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2016年3月の記事

2016年3月31日 (木)

ココナッツジャパンに対する措置命令と平成27年度の措置命令のまとめ

 昨日に続いて、本日も健康食品の広告に関して消費者庁措置命令を出しています。

 → 消費者庁公表資料(PDF)

 ココナッツジャパン株式会社(東京都港区)が販売する健康食品「エクストラバージンココナッツオイル」、エクストラバージンココナッツオイルカプセル」について、同社のwebサイト上で、認知症、ガン等の各種疾病を予防する効果等があるかのように表示したことが優良誤認表示とされたものです。今回も不実証広告制度が使われています。

 こういうのは、医薬品医療機器等法(薬機法、旧薬事法)で取り締まったほうがいいのではないかと思いますね。 


 ところで、平成27年度が終わる段階で、消費者庁による景品表示法措置命令件数は、合計13件となりました。これ以外に都道府県による措置命令が3件です。消費者庁は3月に5件の措置命令を出して頑張りましたが、それでも、   

 平成18年 32件      
 平成19年 56件      
 平成20年 52件      
 平成21年 12件(途中で公取委→消費者庁)      
 平成22年 20件      
 平成23年 28件      
 平成24年 37件      
 平成25年 45件      
 平成26年 30件      
 平成27年 13件

と、年度途中に消費者庁が発足した平成21年を除くと概ね半分以下という少ない件数となっています。
 今年度の法執行の少なさは、昨年10月にも当ブログで取り上げました。

 → 「消費者庁は景品表示法への課徴金導入でお忙しい?」(27/10/25)

 なお、今月に出された5件のうち、3件は健康食品関連、27年度全体でみても、13件のうち、約半分の6件が痩身効果やがん予防などの健康食品関連というのも特徴的ですね。

 いよいよ明日4月1日には、課徴金制度導入の改正法が施行されます。もちろん、すぐに課徴金納付命令が発せられるわけではありませんが、事業者の不当な広告表示に対して、消費者庁がどのように法執行をしていくのか、景品表示法だけではなく、特定商取引法健康増進法食品表示法などを含めて(厚労省の薬機法もですが)、消費者サイドも注視していく必要があろうかと思います。

2016年3月30日 (水)

健康食品の痩身効果表示についての不当表示措置命令(消費者庁)

 先日、消費者委員会の専門調査会において、健康食品の広告表示に関する報告書が取りまとめられたことを取り上げたばかりですが、今日は、健康食品の痩身効果の広告表示に関して景品表示法の措置命令が出されました。健康食品の痩身効果についての措置命令はアサヒ食品(埼玉県川口市)に対する措置命令に続いて今月2件目になりますね。

 消費者庁は、本日、株式会社えがお(熊本市東区)に対し、同社の販売する「えがおの黒酢」と称する食品の痩身効果に係る表示について、優良誤認表示に該当するとして、措置命令を行いました。    
 同社のwebサイトに、平成25年3月から平成27年5月までの期間に、以下のような記載をすることにより、あたかも、対象商品を摂取するだけで、特段の運動や食事制限をすることなく容易に著しい痩身効果が得られるかのように示す表示をしていた、というものです。本件も不実証広告制度によるもので、同社から提出された資料は、裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められませんでした。

【表示内容】   
「アミノ酸一般食酢の120倍のえがおの黒酢でダイエットサポート!」、「『黒酢』に含まれたアミノ酸のメラメラパワー!」、「タンスの奥のジーンズが出せた!」、「運動量は変わらないのに遂に出産前のスタイルに!」、「たとえば、脂肪1kg(約7,000kcal)を燃やすにはこんな運動&食事制限が必要なんです。」、「ウオーキング約63時間!」、「平泳ぎ約13時間!」、「絶食約7日!」、「こんなに?できない!」など。

 → 株式会社えがおに対する景品表示法に基づく措置命令について

 株式会社えがおは、本件対象商品の黒酢のほか、ブルーベリーや青汁などのいわゆる健康食品の通信販売業者ですが、適格消費者団体消費者支援機構関西(KC’s)が平成26年から昨年にかけて、同社のブルーベリー商品のテレビCM、新聞チラシ、webサイトの表現に関して、景品表示法上の問題があるとして、書面による意見交換及び面談協議により、同社に対し改善を求める活動を行っていました。
 その中で、同社は広告表現に関して一定の改善を行うことを約したため、KC’sは活動を終了しました。今回の黒酢の表示については対象となっていませんでしたが、期間的には重なることになりますね。

消費者支援機構関西サイト

2016年3月29日 (火)

「実務解説職務発明」(商事法務)のご紹介と蛇足

 弁護士・弁理士でもあり、現在特許庁で法制専門官をされている松田誠司さんから、特許法における職務発明規定の改正に関する新刊書籍をご恵贈いただきました。

 → 実務解説 職務発明――平成27年特許法改正対応

 職務発明というのは、企業において、従業員が職務上行った発明についての権利や報酬の取扱い等について定める制度です。

 従前は、企業内の発明であっても、特許権は発明した従業員が取得するものとされ、それを前提とした制度となっていました。それが平成27年改正により、「契約、勤務規則その他の定めにおいてあらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを定めたときは、特許を受ける権利は、その発生したときから当該使用者等に帰属する。」(改正特許法35条3項)とされ、事前に企業側が対応しておけば、企業が特許を受ける権利を原始的に取得することになりました。

 この改正に関して実際に立法を担当した松田さん他の共著によるQ&A形式の実務解説が上記の書籍ですので、企業の法務担当者などは必見の本かと思います。


 ところで、ブログで書籍を紹介する場合に、その本を著者や出版社からいただいた場合、そのことを表示するかどうかは悩むところなんですが、アメリカのFTC広告ガイドラインの立場からは、書いておかないとステマとなり違法とされる可能性があります。日本ではそこまで詰めた議論にはなっていませんけれども。

 たまたま、先日、アメリカ連邦取引委員会(FTC)が、広告であることを明示しなかったということで、老舗デパートのロード&テイラー(Lord & Taylor)を罰した、という記事が出てました。記事によれば、3月16日に同デパートがFTCに従う形で和解を行った、ということのようです。

media pub (2016/3/23)

