フォト

weathernews

ツイッターでつぶやく

無料ブログはココログ

« 2015年12月 | トップページ | 2016年2月 »

2016年1月の記事

2016年1月29日 (金)

改正景品表示法・課徴金納付命令に関する考え方の公表(消費者庁)

 不当表示行為に対する課徴金の導入を内容とする改正景品表示法(平成26年11月改正)が今年4月1日から施行されます。

  この改正法施行にともなう「景品表示法施行規則」「課徴金納付命令の基本的要件に関する考え方」(以下、「考え方」)などが本日公表されています。また、課徴金制度に関する事業者向け説明会の開催の案内も同時に公表されています。   

(以下、条文番号は、原則として4月施行後のものとします。現行(3月まで)のものについては、現行○条と表記します。)

  → 消費者庁公表ページ 

 このうち、「考え方」(正式には、「不当景品類及び不当表示防止法第8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方」)は、今回導入される課徴金制度について、その運用の透明性および事業者の予見可能性を確保するために作成されたものです。

  「考え方」の構成は、まず景品表示法の不当表示規制のうち、課徴金の対象となる「優良誤認表示」「有利誤認表示」について概要を示したうえで(これらの規制自体は今回の改正で変更されていない。)、課徴金額の算定方法として、「課徴金対象期間」「課徴金対象行為に係る商品又は役務」「政令で定める方法で算定した売上額」を、想定例を示しながら解説しています。   

 そして、対象行為を行った事業者が、不当表示に該当することを「知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠った者でないと認められるとき」(景品表示法8条1項但書)には、課徴金の納付を命じられることはない、と規定されていることから、「相当の注意を怠った者でないと認められるか」否か、についての解説がなされています。これについては、既に景品表示法26条(現行7条)に基づいて公表されている「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」に沿うような具体的な措置を講じていた場合は、「相当の注意を怠った者でない」と認められると考えられるとしていますので、企業としては、この指針を遵守する体制を構築しておく必要があります。また、この点についても、「考え方」は、想定例をいくつか挙げています。

 続いて、「規模基準」(算定した課徴金額が150万円未満の場合には納付を命じられない。景品表示法8条1項但書。)の考え方および想定例が挙げられ、最後に「不実証広告規制」に関して、課徴金納付命令に関する景品表示法8条3項と、従前からの措置命令に関する景品表示法7条2項の両規定の関連について触れられていて、前者が「推定する」、後者が「みなす」とする効果の点が異なるが、その他は同様であるとして、景品表示法8条3項の適用についての考え方、「合理的」の判断基準や資料提出手続についても、後者に関する従前の運用指針の考え方が妥当するとされています。

2016年1月24日 (日)

「ネット広告がわかる基本キーワード70」(翔泳社)と消費者委員会専門調査会報告

 Twitter上で紹介されていた「ネット広告がわかる基本キーワード70」(MarkeZine編集部・翔泳社)を購入しました(Kindle版の電子書籍ですが)。 

 最近のネット広告事情を勉強しておこうと思ったからですが、本書では、これまでのインターネット広告の状況や現状がわかりやすく書かれています。また、広告倫理についても触れられています。

  「ネット広告がわかる基本キーワード70 (MarkeZine BOOKS)」 

Photo_2

 さて、昨年(平成27年)末に、消費者委員会特定商取引法専門調査会消費者契約法専門調査会にて、それぞれ調査会報告書がまとまりました。 

 詳しくは上記リンク先から読んでいただくとして(それほど大部ではありません。)、今回はやはり、インターネット広告関連のところだけ触れておきます。 

   → 特定商取引法専門調査会報告書 

   → 消費者契約法専門調査会報告書 

 各専門調査会の検討論点の中に、特定商取引法においては、「虚偽・誇大広告への取消権の付与」、「通信販売事業者の表示事項の追加」が、消費者契約法においては、「取消しの適用対象となる「勧誘」要件の拡大」がありました。 

