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2012年2月の記事

2012年2月29日 (水)

セミナー「企業不祥事における実務対応」(日本CSR普及協会近畿支部)

 今日は、大阪弁護士会館にて、日本CSR普及協会近畿支部の第3回セミナー「企業不祥事における実務対応」(近弁連共催、関経連後援)がありました。

 昨年11月の第2回セミナー「独占禁止法における優越的地位の濫用に関する規制」は私どもの消費者・公正競争研究会の担当だったので準備などが大変でしたが、本日は、参加のみすればということでお気楽に聴かせていただきました。今回の担当はCSR・内部統制研究会です。
 なかなか面白かったのですが、特にパネルディスカッションでの、コーディネーター山口利昭弁護士が、米田秀実弁護士に無茶振りで体験話を語らせるというのが、会場を沸かせました。他に、日本ハムの宮地敏通氏、木曽裕弁護士、上谷佳宏弁護士のお話もそれぞれ実務に即した大変有意義なもので、企業の方や弁護士で満員の会場も充分満足されたものと思います。
 ご存じかと思いますが、山口利昭弁護士の有名ブログはこちら
 → 「ビジネス法務の部屋」

 次回は7月に雇用・労働研究会の担当で開催されますので、是非、会員になっていただき参加いただければと思います(現在は会員外でもOKなのですが。)。

 なお、日本CSR普及協会近畿支部には、上に出てきた3つの研究会があるのですが、今回のような大規模なセミナーではなく、少人数での研究会を2,3ヶ月に1回、各研究会の定例会が開催されています。これも本来は協会会員向けですが、まだ立ち上げたばかりということで、今のところは企業も弁護士も非会員でも参加OKにしています。

 私が座長をしている消費者・公正競争部会は、前回までは広告・表示の問題を取り上げておりましたが、次回からは、立法化が進められている「集団的消費者被害救済訴訟制度」を取り上げる予定です。企業としても無視できない新しい制度ですので、興味のある企業の方々や弁護士は参加いただければ幸いです。

 次回研究会は、4月18日(水)午後6時半~(於:大阪弁護士会館)の予定で、集団的消費者被害救済訴訟制度の概要解説を私が報告いたします。もし参加(入会)を希望される方は私宛か、担当の藪内俊輔弁護士( s-yabuuchi@kitahama.or.jp ※@は半角に変えてご利用ください。)にご連絡ください。

久し振りに「新聞の特殊指定」の話など(独禁法)

 2月28日、東京高裁は、読売新聞が原告となって、新聞発行部数に関する週刊新潮の記事で名誉を傷つけられたとして、新潮社とフリーライター黒藪哲哉氏に対して損害賠償などを求めていた訴訟の控訴審判決を言い渡し、被告らに計385万円の支払いを命じた1審判決を支持して控訴を棄却しています。いわゆる「押し紙」問題が争点となっていた訴訟ですね。「押し紙」が存在するとすれば、販売店に対する押付けという以上に、広告主に対する詐欺行為という側面も出てくるわけです。今の所、報道されている以上には判決内容はわからないので、結論の紹介にとどめます。

 さて、新聞業界については、独占禁止法上の大きな問題が2つあります。1つは著作物再販制度の問題、もう1つは不公正取引の「特殊指定」の問題です。これらについては、2007年6月5日に2つの記事を当ブログで書いてますので、詳しくはそちらをご覧下さい(ちょっとわかりにくくて申し訳ありませんが)。

 → 「新聞再販制度と新聞宅配契約の実態」(07/6/5)

 → 「新聞業の特殊指定」(07/6/5)

 なお、記事中の特殊指定に関する公取委資料のリンクは切れていますので、こっちをどうぞ。 → 公取委サイト「特殊指定の見直しについて」

 特に特殊指定については、完全に法律違反の指定であり、公正取引委員会もそれを自覚して改廃しようと以前からしているのに、新聞業界および関連の政治家たちからの強い抵抗でそのままになっているというものですね。

 ところが、今日読んだ、雑誌「公正取引」(公正取引協会)に、日本経済新聞社社会部の川口記者が、「『新聞特殊指定』議論再開を」という記事を書いておられます。これは、新聞記者自身が、新聞の特殊指定について現在の存在意義に疑問を呈しているもので、注目されるものです。

 日経新聞と言えば、最近「Googleの脳みそ」を出版された論説委員の三宅伸吾氏も若い頃から独占禁止法問題について取材を続けられ、20年ほど前には私も日弁連の米国取材の時にご一緒しましたし、その際、新聞業界の記者クラブや販売店体制についてのカルテル体質についての問題点も指摘いただいたことを鮮明に覚えております。三宅氏はその後、弁護士会のカルテル体質についての本を出されたりしておりますが、是非、新聞業界のカルテル体質についても思い切った改革を論じていただきたいと切望する次第であります。

2012年2月27日 (月)

