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2011年8月 4日 (木)

入れ墨の著作権に関する判決(東京地裁)

 今週前半は、たまたま研修の講師の仕事が続いて、名古屋、神戸と出かけたりしていて、ブログ更新の時間がありませんでした。

 さて、報道もされたようですが、入れ墨の著作権侵害に関して、東京地裁で判決がでています。既に裁判所サイトで判決は公開されています。

 平成23年7月29日東京地裁判決 損害賠償請求事件

 事案は、彫物師である原告が、被告Aの大腿部に入れ墨(十一面観音立像)を施したところ、被告Aは自分の来歴を記した書籍を出版するにあたり、原告の許諾を得ずに、入れ墨の画像を書籍の表紙カバーなど2ヶ所に掲載し、また、被告A、被告B社は、それぞれ自己のホームページ上にその表示カバーの写真を公開したというものです。書籍の発行、販売が被告B社です。
 原告は、

  1.  書籍に入れ墨の画像を掲載した行為は、著作者人格権(公表権、氏名表示権、同一性保持権)を侵害し、また、書籍の中の記述は、原告の人格権、プライバシー権を侵害する、として、被告らに対して
    著作者人格権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき損害賠償金77万円(慰謝料70万円,弁護士費用7万円)及び遅延損害金,
    人格権及びプライバシー権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき損害賠償金33万円(慰謝料30万円,弁護士費用3万円)及び遅延損害金の支払を求め、
  2.  被告Aが自己のホームページに写真を掲載した行為は、著作者人格権(公表権,氏名表示権,同一性保持権)を侵害するとして、被告Aに対し、著作者人格権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき損害賠償金35万円(慰謝料30万円,弁護士費用5万円)及び遅延損害金の支払を求め、
  3.  被告B社が自社のホームページに写真を掲載した行為は、著作者人格権(公表権,氏名表示権,同一性保持権)を侵害するとして、被告B社に対し、著作者人格権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき損害賠償金35万円(慰謝料30万円,弁護士費用5万円)及び遅延損害金の支払を求めたものです。

    ※なお、本件訴訟では、著作権(複製権,翻案権,公衆送信権〔送信可能化権を含む。〕)侵害に基づく損害賠償は請求しないとの意思を原告が明らかにしているとのこと。)

 本件訴訟の争点は、(1)本件入れ墨の著作物性、(2)著作者人格権侵害の成否、(3)書籍記述についての人格権及びプライバシー権侵害の成否、(4)損害及びその額、となっています。

 そして、判決は、争点(1)については、「(仏像写真と入れ墨との)表現上の相違は,本件入れ墨の作成者である原告が,下絵の作成に際して構図の取り方や仏像の表情等に創意工夫を凝らし,輪郭線の筋彫りや描線の墨入れ,ぼかしの墨入れ等に際しても様々の道具を使用し,技法を凝らして入れ墨を施したことによるものと認められ,そこには原告の思想,感情が創作的に表現されていると評価することができる。」として著作物性を肯定しました。

 争点(2)については、原告が自ら雑誌などで入れ墨写真を公表していたとして公表権の侵害は認めず、氏名表示権同一性保持権の侵害を認めました。同一性保持権については、書籍に掲載した写真が、原告から譲渡を受けた入れ墨写真を加工して、陰影が反転し、セピア色の単色に変更されていたことが理由となっています。

 争点(3)については、人格権の侵害もプライバシー権の侵害も認められていません。

 争点(4)については、結論的として、
 被告らの著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)侵害による慰謝料は20万円、弁護士費用相当損害は4万円、
 被告Aの著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)侵害による慰謝料は10万円、弁護士費用相当損害は2万円、
 被告B社の著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)侵害による慰謝料も10万円、弁護士費用相当損害は2万円、
とされました。

 この判決の判断からすれば、本件では結局、著作者人格権である氏名表示権同一性保持権の侵害のみが認められた、ということになりますね。単純に言えば、原告の氏名をちゃんと表示したうえで、写真を加工していなければ、OKだったということになりそうですね。

 本件では、上記の通り、複製権等については請求の理由になっていません。人体に施された入れ墨についての著作権の侵害というのはいろいろ考えると難しい点もありそうですが、ちゃんと書ける自信もないので、今回は触れないでおきます。

【追記】(12/2/3)

 知財高裁の控訴審判決が1月31日に出たようですね。基本的には原判決を維持していますが、認容金額は半分に減らされています。

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