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2009年7月17日 (金)

正当防衛を認めた最高裁無罪判決

 当ブログでなぜか取り上げ続ける「正当防衛」に関する刑事事件判決ですが、各マスコミでも報じられているように、珍しい最高裁判決が出ました。逆転無罪です。裁判所サイトで判決全文が見ることができます。

 平成21年7月16日 最高裁第一小法廷判決(破棄自判)  暴行被告事件

 この事件は当初、被告人が被害者の胸などを両手で突く暴行により、加療1週間の後頭部打撲等の傷害を負わせたとして、傷害罪で起訴され、第1審判決はそのまま傷害罪の成立を認めて、罰金15万円としました。

 しかし、控訴審では、暴行により傷害を負った事実は認定できないとして、暴行罪の限度で事実を認定して、科料9900円としています。

 この控訴審判決に対して、さらに被告人は上告したものです。

 この事件の背景としては、被告人が共有権を有する不動産およびそれに関する建設工事などが絡む激しいトラブルがあり、民事上の仮処分事件まで起こっていたというものですが、この背景事情は、結構ややこしく、ここでは詳しく触れません(ただし、判決を理解するには重要な事実と思いますので、興味ある方はご覧ください)。

 なお、被害者は被告人と対立する不動産業者の従業員(48歳)は身長約175㎝の男性、被告人(74歳)は身長約149㎝の女性であるうえ、以前の手術の影響による運動障害などで要介護1の認定を受けていたということです。

 簡単にいってしまえば、不動産業者が、本件不動産に違法な看板を嫌がらせのため設置したことに対する被告人の行為が対象となっているもので、本件建物に居住する被告人が、業者の従業員の「胸部を両手で約10回にわたり押したところ,被害者は,約2m後退し,最後に被告人が被害者の体を右手で突いた際,本件看板を左前方に落として,背中から落ちるように転倒した」というもので、しかも、「被告人に押されて後退し,転倒したのは,被告人の力のみによるものではなく,被害者が大げさに後退したことと本件看板を持っていたこととがあいまって,バランスを崩したためである可能性が否定できない。」と今回の最高裁判決は認定しています。

 そして、最高裁判決は、被害者たちの看板設置行為は、被告人たちの本件建物の共有持分権、賃借権等を侵害するうえ、(別の)宅建業者の業務を妨害し、被告人たちの名誉を害するものであるとし、この行為に対して、被告人が反抗して看板を取り上げて踏みつけたところ、被害者はこの看板を持ち上げて設置作業をする者に渡そうとしていたのであるから、その行為は、被告人らの上記権利や業務、名誉に対する「急迫不正の侵害」に当たるとしました。この「急迫不正の侵害」というのが、正当防衛成立のための重要な要件です。
 通常、傷害や暴行で、正当防衛が問題になる場合は、相手方が暴力をふるうなどの肉体的な攻撃に対して、自分の身体を守るために防衛行為として、やむを得ずこちらも暴力をふるうというケースが問題になるものですが、本件は、この点が異なっています。

 そして、判決は、被告人と被害者の間には体格差等があることや、上記の通り、被害者が後退して転倒したのは被告人の力のみによるものとは認め難いことなどからすれば、本件暴行の程度は軽微であったというべき、とし、「そうすると,本件暴行は,被告人らの主として財産的権利を防衛するために被害者の身体の安全を侵害したものであることを考慮しても,いまだ被害者らによる上記侵害に対する防衛手段としての相当性の範囲を超えたものということはできない。」として、本件暴行については、刑法36条1項の正当防衛が成立して違法性が阻却される(無罪)としたものです。

 法律を勉強している方はすぐに気づかれることと思いますが、民事上の「自力救済」や「正当防衛」との関係でも、大変興味深い判決かと思います。

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