チュッパチャプスvs楽天商標権侵害訴訟知財高裁判決について

 楽天が運営するインターネット上のモール(商店街)への出店者が商標権侵害商品を販売していたことにつき、商標権侵害の責任を負うか否かが争われていた事件について、知的財産高裁が2月14日に判決を言い渡したことは先日ご紹介しました。
     → 「チュッパチャプス対楽天商標権侵害事件の知財高裁判決と

阪急の名称に関する裁判」(2/15)

 判決文が公開されたら改めて書くといいながらブログ更新が遅くなりすみません。もっとも判決は100ページに及ぶものであり(裁判所サイトに出ています。)、今後専門の先生方がいろいろ書かれるところかと思いますので、判決を読んだ雑感的な紹介ということでご勘弁ください。こういったモール事業者やオークション事業者などネットショッピングの関与事業者の責任というのは今後もいろいろ議論されるところかと思いますので、一つの重要な判断がなされたことは間違いありませんね。

 判決では、まず原判決の判断に対する控訴人(チュッパチャップス側)の主張が整理されています。原判決は、楽天が、「譲渡のための展示」「譲渡」の行為を行ったといえるか、という点での判断において、楽天はその主体ではないとして責任を認めなかったのですが、これについて詳細に反論しています。
 この控訴人の反論主張部分は、あの「カラオケ法理」関連の「ロクラクⅡ事件」最高裁判決を引用したり、諸外国(欧米、韓国)での関連判決例の紹介もあったりで大変参考になります。オークション事業者のイーベイに関する偽ブランド品事件は以前に当ブログでも紹介しましたが、他の同種裁判例とともに、この控訴人主張部分でまとめられており、ありがたいことです。

 その他、プロバイダ責任制限法などとの関連主張などもあり、対する楽天側の反論主張とともに、当事者の主張部分もなかなか読み応えがあります。

 で、知財高裁の判断部分は、判決の77ページ以降となりますが、規約等を詳細に検討して「楽天市場」の運営などについて事実認定したうえで、最後に検討、判断を示しています。この最後の結論の骨の部分は、99ページ以降の4ページです。

 この部分を抜粋して貼り付けておきます。省略、下線等は川村によるものです。

(商標権侵害について)
「本件における被告サイトのように・・(略)・・場合において,上記ウェブページに展示された商品が第三者の商標権を侵害しているときは,商標権者は,直接に上記展示を行っている出店者に対し,商標権侵害を理由に,ウェブページからの削除等の差止請求と損害賠償請求をすることができることは明らかであるが,そのほかに,ウェブページの運営者が,単に出店者によるウェブページの開設のための環境等を整備するにとどまらず,運営システムの提供・出店者からの出店申込みの許否・出店者へのサービスの一時停止や出店停止等の管理・支配を行い,出店者からの基本出店料やシステム利用料の受領等の利益を受けている者であって,その者が出店者による商標権侵害があることを知ったとき又は知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるに至ったときは,その後の合理的期間内に侵害内容のウェブページからの削除がなされない限り,上記期間経過後から商標権者はウェブページの運営者に対し,商標権侵害を理由に,出店者に対するのと同様の差止請求と損害賠償請求をすることができると解するのが相当である。」

「もっとも商標法は,その第37条で侵害とみなす行為を法定しているが,商標権は「指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する」権利であり(同法25条),商標権者は「自己の商標権・・・を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し,その侵害の停止又は予防を請求することができる」(同法36条1項)のであるから,侵害者が商標法2条3項に規定する「使用」をしている場合に限らず,社会的・経済的な観点から行為の主体を検討することも可能というべきであり,商標法が,間接侵害に関する上記明文規定(同法37条)を置いているからといって,商標権侵害となるのは上記明文規定に該当する場合に限られるとまで解する必要はないというべきである。」

(本件においては)「ウェブサイトを運営する一審被告としては,商標権侵害の事実を知ったときから8日以内という合理的期間内にこれを是正したと認めるのが相当である。」

(不正競争行為について)

「(前記同様)一審被告の本件での対応を前提とすれば,一審被告による「楽天市場」の運営が一審原告に対する不正競争行為に該当するとはいえず,上記主張は理由がない。」

2012年2月20日 (月)

宮川光次裁判官の反対意見(光市母子殺害事件最高裁判決)

 本日の光市母子殺害事件の最高裁判決の補充です。

 この判決には、金築誠志裁判官の補足意見と宮川光治裁判官の反対意見が付いています。多数意見と共にいずれも見ていただきたいものですが、特にここでは宮川裁判官の反対意見をコメントなしに紹介しておきます。少し長くなりますが、ほぼ省略なしです。
 ここでいう反対意見は、無期懲役刑にすべきだという主張ではなくて、高裁に再度差し戻して高裁で量刑事情をさらに審理したうえで判断すべきとするものです。私は非常に重要な意見だと思いますが、いろいろな考え方があるところであり、読者の方がそれぞれ受け止めていただければ幸いです。

