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2016年5月の記事

2016年5月11日 (水)

いわゆるEM菌に関する記事が著作権侵害等に当たるとして朝日新聞を訴えた裁判の判決

 琉球大学名誉教授であり、いわゆるEM菌の研究者である比嘉照夫教授(原告)が、自分の執筆したブログの一部を朝日新聞が記事に引用したことが、比嘉教授の著作権(複製権、同一性保持権)を侵害し、また、自分に取材せずに記事を掲載したことが不法行為に当たるとして、朝日新聞を被告として、損害賠償及び謝罪広告を求めていた裁判の判決が平成28年4月28日に東京地裁民事46部(知的財産部)でありました。   
 判決では、原告の請求が棄却されています。   
 この裁判については、訴訟提起時にサンケイ新聞が記事にしていましたが、今回の判決は、朝日もサンケイも他の報道機関も報じていないようですね。

  → 東京地裁平成28年4月28日判決(裁判所サイト)

 事案は以下の通り。   
 朝日新聞が、朝日新聞青森版に、平成24年7月3日付けで「EM菌効果『疑問』検証せぬまま授業」と題する記事を、同月11日付けで「科学的効果疑問のEM菌3町が町民に奨励」と題する記事をそれぞれ掲載した。

 原告のブログには、「私はEMの本質的な効果は,B先生が確認した重力波と想定される縦波の波動によるものと考えています。」と記載していた。    
朝日新聞の上記記事には、「EM菌の効果について,開発者のA・琉球大名誉教授は「重力波と想定される波動によるもの」と主張する。」「開発者のA・琉球大名誉教授は,効果は「重力波と想定される波動による」と説明する。」との記載がある。

 これらの記事は原告を取材せずに作成されたものであるが、朝日新聞の「朝日新聞記者行動基準」では、「記事で批判の対象とする可能性がある当事者に対しては,極力,直接会って取材する」ものとされている。

 そして、上記の原告ブログ記事が著作物であり、朝日の2記事が、この著作物の複製権又は同一性保持権を侵害するものである、というのが、原告の第1の主張です。

 朝日新聞は、このようなブログ記事の記載には著作物性は認められないし、仮にそうではないとしても、事件報道において,当該事件を構成するものを、報道の目的上正当な範囲において複製し、当該事件報道に伴って利用したものであるので、著作権法41条により許された利用に当たる、と反論しました。

 これについて、裁判所は、

「著作権法において保護の対象となるのは思想又は感情を創作的に表現したものであり(同法2条1項1号参照)、思想や感情そのものではない。本件において本件原告記載と本件被告記載1及び2が表現上共通するのは「重力波と想定される」「波動による(もの)」との部分のみであるが、この部分はEMの効果に関する原告の学術的見解を簡潔に示したものであり,原告の思想そのものということができるから,著作権法において保護の対象となる著作物に当たらない」 

として、著作物性を否定しました。

 原告の主張の第2は、朝日新聞記者が原告に取材することなく記事を掲載したことが不法行為(民709条)に該当するというものです。

 原告の主張によると、本件2記事における原告のコメント部分はかぎ括弧が用いられているが、引用元や出典が明示されていないから、一般読者は記事が原告を取材して得たコメントを掲載した記事として読むことになるが、実際には朝日新聞は原告を取材せずに掲載しており、記事で批判の対象となっている原告を取材しなかったことは、「朝日新聞記者行動基準」に定められた取材方法に違反する、これにより、自らの意思に反してコメントをねつ造されない人格的利益が侵害されており、不法行為に当たる、としています。

 これについて、裁判所は、かぎ括弧内のコメントが、一般読者に取材による記事として読まれる可能性があったというべきであり、「記者行動基準」の規定に抵触しかねない行為であったといえるとしたうえで、

「上記基準は記者が自らの行動を判断する際の指針として被告社内で定められたものであり、これに反したとしても直ちに第三者との関係で不法行為としての違法性を帯びるものでない。」とし、「公にされていた本件原告記事を参考にして執筆されたものであって、その内容はEMの本質的効果に関する原告の見解に反するものではない」、そうすると、2記事によって「原告の見解が誤って報道されたとは認められず、したがって、これにより原告が実質的な損害を被ったとみることもできない」ので、記者の「行為は不適切であったということができるとしても、不法行為と評価すべき違法性があったとはいえないと判断するのが相当である。」 

として、不法行為の成立も否定しました。

 著作物性を否定した点も不法行為の成立を否定した点も妥当な判決だと思います。

2016年5月 1日 (日)

Amazonに対する米国連邦取引委員会(FTC)の請求を連邦地裁が認める判断

 アメリカの連邦取引委員会(FTC)が、子供が親の承諾無しにアプリ内で購入した有料オプションについて、Amazon.comを訴えていた訴訟(2014年7月提訴)で、連邦地裁判事がFTCの主張を認める判断を示したことが報じられています。FTCは日本の公正取引委員会にあたる連邦政府の組織ですが、日本の消費者庁のような消費者保護機能も有しています。

 → ITproの記事

 → FTCの公表サイト(英文)

 FTC法5条に基づく訴訟でしょうか(違ったらごめんなさい。)。いずれにせよ、父権訴訟(州の司法長官が提起する訴訟)と同様に、個々の消費者に代わって、企業に対して損害賠償を求める訴訟ですね。四半世紀前に、日弁連の消費者問題特別委員会からの視察(といっても、実態は大阪の独禁法公正取引研究会のメンバーが日弁連の冠で行ったようなもんでしたけど。)で、FTCやら州(カリフォルニア州でしたっけ?)の司法省に話を聞きに行ったのが懐かしいです。

 なお、上記記事中にもありますが、子供によるアプリ購入についての同様の問題では、既に2年前に、アップルグーグルFTCと和解し、消費者に金銭を返還しています。

  → アップルについての記事

  → グーグルについての記事

 外国の制度が常に良い、というつもりはありませんが、日本でも、消費者庁公正取引委員会が、アメリカのように主体的・積極的に消費者救済に乗り出してほしいものです。

 日本では、特定適格消費者団体による集団的消費者被害救済の訴訟制度が今年の10月に導入されますので、特定適格消費者団体の認定を目指す団体では、準備が進められています。私が会員として関与している消費者支援機構関西(KC's)も認定を目指しているところです。   
 しかし、この新しい訴訟制度は、FTC司法長官による父権訴訟、あるいは、私訴の1つであるアメリカのクラスアクションとも制度的にはかなり違っており、この訴訟制度が消費者被害の救済に活用できるかどうかは今後の問題です。

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