 要するに、衣料品などを全米で販売するデパートが、ネットでファッションに影響力のある女性50名に自社の衣料を贈り(報酬も)、それを着た写真を画像投稿サイトのインスタグラムに投稿させた、というものです。FTCガイドラインでは、こういった場合に、事業者との関係性を明示しなければなりません。

 FTCガイドラインやステマについては、当ブログで以前から書いてる関係上、最近は、本をいただいた、ということを明示することとしておりますので、ご了承ください。

2016年3月27日 (日)

電子商取引等準則の改訂パブコメ(経産省)

 3月24日、経済産業省が、「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」の改訂案に対する意見公募(パブコメ)を公表しています。意見受付の締切は4月23日。

 → 「電子商取引等準則」改訂案パブコメ

 なお、現行の準則は、平成27年4月改訂版です。

 今回の改訂案の内容ですが、概要は後掲の表の通りです(経産省の概要より)。用語や字句の細かな修正や条文番号の変更が多いですが、Ⅲー13「データ消失時の顧客に対する法的責任」が新たに追加されました。

 また、未成年者が詐術を用いた場合の記述の見直し、ネットオークションの項に、フリマサービス等の新たなサービス類型を追加するなど、の修正がなされています。

番 号

項 目 名

主 な 改 訂 趣 旨

Ⅰ-1-4 ワンクリック請求と契約の履行義務 ・Ⅰ-4 改訂に伴う修正
Ⅰ-4 未成年者による意思表示 ・未成年者が「詐術を用いた」とされる場合に関する記述の見直し
Ⅰ-6 インターネットショッピングモール運営者の責任 ・用語の現代化         
・引用条文の正確化
Ⅰ-7 ユーザー間取引(インターネット・オークション、フリマサービス等) ・フリマサービス等の新たなユーザー間取引の形態への対応
Ⅰ-8 インターネット上で行われる懸賞企画の取扱い ・景品表示法改正に伴う条番号修正
Ⅰ-9 共同購入クーポンをめぐる法律問題について ・景品表示法改正に伴う条番号修正
Ⅱ-1 ソーシャルメディア事業者の違法情報媒介責任 ・用語の現代化         
・裁判例の追記
Ⅱ-4-1 景品表示法による規制 ・事例の現代化
Ⅱ-9-1 インターネット上の著作物の利用          ・スクリーン投影の取扱いの追記         
・記述の整理簡素化
Ⅱ-9-2 サムネイル画像と著作権 ・Ⅱ-9-1 改訂に伴う修正
Ⅲ-11 データ集合の利用行為に関する法的取扱い ・データ集合を対象とした新たな取引形態への対応
Ⅲ-13
(新規)
データ消失時の顧客に対する法的責任 ・クラウドサービスの進展への対応
国境を越えた取引等に関する論点(国際裁判管轄及び適用される法規に関して) ・各項目が想定する取引当事者の明確化         
・以前の民事訴訟法改正等に関する記述の整理簡素化

2016年3月25日 (金)

景表法違反措置命令を受けた通販会社に対する製造メーカーの法的責任

 本年3月23日、消費者庁は、有限会社ペルシャンオート(神奈川県厚木市)に対し、同社の販売する中古車の商品説明に景品表示法の規定する不当表示(優良誤認)があったとして措置命令を行っています。

 → 消費者庁公表資料(PDF)

 これは、中古車17台について、同社がヤフオク!に出品した際に、商品説明の「修復歴」欄に「なし」と記載することにより、あたかも、当該中古自動車の車体の骨格部位に修復歴がないかのように示す表示をしていましたが、実際には、同社が別のオートオークションに出品した際の出品票には、車体の骨格部位に損傷があるもの又は修復されているものを示す記号が記載された修復歴があるものであった、というものです。

 中古車販売についての優良誤認表示は、走行キロの偽装のケースも多いですが、これは修復歴隠しですね。 


 さて、ここのところ、広告表示関連の記事では見逃せない通販新聞ですが、今日はこのようなニュースを掲載していました。 

 → ユーコー 措置命令巡りメーカー提訴も、「表示主体」巡る判断で企業間対立へ

 当ブログでの紹介はしなかったのですが、今年1月26日、消費者庁が、通信販売業者の株式会社ユーコー(東京都豊島区)に対して、その販売する「PM2.5対応プラズマ空気清浄機」について、同社が新聞広告において、「PM2.5、花粉、ウイルス、ダニ、カビ対応」などと効果を示した上で「約21畳まで対応のハイパワーで広いリビングにもこれ1台でOK!」などと記載して、21畳の広さでも効果があるかのように宣伝した行為を、優良誤認表示として措置命令を出していました。

 → 消費者庁公表資料(PDF)

 上記の通販新聞の記事はこの事案に関するもので、景品表示法での「表示主体」の問題を取り上げていますが、本件は、表示主体の判断の問題よりは、通販業者が不当表示の責任を問われた場合のメーカーの法的責任という観点の問題かと思います。かなり形は違いますが、シャンピニオンエキス事件と同様の問題ともいえなくもありませんね。

 措置命令を受けたユーコーが、当該空気清浄機のメーカーである株式会社丸隆(東京都渋谷区)に対して訴訟提起を検討している、というもので、記事では明確ではありませんが、おそらくは、損害賠償請求訴訟でしょうね。
 記事では、「ユーコーのケースは、制度導入前であり、金額も少額であるため課徴金の対象にはならない。だが、制度が始まれば、事業者間で対立に発展するリスクはより高まる。」と結んでいますが、その通りで、措置命令を受けただけでも、このケースの場合は返品対応や信用毀損などの企業損失を受けますし、課徴金の対象ともなれば、それに加えて多額の課徴金の負担という問題も出てきます。ですので、措置命令や課徴金納付命令を受けた表示主体事業者が、不当表示の元となった、その製造事業者や原材料製造販売事業者に対して、損害賠償請求を起こすというような事例は今後増えるのかもしれません。

続きを読む "景表法違反措置命令を受けた通販会社に対する製造メーカーの法的責任" »

