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2009年5月の記事

2009年5月31日 (日)

景品表示法の消費者庁への移管に伴う改正点概観

 前の記事で、消費者庁関連法の成立関係のリンクを紹介して、少しだけ不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法の移管について触れました。「消費者庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律」第12条で定められたところですが、今回は、もう少し、景品表示法が今回の改正によって変わった点を概説的にまとめておきます(全てではありませんよ。)。

 なお、これまで公正取引委員会の所管だったのが、内閣府に置かれる消費者庁の所管に変わったため、公正取引委員会の権限が、内閣総理大臣に移っていますが、これについては、いちいち触れません。
 また、同じく、これまで「当該事業者と競争関係にある他の事業者」という文言も、「当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者」という文言に置き換えられています。
 なお、条文が整理され、条文の番号も一部変わりましたので注意です。たとえば、昨年追加されたばかりの、適格消費者団体による差止請求権については、これまで第11条の2でしたが、第10条になっています。また、刑罰関連の条文も変わっているようですが、これはフォローしてません。 

 まず、第1条(目的)です。
 これまで景品表示法独占禁止法の特例法として制定されていたわけで、第1条(目的)にも、特例法であることと、「公正な競争を確保し」という文言があったわけですが、それらが消えて、法律の目的として、「商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的とする。」とされました。したがって、これまでの公正競争確保という目的はなくなったことになるわけです。これまでの運用実態から見て、これによってすぐに大きな変化はないかもしれませんが、景品表示法の解釈に関して影響がないともいえません。
 これに関連して、いくつかの法文上で、これまでの「公正な競争を阻害する(おそれ)」という文言が、「一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害する(おそれ)」と置き換えられています。

 第2条(定義)では、「事業者」「事業者団体」の定義規定が置かれました。独占禁止法から独立してしまったので、独占禁止法に置かれている定義規定を景品表示法にも規定したものです。

 第6条は、従来「排除命令」の規定でしたが、名称が変わって「措置命令」となっています。もちろん命令を出すのは、公取委から内閣総理大臣に変わっています。

 第11条(協定又は規約)は、これまで「公正競争規約」(旧第12条)とされていたものを「協定」又は「規約」としています。

 第12条(権限の委任)では、内閣総理大臣消費者庁長官に権限を委任できる旨を定めており、さらに、消費者庁長官は、その委任された権限を(政令によって)公正取引委員会に委任することができる、としています。したがって、公正取引委員会が無関係になったわけではありませんね。第14条(協議)でも公正取引委員会が出てきます。

 

2009年5月30日 (土)

消費者庁関連法が成立したので関連資料等のリンク

 リンクのみの地味な記事です。m(_ _)m

 まずは、基本的な資料から
 → 官邸ホームページ「消費者庁関連資料」
 この中からいくつか選んでおくと
 → 「消費者庁及び消費者委員会設置法」(PDF)
 → 「消費者庁及び消費者委員会設置法の施行に伴う関係法律の
    整備に関する法律」
(PDF)
     ※この法律の12条が「景品表示法」の移管関係です。
      大変見にくい法律です。新旧対照表(PDF)はこちら
 → 「消費者安全法」(PDF)
 → 「消費者庁関連3法のポイントについて」(PDF)

 次に日弁連会長の声明
 → 日弁連サイト「消費者庁関連3法の成立に関する会長声明」 

 そして、第52回日弁連人権擁護大会プレシンポジウム(6/22 於:大阪弁護士会館 近畿弁護士会連合会主催)の案内。
 → 「みんなで活かそう!『消費者庁』
     ~消費者・消費者団体の新しい役割を考える~」
(PDF)

 なお、消費者庁の新設と大きく関連するのが、和歌山市で11月5日開催される第52回人権擁護大会シンポジウム第3分科会「安全で公正な社会を消費者の力で実現しよう~消費者市民社会の確立をめざして~」です。これについては、またご案内します。

2009年5月29日 (金)

