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2017年2月21日 (火)

割賦販売法上の取消権(不実告知)についての最高裁判決

 先日の消費者契約法の解釈に関する判決に引き続き、消費者と業者間の契約の取消等に関して、本日、最高裁判所が興味深い判決を出しました。クレジット契約の名義貸しの事案において、割賦販売法(割販法)に基づく取消(不実告知)に関する新しい判断を示して、高裁判決を破棄し、裁判を札幌高裁に差し戻したものです。

 本件は、資金繰りに困っていた販売業者に頼まれて、既存顧客であったクレジット名義人が上告人ら(複数)で、信販(クレジット)会社が被上告人です。もともとは、信販会社(原告)が、契約名義人の名前でクレジットの分割払いを続けていた販売業者が倒産して支払が止まったため、契約名義人を被告として、未払い分の支払を請求した裁判です(反訴もあるようですが省略します。)。

 控訴審判決は、本件の販売業者の告げた内容が、取消の原因となる「不実告知」に該当しないとするなどとして、契約名義人にクレジットの支払義務があると判断して、信販会社の請求を認めました。

 しかし、本日の最高裁判決は、本件告知内容は不実告知に該当するとし、さらに契約の動機や経緯に関して審理が必要として、高裁に差し戻したものです。なお、山﨑敏充裁判官の反対意見が付いています。

  → 判決文(裁判所サイト)

 本件の販売業者は,上記の依頼をするに際し,上告人らに対して、「ローンを組めない高齢者等の人助けのための契約締結」であり、「高齢者等との売買契約や商品の引渡しは実在する」ことを告げ、「支払については責任をもってうちが支払うから、絶対に迷惑は掛けない。」などと告げていたものでした。つまり、名義を借りる理由として、他の顧客が存在して、高齢者などでクレジット契約ができない人がいるから、ということを言って、自分の資金繰りの目的は言っていなかったようです。

 本件で争点は、

① 契約のうち、改正割販法の施行(平成21年12月1日)以降に締結されたもの
 については、改正割販法35条の3の13第1項により立替払契約の申込みの意
 思表示を取り消すことができるか否か、

② 改正割販法の施行前の契約については、改正前割販法30条の4第1項(抗弁
 権の接続)により本件販売業者に対して生じている売買契約の無効等の事由を
 もって被上告人に対抗することが信義則に反するか否か、

です。

 改正割販法35条の3の13第1項では、「契約の締結について勧誘をするに際し、次に掲げる事項につき不実のことを告げる行為をしたことにより当該告げられた内容が事実であるとの誤認」をした場合(不実告知)などは、契約の意思表示を取り消せる、としています。・・・上記①

 また、改正前はそのような取消権がなかったのですが、改正前割販法30条の4第1項(改正後も同内容の規定となっています。)には、信販会社に対するいわゆる抗弁権の接続の規定があり、販売業者に対して生じている事由を、信販会社に対しても主張できる、という規定になっています。この主張を行うことが、本件では信義則に反しないか、ということですね。・・・上記②

 札幌高裁の判決では、   

  1.  まず、割販法の「不実告知」の対象となる事項について、割販法30条の4第1項6号の重要事項には、「立替払契約又は売買契約に関する事項であって購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものであれば、契約内容や取引条件のみならず、契約締結の動機も含まれる。」として、契約の動機も、不実告知の対象となるとしました。この判断は、今回の最高裁判決でも維持されており、重要な判断です。      
  2.    
  3.  次に、本件において販売業者が契約名義人に対して告げた内容が、不実告知に該当するかどうか(上記①)ですが、これについては、該当しない、としました。    
     その理由は、契約締結の主たる動機は、販売業者が、契約名義人らが信販会社に対して支払う金銭を補塡すると約束した点にあり、販売業者は契約の締結時に、その支払をする意思なしに約束をしたということはできないから、販売業者が告げた内容に虚偽はない。高齢者等の人助けのための契約締結である、などと告げた内容は契約名義人らの判断に影響を及ぼすこととなる重要なものには当たらず、不実告知の対象とはならない、として、否定したものです。      
  4.    
  5.  改正前契約に関する抗弁権接続の問題に関しては、信販会社からの契約確認電話に対し、契約名義人らは、契約締結の意思があり、商品を受け取っていると回答しており、上記の通り改正後の「不実告知」の対象ともなっていない、販売業者の不正の意図を知らなかったとしても、名義貸しは一般常識に照らして不正な取引であることは認識することができたもので、販売業者との契約が無効であることを理由に信販会社に対抗することは、信義則に反する、として、これも否定しました。

 これに対して、今回の最高裁判決は、   

  1.  上記札幌高裁判決の1の判断(契約の動機も不実告知の対象)は是認できる、としました。      
  2.    
  3.  上記2の点について、名義貸しであったとしても「それが販売業者の依頼に基づくものであり、その依頼の際、契約締結を必要とする事情、契約締結により購入者が実質的に負うこととなるリスクの有無、契約締結によりあっせん業者に実質的な損害が生ずる可能性の有無など、契約締結の動機に関する重要事項について販売業者による不実告知があった場合には、これによって購入者に誤認が生じ、その結果、立替払契約が締結される可能性もあるといえる。このような経過で立替払契約が締結されたときは、購入者は販売業者に利用されたとも評価し得るのであり、購入者として保護に値しないということはできないから、割賦販売法35条の3の13第1項6号に掲げる事項につき不実告知があったとして立替払契約の申込みの意思表示を取り消すことを認めても,同号の趣旨に反するものとはいえない。」としました。      
     そして、本件では、名義貸しを必要、とする高齢者等がいること上記高齢者等を購入者とする売買契約及び商品の引渡しがあること並びに上記高齢者等による支払がされない事態が生じた場合であっても本件販売業者において確実に改正後契約に係る上告人らの被上告人に対する支払金相当額を支払う意思及び能力があることといった、契約締結を必要とする事情、契約締結により購入者が実質的に負うこととなるリスクの有無及びあっせん業者に実質的な損害が生ずる可能性の有無に関するものということができる。したがって、上記告知の内容は、契約締結の動機に関する重要な事項に当たるものというべきである。」として、販売業者の改正後契約の契約名義人に対する告知は割販法35条の3の13第1項6号の「購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」に当たるというべき、としました。      
  4.    
  5.  以上の判断をもとに、札幌高裁上記2(不実告知)の判断、それを前提とした上記3(抗弁権の接続)の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があるので、控訴審判決は破棄し、契約名義人らの誤認の有無(争点①)、契約に応じた動機や経緯など(争点②)について、さらに審理が必要だとして、差し戻しを命じたものです。

 この判決により、札幌高裁での差戻審において、最高裁判決に示された事項について審理が続けられることになります。

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