2016年3月22日 (火)

特定保健用食品やいわゆる健康食品の広告表示などに関する報告書(消費者委員会専門調査会)

 先日、当ブログにて、トクホ(特定保健用食品)のトマト酢飲料の新聞広告が健康増進法の禁止する誇大広告にあたるとして消費者庁が勧告を行った事案を取り上げました。

 → 「トマト酢飲料(特定保健用食品)の広告表示に対する健康増進法に基づく勧告(消費者庁)」(3/1)

 このようにトクホ商品やその他いわゆる健康食品の広告表示については、問題が指摘されているところですが、3月16日に開催された第8回特定保健用食品等の在り方に関する専門調査会(内閣府・消費者委員会に設置)では、報告書の取りまとめがなされたようです。
 この報告書は、トクホや健康食品の広告・表示や制度・運用について検討されたものを取りまとめるものです。なお、現時点で内閣府サイトに掲載されているのは、報告書(案)ですので、最終的な報告書ではありませんが、ほぼこのまま決定されたと思われますので、以下はそれを前提としています(後日、正式版が公表された場合は、この記事を書き換えるかもしれません。)。

 → 「第8回 特定保健用食品等の在り方に関する専門調査会」    
                            (内閣府・消費者委員会)

 報告書では、トクホや健康食品について、広告・表示について問題があることを確認し、その状況を踏まえて、必要な行政の取組などをあげています。

 その中の不正な表示・広告の適切な取り締まりのための行政の取組としては、(1)健康増進法に関する見直し(2)トクホの審査等取扱い及び指導要領に関する見直し、などとなっています。

 注目されるのは、問題のある「いわゆる健康食品」が依然として存在し、消費者にとって適切な製品選択が難しい状況が続いており、広告内容に疑義が生じた場合は行政側が実証しなければいけないことが迅速な法執行の障害となっているということで、健康増進法景品表示法と同じような「不実証広告規制」を導入することを検討すべき、としている点です。   
 「不実証広告規制」(景品表示法4条2項)とは、表示が優良誤認表示に該当するか否か判断するため必要があると認めるときは、消費者庁が期間を定めて事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、事業者が求められた資料を期間内に提出しない場合や、提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、その表示が不当表示とみなされるというものです。景品表示法の執行では、この制度がかなり活用されています。

 また、誇大広告を禁止する健康増進法31条「著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示」の「著しい」の具体例を充実するなど、所管省庁において、法違反か否かの判断基準を一層明確化する必要がある、ともされているうえ、一部の委員から「著しい」という文言を健康増進法から削除すべきという意見も出されたことを紹介しています。

 トクホ商品についても、一部の広告・表示が実際の効果より高い効果が期待できるといった誤認を消費者にさせている可能性があるなどの状況が認められ、トクホは、効果の面では、医薬品のような高い効果はなく、製品に記載されている摂取方法に従って利用することにより、効果が「期待できる」製品群であるけれども、消費者の中にはそういった製品であるということをあまり理解しておらず、安全である上に、広告・表示から連想する効果を得られると考えて製品を購入している人もいると思われる、としています。
 そして、「そのような状況の中で、消費者に誤認を与えるような暗示的な広告を行うことは、食品の機能性に期待をして特保をあえて選択し、購入している消費者にとって、適切な商品選択につながっていないといえる。」として、許可を受けた際に確認されている効果を超える効果を類推させる広告・表示を一切禁止するなど、「特定保健用食品の審査等取扱い及び指導要領」(消費者庁次長通知)の広告・表示のルールの見直しを行うことなどを提言しています。   

【追記】(4/13)

 上記の報告書を踏まえて、消費者委員会から関係大臣に対して、「健康食品の表示・広告の適正化に向けた対応策と、特定保健用食品の制度・運用見直しについての建議」が出されました。

2016年3月21日 (月)

ネットショッピングでの価格誤表示と売り主の責任

 ネット通販大手のAmazonのタイムセールで、アイリスオーヤマの芝刈り機や工具箱その他の商品が、軒並み10円で出品されて、大量の注文が発生しているという情報がネット上でが昨日(3/20)流れていました。

 このようなネット通販サイトでの価格誤表示事件は、最近でも一年前に、マウスコンピューターがPCの価格を「1865円」と誤表記したというのがありましたし、その他にも過去に何度か起こっています。

 今回の件で、Amazonおよびアイリスオーヤマがどのような対応をするのか、まだ判明してません。連休中でしたので、明日あたりには何らかの公表がされるのかもしれません。

 こういった事案で古いものとしては、平成15年の丸紅ダイレクト(丸紅の直販サイト)、平成16年のカテナ(通販サイトはヤフーショッピング)のケースがあります。いずれもパソコンの通販で、通常よりかなり安く表示してしまったもので、上記の最近の事案と基本的に同じものです。

 さて、こういった場合に、安い価格を見て注文した人は、その価格で購入できるのか、言い換えると、売り主、買い主の間にどのような契約が成立するのか、しないのか、取消や無効の主張はできるのか、などという法律上の「契約」がどうなるか、ということが問題になります。

 それを全部詳しくやると長くなってしまいますし、その通販サイトの規約や注文システムなどの具体的内容にもよる部分もありますので詳細は省きますが、経済産業省「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」(平成27年4月改訂版)「Ⅰ-2-2 価格誤表示と表意者の法的責任」に詳しく検討されています。

 なお、参考となる裁判例としては、上記の平成16年(2004年)のカテナの誤表示事件に関するものがあります。

  ◎ 一審・平成17年2月23日東京簡裁判決

  ◎ 控訴審・平成17年9月2日東京地裁判決
            (判例時報1922号105頁)

 ヤフーショッピングにおいて、パソコン3台を購入した個人が、その履行がされなかったとして、カテナを被告として、債務不履行ないし不法行為に基づき、パソコン3台の代金相当額34万5000円の支払いを求めたという事案です。金額が少額であり(少額訴訟として提起)、一審は東京簡易裁判所です。