 これらは必ずしもネット広告に限定されるものではありませんが、ネット取引が一般的になっている状況の中では、ネットによる広告の問題の検討が重要です。 

 しかし、業界からの強い反対意見もあり、今回の報告書では、結論として、新規の規制強化は見送られています。 

 ただ、特定商取引法の報告書では、この点につき、「特定商取引法に基づく表示義務の徹底や、虚偽・誇大広告に対する厳格な執行を行いつつ、平成26年に改正が行われた不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)の執行・運用状況や消費者契約法の適用の状況等も踏まえながら、必要に応じて、検討が行われることが期待される。」として、今後の検討課題とされ、また、通信販売事業者の表示事項の追加についても、「経済産業省において、割賦販売法の見直しに向けて所要の検討が行われているところ、同法の改正の進捗を踏まえた後、必要に応じて、検討が行われるべきである。」とされています。 

 消費者契約法の報告書では、勧誘要件の拡大(不特定の者に向けた広告への適用拡大)について、「裁判例を見ると、「勧誘」に不特定の者に向けたものが含まれない旨を示したと考えられる裁判例がある一方で、「勧誘」に不特定の者に向けたものが含まれることを前提としたと考えられる裁判例もある。そこで、これらの裁判例の双方を適宜紹介しつつ、必ずしも特定の消費者に対する働きかけでなければ「勧誘」に含まれないというわけではないことを逐条解説に記載すること等により、事業者や消費者、消費生活相談員等に周知するとともに、当面は、現行の規定の解釈や具体的な事案におけるその適用を通じて対応することが考えられる。」とされています。したがって、場合によっては、広告についても勧誘行為として、消費者契約法に基づく契約取消規定の対象となることを示唆しています。

2016年1月20日 (水)

最高裁判所を徳島へ、という提言

 報道で御存じの通り、現在、政府は、政府関係機関の地方移転を検討しています。
 ただ、中央官庁の移転には抵抗が大きく、結局現在のところ、俎上にのぼっているのは、消費者庁・国民生活センターの徳島移転と文化庁の京都移転となっているようです。

  文化庁について詳しくはないので触れませんが、消費者庁の徳島移転には反対せざるを得ません(ひとこと言っておきますと、徳島はいいところです。とくしまマラソンも素晴らしいマラソン大会です。)。   

 もちろん私も東京一極集中は是正されるべきと思いますが、それは本来行政機関が果たすべき機能が果たされるような移転でなければならないのは当然です。
 消費者庁は設置からの期間も短く、まだ組織としても充分ではないうえ、地方部局を全く持っていません。このような弱小官庁が地方に移転すれば、ますますその機能を果たすことはできなくなります。 

 当然ながら各地の弁護士会や消費者団体からは反対の意見が相次いでいるわけで、別に消費者庁の職員たちが地方への引っ越しが嫌だから、とかいう、公務員個人の身勝手な反対のレベルの問題ではありません。 

 しかし、消費者庁を担当する河野太郎大臣は、今のところ移転に前向きな方針を明らかにしており、本日の報道では、「20日朝の自民党の会議で「地方へ役所が行ったら仕事ができないぐらいの役所だったら、そんなもん潰した方がいい」と吠えました。」(TBSのニュース)と伝えられています。   
 それならば、もっと力のある財務省とか経済産業省とか文部科学省とかを移転したほうが効果があるのにと思うのですが、なぜ消費者庁なのか、上の河野発言の後半「潰したほうがいい」に力点があるのではないか、と勘ぐってしまいます。他の抵抗が強く、移せないから、政府としては格好をつけるための帳尻合わせなのでしょうけども。 

 さて、上に書きましたように反対意見はいろいろと出ており、各団体のサイトにも掲載されています。いちいち取り上げませんが、大阪弁護士会の意見書を参考にして、いくつかあげると(国民生活センターについては今回は割愛)、 

①地方移転によって「情報の集約・調査・分析」、「情報の発信・注意喚起」、「各省庁への措置要求」、「すき間事案への対応」等の様々なアクセスが阻害され、結果として司令塔としての機能が低下・後退することが懸念される。 

②緊急事態において、数時間内での対面の会議を実施し、官邸や省庁をまわっての情報収集と情報共有を行い、国民に情報を提供し、注意喚起する必要があり、、消費者庁が地方に移転した場合に現在と同じように迅速な対応を果たすことは極めて困難。 

