« 「「バッキンガム宮殿採用」装置にダメ出し続々」(論座の記事) | トップページ | 限定承認の場合の相続財産管理人の当事者適格 »

2019年10月 6日 (日)

消費生活センター、マンション管理組合など昨日記事の補足

 昨日の記事の続きです。

 長野剛記者は論座の記事「「バッキンガム宮殿採用」装置にダメ出し続々」(4ページ目)の中で、各地の消費生活センターについて、「ただ、設置根拠となる消費者安全法では「消費者」は「個人」です。消費者庁の担当者は「マンション管理組合は消費者にはならないと解釈しています」とし、消費生活センターの救済対象ではないとの認識でした。」と書かれています。

 確かに、消費者安全法には、地方自治体の消費生活センターの設置が規定されていますが、この消費生活センターは国の機関や独立行政法人などではなく、あくまでも都道府県市町村が設置する組織です(多くは消費者安全法(平成21年施行)のずっと以前から存在しており、その設置の根拠は地方自治体の条例。)。したがって、名称についても、「消費者生活センター」以外にいろいろあって、たとえば、京阪神でも、大阪府は「消費生活センター」ですが、大阪市は「消費者センター」、兵庫県は「消費生活相談センター」、神戸市は「消費生活センター」、京都府は「消費生活安全センター」、京都市は「消費生活総合センター」になっています。東京都は「消費生活総合センター」ですね。なお、「国民生活センター」という独立行政法人がありますが、これは、「消費生活センター」とは違うもので、元々は50年前に国の特殊法人として設立されており、「独立行政法人国民生活センター法」を設置の根拠とするものです。

 話がそれましたが、消費者安全法消費生活センターについての規定があるのは、上記記事の通りではあるのですが、要するに「消費者安全の確保」に関する相談やあっせんなどの事務を行うというものです。そして、消費者安全法においては、「消費者」は個人であり(団体は除外)、「消費者安全の確保」とは、消費者の消費生活における被害を防止し、その安全を確保すること、となっています。では、マンション管理組合は団体であり個人ではないので、消費生活センターの業務の対象外と言えるのでしょうか。

 法律における「消費者」という用語全般については、1年ほど前に「法律と「消費者」」 (2018/6/30)というのを書きましたが、法律によって表現は違うけれども、基本的に、「消費者」は個人となっています。しかし、消費者契約法では、「消費者契約」の契約締結時の問題とか契約条項の内容についての規制が定められているので、規制が及ぶのは、消費者と事業者との契約関係に限られます(救済裁判例もありますが、省きます。)。したがって、団体であるマンション管理組合と事業者との契約は残念ながら対象外となってしまいます。長野記者が消費者庁の担当者の見解として書いているのは、消費者安全法を含む、こういった法律上の「消費者」の解釈によるものかと思います。

 しかし、消費者安全法は、「消費者契約」のみを対象とするものではなく、例えば、直接の契約関係にはない、商品の製造業者であっても、欠陥商品などによる消費者安全に関する問題については対象となります。そして、居住用のマンションの住民たちそれぞれは、まさしく個人たる「消費者」であり、マンション管理組合が購入、設置した商品を、実質的には自分らの個人財産から代価を支払い、共有物として所有し、利用するわけですので、それによって、住民たちに生ずる損害に関する問題は、消費者安全法の守備範囲です。

 なお、安全という言葉からは、生命や身体の被害が思い浮かびますが、消費者安全法は「消費者事故等」の定義として、それ以外に、「虚偽の又は誇大な広告その他の消費者の利益を不当に害し、又は消費者の自主的かつ合理的な選択を疎外する恐れがある行為であって政令で定めるものが事業者により行われた事態」(同法2条5項3号)も含めています。そして、政令では、「商品等又は役務について、虚偽の又は誇大な広告又は表示をすること。」(施行令3条1号)となっています。ここでは、広告、表示を直接消費者個人に向けられたものに限られておらず、広告、表示が誇大、虚偽であることに基づいて、消費者の利益を不当に害するものであればよいと考えるべきです。

 しかも、居住用のマンション管理組合は、実態的にみても、個人の塊の非営利団体であって、一般的な流通の中の卸業者とか小売業者のように独立した存在ではありませんから、なおさらだと思います。事業者からの購入も、住民らの総会や理事会の決議で決まるのですから、多数決とはいえ、基本的には、直接それぞれ個人の意思判断にかかるものであり、事業者によるマンション管理組合に対する広告、表示は、実際には住民たる個人に向けられているといえます。

 このように、長野記者が取り上げたマンション管理組合相手のセールスも消費者安全法の対象と考えるべきであり、まぎれもなく消費者問題そのものです。したがって、消費生活センター国民生活センターも、マンション管理組合が個人であることを理由に取り上げないのは疑問です。

 ただ、取り上げられた問題は、科学的・技術的な性能を謳う高額商品ですので、各地域の消費生活センターが判断することは難しいといえます。ただでさえ、予算や人員が減らされて疲弊しており、商品テストの人材、設備がない所がほとんどで、相談員などの職員の皆さんはその中で頑張っておられます。

 となると、やはり国民生活センターや製品評価技術機構(nite)といった国の機関(独立行政法人)で何とか当該商品のテストができないものかな、と思います。

 なお、最後に付け加えると、前にもちょこっと書いたように、独占禁止法の規制する「不公正な取引方法」の中の「欺まん的顧客誘引」に該当するのであれば、公正取引委員会が乗り出せるのではないか、と思っています。
 また、民事的には、住民やマンション管理組合から以外に、同業者などの関係業者が、不正競争防止法誤認惹起行為(同法2条1項20号)に基づく請求を行うということも考えうるところです。

« 「「バッキンガム宮殿採用」装置にダメ出し続々」(論座の記事) | トップページ | 限定承認の場合の相続財産管理人の当事者適格 »

ニュース」カテゴリの記事

法律」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 「「バッキンガム宮殿採用」装置にダメ出し続々」(論座の記事) | トップページ | 限定承認の場合の相続財産管理人の当事者適格 »

最近のトラックバック