 一審判決は、原告が、本件売買契約はヤフーからの「受注通知」を原告が受領した時点で成立していると主張したのに対して、受信メールはあくまでもヤフーから発せられたものであり、カテナは後に原告の申込みに対して承諾しない旨意思表示をしているので、両者間に契約は成立しておらず、また、カテナヤフーに対して、正しい情報を提供しているので、当該表示上の誤りにつき被告に過失はない、として原告の請求を棄却しました。

 控訴審東京地方裁判所も、原告(控訴人)の請求を認めませんでした。売買契約の成立については、一審同様に、ヤフーの受注確認メールはカテナの承諾ではなく、カテナが原告の申込を承諾したとは認められないとして、これを否定しました。したがって、契約成立が前提となるカテナ側の錯誤無効の主張については判断していません。

 そして、価格の誤表示についてのカテナの注意義務違反(不法行為)に基づく請求については、カテナが本件サイト上に自ら表示をすることはできず、削除することもできないと認められること及び商品の誤った表示がされたことに対し、直ちにヤフーにその表示を削除させたのであって、誤表示を放置したとも認められないことから、被控訴人の商品の誤表示についての注意義務違反を認めることはできない、として、これも認められませんでした。

 なお、本件で、原告がパソコン3台分の通常の代金相当額約34万を請求した根拠は、パソコン3台の引渡をしないまま8か月が経過し、現在において原告はパソコン自体は不要なので、パソコンの引渡しではなく、同機種中古品3台の代金相当額を請求する、という主張になっていますね。

2016年3月16日 (水)

4月からは課徴金リスクがありますよ(景品表示法・消費者庁)

 不当表示行為に対して課徴金制度を導入する改正景品表示法の施行が本年4月1日に迫って来ましたが、昨日も消費者庁措置命令を出しています。

 消費者庁は、昨日(3/15)、合同会社アサヒ食品(埼玉県川口市)に対し、同社が自社ウェブサイトにおいて行った「スリムオーガニック」と称する食品の痩身効果に係る表示について、不当表示(優良誤認表示)にあたるとして措置命令を行いました。これも不実証広告規定(景品表示法4条2項)によるものです。

 → 消費者庁公表資料(PDF)

 同社サイトでは、あたかも、対象商品を摂取するだけで、特段の運動や食事制限をすることなく、容易に著しい痩身効果が得られるかのように示す表示をしていましたが(実際の表示については、上記消費者庁資料をご覧ください。)、消費者庁が、同社に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社は、当該期間内に資料を提出しなかった、ということです。

 4月に導入される課徴金は、優良誤認表示、有利誤認表示に対して課せられるもので、当然、本件のような不当表示もそれに該当することになってきます。   
ただし、課徴金が150万円未満となる場合には課されないことになっており、課徴金の算定は売上金額の3%ですので、当該商品の売り上げが5000万円に満たない場合には課徴金が課されません。本件の商品は、報道によれば、約2100万円の売り上げとのことですので、この場合は課徴金の対象とはならないことになります。

 しかし、当ブログでも紹介している最近の不当表示案件を見てみると、アディーレ法律事務所の広告に対する件は改正法が施行されれば課徴金対象となる可能性が高く、また、先日の広島県が措置命令を出した小顔矯正の事案も当該業者はわかりませんが、同様の広告を続けている業者によっては、このまま従来の広告を続けていると課徴金の対象となる可能性があることになります。   
 さらに、今回は景品表示法ではなく特定商取引法での業務停止命令でしたが、水素水についての勧誘時の不実告知は、優良誤認表示にも該当する可能性が高いものですので、こういった水素水飲料についても場合によっては景品表示法に基づく課徴金納付命令が発せられることも今後は考えられます。この対象となったナチュラリープラス社の2015年の売り上げは報道によれば、200億円を超えており、そのうち水素水飲料の売り上げはわかりませんが、そのシェアによっては、相当高額の課徴金を支払わなければならないことになります。

 これまでは、不当表示に対する措置命令がなされても、その表示をやめればよい、ということだけで軽く考える事業者も多かったと思いますが、これからは多額の課徴金を負担するかもしれません。事業者は、消費者向けの宣伝、広告を含めた商品の表示、勧誘方法について、その裏付け根拠資料の有無を含めて、事前に十分な注意をはらっておかないと大変なリスクを負う結果になりますので、御注意ください。

2016年3月12日 (土)

マルチ大手業者に対する業務停止命令(特定商取引法)と「水素水」の効能表示

 本年3月9日、消費者庁は、健康食品等の連鎖販売(マルチ取引)業者である株式会社ナチュラリープラス(東京都港区)に対し、特定商取引法39条1項に基づき、9か月間、連鎖販売取引に関する業務の一部(新規勧誘、申込受付及び契約締結)を停止するよう命じました。

 → 消費者庁公表資料(PDF)

 また、同法38条1項に基づき、同社の販売する健康食品「スーパー・ルテイン」、清涼飲料水「IZUMIO(イズミオ)」の購入者に対し、「商品の効能について事実と異なる効能を告げて勧誘していたが、当該商品の飲用によって、病気の治療若しくは予防又は症状の改善ができるような効能はない」旨を購入者に通知し、通知結果について報告することを指示しています。
 消費者庁が認定した特定商取引法違反行為は、勧誘目的等不明示、不実告知、重要事項不告知、公衆の出入りしない場所での勧誘及び迷惑勧誘です。
 大手のマルチ取引業者に対する一部業務停止命令として話題になっていますが、今回の対象行為には、いわゆる水素水として販売されている「イズミオ」の勧誘行為が含まれています。
 この商品の購入の勧誘に際して、「イズミオは足腰を強くすることができるんです。飲むともっと効果があります。」、「イズミオと薬を一緒に飲めば薬の効果が増す。」、「スーパー・ルテインやイズミオを1か月飲み続けるとどんな病気でも良くなる。元気になる。」などと告知していたことが、商品の効能に関する不実告知(特定商取引法34条1項1号)に該当するとされました。すなわち、当該水素水には、そのような効能はないとされたわけです。

 水素水についての表示については、過去2件の景品表示法違反の処分事例があります。

 ひとつは、平成24年12月20日のVanaH株式会社に対する措置命令です。

 → 消費者庁公表資料(PDF)