③消費者庁に総合調整機能は消費者行政の司令塔・エンジン役としての役割強化が求められており、関係省庁との日常的な連携、消費者団体や事業者団体が消費者被害の未然防止などの取組を行うに当たって、新たな消費者問題を迅速に把握、対応することは不可欠で、そのためには正確で深い理解が必要であり、迅速・確実に指令を出すために消費者庁が地方にあるという状態は役割を著しく低下させる。 

④消費者庁が地方に移転すると、事実調査に多くの時間とコストがかかることが予想され、厳正かつ迅速な執行、見直し機能が阻害される可能性が極めて高い。 

⑤消費者庁は、総合調整を図るべく、関係省庁や消費者団体や事業者団体と調整し、必要な措置を執らなければならず、このような役割を大きく阻害する。 

⑥消費者政策においては、法改正を迅速かつ頻繁に行うことが重要だが、法改正においては、関係省庁との調整だけでなく、内閣法制局と頻繁に協議し、国会への対応が不可欠であり、法改正審議となれば、国会議員に個別に趣旨や内容説明を直接行うことも多いが、これらをテレビ会議や電話で行うことは限界があり、移転は消費者政策に計り知れないダメージを与える。 

などです。 私もその通りだと思います。

 もっとも、反対だけではいけないので、地方移転の弊害がなるべく少ないところはないかと対案を考えてみると、最高裁判所がいいのではないか、という結論になりました。 

 もともと司法予算獲得努力は不十分なところですし、司法機関ですので、中央行政官庁と頻繁に協議したり会議を行う場面もほとんどありません。国会対応も事業者団体との接触も不要。地方部局として各地にたくさん裁判所はあり、司法行政上の問題もありません。会議などはテレビ会議で充分できるはずです(と、河野大臣は言ってます。)。今のインターネット環境では必要な資料収集も充分可能ですし、必要な図書館くらいは、どこの官庁が移っても必要なので同じです。全国の裁判官会議などは、東京事務所を置いておけば充分でしょう。 

 最高裁判所の裁判手続が不便になるではないか、と心配のむきもあるかと思いますが、最高裁判所が審議する上告事件の裁判は、上告理由が限られていることもあり、裁判全体からすればごく一部ですし、おまけにそれら上告事件裁判のほとんどは、「弁論期日」すなわち当事者(弁護士を含む)が出頭しなければならない手続は開かれません。
 ほとんどの上告事件は上告したら、書面審理だけで、判決が送られてきます。なので、最高裁判所の法廷に行ったことのない弁護士もたくさんいます。私も、実際に最高裁判所の法廷で口頭弁論期日に出席したのは、30年以上の弁護士生活の中で1回だけです。 

 したがって、徳島に限らず、地方移転する国の機関としては、最高裁判所がもっとも適していると思いますし、ついでに同様の理由で、最高検察庁も移転してもいいのではないか、と思います。そのついでに、日本弁護士連合会が地方移転しても私は構いませんが、我々の会費で移転しなければならないので、それは反対(苦笑)

【追記】
 考えてみると、司法の最高機関が、行政府、立法府と離れた場所で公正な裁判を行うという点からも、いいアイデアではないかと思いました。

2016年1月18日 (月)

アイドルの恋愛禁止条項の効力についての判決

 本日の朝日新聞の報道によれば、アイドルグループの女性がファンとの交際を禁じた規約に違反したとして、東京都港区のマネジメント会社が、女性と交際相手の男性らに約 990万円の損害賠償を求めた訴訟の判決(1月18日)で、東京地裁の原克也裁判長は「異性との交際は幸福を追求する自由の一つで、アイドルの特殊性を考慮しても禁止は行き過ぎだ」と述べ、会社の請求を棄却した、とのことです。

 記事によれば、この判決では、「ファンはアイドルに清廉性を求めるため、交際禁止はマネジメント側の立場では一定の合理性はある」と理解を示す一方で、「異性との交際は人生 を自分らしく豊かに生きる自己決定権そのものだ」と指摘。損害賠償が認められるのは、アイドルが会社に損害を与える目的で故意に公表した場合などに限られ る、と判断した、とされています。
 この判決文自体は読めていませんので、正確にはわかりませんが、交際禁止条項が絶対的に無効とするものではなく、損害賠償義務が認められるのは限定的な場合である、と判断したのだと思います。
 この事案では、19歳の女性が2012年4月、「ファンと交際した場合は損害賠償を求める」などと定めた契約を会社と結び、グループとして活動を始めたが。13年12月ごろにファンの男性と交際を開始し、14年7月には辞める意思を伝えて、予定されていたライブに出演しなかった、とのことです。