【宮川裁判官の反対意見】

1 私も,多数意見と同じく,被告人の本件行為は,(1) 被害者に対する殺人,強姦致死,(2) 被害児に対する殺人,そして,(3) 窃盗にそれぞれ該当すると考える。被告人の弁解は不合理であり,遺族がしゅん烈な被害感情を抱いていることは深く理解できる。被告人の刑事責任は誠に重い。私が多数意見と意見を異にするのは,次の点である。被告人は犯行時18歳に達した少年であるが,その年齢の少年に比して,精神的・道徳的成熟度が相当程度に低く,幼いというべき状態であったことをうかがわせる証拠が本件記録上少なからず存在する。精神的成熟度が18歳に達した少年としては相当程度に低いという事実が認定できるのであれば,そのことは,本件第1次上告審判決(略)がいう「死刑の選択を回避するに足りる特に酌量すべき事情」に該当し得るものと考える。また,精神的成熟度が相当程度低いという事実が認定できるのであれば,強姦の計画性を含め本件行為の犯情等の様相が変わる可能性がある。以下,詳述する。

2 いわゆる永山事件の差戻し前控訴審は,被告人が劣悪な生育環境であったことをとらえ,「犯行当時19歳であったとはいえ,精神的な成熟度においては実質的に18歳未満の少年と同視し得る状況にあったとさえ認められるのである」として,これを量刑判断の一事情として1審の死刑判決を破棄し,無期懲役を言い渡した(略)。これに対し,最高裁は,犯行時19歳3か月ないし19歳9か月の年長少年であった「被告人の精神的成熟度が18歳未満の少年と同視しうることなどの証拠上明らかではない事実を前提として本件に少年法51条の精神を及ぼすべきであるとする原判断は首肯し難い」として,破棄し差し戻した(略)。この最高裁判決は,被告人の精神的成熟度が18歳未満の少年と同視し得ることが証拠上明らかな場合に少年法51条の精神を及ぼすことができるかどうかについては,これを否定してはいない。本件第1次上告審判決は,被告人の生育環境について,「実母が被告人の中学時代に自殺したり,その後実父が年若い外国人女性と再婚して本件の約3か月前には異母弟が生まれるなど,不遇ないし不安定な面があったことは否定することができないが,高校教育も受けることができ,特に劣悪であったとまでは認めることができない」とした上,「結局のところ,本件において,しん酌するに値する事情といえるのは,被告人が犯行当時18歳になって間もない少年であり,その可塑性から,改善更生の可能性が否定されていないということに帰着する」が,そのことは,「相応の考慮を払うべき事情ではあるが,死刑を回避すべき決定的な事情であるとまではいえ」ないとしている。第1次上告審判決は,被告人の生育環境が特に劣悪であったとまでは認められないとし,被告人が18歳になって間もないということでは死刑を回避する決定的事情とはなり得ないといっているのであり,被告人の精神的成熟度が18歳未満の少年と同視し得る状態であったことが証拠上認められる場合に,それが,「死刑の選択を回避するに足りる特に酌量すべき事情」に該当するということを,否定してはいない。

3 もっとも,原判決が指摘しているとおり,少年法51条1項は,死刑適用の可否につき18歳未満か以上かという形式的基準を設けているのであり,精神的成熟度及び可塑性の要件を求めていないのであるから,精神的成熟度が不十分であるからといって少年法51条1項を準用し死刑の選択を回避すべきであるということには直ちにならない。しかしながら,「少年司法運営に関する国連最低基準規則(北京ルールズ)」(1985年)は,少年保護の基本理念に基づいて,「死刑は,少年が行ったどのような犯罪に対しても,これを科してはならない」としているのであり(17条2項。「少年」とは,各国の法制度の下で犯罪のゆえに成人とは異なる仕方で扱われることのある児童もしくは青少年である。2条2項(a)),留保的表現がなく,およそ,少年について死刑の選択は許さないという考えが明瞭である。18歳以上の少年に死刑を認める少年法51条1項は,この趣旨に合わない。もっとも,上記北京ルールズは,国連総会で採択された決議にすぎず,法的拘束力はない。北京ルールズ自らも「この規則の実施は,各加盟国の経済的,社会的・文化的条件に応じて進められなければならない」(1条5項)としている。我が国は,指導理念としてこれを尊重し,実現に向けて努力すべきものであり,少なくとも,少年法51条1項は死刑をできる限り回避する方向で適用されなければならないと思われる。また,刑法41条は14歳未満の者の行為は罰しないとしており,16歳未満の者は故意の犯罪行為により被害者を死亡させた場合であっても家庭裁判所から検察官へ原則送致はされない(少年法20条2項)。これらの背景には,行為規範の内在化が特に進んでいない年少少年の行為については,刑法的に非難することは相当でなく,刑罰による改善効果も威嚇効果(犯罪防止効果)も期待できないという考えがあると思われる。
 以上を総合して考えると,精神的成熟度が少なくとも18歳を相当程度下回っていることが証拠上認められるような場合は,死刑判断を回避するに足りる特に酌量すべき事情が存在するとみることが相当である。