今月はネット関連の著作権法違反の逮捕が続いてますね

 今日は、兵庫県の豊岡にある検察庁まで出張していました(私としては珍しく刑事事件)。豊岡市の中心市街は、たぶん大学生のときに夏の移動法律相談で訪れて以来なので、約30年振りということになります。新しい建物もありますが、駅前商店街の雰囲気は残っていたように思えました。

 さて、豊岡行きの福知山線の特急内で、何気なく携帯で当ブログのアクセス状況を見てみたら、朝から、日本デジタル家電ロクラク事件判決の関係の複数の記事へのアクセスが大変多い。不思議に思ってたら、どうやら海外の邦人向けのテレビ番組配信サービス業者「ジェーネットワークサービスインターナショナル」の経営者らが著作権法違反の疑いで警視庁に逮捕された事件が報道されていたことに関連して、キーワード検索でアクセスしてこられた人がたくさんいた、ということのようです。その後も夜になっても同様のようです。
 今回逮捕された事件の場合は千葉県市原市と大阪府寝屋川市の事務所に設置した複数のサーバーにテレビ番組を保存して、海外の顧客がインターネットを通じてアクセスできるようにしていたようです。民事訴訟で放送局側が敗訴してしまった「ロクラク事件」「まねきTV事件」のテレビ番組配信の仕組みとはかなり違い、報道されている通りのシステムだとすると、著作権法違反とされても仕方のないことと思います。

 昨日も、WEBサイトへの記事無断転載で大阪府高槻市の男性が逮捕された著作権法違反事件(千葉県警)を紹介しましたが、インターネット関係の著作権法違反での逮捕が続いたことになりますね。

 また、無断複製したアニメーションなどのDVDをネットを通じて販売していたという事件で、11日には北海道警が大阪府八尾市の夫婦を逮捕、26日には、愛知県警が、大阪市の男性を逮捕しています。さらに、26日には、人気のエクササイズDVD「コアリズム」の海賊版をオークションサイトで販売していた大津市の女性を、同様に警視庁が逮捕したという事件もありました。

 このように、今月はインターネット関連の著作権法違反による逮捕が集中しているようなのですが、上の事件を見てると、警察側は北海道から愛知なのに、逮捕されているのは西日本勢(それも大阪)が多いという点が妙に気になってしまいました(苦笑)。

 

2009年5月28日 (木)

ご注意!!健康記事の無断転載で逮捕(著作権法)

 社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)のサイトに本日付でこんな事件が紹介されていました。
 → ACCSサイト「著作権侵害事件」

 見出し的には「ブログに記事を無断で転載、男性を逮捕」ということですが、自分のブログに、昨年7月から今年1月までの約半年間、他のホームページの文章を無断で掲載していた大阪府高槻市の50代の男性会社員を、著作権法違反(公衆送信権侵害)の疑いで千葉県警が5月27日に逮捕した、というものです。ただ、サンケイの報道では、平成18年9月から転載の形跡があるということです。

 どんな文章を無断掲載したかというと、163回にわたって、「gooヘルスケア」に掲載された健康に関する記事を掲載している(株)法研の記事で、自己の健康食品通信販売サイトの売上を伸ばすために、記事の文章を無断で掲載していたものらしいです。本件は削除要請にも対応していなかった悪質なケースのようです。

 前にもちょっと書いたことがありますが、アフィリエイトなどを含めた通信販売サイトで、安易にニュース記事などを掲載して人寄せしているところも見かけます。うっかりしていると逮捕されますよ。ご注意を。

【追記】(6/18)
 ちょっと補足したほうが良さそうなので、著作権法上、許される「引用」は限定された条件の下であることについて、古い当ブログ記事ですが、下記記事をご参照ください。自分勝手に、「引用だからいいのだ」と思いこんでる人が多いのには困ったもんです。
 → 「著作権法で許される「引用」」(07/7/23)

コンビニ値引制限と国交省公用車談合に関する報道(独禁法)