 実は、ほぼ同時期に同じような契約条項が問題になった事件の判決が昨年ありました。これも判決文は入手できてませんので、報道記事によれば、ということになりますが、昨年9月18日の東京地裁判決では、交際禁止ルールを破ったアイドルグループの少女に、マネジメント会社が損害賠償を求めた訴訟で、ルールは妥当とする判決が出ています。当時15歳だった少女が2013年3月、マネジメント会社と専属契約を結び、「異性との交際禁止」などの規約を告げられグループとしてデビューしたが、10月に男性と映った写真が流出して交際が発覚しグループが解散となった、ということのようです。したがって、事実関係としては、こちらのほうがちょっと先ですね。
 そして、こちらの裁判の判決で東京地裁の児島章朋裁判官は、アイドルとは芸能プロダクションが初期投資をして媒体に露出させ、人気を上昇させてチケットやグッズなどの売り上げを伸ばし、投資を回収するビジネスモデルと位置付けたうえで、アイドルである以上、ファン獲得には交際禁止の規約は必要で、交際が発覚すればイメージが悪化するとして、会社がグループの解散を決めたのも合理的で、少女に65万円の支払いを命じた、とのことです。
 (追記:日経の報道によれば、こちらの判決は控訴されず確定しているようです。)

 この東京地裁の両判決の違いがどこから来るのかは、報道記事だけではわかりませんが、大変興味深い判決となっています。

 なお、お隣の韓国では公正取引委員会が、かなり以前から芸能プロダクションと芸能人との間の契約内容について、修正を命じるなどしています。
 日本では、今のところ、公正取引委員会がこのような契約内容に対してアクションを起こしたというのは聞いたことがありません。独占禁止法上の優越的地位濫用などが問題になると思われます。労働契約に優越的地位濫用が適用されるか否かについては微妙なところですが、芸能プロダクションと芸能人の契約関係や労働契約ではないと思いますので、優越的地位濫用となるかどうかを検討することは問題ないかと思います。もちろん、「恋愛禁止」というような個人の基本的人権とも関わる内容については独占禁止法だけではなく、憲法はもとより、民法上の公序良俗違反の問題も考察していく必要があろうかと思います。

 私も、アイドルの芸能契約に関して、恋愛禁止条項が絶対的に無効とまでは思いませんが、それが解除原因にとどまるのか、損害賠償義務まで負うのかといった点は十分に検討されるべき点かと思います。

 この点を考えていくと、ベッキーさんの問題もいろいろと関係してくるのですが、今回はここまで。

【追記】(2017/01/07)

本文記載の両事件の判決を読むことができましたので、「アイドルの恋愛禁止条項の効力についての判決(その2)」 をアップしました。

2016年1月16日 (土)

「実践PL法(第2版)」(日弁連消費者問題対策委員会編・有斐閣)

 この本は、出たのは昨年9月なのですが、最近いただいたのでご紹介します。 

  → 『実践PL法 第2版』(日弁連消費者問題対策委員会編・有斐閣)

Photo

  初版は、PL法(製造物責任法)が施行された1995年ですので、20年ぶりの改訂になります。 

 もちろん、施行の直後の出版では、理論面はともかくも、実際の裁判例は全く出ていませんので、その点不十分だったものが、この20年間の裁判例の蓄積を反映させた今回の第2版の出版は待望されていたものといえます。

  しかも、本書は日本弁護士連合会の消費者問題対策委員会に所属する製品安全被害救済実務に実績のある弁護士が執筆しており、その意味でも大変充実した内容になっています。

2016年1月 8日 (金)

ブログ「あたーにーあっとろー」完結(winny金子博士と壇弁護士)