4 少年刑事事件の審理においては,「少年,保護者又は関係人の行状,経歴,素質,環境等について,医学,心理学,教育学,社会学その他の専門的智識特に少年鑑別所の鑑別の結果を活用」するよう努めることが要請されている(少年法50条,9条,刑訴規則277条)。この専門科学的解明の要請は,本件のように死刑を適用するかどうかが争点となっている事件では,特に強く働くものといわなければならない。本件では,少年調査記録のうち鑑別結果通知書(略)と少年調査票(略)が取り調べられている。鑑別結果通知書の総合所見は,被告人の「内面の未熟さが顕著である」とし,自殺した「母親と父親からの見捨てられ感は強烈」であるとしている。少年調査票の家庭裁判所調査官3名の意見は,小学校入学前後から激しくなった両親の諍い,父親の暴力,被告人の被虐意識,中学1年時の母親の自殺等が被告人の精神形成に影響を与えたことを示している。父親の暴力は,1審,第1次控訴審,第1次上告審では取り上げられていないが,12歳時における母親の自殺とともにこの事実が被告人の幼少年期において与えた影響をどう評価するかは,本件の重要なポイントでもあると思われる。以上について,原判決は,同情すべきものがあり,人格形成や健全な精神の発達に影響を与えた面があることも否定できないが,「経済的に何ら問題のない家庭に育ち,高校教育も受けることができたのであるから,生育環境が特に劣悪であったとはいえない」とするにとどめている。しかしながら,家庭裁判所調査官は,「3歳以前の生活史に起因すると思われる深刻な心的外傷体験や剥奪,あるいは内因性精神病の前駆等により人格の基底に深刻な欠損が生じている可能性も疑える」と記述しているのであり,鑑別結果通知書中においても,顕著な内面の未熟さのほか,幼児的万能感の破綻,幼児的な自我状態が指摘されている。そして,家庭裁判所調査官は心理テスト(略)結果の解釈として,「いわゆる罪悪感は浅薄で未熟であり,発達レベルは4,5歳と評価できる」と記述し,バウムテスト(ツリーテスト)でも「幼稚で自己愛が強く」と記述している。これについて,原判決は,「TATの結果のみから精神的成熟度を判断するのは相当でない上,前後の文脈に照らすと,この記載は,主として被告人の罪悪感に関する発達レベルを評価したものと解される」と述べているが,それ以上の付言はない。罪悪感に関する発達レベルとは,行為規範の内在化がどの程度進んでいるかということであり,行為の是非を弁別する能力の発達レベルそのものであろう。それは,精神的成熟度の重要な指標と考えるべきものでもあろう。「4,5歳」であるとの評価には疑問もあるが,家庭裁判所調査官の認識は被告人においては行為規範の内在化はかなり遅れており,人格的成長は幼いというものであったと思われる。原審においては,これら少年調査記録の内容を基に,被告人の人格形成や精神の発達に何がどのように影響を与えたのか,犯行時の精神的成熟度のレベルはどのようなものであったかを分析し,測るという作業が必要であった。

5 本件においては,被告人側から,B教授の「犯罪心理鑑定報告書」(略)とC教授の「精神鑑定書」(略)が証拠として提出されており,2人の証人尋問が行われている。前者は,それぞれ2時間前後をかけた8回の被告人面接調査を行い,幾つかのテストを実施したほか,父親に4回,母親の妹,義母,高校時代の指導教員,同級生2名にそれぞれ1回の面接調査を行い,各判決書,公判記録,捜査段階の調書,書簡等の資料,前記少年調査記録を参照した上での,犯罪非行臨床心理学の専門家としての知見に基づく鑑定報告である。後者は,被告人とそれぞれ2時間をかけて3回の面接調査を行い,父親,友人1名,被告人の祖母及び母親の妹に面接調査を行い,その他捜査段階の調書を除く前記資料を参照した上での,精神医学,とりわけ青少年の精神病理に関する研究者・医師としての専門的知見に基づく鑑定報告である。B鑑定における「母胎回帰ストーリー」という動機が存在するという鑑定意見は採用できない。しかし,被告人が母親の自殺による急激な自己愛剥奪の影響を強く受けていること,父親との関係での被虐待経験の後遺症があること,身体的性の成熟に対してそれを統制できる精神的成熟が著しく遅れていること,人格の統合性,連続性が乏しく,社会的自我の形成がなされていなかったこと等の意見は,無視できない説得力を有していると思われる。また,C鑑定意見のうち,被告人の人格発達は極めて幼いこと,その原因は,被告人が父親の暴力に母親とともにさらされ,その恐怖体験が持続的な精神的外傷となっており,またそうした暴力を振るう父親に恐怖しながら,強い父親に受け入れてもらいたいという矛盾する感情に引き裂かれてもいること,こうした生育歴の中で被告人は同年齢の者よりも幼い状態であったが,12歳の頃,母親が苦しみ抜いて自殺したことを目撃するという強烈で決定的な精神的外傷体験があり,この結果として,被告人の精神的発達はこの時点の精神レベルに停留しているところがあるという意見は,説得力があると思われる。二つの鑑定意見は,被告人が述べることのみによらず総合的に判断しているとみることができるが,相互に関連し合い,前記少年調査記録とも相応している。

