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2019年9月25日 (水)

プラットフォームと消費者個人情報提供に関する独禁法ガイドライン案

 正式には「デジタル・プラットフォーマーと個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方(案)」(以下、単に「ガイドライン案」)となりますが、現在、公正取引委員会が意見募集(パブコメ)中です(9/30締切)。

 実は、昨夜も某消費者団体の会議で話題になりましたので、ガイドライン案について、独占禁止法優越的地位濫用規制に詳しくない一般の方向けの簡単な解説です。概説ですし、重要な注記も略していますので、内容を正確に詳しく検討されたい方は上にリンクした公正取引委員会サイトからガイドライン案をご覧下さい。
 なお、優越的地位の濫用というのは、独占禁止法の規制する「不公正な取引方法」の一つで、これに該当する行為を行った事業者は、公正取引委員会から、排除措置命令課徴金納付命令を受ける場合があります。

 まず、ガイドライン案は、「はじめに」として、いわゆるデジタル・プラットフォーマー(以下、単に「プラットフォーマー」)がイノベーションの担い手となり、事業者にとっては市場へのアクセスの可能性を飛躍的に高め、消費者にとっては便益向上につながるなど、我が国の経済や社会にとって重要な存在となっている、とし、一方で、 個人情報等の取得・利用と引換えにサービスなどを無料提供するというビジネスモデルが採られることがあるため、プラットフォーマーがサービスを提供する際に消費者の個人情報等を取得・利用することに対して懸念する声もある、としています。そして、プラットフォーマーが不公正な手段により個人情報等を取得などすることによって消費者に不利益を与えるとともに、独占禁止法上の問題が生じる、と指摘しています。
 そのため、独占禁止法の運用における透明性、プラットフォーマーの予見可能性を向上させる観点からこの問題において、どのような行為が優越的地位の濫用として問題となるかについて整理したのがガイドライン案、ということです。
 したがって、今回の意見募集は、消費者の個人情報等をプラットフォーマーに提供させる行為が優越的地位濫用に該当するのか、という観点から整理されたものですので、独占禁止法改正や新たな立法などによる新しい規制強化についてのものではありません。

 そして、「1 優越的地位の濫用規制についての基本的考え方」として、 まず、事業者と消費者との取引においては、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差があり、取引条件が一方的に不利になりやすいことを指摘し、消費者に優越しているプラットフォーマーが消費者に対して、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることは、消費者の自由かつ自主的な判断による取引を阻害する一方、プラットフォーマーはその競争者との関係において競争上有利となるおそれがあり、このような行為は優越的地位の濫用として規制される、として、プラットフォーマーが消費者の個人情報等の提供を受ける行為も優越的地位の濫用の規制対象となり得ると、しました。そして、以下で、優越的地位の濫用の要件ごとに整理しています。

 まず、「2 「取引の相手方(取引する相手方)」の考え方」において、個人情報等はプラットフォーマーの事業活動に利用され経済的価値を有することから、消費者がプラットフォーマーが提供するサービスを利用する際、対価として個人情報等を提供していると認められる場合は当然、消費者はプラットフォーマー「取引の相手方(取引する相手方)」に該当することを明確にしました。

 そして、「3 「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して」の考え方」において、プラットフォーマーが消費者に対して優越的地位にあるとは、消費者がプラットフォーマーから不利益な取扱いを受けても、消費者がプラットフォーマーのサービスを利用するためにはこれを受け入れざるを得ないような場合である、としました。
 消費者がプラットフォーマーのサービスを利用するためにはこれを受け入れざるを得ないような場合であるかの判断については、消費者の「取引することの必要性」を考慮することとし、
①消費者にとって、代替可能なサービスが存在しない場合
②代替可能なサービスが存在していたとしてもプラットフォーマーのサービスの利用を止めることが事実上困難な場合
プラットフォーマーが、その意思で、ある程度自由に、価格、品質その他の取引条件を左右することができる地位にある場合には、通常、プラットフォーマーは取引上の地位が優越していると認められる
とし、優越的地位にあるプラットフォーマーが消費者に対して不当に不利益を課して取引を行えば、通常、「利用して」行われた行為であると認められる、としました。 そして、これらの判断に当たっては、両者間の情報の質及び量並びに交渉力の格差が存在することを考慮する必要がある、としています。

 さらに、「4 「正常な商慣習に照らして不当に」の考え方」において、この要件は、公正な競争秩序の維持・促進の観点から個別の事案ごとに判断されることを示すものであるとしたうえで、「正常な商慣習」とは、公正な競争秩序の維持・促進の立場から是認されるものをいうのであって、現に存在する商慣習に合致しているからといって、直ちにその行為が正当化されることにはならない、としています。

 ガイドライン案は、以上のような優越的地位の濫用の要件ごとの整理をしたうえで、プラットフォーマーによる個人情報等の取得などにおけるどのような行為が優越的地位の濫用に該当するのかについての考え方を明らかにするために、「5 優越的地位の濫用となる行為類型」として、以下の類型を示しています。ただし、これらに限定されるものではなく、また、他の法令に違反しない場合であっても優越的地位の濫用として問題となり得ることも指摘されています。 なお、ガイドライン案では、「個人情報」と「個人情報等」を意識して書き分けていますが、本記事では、そこの区別には言及しませんので、ご注意ください。

⑴ 個人情報等の不当な取得
ア 利用目的を消費者に知らせずに個人情報を取得すること。
【想定例①】
 
プラットフォーマーが、個人情報を取得するに当たり、その利用目的を自社のウェブサイト等で知らせることなく、消費者に個人情報を提供させた(※注記略)。

イ 利用目的の達成に必要な範囲を超えて、消費者の意に反して個人情報を取得すること。
【想定例②】
 プラットフォーマー
が、個人情報を取得するに当たり、その利用目的を「商品の販売」と特定し消費者に示していたところ、商品の販売に必要な範囲を超えて、消費者の性別・職業に関する情報を、消費者の同意を得ることなく提供させた(※注記略)。

ウ 個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに、個人情報を取得すること。
【想定例③】
 プラットフォーマー
が、個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに、サービスを利用させ、個人情報を提供させた。

エ 自己の提供するサービスを継続して利用する消費者に対し、消費者がサービスを利用するための対価として提供している個人情報等とは別に、個人情報等の経済上の利益を提供させること。
【想定例④】
 プラットフォーマー
が、提供するサービスを継続して利用する消費者から対価として取得する個人情報等とは別に、追加的に個人情報等を提供させた(※注記略)。

⑵ 個人情報等の不当な利用
ア 利用目的の達成に必要な範囲を超えて、消費者の意に反して個人情報を利用すること。
【想定例⑤】
 プラットフォーマー
が、利用目的を「商品の販売」と特定し、当該利用目的を消費者に示して取得した個人情報を、消費者の同意を得ることなく「ターゲッティング広告」に利用した(※注記略)。

【想定例⑥】
 プラットフォーマー
が、サービスを利用する消費者から取得した個人情報を、消費者の同意を得ることなく第三者に提供した(※注記略)。

イ 個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに、個人情報を利用すること。
【想定例⑦】
 プラットフォーマー
が、個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに、サービスを利用させ、個人情報を利用した。

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