 昨年末、壇俊光弁護士のブログ「あたーにーあっとろー」が完結しました。

 壇弁護士は、以前から、「壇弁護士の事務室」というブログを続けていますが、この「あたーにーあっとろー」は、それとは別で、壇弁護士によれば、「winny制作者金子勇氏こと博士の素顔があまりにも面白いので、弁護人である私の目から、事件を振り返ってつれづれなるままに書きつづってみる、壇弁護士の事務室のスピンアウトブログです。」とのことです。

 → 「あたーにーあっとろー」(壇俊光弁護士)

 winny事件について、ここでは詳細は省きますが、要するに、ゲームなどの違法コピーを容易にしたとして著作権法違反のほう助罪に問われた金子勇東大助手の刑事裁判で、1審は有罪、控訴審で逆転無罪の後、最高裁(上告審)で、2011年(平成23年)12月19日、上告が棄却され無罪が確定した事件です。2004年の金子氏の逮捕から、7年以上の事件です。壇弁護士は、この事件の弁護団の中心でした。
 しかし、残念なことに、この無罪確定の後2013年7月、金子氏は42歳の若さで急死します。

 このブログは、事件の性質上、かなり技術的にも、法律的にも、かなりマニアックな内容となってはいますが、天才プログラマー金子氏と壇弁護士との交流が、単に刑事被告人と弁護人との関係という以上に大変面白く書かれています。
 また、ブログが始まったのは、刑事事件の真っただ中であり、その後、途中休止期間がありましたが、金子氏の死去の後、壇弁護士は執筆を継続されており、その前後の壇弁護士の心境もうかがわれるものとなっています。

 口の悪いのを自覚しておられる壇弁護士は、最近、知人の新生児を抱いては写真を拡散するなど、好感度化のイメージ戦略にやっきになっておられますが、このブログも彼の一面をとらえることができるものといえるでしょう。

 最後に、このブログの「あとがき」を引用しておきます。
 これだけ書いたら、なんかおごってくれるであろう心優しい壇弁護士です。

「あとがき」(2015年12月19日「あたーにーあっとろー」より)

「この話を書き始めた2006年は、Winnyのネットワークを利用した情報漏えい系のウイルスが流行っていた時期でした。

当時、博士こと金子さんに対するメディアの扱いは酷く、まるで、マッドサイエンチストのような扱いでした。

しかし、実際の金子さんは、悪しき意図とは無縁の、純朴で、世間知らずな人物でした。

私の目の前にいる金子さんをみんなに知ってもらいたい。

本当は、被告人にそんな感情移入するのは、刑事弁護のプロフェッショナルとしては、冷静さを欠いて失格かもしれません。

でも、金子さんといると、そんなことがどうでも良いと思えてきたのです。

そういう想いからアターニアットローを書き始めたのですが、文章力ないわ、遅筆だわ、仕事忙しいわで、そんなこんなしている間に、事件が終わってしまって、金子さんの人生まで終わってしまって、当初の目的はどこにいったのやら状態になりました。

Winny事件の最高裁決定がでて、金子さんの無罪が確定した日から、今日でちょうど4年です。

Winny事件は、最高裁の裁判例集や判例六法に載ったりしましたが、Winny事件を知ってはいるけども金子さんを知らないという学生も出てきているようです。

私が、ちんたらしていた間に、Winnyは、昔話になりつつあるようです。

この物語が、金子さんという人を知り、また、思い出す切っ掛けになれば幸いです。」

2016年1月 7日 (木)

「個人情報保護委員会」が始動

 今回もマイナンバー・個人情報保護法関連になりますが、この1月1日から、これまでの特定個人情報保護委員会が改組され、個人情報保護委員会となりました。
これにより、これまで特定個人情報保護委員会が所掌していたマイナンバー法消費者庁が所掌していた個人情報保護法の両方が、この新しい個人情報保護委員会の所掌ということになります。
 さっそく、個人情報保護委員会のサイトができていますね。

  →   個人情報保護委員会サイト

 この改組は、昨年の両法の改正についての今年1月1日からの一部施行(全面施行の施行日は未定)によるものです。サイトには、この一部施行に基づく法文(つまり現行法)と全面施行後の法文などが掲載されるなど、法令関係jなどもアップデートされています。