 消費者庁関連法案が、本日の参議院の特別委員会で可決され、明日の参議院本会議で成立予定となりました。

 一方で独占禁止法改正案の見通しはわかりませんが、以下は独占禁止法がらみの前触れ報道2件。

 NHKが、セブンイレブンが加盟店に対して値引き制限をしていたことについて、新たに報道をしています(もっとも私が確認したのは放送ではなく、ネットのNHKサイトですが)。今年2月に公正取引委員会がこの問題の調査を行っていることが報道されましたが、いよいよ公正取引委員会が改善命令を行う方針が固まった、という内容です。不公正な取引方法の優越的地位濫用に該当するとするもののようです。この報道でいう改善命令が正確には何を意味するのかは不明確ですね。排除措置命令までいくのか、警告などに留まるのか。(下記【追記】参照)
 今年2月の報道に関しての当ブログ記事は
 → 「フランチャイズ契約と独占禁止法(公取委)」(2/28)

 もうひとつは、国土交通省が発注する公用車運転業務の談合疑惑事件で、公正取引委員会は、関係企業約10社に対し、独占禁止法違反で課徴金納付命令(総額数十億円)と排除措置命令を出す方針を固めて、対象会社に事前通知をした、との報道です。これについては、国土交通省側の関与についても、官製談合防止法の適用も検討されているとのこと。

【追記】(5/29)
 今朝の朝刊各紙は一斉にセブンイレブンに対して排除措置命令へ、と報じていますね。日経によれば、会社に対する事前通知もこれから(来週)のようだし、そうすると正式な排除措置命令が出るのは、もう少し先になりますね。事前通知もまだなら、どこから漏れたのかな。

【追記の追記】(6/23)
 セブンイレブン事件は6月22日、国交省公用車管理業務事件は6月23日に、それぞれ公正取引委員会から排除措置命令が出されました。
 → 「セブンイレブン「見切り販売制限」についての排除措置命令(公取委)」
                         (6/22)
 → 「国交省発注の公用車管理業務の官製談合(公取委)」(6/23)

「20年度下請法の運用状況及び企業間取引の公正化への取組」(公取委)

 昨日、公正取引委員会「平成20年度における下請法の運用状況及び企業間取引の公正化への取組」を公表しています。新聞報道などでも大きく扱われていたようなので、改めてブログに書くのもどうかと思いましたが、私の覚え書きとして。
 → 公取委サイト報道発表資料(PDF)

 まず、平成20年度に勧告を行った件数は15件で、平成16年改正下請法施行以降最多ということです。15件で最多、というのもなぁ、という気がしますけども。この内14件が下請代金の減額事件、1件が購入強制事件で、購入強制事案については、初めての勧告です。この購入強制事件については、当ブログでも紹介しています(あの「幻の阪神優勝記念グッズ事件」など他の勧告もほとんど紹介してるつもりですけども)。
 → 「下請へのラーメン等購入押し付けの下請法違反事件(公取委)」
                      (08/4/18)

 また、勧告15件の内、13件が「製造委託及び修理委託」で、2件が「情報成果物作成委託及び役務提供委託」

 下請代金の減額事件では、親事業者50社から、下請事業者2,022名に対して、総額29億5133万円の減額分が返還されています。これに加えて、下請代金の支払遅延事件では、親事業者39社から、下請事業者1,456名に対して、総額2億3481万円の遅延利息が支払われています。つまり、公正取引委員会による下請法の執行によって、直接的に30億円以上が下請事業者に支払われたということであり、間接的な効果も含めれば、結構大きな影響があるのではないかと思えますので、もっと下請法の活用を考えるべきだと思います。

 20年度の重点的な業種調査の対象となったのは、5業種で、過去に違反が多くみられた3業種(道路貨物運送業自動車小売業及び一般機械器具製造業)に加えて、経済状況を踏まえて選定した2業種(電気機械器具製造業及び輸送用機械器具製造業)。実地調査を増やすなどして、重点的な調査を実施しているところで20年10月から21年3月までの間に、1件の勧告と465件の警告を行った、とのこと(警告事例は、上記公取委報道発表資料をご覧ください。)。