 これは、同社の会員組織に送ったFAX文書に、同社の販売する「天然水素水 VanaH」の品質について、あたかも、国際連合が高く評価し、国際連合認定ロゴマークの使用を同社に許可したかのように示す記載がなされていたが、その事実はなかった、という直接的には国連の評価と認定マークの取得についての虚偽の表示(優良誤認表示)の事案ですが、当該文書は、この水素水には、富士山の天然水素を豊富に含んでおり、これが健康をサポートすることを認めてもらった結果の国際連合の評価である旨の記載となっていますので、消費者に対して、健康への効用を強調する目的であったことは明らかです。

 もうひとつは、体内の活性酸素を消去できる効能・効果を有する水を生成する装置に関するもので、平成17年12月26日のシルバー精工株式会社(東京都新宿区)、株式会社日本ホームクリエイト(東京都港区)他1社に対する公正取引委員会排除命令(当時)です。シルバー精工と日本ホームクリエイトは飲用目的、他1社は掃除や洗濯の水の生成を目的としていました。そして、前2社は、ホームページやパンフレットに、当該商品を用いて水道水から生成される水を飲用することにより、高い抗酸化力で体内の活性酸素を消去できるかのように表示していましたが、公正取引委員会に対して合理的な根拠資料を提出できなかった(不実証広告規定による優良誤認表示)というものです。

 → 消費者庁サイト


 このように、水素水が体内の活性酸素を消去、抑制して健康にいいと称して飲料水や水素水生成器を販売する業者も増えているようですが、上記の業務停止命令の翌日(3月10日)には、国民生活センターが、水道水を電気分解して水素を発生させることにより、活性酸素(ヒドロキシラジカル)を抑制する水ができるとうたった商品について、複数の消費生活センターからのテスト依頼による調査結果を公表しています。

 → 国民生活センター発表情報

 PIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワーク・システム)には、同様な装置の効果や活性酸素に関する相談が、2010年度以降2015年12月末までに、220件寄せられ、特に2014年度からは増加傾向にあります。そして、これらの相談の内容には、「ガンが治る」と勧誘されたといった販売方法に関するものが多いようです。

 今回の調査は、購入可能であった2社2銘柄を対象としていて、ヒドロキシラジカルを消去する機能は認められたようです。   
 調査結果では、業者のホームページやパンフレットには、水の中のヒドロキシラジカルの抑制率のデータは人体に対する効果・効能を表すものではない旨の記載があるとはいうものの、上記の「イズミオ」などの場合を見ても、実際の勧誘の際には、ガンが治るなどといった健康上の効用をうたっている可能性も高いものと思われます。   
 そこで、今回の国民生活センターの報告書でも、消費者に対して、「テスト対象銘柄の広告に記載されている「ヒドロキシラジカル抑制率」は、飲用による効果を表したものではありません。人体への効果と関連付けて考えないようにしましょう。」「ヒドロキシラジカル消去能の公的な評価方法や表示方法に関する基準はなく、試験方法や条件によって、大きくも小さくもなる数値が用いられていることがあります。広告中の数値に惑わされないようにしましょう。」と注意を喚起しています。   
 また、業者に対しては、水の用途としては飲用により摂取することを目的としているものと考えられるところから、広告等には「人体に対する効果・効能を表すものではありません。」と記載はされているものの、ヒドロキシラジカルの抑制が、どのようなことに、どの程度、役立つのかが具体的に記載されていないため、どのような効果があるのかを明確にするよう要望しています。

【追記】(3/12)
 水素水と呼ばれているのは、ほぼ「アルカリ電解水(アルカリイオン水)」などと同じと思いますが、「医薬品医療機器等法」(旧・薬事法)に基づいて承認・認証を得た家庭用医療機器(アルカリイオン整水器)から生成された水(アルカリ電解水)については、「胃腸症状の改善」の効能が認められており、それらの機器を販売等する際に、これを表示することはできます。
 ただし、上記の国民生活センターでの調査対象となった水素水生成器はこれではありませんので、身体への効能効果の有無にかかわらず、法律上、それをうたうことはできません。

2016年3月10日 (木)

「小顔矯正」の宣伝表示を不当表示とした広島県の措置命令(他 1件)

 昨日、本日と景品表示法違反の不当表示に対する措置命令が出されていますので、メモ書きとして。

 昨日のは広島県の措置命令、本日のは消費者庁の措置命令で、広島県の措置命令は、景品表示法改正により都道府県知事が措置命令を出せるようになって3件目の措置命令になります。


 まず、昨日(3月9日)広島県による措置命令です(正確には広島県知事ですが)。

 → 「小顔矯正」と称するサービスを行う事業者に対する措置命令

 美容矯正サービスを営む株式会社元氣ファクトリー(美容矯正アンベリール)(広島県安芸郡海田町)が、自ら運営するウェブサイトにおいて、以下のようなあたかも対象サービスを受けることで小顔になるかのように示す表示を行っていたため、広島県が景品表示法4条2項(不実証広告)に基づき、同社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社から資料が提出されたが、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかったものです。

【表示内容】
〇「瞬間で小顔になる!」
〇「ゆがみによって広がった頭蓋骨の幅を狭め,鼻筋を通し立体的な小顔にします。」
〇「頭蓋骨も小さくなり,血行が良くなり,ゆがみも同時に整う施術法です。」

 どんな資料を提出したのでしょうね(苦笑)
でも、小顔矯正を売りにする同様の業者は他にも多くあるのではないかと思います。

 なお、共同通信の報道では、「同社は県の調査に「本当に小さくなる」「施術に自信がある」などと説明しているという。」とのことです。

【追記】(3/10)

 これまでにも「小顔矯正」の宣伝が景品表示法で問題になったことがあります。

 ひとつは、平成24年7月10日付の株式会社コジマ身長伸ばしセンターに対する景品表示法に基づく消費者庁措置命令です。
 このときは、やはりサイト上の表示に、「小顔総合センター」「銀座コジマオリジナルの高度な施術なので、元に戻る心配もありません。」「顔幅を狭くする高度な技」「【鑑定資料6の6-1及び6-2では、頭蓋骨の大きさの相違が確認できる】」などと記載していましたが、合理的な根拠資料提出がありませんでした。この事案は以前、当ブログで紹介しています。