6 原判決は,被告人がそれまでの供述を原審において翻し虚偽の弁解を弄しているとしてこれを厳しく批判し,このこと自体,被告人の反社会性が増進したことを物語り,改善更生の可能性を大きく減殺する事情といわなければならないと指摘している。私も,被告人の原審における供述態度を誠に残念に思う。しかし,人は関係の中でしか成長しないのであって,人間的成熟が12歳かそれを幾ばくか超えたところで停滞しているのであれば,その状態で教育的処遇を受けることなく,拘置の歳月を8年,9年と過ごしたとして,反省・悔悟する力は生まれない。不合理で破綻しているとしかみることができない弁解に固執していることは事実であるが,これを原判決のように「反社会性が増進した」と厳しく批判するのは酷であろう。被告人は,適切な処遇を得れば,時間を必要とするが,自己を変革し犯した罪と正しく向き合うよう成長する可能性があるとみることもできるのであり,前記鑑別結果通知書も,被告人について,公判段階を通じ,被害者の苦悩についての厳しい現実等に直面させる中で,真に贖罪の気持を喚起させることが必要であるが,その作業は,事件の重さに応じた相応の期間を要し,また,精神的なサポートを受け,ある程度安定した状態にないと困難であるため,定期的なカウンセリングが望まれるとしている。記録によると,被告人は精神安定剤を多量に服用するという日々が続いていたことがうかがわれるが,平成16年2月,自ら進んで教誨師による教誨を受け始める等,年月を経て,現在は,次第に事実と向き合い,贖罪の気持ちを高めつつあることをうかがうことができる。

7 被告人の精神的成熟度が相当程度低いということが認定できるのであれば,本件犯行の犯情(計画性,故意の成立時期等)及び犯行後の行動に関わる情状についての理解も変わってくる可能性がある。本件は,被告人の人格形成や精神の発達に何がどのように影響を与えたのか,犯行時の精神的成熟度のレベルはどのようなものであったかについて,少年調査記録,B鑑定及びC鑑定を的確に評価し,さらには必要に応じて専門的智識を得る等の審理を尽くし,再度,量刑事情を検討して量刑判断を行う必要がある。したがって,原判決は破棄しなければ著しく正義に反するものと認められ,本件を原裁判所に差し戻すことを相当とする。

光市事件、多摩談合事件と後見人横領国賠事件の判決

 週末から仕事で東京に行っていたところ、土曜の夜から体調を壊してしまい、昨夕大阪に戻りましたが、おかげさまで調子も戻ってきたようです。前回書いたチュッパチャプス事件の判決文も公開されていますので、それについて書きたいところですが、そんなこともあって次回に回します。(追記:次々回になります。)

 さて、今日は、裁判関係の注目されるニュースが多いですね。特に、光市母子殺害事件での上告棄却と、多摩談合事件の逆転判決の2つの最高裁第一小法廷判決は、既に報道もかなりなされていますが、重要な判決です。両方とも既に裁判所webサイトに掲載されています。
 光市の事件はいろんな面で世間からも注目を集めている事件ですので、今夜以降、新聞、テレビで大きく取り上げられることでしょうね。ただ、死刑判決の重みは社会全体として冷静な立場から考えていかなければならない重大な問題だと思います。死刑の存廃の議論、存続するとして死刑適用の量刑基準、死刑判決後の執行の問題、無期刑のあり方など様々な問題が含まれます。なお、無期懲役で7年やそこらで仮釈放なんていう実態はないことは、昨年の当ブログ記事「『23年度犯罪白書のあらまし』と『無期懲役刑の仮釈放の実態』(法務省)」を参照下さい。(追記:今回の最高裁判決の宮川裁判官の反対意見を、次の記事で紹介しました。)

 多摩談合事件は下水道談合事件に関する公正取引委員会の審決取消事件ですが、既に神戸大学の泉水文雄教授がブログで解説されています。

 → 「独占禁止法の部屋ブログ」

 もう一つ、最高裁判決ではありませんが、報道によれば、実務上、今後大きな影響を与えるのではないかと思われる判決が広島高裁であったようです。
 これは、成年後見人が財産を横領したとして、事故により脳障害を負った男性が横領金の賠償を国(後見人選任は家庭裁判所)に対して求めていた裁判で、一審の地裁判決では請求が認められなかったようですが、本日の控訴審判決で「選任後、長期間にわたって横領を防げなかった家裁に過失があった」として、請求金額の一部231万円の賠償を国に命じた、というものです。判決の詳細については不明ですが、後見人の行為による財産トラブルは最近も報道されているところであり、家庭裁判所の過失が認定されたとなると、今後の実務運用などにかなり影響が出るであろうと思われます。私も成年後見人をやっておりますので、直接関係してくるところです。