 なお、この公取委の年度報告とは別に、親事業者対象の「下請取引適正化特別推進講習会」の開催の案内が公正取引委員会から公表されています。各地で6~7月に開催されるものです。
 → 公取委サイト報道発表資料(PDF)

2009年5月27日 (水)

厚生労働省分割案と消費者庁の行方

 麻生首相が今月15日の「安心社会実現会議」で、厚生労働省の分割話を持ち出して、社会保障省国民生活省に分ける案の検討を指示したとのこと。

この「安心社会実現会議」というのは、内閣官房に置かれている首相の諮問会議だと思いますが、その趣旨としては
「我が国の経済・雇用構造の変化や少子高齢化の進展等の環境変化を踏まえ、国民が安心して生活をおくることがで きる社会(安心社会)の実現が急務となっています。安心社会の実現には、国家として目指すべき方向性や基本政策の在り方について、幅広い視点から、総合的な検討を行うことが必要です。
 このため、安心社会の実現に向けた様々な課題について議論を行うため、内閣総理大臣が有識者の参集を求め、「安心社会実現会議」を開催することといたしました。」
とされています。
 → 内閣官房サイト「安心社会実現会議」(名簿もあり)
 これは正直言って何のための会議かわからない。

 で、この厚生労働省分割の片割れが「国民生活省」ということのようなので、この分割話が報道された当初から気になっていたのですが、やっぱり・・・・・・新設予定の消費者庁国民生活省の外局とする、という方針が素案に掲げられているようです。消費者庁の立ち位置として、現在予定されている内閣府の外局というのと、国民生活省の外局というのとではかなり違うんじゃないかなぁという感覚ですね。縦割り行政の中で埋没しそうな感じもします。民主党案の消費者権利院のような独立組織の地位から考えれば一層遠く離れることになりそうです。

 この点まだ注目されていないようですが、見ていく必要がありそうです。もっとも、厚生労働省の分割自体、次の衆議院議員選挙後の話なので、その結果で全く違う話になるのでしょうが・・・

 消費者庁設置法案は、29日にいよいよ成立の予定、と報道されています。

【追記】(5/27)
 あるところから、上の国民生活省の外局という話は間違いだという情報をいただきました。それならばひとまず安心なのですが、ただ、「国民生活省」という名前の省庁ができてしまうと、消費者庁もそちらに置くべきだというのは、自然な考え方になっていかないかな。

【追記】(5/29)
 厚生労働省の分割話自体があっさりと消えていきそうですね。

2009年5月26日 (火)

Googleストリートビュー対策に対する東京都個人情報保護審議会会長コメント

 プライバシーの侵害が問題となっているGoogle(グーグル)のストリートビューについて、Googleの日本法人が、先日(5/13)、以下のような日本独自の取組方針を公表したことはご存じかと思います。
 (1)撮影車両のカメラの設置位置を40センチ下げて再撮影する
 (2)画像の公開停止依頼を受け付ける専用電話番号を用意する
 (3)表札のぼかし処理のリクエストを受け付ける
 (4)車のナンバープレートにぼかし処理をする

 この対策公表に対して、東京都個人情報保護審議会の会長コメントが昨日発表されています。会長は堀部政男一橋大学名誉教授です。
 → 東京都サイト 報道発表資料

 同審議会は、この問題について、今年2月にGoogleと意見交換を行うなど積極的に取り組んできています。
 今回のGoogleの対策について、今回の審議会長コメントは、「日本の住宅事情等を考慮した自主的な対応としてこれを評価するものである。」と一定の評価をしたうえで、「しかしながら、東京都審議会で議論となり、結論のでていない、個人情報保護法の該当性、プライバシーや肖像権の問題などについては完全には整理されたとはいえない。」と課題が残るものであることを表明しています。

