為についても,不利益の程度がより大きくなる場合がある。」

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