2012年2月15日 (水)

チュッパチャプス対楽天商標権侵害事件の知財高裁判決と阪急の名称に関する裁判

 報道によれば、「チュッパチャプス」の商標権管理会社が、楽天を商標権侵害で損害賠償を請求した事件については、東京地裁判決の際に当ブログで取り上げました(当時はあえて商標名を伏せましたが)。

 → 「出店者の商標権侵害行為に関する電子モール運営事業者(楽天)

の責任についての判決(東京地裁)」(10/9/6)

 これは、「楽天市場」でキャンディー「チュッパチャプス」のロゴを使った商品を無断販売した業者がいたことを理由に、楽天が商標権を侵害したことになるか否かが問題となったものです。結論は控訴棄却で原判決が支持された訳ですが、原判決が、楽天が販売主体にあたらないことなどを理由として侵害を認めなかったのに対して、知財高裁判決は、販売店の侵害行為を放置したような場合には損害賠償の責任が生じる可能性を示唆したようですね。判決文が公表されればまた紹介したいと思います。
 (【追記】2月27日付で書きました。 → こちら
 昨日、この話を聞いたとき、結論部分が伝わってこなかったため、間違えて逆転判決などとtwitterfacebookに流してしまいました。誤報ですので、申し訳ありませんでした。

 商標関連で、もう1つ報じられているのは、阪急電鉄が不正競争防止法違反(と思われる)として、京都市下京区の「阪急住宅」に商号の使用差し止めや損害賠償などを求める訴訟を大阪地裁に起こし、14日に第1回口頭弁論が開かれた、というニュースです。これも報道記事以上にはわからないのですが、被告側はかなり以前からこの商号を使用してきたようです。

 以前は商標法で保護されるのは「商品」に関してのみで、「サービス(役務)」についても商標(サービスマーク)が認められるようになったのは、平成3年の商標権改正以後のことです。それまでは電鉄会社やホテル、飲食店などのサービスについては、商標権の保護対象になっていませんでした(なので、「うどんすき」事件などがあったわけですが。)。おそらく、本件はそれより以前から被告が「阪急」を使用していたため、商標法ではなく、不正競争防止法による請求を行っているのだろうと思います(報道からの推測で、詳しくは不明ですが)。

 実は、私も弁護士成り立ての今から四半世紀以上前に、阪急電鉄から同様に不正競争防止法違反ということで損害賠償と差止めを求められて裁判になった事件を被告側代理人として扱ったことがあります。古い事件なのである程度はご紹介してもよいかと思いますが、被告側は飲食関係の専門学校で、つまり双方ともサービスマークとして使用している関係になります。もちろん当時は上記のサービスマーク制度はない時代ですし、不正競争防止法にもまだ「著名表示冒用」の規定もなかったので、一般の周知表示に関する請求でした。結果的には、途中で和解し、一定期間の猶予と、名称変更後も一定期間は(旧称・阪急○○)を使用することを条件に今後使わないことを約して終了しました。「阪急」の周知性はともかくも、業種的に「混同」要件の争点もありましたので、法律家的に思えば、一審判決くらいは取っておいても良かったかなと思ったりもしますが。もっとも、おそらく当時でも今でも、「混同」は認定されたと思います。

2012年2月10日 (金)

スクーバダイビングショップの不当表示(消費者庁)

 昨日の措置命令ですが、ダイバーの技能認定向けの教育コースについてのクーポン雑誌での広告や自社webサイトでの表示が景品表示法4条1項2号(有利誤認)に違反するとされたものです。

 → 消費者庁サイト 報道発表資料(PDF)

 本筋とは離れますが、この資料に「スクーバ」とあるのを見て、あれ、「スキューバ」じゃないの、と思ったのですが、ネットで調べるとどっちでもいいようで、ただ、業界では「スクーバ」を使用しているようですね。一般的には、「スキューバ」が多いような感じがしますけども。
 それに、スクーバ(SCUBA)って、元々ある単語かと思っていたら、
  「Self Contained Underwater Breathing Apparatus」
の頭文字をとったものなんですね。

 消費者庁は、昨年、スクーバダイビングショップの料金等表示について調査を行い、その結果を「スクーバダイビングショップにおける料金等の表示の適正化について」(PDF)という報告を出しています。ここでは、複数のダイビングショップが、講習の受講料金等について景品表示法違反につながるおそれのある表示を行っていた事実が認められたとして、注意を行った事例が挙げられています。
 今回は、そこで挙げられている注意事例よりも消費者に不利益が大きいとして、単なる注意ではなく、正式に措置命令を出したということですね。