 そして、この残された課題である
 (1) 個人情報保護法との関係について
 (2) プライバシー・肖像権との関係について
 (3) 自治体への事前通知・協議について
 (4) 地域安全との関連について
 (5) 公道からの撮影の徹底について

に関しては、総務省の研究会「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」でさらに掘り下げた検討がなされるよう要請しています。この総務省研究会は第1回が4月6日に開催されています。
 研究会の検討項目は、ストリートビュー問題を含む「インターネット地図情報サービスについて」の他に、「違法音楽配信の状況について」「ライフログ活用サービスについて」「個人情報保護ガイドラインの見直しについて」となっています。これらの問題について概観した資料が第1回研究会で配布、公表されていますが、問題点がよくまとまった参考資料になっています。
 → 総務省作成資料(PDF)
   「利用者視点を踏まえたICTサービスに関する諸問題について」

医薬品ネット販売規制に対する行政訴訟提起(薬事法)

 改正薬事法の施行に伴う厚生労働省令によって医薬品のネット販売が規制されることについて、一昨日でしたか、楽天の三木谷社長が訴訟も辞さないとの構えであるとの報道があり、どういう形の訴訟になるのかな、と思っていたら、昨日、医薬品のネット販売のケンコーコムウェルネットの2社が東京地方裁判所に行政訴訟を提起したと発表しています。

 訴訟の内容は報道からしか判りませんが、「医薬品のネット販売を行う権利の確認」「厚生労働省令の無効確認または取り消し」を求める行政訴訟とされています。
 原告訴訟代理人となっている阿部泰隆弁護士は、あの行政法学者として高名な阿部先生ですよね。阿部先生が神戸大学におられた当時、私が豊田商事被害国家賠償訴訟の原告弁護団に参加していたときに、何度か弁護団の会議でお話をお聞きしたことがありました。

 この訴訟では、この厚生労働省令が、憲法で保証された『営業の自由』を侵害していて憲法違反であるとの主張がなされており、いわゆる違憲訴訟となっています。

 今回の改正薬事法では、リスクの低い医薬品の分類を除いては、購入者に対して「対面」での説明が原則とされ、ネット販売、通信販売は事実上できなくなってしまう、という点が問題となっていて、楽天ヤフーなどの大手ショッピングモール業者を含めて反対運動が盛り上がっていました。 ネット上での反対署名集めも話題となりました。
 ただ、冒頭の三木谷楽天社長の発言を聞いて、どうやって訴訟を起こすのかな、と思っていましたが、やはり今回は、楽天などのショッピングモール業者については直接の販売業者ではないため、行政訴訟の原告適格上の問題から原告として参加することを見送ったようです。ただ、楽天も訴訟を検討中との一部報道もあります。

 医薬品のネット販売の可否という政策的な問題とともに、いろいろと法的な論点もありそうで、今後注目される訴訟ですね。

【追記】(5/26)
 原告のケンコーコムのサイトに昨日付にて詳細なプレスリリースが出てました。
 → ケンコーコム プレスリリース

2009年5月24日 (日)

平成20年度景品表示法の運用状況及び消費者取引の適正化への取組(公取委)

 雑誌「消費者法ニュース」の毎年恒例の「消費者法白書」の独占禁止法・景品表示法部分の執筆をここ数年担当しているのですが、それを明朝までに完成させる約束になっていて(本来の締切は過ぎてます)、大変な状況です。その原稿の重要な参考資料についてのご紹介が本題。(消費者法ニュースのサイトはこちら

 5月20日、公正取引委員会が毎年公表している「景品表示法の運用状況及び消費者取引の適正化への取組」の平成20年度版が出ました。概要を以下にご紹介します。
 → 公取委サイト報道発表資料(PDF)

