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2011年1月 7日 (金)

「廃墟写真」の翻案に関する東京地裁判決(著作権法)

 昨年末に東京地裁(民事46部)で出た判決です。裁判所サイトの知財判例に掲載されています。「廃墟写真」の著作権に関する判断ですが、「廃墟写真」というジャンルがあるのですねぇ。ネットで検索したら、マニアのサイトがたくさん見つかりました。

 東京地裁平成22年12月21日判決
   平成21年(ワ)第451号 損害賠償等請求事件

 この事件は、原告(プロカメラマン)が撮影した「廃墟」を被写体とする写真(廃墟写真)と同じ廃墟を被告(こちらもプロカメラマン)が撮影して、その写真を掲載した書籍を出版及び頒布したもので、
 原告は、これらの行為が、原告の有する写真の著作物の著作権(翻案権、原著作物の著作権者としての複製権、譲渡権)及び著作者人格権(氏名表示権)を侵害し、また、被告が「廃墟写真」という写真ジャンルの先駆者である原告の名誉を毀損したなどと主張して、
 被告に対して、①著作権法112条1項、2項に基づく被告各書籍の増製及び頒布の差止め並びに一部廃棄、②著作権侵害、著作者人格権侵害、名誉毀損及び法的保護に値する利益の侵害の不法行為による損害賠償、③著作権法115条及び民法723条に基づく名誉回復等の措置としての謝罪広告を求めた、というものです。

 判決の結論は、原告の請求棄却です。

 本件の主要争点は、被告が原告写真と同一の「廃墟」を撮影して、それを掲載した書籍を発行するなどした行為が、著作権法上の「翻案」といえるか、です。被告は原告の写真自体を複製したわけではありませんから、複製権の問題ではなく、翻案権(著作権法27条)の問題です。

 なお、当然のことですが、原告側も、自分と同じ廃墟を被写体として撮影すれば、全てそれが著作権侵害だ、と主張しているわけではありません。また、今回の判決も、同一の被写体を撮影したり書籍に掲載する行為が全て許されると言っているわけでもありません。(ネット上の議論を見ると、そのあたりを誤解されている意見もあるようですので、念のため。)

 今回の判決では、著作物の翻案とは、「既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為」という従前の最高裁の考え方を踏まえて、「思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部分や表現上の創作性がない部分は,ここにいう既存の著作物の表現上の本質的な特徴には当たらない」として、本件では、原告が主張する原告写真における被写体及び構図の選択における本質的特徴部分が、上記のような表現上の本質的な特徴に当たるかどうか、被告写真において当該表現上の本質的特徴を直接感得することができるかどうかを、それぞれの写真について個別に判断しています。

 残念ながら原告と被告の写真そのものは、裁判所サイトには掲載されていないので、今回の判断の是非は何ともいえないのですが、
 判決は、それぞれの写真について、廃墟の選択は、「アイデア」(上記の通り著作権法上保護されません)であって、また、それぞれの被写体、構図、撮影方向そのものは、表現上の本質的な特徴ということはできず、かつ、被告写真と原告写真とでは写真全体から受ける印象が大きく異なるものとなっていて被告写真から原告写真の表現上の本質的な特徴を直接感得することはできない、とし、結論として、被告写真は原告写真を翻案したものとは認められない、と判断しました。

 なお、今回の判決は、上記の翻案についての争点以外に、被告の発言に関する名誉毀損の成否および「法的保護に値する利益」の侵害の不法行為の成否についても判断をしていますが(いずれも結論としては原告の主張を認めず)、ここでは割愛します。

【追記】(5/13)
 この事件の控訴審判決が知的財産高裁で5月10日に出ました。原審判決を支持して控訴棄却です。
 → 「「廃墟写真」著作権事件控訴審判決(知的財産高裁・控訴棄却)」
                                 (5/13)

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