 本来、個人情報保護委員会は、委員長ほか8名、つまり9名の委員会であり、これまでの特定個人情報保護委員会が5名でしたので、4名の委員の追加が必要であったところ、これは国会の同意人事であるため、改正後の国会のごたごたにより、追加人事の同意に至らないまま、人数不足の状態で発車していました。

 これが、今回の国会でようやく追加されることとなり、昨日、その候補者(同意人事案)が次の通りに報道されています。

○ 丹野美絵子     元国民生活センター理事
○ 熊沢春陽       日本経済社執行役員
○ 宮井真千子     パナソニック顧問
○ 大滝精一       東北大大学院教授

なお、従来からの留任の委員長、委員は次の通りです。

○ 堀部政男(委員長) 一橋大学名誉教授
○ 阿部 孝夫      元川崎市長
○ 嶋田実名子     元花王(株)コーポレートコミュニケーション部門理事
○ 手塚 悟       東京工科大学コンピュータサイエンス学部教授
○ 加藤久和       明治大学政治経済学部教授


2016年1月 5日 (火)

マイナンバーの取扱と刑罰について

 今回もマイナンバーのお話で恐縮です。 

 マイナンバーの取扱に関して、法律に違反した場合に刑罰が科せられるのか、つまり、犯罪になるのか、という点ですが、このあたりのところは、ネット上で見ていると、結構いい加減な情報が飛び交っています。要は条文を見ればいいのですが、少なくとも、うっかりとマイナンバーを関係ないところに渡してしまったとか、人から受領したとかいうだけでは刑罰の対象にはあたりません。 

 マイナンバーを含む個人情報の取扱については、マイナンバー法(個人番号法)個人情報保護法を見ていく必要があります。マイナンバー法個人情報保護法の特別法の地位にあるもので、マイナンバーを含む個人情報、すなわち「特定個人情報」は、個人情報保護法上の「個人情報」でもあるからですね。 

 それでは、まず、個人情報保護法に定められた民間事業者の義務に違反した場合に刑罰が科せられるか、というと、それほど多くの行為が刑罰の対象となっているわけではありません(本年1月1日施行分を含む)。現時点で施行されている個人情報保護法で、民間事業者が罰せられるのは、同法に基づく行政命令に違反した場合などに限られており、単に同法に定める義務に違反したというだけでは犯罪とはなりません。   
 ただし、現在は未施行の改正同法では、個人情報データベース等の取扱事務に従事する者などが、そのデータベース等をもち出して第三者に提供して利益を得る行為などが新たに刑罰の対象となっています(将来施行後の個人情報保護法83条。1年以下の懲役または50万円以下の罰金。)。これは、企業が保有する個人情報データベースなどを名簿業者に売って利益を得るような場合が想定されています。 

 次に、マイナンバー法違反での刑罰を見ていきますと、個人情報保護法よりも罰則の数は多くなっており、法定刑も懲役刑を含む重いものとはなっています。ただ、国などの職員に主体が限定されていたり、悪質な不正事案に限られています。なので、個人や民間事業者が、うっかりマイナンバーを流出させてしまった、とか、単に法定の対象外の目的で提供した、とか、取得してしまったというだけでは犯罪とはなりません。犯罪となるのは、故意犯であり、それも、番号利用事務、関係事務の従事者が正当な理由なく「特定個人情報ファイル」を提供したり、業務に関して知り得たマイナンバーを不正な利益を得る目的で提供、盗用したりした場合です。また、詐欺や暴力、不正アクセスなどの不正行為を用いてマイナンバーを取得したり、なりすましなど不正手段で番号カード等を取得したりする行為を行えば、犯罪となります。

2016年1月 4日 (月)

マイナンバー制度の違憲差止訴訟

 いよいよ、マイナンバー(個人番号)制度の本格実施が始まりました。 

 正月の新聞でも、マイナンバーに関するさまざまな記事が出ていましたが、まだまだ混乱は続いていますね。本格実施となって、これから、いろいろと実務的な問題点が浮かび上がってくるだろうと思います。 

 マイナンバー制度の導入にはこれまでから批判的な意見も多く、昨年12月1日に東京、大阪など各地で、この制度が憲法に違反するなどの理由で、制度を中止(差止)することなどを求める訴訟が一斉提起されました(別の日に提訴の地域もありましたが)。 