◎事件処理件数
 まず、公正取引委員会による景品表示法の事件処理件数は、排除命令が52件、警告が9件、注意551件(計612件)です。排除命令、警告はすべて表示事件で、今年度も景品事件はありません。
 排除命令件数は、表示事件について過去最高の前年度に引き続き、高い水準とのこと。景品表示法4条2項(不実証広告)を適用した件数は15件。
 主要な処理事例としては、食品分野に係る不当表示(ミネラルウォーターの内容、飲食店で提供する料理の原材料等)、電気通信分野に係る不当表示(IP電話の料金、携帯電話の料金)、環境分野に係る不当表示(コピー用紙の古紙配合率)、百貨店事業者の不当表示(キャビアの内容及び原産国、衣料品のカシミヤ混用率、ワイシャツの形態安定加工)等国民生活に広く影響のある分野・事業者に係る不当表示に対して厳正な処理を行ったとのこと。また、痩身効果、体臭消臭効果など効果・性能に係る不当表示については,景品表示法4条2項(不実証広告)を積極的に適用して処理を行っているとしています。

 また、都道府県が景品表示法の規定に基づいて行った指示の件数は21件(すべて表示事件)。

◎消費者取引の適正化への取組状況
 1 適格消費者団体による団体訴訟制度の導入(本年4月1日施行)
 2 公正競争規約の設定等(新設は「食用塩の表示」「鶏卵の表示」)
 3 表示実態調査(いずれも当ブログで紹介済ですね)
    ○ No.1表示に関する実態調査
    ○ 見にくい表示に関する実態調査
    ○ ペット(犬・猫)の取引における表示に関する実態調査
 4 消費者モニター制度,消費者取引適正化推進員制度及び電子商取引
  調査員制度の活用
 5 景品表示法の普及・啓発,消費者団体との意見交換
 6 関係行政機関との連携強化等
 7 諸外国との連携
 8 景品表示法に関する相談業務

◎景品表示法の消費者庁への移管
 これも、当ブログでは何度かご紹介済ですが、現在、景品表示法改正規定を含んだ消費者庁関連三法案が国会で審議されており、衆議院で可決され、参議院で審議中となっています。

2009年5月21日 (木)

三菱UFJ証券の個人情報流出事件における企業対応

 三菱UFJ証券の個人情報流出事件については、いろいろと報じられてきたところですが、昨日(5/20)、新しい報道等がありました。

 同社の4月の発表内容によれば、平成20年10月3日から今年1月23日までに新規口座あるいは投信ラップ口座を開設した顧客49,159名の情報を、同社システム部元社員(元部長代理とのこと)が個人の顧客情報を不正に取得し、同社との関係を秘匿して名簿業者へ売却した、とのことで、流出情報は、氏名、住所、電話番号(自宅・携帯電話)、性別、生年月日、職業、年収区分、勤務先名、勤務先住所、勤務先電話番号、勤務先部署名、役職、業種となっています。

 昨日報じられているところによると、情報の流出先は当初発表から増えて、95社にものぼるということで、名簿を回収できたのは内25社。いまだに不動産投資などの勧誘をしてくる業者がいるとのことです。今回の流出情報は、リーマンショック後の経済状況にもかかわらず証券会社に新規口座等を開設された個人の情報ですので、高額商品を売りたい業者にとっては貴重な名簿ということになるのかもしれません。

 同社サイトでは、この問題の取組を順次公表しています。問い合わせ窓口などの設置や、業者に対する警告、顧客への執拗な勧誘に対する対応(弁護士への委任なども含む)、勤務先に対する対応、業者に対する訴訟の検討、再発防止策の策定などですが、このような問題は他人事ではないものですので、他山の石として対応策の参考にさせていただくことも重要かと思います。
 → 三菱UFJ証券サイト
    「お客様情報流出における弊社対応について」
 なお、同社サイトでは、情報が流出した人に「お詫びのしるし」をお渡しする、としていますが、新聞報道などでは、これは、1人1万円相当のギフト券の送付ということですね。5万人として、全部で5億円と送付に関する経費がこれだけでかかってしまう計算です。1万円が高いか安いかの議論は置いておいても、大きな企業でなければ対応できない金額ですね。