 今回の措置命令の対象となったのは、(有)モアナエモーション(東京都町田市)が提供する「PADIオープンウォーターダイバーコース」と称するスクーバダイビングの技能認定を受けるための教育コースで、クーポン雑誌「ホットペッパー」において、 「ダイビングライセンス取得!各月先着5名¥10000ポッキリ」と記載し、その上に、「【費用】入なし受¥10000込学科,教材,海洋実習,申請料,保険料,お店から海までの送迎費 他器材貸出代」と小さく記載し、また、自社webサイトにおいては、「今ならPADIライセンスが1万円(税込)ポッキリで取得できる!!」と記載し、その下に、「※別途、機材のレンタル代金はかかります。」と小さく記載していたというもので、実際には、対象役務の提供を受けるためには、1万円の教育コース料金を支払うほか、約2万円のダイビング器材のレンタル料金を支払い、さらに、約16万円のドライスーツを購入する必要があるものであった、というものです。

2012年2月 8日 (水)

「葬儀事業者における葬儀費用に係る表示の適正化について」(消費者庁)

 消費者庁は、2月3日、葬儀事業者における葬儀費用に係る表示の適正化についての考え方を公表しています。これは、消費者庁が葬儀事業者による葬儀費用の表示に関して調査を行った結果、複数の葬儀事業者が、景品表示法4条1項2号(有利誤認)違反のおそれがある表示を行っていた事実が認められたため、これらの事業者(10社12事例)に注意を行いったうえで、注意事例の概要と葬儀費用の比較広告に関する消費者庁の考え方をとりまとめて公表したものです。
 なお、葬儀サービスなどに関しては、下記の通り、これまでにも公正取引委員会国民生活センターから報告がなされています。

 → 消費者庁
   
「葬儀事業者における葬儀費用に係る表示の適正化について」(PDF)

 〈参考〉関連資料
    公正取引委員会
     → 葬儀サービスの取引実態に関する調査報告書の概要(05/7/27)
    国民生活センター
     → 増加する葬儀サービスのトラブル(06/6/22)

     → 各種相談の件数や傾向「墓・葬儀サービス」(12/1/31)

 今回、問題とされた注意事例の概要としては、次のようなものが挙げられています。

  1.  葬儀費用について不当表示に該当するおそれのある表示 (7社7事例)
    ○ 新聞折り込みチラシに、葬儀費用について、「○○倶楽部」の会員となれば、会員特典として式場費が50%引きになるなどと記載し、その上部に「新△△プラン●●円」と表示していたが、当該プランは会員特典の対象外であったもの
    ○ 新聞折り込みチラシ等に、葬儀費用について、「無料会員登録で○○万円のお得」と示し、会員登録すれば通常費用から値引きすると表示していたが、実際には、誰でも容易に会員費用で葬儀を行うことができるものであり、非会員に適用される費用の適用実績はほとんどなかったもの
  2.  葬儀費用について不当表示に該当するおそれのある比較広告 (5社5事例)
    ○ 新聞折り込みチラシ等において、自社と他社の葬儀費用を比較し、自社が割安であると示しているが、実際には、同一の基準によって比較しているとは認められず、他社に比べて自社の葬儀費用が割安であると見せかけるおそれのあるもの

2012年2月 4日 (土)

ピンク・レディー事件【蛇足】

 前回取り上げたピンク・レディー事件は大々的に報道もされ、ワイドショーなどでも話題になっているようです。

 その一連の話題に触れていてちょっと気になる所は、一般の方には誤解を生じている部分があるのではないか、という点です。前回記事でもちょっと書いたように、この判決が結果的に著名人側が負けたということもありますし。

 まず、この事件を考える前提として、雑誌に使用された写真は、昔、正当に撮影されて、著作権も出版社側が有しているということを押さえておく必要があります。写真の著作権は被写体側にあるのではなく、撮影者側にあるというのは著作権の基本です。絵画の画家とモデルを考えてもらえば当然の話ですね。

 したがって、本件は著作権の侵害が問題になる事案ではありません。
 なので、勝手にどこかに掲載されていた写真を使用して掲載したというのであれば、パブリシティ権の問題とは別に、著作権者との間で著作権侵害の問題が生じます。本件では、写真自体のパクリはないわけです。この点は誤解のないよう注意してください。

 また、本件は、「人のパブリシティ権」を最高裁が判断した最初の判決ですが、1976年の「マーク・レスター事件」(東京地裁)、1989年の「光GENJI事件」(東京地裁)、1991年の「おニャン子クラブ事件」(東京地裁)など、下級審では古くからパブリシティ権についての判決はあり、法律学の分野でもかなり議論がされていて、パブリシティ権自体は認められてきているのであって、それほど新しい権利というわけではありません。ワイドショーで、「パブリシティ権が新たに認められた」的な紹介がされていたので付言しておきます。
 なお、人ではなく、競走馬の名前に関するパブリシティ権に関しては「ダービースタリオン事件」「ギャロップレーサー事件」があり、この両事件については、最高裁はパブリシティ権を認めていません。物についてのパブリシティ権の場合は、人と違って、人格権を根拠にできませんので難しいところです。もちろん、認めるべきだという考え方もあります。

