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2013年9月 5日 (木)

民法900条4号但し書きについての最高裁違憲判断と他の過去事案への影響力

 昨日は、朝から夕方まで裁判所で尋問期日でしたので書けませんでしたが、ご承知の通り、非嫡出子(婚外子)の法定相続割合についての民法の規定についての最高裁大法廷決定が昨日出ました(「判決」ではなく、「決定」ですね。)。

   

平成13年7月に開始した相続につき、民法の規定は、憲法14条1項に違反し無効でありこれを適用することはできないというべきである、としたもので、裁判官全員(本件は14名)の一致した意見となっています(3名の裁判官の補足意見有り。)。

 決定文は既に裁判所サイトに掲載されていますし、新聞各紙でも結構詳しく取り上げていますので、割愛します。
 この裁判では、当該民法規定について、違憲判断が下されるかどうか、という点と合わせて、違憲判断がなされる場合、他の事件に及ぼす影響、特に本件の相続開始当時(平成13年7月)以後の相続案件で、当該民法規定を前提としてなされた遺産分割協議、調停、審判の効力がどうなるのか、という点については、私たち法律実務家として、大きな関心を持っていたところです。
 つまり、この民法規定が違憲で無効であれば、それに基づいてなされた過去の事案の遺産分割はどうなるのか、やり直しができるのか、やり直すとすれば、一挙に多くの紛争が発生して混乱することは必至であり、どうするのか、ということです。
 この問題について、今回の最高裁決定では、下に引用しました通り、

               

「本決定の違憲判断は,Aの相続の開始時から本決定までの間に開始された他の相続につき,本件規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判,遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではないと解するのが相当である。」

               

として既に確定的となった過去の案件については影響を及ぼさないものとしました。法的安定性を重視した立場をとったわけです。この判断を見て、一票の格差問題の違憲判決の布石ではないか、という意見もネット上ではチラチラと見かけますが、どうでしょうか。

【追記】
 町村泰貴教授のブログで詳しく解説がされています。興味のある方はご覧下さい。
  → matimulog 婚外子差別違憲決定


               

  【4 先例としての事実上の拘束性について】(最高裁決定の抜粋)
               

 本決定は,本件規定が遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項に違反していたと判断するものであり,平成7年大法廷決定並びに前記3(3)キの小法廷判決及び小法廷決定が,それより前に相続が開始した事件についてその相続開始時点での本件規定の合憲性を肯定した判断を変更するものではない。
 他方,憲法に違反する法律は原則として無効であり,その法律に基づいてされた行為の効力も否定されるべきものであることからすると,本件規定は,本決定により遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項に違反していたと判断される以上,本決定の先例としての事実上の拘束性により,上記当時以降は無効であることとなり,また,本件規定に基づいてされた裁判や合意の効力等も否定されることになろう。しかしながら,本件規定は,国民生活や身分関係の基本法である民法の一部を構成し,相続という日常的な現象を規律する規定であって,平成13年7月から既に約12年もの期間が経過していることからすると,その間に,本件規定の合憲性を前提として,多くの遺産の分割が行われ,更にそれを基に新たな権利関係が形成される事態が広く生じてきていることが容易に推察される。取り分け,本決定の違憲判断は,長期にわたる社会状況の変化に照らし,本件規定がその合理性を失ったことを理由として,その違憲性を当裁判所として初めて明らかにするものである。それにもかかわらず,本決定の違憲判断が,先例としての事実上の拘束性という形で既に行われた遺産の分割等の効力にも影響し,いわば解決済みの事案にも効果が及ぶとすることは,著しく法的安定性を害することになる。法的安定性は法に内在する普遍的な要請であり,当裁判所の違憲判断も,その先例としての事実上の拘束性を限定し,法的安定性の確保との調和を図ることが求められているといわなければならず,このことは,裁判において本件規定を違憲と判断することの適否という点からも問題となり得るところといえる(前記3(3)ク参照)。
 以上の観点からすると,既に関係者間において裁判,合意等により確定的なものとなったといえる法律関係までをも現時点で覆すことは相当ではないが,関係者間の法律関係がそのような段階に至っていない事案であれば,本決定により違憲無効とされた本件規定の適用を排除した上で法律関係を確定的なものとするのが相当であるといえる。そして,相続の開始により法律上当然に法定相続分に応じて分割される可分債権又は可分債務については,債務者から支払を受け,又は債権者に弁済をするに当たり,法定相続分に関する規定の適用が問題となり得るものであるから,相続の開始により直ちに本件規定の定める相続分割合による分割がされたものとして法律関係が確定的なものとなったとみることは相当ではなく,その後の関係者間での裁判の終局,明示又は黙示の合意の成立等により上記規定を改めて適用する必要がない状態となったといえる場合に初めて,法律関係が確定的なものとなったとみるのが相当である。
 したがって,本決定の違憲判断は,Aの相続の開始時から本決定までの間に開始された他の相続につき,本件規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判,遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではないと解するのが相当である。

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