 → 消費者庁報道資料(PDF)

 → 「「身長伸ばし」「美顔矯正術」の不当表示措置命令(消費者庁)」(2011/7/11)

 もうひとつは、平成25年4月23日付の一般社団法人美容整体協会に対する消費者庁措置命令です。
 これも、サイトの表示に、「小顔矯正」「即効性と持続性に優れた施術です。」「小顔矯正施術は骨に働きかけて、ほうごう線を詰めるだけでなく、主にえらの骨や頬骨に優しく力を加え内側に入れていきます。いくらダイエットをしても骨格が変わらなければ小顔にも限界があります。その限界をなくして理想の輪郭を手に入れることがでるのです。」と記載していたが、合理的な根拠資料提出がなかったものです。

 → 消費者庁報道資料(PDF)

【追記】(5/30)
 消費者庁から、小顔矯正事業者9者に対して、同様の措置命令が出されましたので、新しく記事を書きましたので、ご覧下さい。
 → 小顔矯正サービス事業者の不当表示に対する措置命令(消費者庁)


 そして、本日出された措置命令のほうは消費者庁によるものです。ただし、公取委のサイトのほうが見やすいので、そちらをリンクしておきます。

 → 株式会社村田園に対する景品表示法に基づく措置命令

 株式会社村田園(熊本県菊池郡大津町)が販売する「村田園万能茶(選)」などの茶の容器包装に、あたかも、対象商品の原材料が日本産であるかのように示す表示をしていたが、実際には、原材料の一部以外は、外国産だったとして、優良誤認表示とされたものです。

続きを読む "「小顔矯正」の宣伝表示を不当表示とした広島県の措置命令(他 1件)" »

2016年3月 8日 (火)

TPP関連法案の国会提出と著作権侵害罪の非親告罪化の対象

 本日、「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案」いわゆるTPP関連法案が閣議決定され、国会に提出されました。これには、農林水産品の輸入に関する法律や独占禁止法、特許法、著作権法などの改正が含まれています。

 この法律案や概要等の資料については、内閣官房のサイトに公表されています。

  → 内閣官房サイト第190回国会提出法案

 この内、著作権法に関しては、保護期間の延長などが内容となっているのですが、著作権法違反罪について、従前は親告罪(被害者=著作権者の告訴がないと起訴できない。)となっていたのを非親告罪化する改正も含まれています。ただし、漫画同人誌などでの二次創作、パロディまでが、告訴なしに捜査当局に立件されることに対しては強い反対があったため、非親告罪化する行為の対象を限定しています。

 なお、この非親告罪化問題については、当ブログでも過去に書いています。

 → TPPによる著作権非親告罪化と二次創作(2015/11/5)

親告罪規定である著作権法第123条についての今回の改正法案を見ると、従前の第1項(親告罪規定)の後に、第2項、第3項を加えて(現在の第2項は新第4項に移る。)、新第2項の一号、二号に記載された有償著作物等(新第3項に定義)に関する行為に限り、親告罪規定(第123条1項)を適用しない(非親告罪化)とする形になっています。新第2項、新第3項については、後に貼り付けておきます。

 内閣官房サイトの概要の図表は次のようになっています。

Photo_2

 

 つまり、非親告罪となるのは、「有償著作物等」が対象とされ、それは有償で著作権法上適法に公衆に提供されたり提示されたりしているものです(新第3項)。

 そして、当該行為が「対価として利益を受ける目的」又は「著作権者等の利益を害する目的」で行われる場合で、しかも、「有償著作物等」を原作のまま複製された複製物を公衆に譲渡したりや原作のままネット送信したりする行為(新第2項第2号)と、そのために複製する行為(新第2項第3号)のみが対象で、かつ、諸般の事情に照らして著作権者等の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合に限定されています。

 したがって、コミケなどで売られているパロディや二次創作、個人的な少部数の販売などは原則として除かれることとなります。したがって、非親告罪の対象となる行為は、海賊版の販売で利益を得る場合などが典型的なものになります。

 ただし、もちろん、親告罪のままでも、従前通り、著作権法上、違法な行為であることには間違いなく、権利者らから告訴されたり、民事上の損害賠償等の請求がなされるリスクはありますので、その点はご注意ください。


(改正法案における著作権法第123条・・・第1項、第4項は略)

2 前項の規定は、次に掲げる行為の対価として次の各号のいずれかに掲げる行為を行うことにより犯した第119条第1項の罪については、適用しない。

一 有償著作物等について、原作のまま複製された複製物を公衆に譲渡し、又は原作のまま公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。次号において同じ。)を行うこと(当該有償著作物等の種類及び用途、当該譲渡の部数、当該譲渡又は公衆送信の態様その他の事情に照らして、当該有償著作物等の提供又は提示により著作権者等の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合に限る。)。

二 有償著作物等について、原作のまま複製された複製物を公衆に譲渡し、又は原作のまま公衆送信を行うために、当該有償著作物等を複製すること(当該有償著作物等の種類及び用途、当該複製の部数及び態様その他の事情に照らして、当該有償著作物等の提供又は提示により著作権者等の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合に限る。)。

3 前項に規定する有償著作物等とは、著作物又は実演等(著作権、出版権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権、出版権又は著作隣接権を侵害するもの(国外で行われた提供又は提示にあつては、国内で行われたとしたならばこれらの権利の侵害となるべきもの)を除く。)をいう。

2016年3月 7日 (月)

「ネット誹謗中傷対策」業者に対する弁護士からの不正競争防止法に基づく損害賠償請求

 裁判所サイトに掲載された知的財産高裁の控訴審判決です。

  → 知財高裁判決平成28年2月24日(PDF) 

 原審判決も掲載されています。

  → 東京地裁判決平成27年9月25日(PDF) 