 それと、人のパブリシティ権については、著名人について問題となるのですが、それでは、著名でない一般人の肖像権はどうなるの?という点が残ります。
 例えば、昔撮影された貴方の写真が勝手に広告に使われていた、という場合に、どのような権利侵害が考えられるか、という問題になります。数年前に関西のテレビ局のローカルニュース番組で取材を受けたことがありますが、以前、素人モデルとして写真を撮られた会社員男性が、後に新聞広告に写真を使われ、個人体験談を語る人物として掲載されていた、というのがありました。もちろん、無断使用だし、そんな商品の購入や使用はしていない人で、広告を見た人からいろいろ言われて迷惑した、というケースでしたね。結構むずかしい問題です。

 また、「人」ではなく、キャラクターはどうなるの?というのもありますね。(あえて書かないでおきます。)

2012年2月 2日 (木)

ピンク・レディーvs光文社事件、上告審判決(最高裁)

 本日、ピンク・レディーの肖像写真の利用に関して、ピンク・レディー側が損害賠償を求めていた裁判で、最高裁判所の上告審判決が出ました。既に裁判所webサイトにも掲載されています。

 最高裁判所 平成24年2月2日第一小法廷判決 損害賠償請求事件

 この事件については、1,2審とも当ブログで判決時に取り上げましたので、事案の内容はそちらをごらんください。

 → 「ピンクレディvs光文社事件控訴審判決(知財高裁)」(09/8/29)

 → 「ピンクレディが出版社の写真使用を訴えた事件の判決(東京地裁)」(08/7/13)

 (※正しい表記は「ピンク・レディー」です。ご容赦ください。)

 1,2審とも、裁判所は、人格権に由来するものとして、いわゆる「パブリシティ権」があることを認めましたが、本件事案においては、記事や写真使用の態様から見て権利侵害は否定して、結論としては、いずれもピンク・レディー側の請求を認めませんでした。

 今回の最高裁の上告審判決も、基本的には同様で、商品の販売等を促進する顧客吸引力を排他的に利用する権利として「パブリシティ権」は認めましたが、本件の行為は違法とはいえないとして、上告を棄却したものです。
 この判決は、人の「パブリシティ権」を認めた初めての判決であり、それを侵害する行為が不法行為と認められるための要件を示した点で、大変重要な判例であるといえます。

 一般の方が、このニュースに触れると、判決結果を聞いて、「パブリシティ権」が認められなかったという受け取り方をする人も多いとは思いますが、法律家的には、「パブリシティ権」が認められた重要な判決、ということになると思います。面白いところです。

 今回の判決において、「パブリシティ権」については、
人の氏名,肖像等は,個人の人格の象徴であるから,当該個人は,人格権に由来するものとして,これをみだりに利用されない権利を有すると解される。
そして,肖像等は,商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合があり,このような顧客吸引力を排他的に利用する権利(以下「パブリシティ権」という。)は,肖像等それ自体の商業的価値に基づくものであるから,上記の人格権に由来する権利の一内容を構成するものということができる。」として、これを認め、その一方で、

他方,肖像等に顧客吸引力を有する者は,社会の耳目を集めるなどして,その肖像等を時事報道,論説,創作物等に使用されることもあるのであって,その使用を正当な表現行為等として受忍すべき場合もあるというべきである。」として、権利が制限される場面があることについて述べています。

 そして、肖像等を無断で使用する行為が「パブリシティ権」を侵害し、不法行為法上も違法となる場合として、

  1. 肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し,
  2. 商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し,
  3. 肖像等を商品等の広告として使用するなど,専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とする

という要件を示しました。

 これを前提として、本件の事実関係からみて、ピンク・レディーの肖像写真に顧客吸引力は有するものの、

・・・本件記事の内容は,ピンク・レディーそのものを紹介するものではなく,前年秋頃に流行していたピンク・レディーの曲の振り付けを利用したダイエット法につき,その効果を見出しに掲げ,イラストと文字によって,これを解説するとともに,子供の頃にピンク・レディーの曲の振り付けをまねていたタレントの思い出等を紹介するというものである。そして,本件記事に使用された本件各写真は,約200頁の本件雑誌全体の3頁の中で使用されたにすぎない上,いずれも白黒写真であって,その大きさも,縦2.8㎝,横3.6㎝ないし縦8㎝,横10㎝程度のものであったというのである。これらの事情に照らせば,本件各写真は,上記振り付けを利用したダイエット法を解説し,これに付随して子供の頃に上記振り付けをまねていたタレントの思い出等を紹介するに当たって,読者の記憶を喚起するなど,本件記事の内容を補足する目的で使用されたものというべきである。

として、本件行為は、もっぱらピンク・レディーの肖像の有する顧客吸引力の利用を目的とするものとはいえず、違法とはいえないとしました。

 なお、この判決には金築誠志裁判官の詳しい補足意見が付されていますので、興味のある方はご覧ください。

【追記】(2/4)

 蛇足的説明を次の別記事にして書きました。

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