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2010年2月 4日 (木)

松沢神奈川県知事の著書に対する著作権侵害訴訟の東京地裁判決について

 また著作権関連で恐縮です。

 新聞などでも報道された松沢成文神奈川県知事の著書が、著作権を侵害しているとして、ノンフィクション作家山口由美氏が、松沢知事と講談社を相手に、出版の差止と損害賠償を求めた訴訟の東京地裁判決が裁判所サイトに掲載されました。報道によれば知事はすぐに控訴したようですね。
 松沢知事の著書は「破天荒力 箱根に命を吹き込んだ『奇妙人』たち」で、原告山口氏の著書は「箱根富士屋ホテル物語」。

 平成22年1月29日東京地裁判決 著作権侵害差止等請求反訴事件

 さて、この東京地裁判決は、結論として著作権侵害を認め、慰謝料など12万円の支払と、侵害部分を削除するまで販売しないよう差止を命じたもので、報道などでは、松沢知事が敗訴したというような見出しになっていますね。

 この判決はかなり長いもので、全部を紹介できませんが、ちょっと判決の認めた部分(主文)と原告の請求を比較してみましょう。なお、本件は反訴事件であり、正確には反訴原告というような表現になりますが、省略して、通常通り原告、被告と表記しています。

【判決主文】※一部表現を変えています。

  1.  被告らは,当該文章(218頁11行~12行)を削除しない限り,同書籍を印刷,発行又は頒布してはならない。
  2.  被告らは,原告に対し,連帯して12万円及びこれに対する平成19年6月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  3.  反訴原告のその余の請求を棄却する。
  4.  訴訟費用は,これを50分し,その1を反訴被告らの負担とし,その余を反訴原告の負担とする。
  5. 略(金銭支払部分の仮執行宣言)

【原告の請求】

  1.  被告らは,被告ら書籍を印刷,発行又は頒布してはならない。
  2.  被告らは,原告に対し,連帯して695万8075円及びこれに対する平成19年6月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 これを見ると、原告山口氏が裁判で求めたのは、松沢知事の著書全体の発行等の差止と損害賠償695万円だったわけですが、判決が認めたのは、発行等の差止については、文章2行の削除を要求する内容になっており(削除せねば全体が発行できないことには違いありませんが)、また、損害賠償金額も12万円だけが認められたことになります。訴訟費用負担も98%が原告負担、2%が被告負担になっていますね。
 つまり、原告山口氏は、松沢知事の著書の多くの部分について著作権侵害を主張したのですが、裁判所が認めたのは、わずか2行部分だけだったということです。この部分に関して、「著作権(複製権)及び著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)」を侵害したと認定判断したわけです。

 損害額の算定については、まず、書籍販売額を1188万8000円と認定し、その約0.4パーセントに当たる5万円を著作権(複製権)侵害の損害額と認めました。
 そして、著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)侵害による慰謝料としては、侵害態様、被告書籍の発行・販売部数、原告と被告らとの間における交渉経過、本件審理の経過、その他本件に現れた一切の事情を総合考慮して、5万円が相当としました。
 この合計額10万円に弁護士費用相当額2割を加算して、12万円の損害賠償を認めたものです。

 したがって、原告山口氏の請求のほとんどは認められなかったということになります。認容されなかった多くの部分の判断理由についても検討してみれば面白いと思います。

 なお、削除すべきとされた2行の部分は、正確には判決記載の「別紙対比表」を見る必要があるのですが、裁判所サイトでは公表されていません。判決文から見て、主要な部分は、原告著作「正造が結婚したのは、最初から孝子というより富士屋ホテルだったのかもしれない。」、被告著作「彼は、富士屋ホテルと結婚したようなものだったかもしれない。」のようです。もっとも、判決は、この2つの文章だけを単純に比較しているのではなく、前後の記述を踏まえて、その創作性や複製の該当性を判断しています。

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