 この訴訟の事案は、原告(控訴人、以下「原告」)が弁護士2名で、被告(被控訴人、以下「被告」)がネット誹謗中傷対策についてwebサイトを公開している業者です。

  請求は、被告のサイト上の表示(宣伝)の内容が、不正競争防止法で禁止する不正競争行為のうち、「品質等誤認表示」と「営業誹謗行為」に該当するとして、損害賠償(慰謝料)を求めるものです。
 弁護士が原告となっており、しかも、被告の行為が非弁行為(弁護士法違反)であるとの前提にたっての請求であることから、本件の訴訟提起にあたっては背景事情がいろいろとあるのかな、とも推測されるのですが、そこのところはわかりませんので、本稿では触れません。詳しい事実関係等は判決文をご覧ください。   

 また、不正競争防止法の最近の改正(営業秘密規定の追加等)により、本件行為当時は、「品質等誤認表示」は不正競争防止法2条1項の13号、「営業誹謗行為」は同じく14号でしたが、現在は1つずつずれて、14号、15号となっていますので、御注意ください。

  なお、一審東京地裁判決の時点では、原告訴訟代理人は、IT弁護士として有名な神田知宏弁護士のお名前が記載されていますが、知財高裁控訴審判決では、原告訴訟代理人の記載はなく、本人訴訟(といっても、原告は弁護士ですが)となっていますね。この点も事情はわかりません。 

 判決によれば、本件は,被告が被告webサイトにおいて,「弁護士は,料金が高い」,「法律のプロの力を借りなければ削除が難しいサイトだけに限って弁護士に依頼すれば,全体の費用を大幅に減らすことができます」等と表示し,「ネット削除に詳しい弁護士」として原告氏名を表示したことが,(1)原告よりも契約条件において有利であるかのような表示をしている点において品質等誤認表示に,(2)原告と被告とは競争関係にあるところ,原告の料金が不相当に高額であり,被告に比べて「コストパフォーマンスが悪い」との営業誹謗行為に、それぞれ当たり,これにより原告の営業権が侵害され,原告の名誉,信用に対する損害を被ったと主張して,慰謝料各80万円の支払を求める事案です。

  一審の東京地裁判決は、被告サイト上の表示は役務の品質に伴う価格について誤認させる表示とはいえない、原告の営業を誹謗する行為にも該当しないとして、原告の請求を棄却しました。 

 そして、知財高裁もこの原判決の判断を妥当なものとし、控訴を棄却しています。

  控訴審判決では、不正競争防止法に基づく請求の前提となる原告と被告との競業関係については一定の限度でこれを認めたうえで、被告の表示内容について、原判決を支持し、非弁行為を行うことを表示したものでもなく、品質誤認表示とはいえない、としました。そして、営業誹謗行為の主張についても、表示内容は、原告の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知、流布があったとは認められない、と判断しました。 

 結論はともかく、webサイトでの宣伝表示内容が、品質等誤認表示行為営業誹謗行為に該当するか、についての知的財産高裁の判断の一事例として参考になる事案です。

  そして、それ以上に、宣伝表示行為につき弁護士法違反(非弁行為)が疑われる事案に関し、弁護士が原告となって不正競争防止法違反で損害賠償請求訴訟を提起したこと自体が珍しい訴訟であり、今後はこういった問題が訴訟などの法的手続に進展していくことも充分に考えられるところでありますので、弁護士の業務独占、非弁行為についての判断の一事例としても、大変興味深い事案かと思います。

2016年3月 4日 (金)

クロレラチラシ配布差止請求事件の控訴審判決

 本日、特定商取引法消費者契約法の改正案が、閣議決定され、国会に提出されました。法案などの資料は、消費者庁サイトに掲載されています。これについては、また改めて書きたいと思います。

  → 消費者庁サイト(改正法案等) 

 ところで、本年(平成28年)2月25日、適格消費者団体の京都消費者契約ネットワークが原告となって、サン・クロレラ販売株式会社に対して、「日本クロレラ療法研究会」が作成名義の新聞折込チラシを配布することが、景品表示法の優良誤認表示および消費者契約法の不実告知に該当するものとして、チラシの配布の差止等を求めた消費者団体訴訟の控訴審判決が大阪高裁でありました。

 この訴訟の一審判決は、平成27年1月21日に京都地裁(橋詰コートですね。)で言い渡され、原告の請求が全て認められています。当ブログでは、景品表示法関係の行政処分や判決はほとんど記事にしていっているので、本来ならば、当然この一審判決も書いているはずのものなのですが、一昨年9月から昨年8月の間、ブログ更新が停まっていた期間の判決でしたので、残念ながら書いておりません。

  さて、今回の控訴審判決は、原告の完全勝訴だった一審判決を取り消して、請求を全て棄却する判決となりました。なお、京都消費者契約ネットワークでは、最高裁に上告したとのことです。一審判決、控訴審判決などは、京都消費者契約ネットワークのサイトに掲載されています。 

 → 京都消費者契約ネットワーク

  今回の控訴審判決は、「日本クロレラ療法研究会」名義のチラシの配布主体が、サン・クロレラ販売株式会社であることは一審同様に認定しました。 

 しかし、景品表示法の優良誤認に基づく差止に関しては、当時の表示内容のチラシは現時点では配布していないこと(一審判決後に配布をやめた。)、今後そういった内容のチラシを配布する(優良誤認表示を行う)おそれがあるとは認められず、差止の必要性がない、という理由でこれを否定しました。なお、チラシの表現が優良誤認表示に該当していたかどうかについては判断をしていません。

  そして、消費者契約法で規制されている勧誘の際の不実告知に該当するか否かについては、この規制の対象となる「勧誘」には、「事業者が不特定多数の消費者に向けて広く行う働きかけを指すものと解される。」、「不特定多数向けのもの等、客観的に見て特定の消費者に働きかけ、個別の契約締結の意思の形成に直接影響を与えているとは考えられないもの」は「勧誘」に含まれない、とし、新聞折込のチラシの配布は、特定の消費者に働きかけるものではなく、新聞を購読する一般消費者に向けられたものであり、個別の消費者の契約締結の意思の形成に直接影響を与える程度の働きかけとはいうことができないので、「勧誘」とは認められないとしました。また、ここでも、不実告知に該当するかどうかの判断はなされていません。