 当ブログの昨年最後の記事でも、雑誌「消費者情報」新年号のマイナンバー特集を紹介しました。その表紙の人、坂本団弁護士も大阪訴訟の代理人のお一人です(団長?)。 

 マイナンバー違憲訴訟の訴状は、東京地裁に提訴されたものが、「共通番号いらないネット」のサイトに掲載されています。 

マイナンバー違憲訴訟訴状(東京) 

 なお、私は大阪の訴状も拝見しましたが、当然ながら原告は異なる以外、主張の中身は全く同じです。以下、簡単にまとめておきます。 

 マイナンバー制度の危険性としては、まず、その本質的危険性として漏洩の危険性、名寄せ・突合の危険性、成りすましの危険性をあげ、さらに、マイナンバー制度の利用拡大による近い将来における危険性の増大、および、その他、性同一障害者、ペンネームの使用者、ストーカー被害者等の危険性安全対策の不十分性をあげています。 

 そして、原告らの権利・利益の侵害の内容としては、プライバシー権、人格自律権の侵害(憲法第13条で保障されたプライバシー権、原告らの同意なき収集・利用等による侵害、漏洩による直接侵害の危険性、プライバシー権侵害だけに止まらない人格権自律権等の侵害、性同一性障害者らの人格権侵害)が存在するとし、マイナンバー制度には、制度創設の必要性もなく、費用対効果も著しくバランスを失している、としています。 

 このようなことから、マイナンバー制度による権利侵害の危険性は極めて高く、これを除去、予防するには、原告らのマイナンバーの収集・保管・利用・提供を差し止めるべきであり、既に保存している原告らのマイナンバーを削除する必要がある、とし、それに加えて、原告1人当たり11万円の慰謝料等の支払を求めているものです。 

 このような違憲訴訟は、本件にかかわらず、なかなか困難なものではありますが、今後、マイナンバー制度の利用が拡がるにつれて、上記のような危険性が現実化し、被害も拡がっていくような事態になれば、考え直さなければならなくなるかもしれませんね。

2016年1月 3日 (日)

「ソーシャルメディア論 つながりを再設計する」(藤代裕之編著・青弓社)

  あけましておめでとうございます。 

      本年も変わりませず、よろしくお願いします。

  さて、今年最初は、本の紹介からです。   


    

 「ソーシャルメディア論: つながりを再設計する」(藤代裕之編著・青弓社) 

 情報ネットワーク法学会の研究会の成果をベースにして12名の共著で出版されたものです。

Photo

 

 実は、昨年11月には購入していて、共著者のうち、11月下旬の北九州市での情報ネット法学会研究大会に参加されていた4名の方にはサインもいただいていたのですが、読むのがすっかり遅くなり、この年末年始に読んでいました。

  現在、Twitterやfacebookに代表されるSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の今日に至るまでの歴史、技術、法を総括する第1部「歴史を知る」、その現状を、「ニュースメディア」「広告」「政治」「キャンペーン」「都市」「権利」「モノ」という7章で確認していく第2部「現在を知る」、そして、第3部「未来を考える」では、「メディア」「共同規制」「システム」「教育」「人」という視点で今後を考察、提言しています。 

 スマフォの急速な普及もあり、SNSはいろいろな場面でのコミュニケーションツールとなっており、その利便性とともに、さまざまな問題が生じています。しかし、個別の問題点をそれぞれに論じるものはあっても、その全体像をわかりやすく、歴史的な位置を含めて確認し検討する文献はあまりなかったのではないかと思います。

  この本では、いろいろな視点から、それぞれの著者によって書かれていますが、例えば、私の興味対象である「広告・表示」という分野からみても、第1部はもちろん、第2部のほとんどのところは相互に関係してきますし、第3部も同様です。
 「誹謗中傷」とか「表現の自由」とか「政治」というような他の分野を考えるうえでも、同様にそれぞれ関係することと思います。その意味で現在のインターネット社会での諸問題を考察するうえで大変参考になる本ではないかと思います。

« 2015年12月 | トップページ | 2016年2月 »