 つまり、景品表示法に基づく差止に関しては、差止の必要性がない、ことを理由に、消費者契約法に基づく差止に関しては、チラシ配布行為が「勧誘」に該当しないことを理由に、請求を認めなかったということになります。

 消費者契約法における「勧誘」の範囲の考え方としては、従前から政府解釈では、上記判決のように一般向けの広告、宣伝は該当しない、としていたのですが、これは狭すぎる、という解釈はあり、また、今回の消費者契約法改正作業の中でも立法的に範囲を拡大しようという声はあがっていました。ただ、一方で、経済界からの反対も大きく、結局、今回の改正案では「勧誘」の範囲拡大はなされないままとなっています。

【追記】(3/4)

 京都地裁の一審判決では、景品表示法の優良誤認を認定して差止を認めましたので、消費者契約法の不実告知についての判断を行っておらず、「勧誘」の解釈もしていません。

 今回の控訴審判決は、「逆転判決」というよりは、一審判決後に当該表示のチラシ配布をやめたことが差止の必要性がなくなったと判断されたもので、必ずしも、一審判決の判断を誤りとしたというわけでもないことになりますね。

【追記】(2017/1/24)

 最高裁判決が出ましたので、ブログを書きました。上告棄却ではありますが、「勧誘」要件についての新判断が出ました。

  → 「広告も消費者契約法上の「勧誘」に含まれるとの新判断(最高裁)」

2016年3月 1日 (火)

トマト酢飲料(特定保健用食品)の広告表示に対する健康増進法に基づく勧告(消費者庁)

 本日は、認知症の高齢者の家族に対するJRの損害賠償請求訴訟の最高裁判決が話題になっています。最高裁が高裁判決を破棄自判して、JRが敗訴したという結果の報道だけで、判決の中身(裁判所の具体的な判断内容)がまだ読めていませんので、現時点でのコメントは差し控えます。


 さて、消費者庁は、本日、ライオン株式会社(東京都墨田区)に対し、同社が製造販売する特定保健用食品「トマト酢生活トマト酢飲料」に関する新聞広告が、健康の保持増進の効果について、著しく人を誤認させるような表示であり、健康増進法31条第1項(誇大表示の禁止)に違反するものとして、勧告(健康増進法32条1項)を行っています。

 報道によれば、特定保健用食品の広告をめぐる勧告や、健康増進法の誇大表示禁止の規定に基づく勧告はいずれも初めてとのことです。

  → 「ライオン株式会社に対する健康増進法に基づく勧告について」
                                        (消費者庁・PDF)

 健康増進法は、国民の健康の増進の総合的な推進に関し基本的な事項を定めるとともに、国民の栄養の改善その他の国民の健康の増進を図るための措置を講じ、国民保健の向上を図ることを目的とする法律(1条)ですが、中には、受動喫煙の防止(25条)という規定があって、学校や病院、百貨店など公衆が集まるような施設では 利用者の受動喫煙を防止する措置を講ずるように努めなければならない、とされています。なので、そういった施設では、禁煙にしたり、喫煙場所を限定したりしないといけないわけですね。

 そして、今回の勧告のケースですが、特定保健用食品というのは、よく「トクホ」と略称されているもので、健康増進法26条1項などに基づいて、特別の用途のうち、特定の保健の用途に適する旨の表示をすることについて、消費者庁長官の許可又は承認を受けた食品です。しかし、医薬品ではありませんので、その用途の表示にあたっては、健康の維持、増進に役立つ、又は適する旨を表現するものであって、明らかに医薬品と誤認されるおそれのあるものであってはならない、とされています。

 本件では、ライオンが平成27年9月15日から同年11月27日までの期間、日刊新聞紙に掲載した広告において、次のような表示をしていました。

  •  健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令(平成21年内閣府令第57号)別記様式第3号に定める特定保健用食品の許可証票とともに、「ライオンの『トマト酢生活』は、消費者庁許可の特定保健用食品です。」
  •  本件商品についてのヒト試験結果のグラフとともに、「臨床試験で実証済み!これだけ違う、驚きの『血圧低下作用』。」
  •  本件商品を摂取している者の体験談として、「実感できたから続けられる!10年くらい前から血圧が気になり、できるだけ薬に頼らず、食生活で改善できればと考えていました。飲み始めて4ヶ月、今までこんなに長続きした健康食品はないのですが、何らか実感できたので継続できています。今では離すことのできない存在です。」
  •  「50・60・70・80代の方に朗報!」、「毎日、おいしく血圧対策。」、「“薬に頼らずに、食生活で血圧の対策をしたい”そんな方々をサポートしようとライオンが開発した『トマト酢生活』。」

 しかし、この商品が特定保健用食品として、「本品は食酢の主成分である酢酸を含んでおり、血圧が高めの方に適した食品です。」を許可表示とし、食生活の改善に寄与することを目的として、その食品の摂取が健康の維持増進に役立つ、又は適する旨を表示することのみが消費者庁から許可されているのであって、血圧を下げる効果があると表示することについて許可を受けているものではありませんでした。また、高血圧は薬物治療を含む医師の診断・治療によらなければ一般的に改善が期待できない疾患であって、この商品を摂取するだけで高血圧を改善する効果が得られるとは認められないものでした。

 上記の広告表示では、あたかも、血圧を下げる効果があると表示することについて消費者庁から許可を受けているかのように示し、また、薬物治療によることなく、本件商品を摂取するだけで高血圧を改善する効果を得られるかのように示す表示をしていたことになる、と消費者庁は判断し、勧告を行ったものです。

 今回の勧告は、(1)上記表示は、健康の保持増進の効果について、著しく人を誤認させるような表示であり、健康増進法に違反するものである旨を、一般消費者へ周知徹底すること、(2)再発防止策を講じて、これを役員及び従業員に周知徹底すること、 (3)今後、上記表示と同様の表示を行わないこと、が内容となっています。景品表示法の措置命令などと同様ですね。

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