【追記】(6/25)
 本日(6/25)、当時のシステム部部長代理が不正アクセス禁止法違反および窃盗の容疑で逮捕され、さらに、金融庁が、三菱UFJ証券に対して行政処分(金融商品取引法に基づく業務改善命令と個人情報保護法に基づく勧告)を行っています。
 → 三菱UFJ証券プレスリリース
     「弊社元社員の逮捕について」
     「金融庁による行政処分について」
 → 金融庁サイト報道発表資料

2009年5月20日 (水)

テレビ通販の抗菌保存容器についての排除命令(景表法)

 今日は、公正取引委員会から「平成20年度における景品表示法の運用状況及び消費者取引の適正化への取組」が公表されていて、昨年度も高い水準の排除命令件数になっていたことなどが報告されています。
 → 公取委サイト報道発表資料(PDF)

 これについては、機会があればご紹介するとして、同じく本日、公正取引委員会は、ジュピターショップチャンネル株式会社が販売する保存容器に係る表示について、景品表示法4条1項1号(優良誤認)に違反する事実が認められたとして、排除命令を行っています。
 → 公取委サイト報道発表資料(PDF)
 報道によれば、この会社は、テレビショッピングの最大手ということです。

【違反事実の概要】
 ジュピターショップチャンネル株式会社は、「抗菌保存容器ターク”」と称するポリプロピレン製の保存容器を詰め合わせた商品を一般消費者に販売するに当たり、「ショップチャンネル」と称するテレビショッピング番組において、映像で「軽量で重ねて収納できる抗菌保存容器」、音声で「抗菌性が優れているものですから」「抗菌性があって」という表示を行い、また、自社ウェブサイトで「軽量で重ねて収納できる抗菌保存容器“ターク”17点セット」等の表示を行っていたが、実際には当該保存容器は抗菌効果を有するものではなかった。

【排除措置の概要】
ア 再発防止策を講じて、これを役員及び従業員に周知徹底すること。
イ 今後、同様の表示を行わないこと。

インテル事件に対するAMD社のコメントなどなど(独禁法)

 大阪地裁・高裁でもマスク着用が呼びかけられていることが産経で報じられていますが、インフルエンザの影響はいろんなところに出ています。
 次の日曜に予定されていた市民マラソン大会「小豆島オリーブマラソン」も中止が決定したようです。5000人規模の伝統のある大会なので、宿泊や交通機関などの経済的損害も大きいことと思います。

 先日、EU欧州委員会がインテルに巨額の制裁金支払を命じたことが報じられましたが、これについて、競争企業であるAMDの日本語サイトに、AMDの見解が載っていました。
 → AMD日本語サイト プレスリリース

 AMDの社長兼CEOのコメント「本日のECの決定は、真に競争的な市場形成への重要な一歩です。技術革新において常にリーダー企業であり続けるAMDは、この市場が、インテルが支配した世界から、消費者を中心に動いていく世界に変貌することを待ち望んでいます」

 同社法務担当役員のコメント「これまでの徹底的な調査を経て、EUはこの度、『インテルは法律を犯し、消費者は被害をこうむった』という結論に達しました。この決定に基づき、産業はインテルの独占による高価格の終焉から利益を受け、欧州の消費者はより多くの製品の選択肢、製品価値、そして技術革新を享受できることになります」

 今回の欧州委員会の決定の他、インテルに対する日米韓の独禁当局の対応の状況も簡単に書かれていますが、日本でのAMDの対インテル訴訟に関しては触れられていませんね。

 なお、アメリカの当局がインテルGoogleなどのIT大手企業に対して、独占禁止法の執行強化する方針であることをいくつかのメディアが取り上げています。
 → 日経BPnet「独禁法問題、インテルやグーグルに降りかかる」
 → Computerworld.jp「米司法省、独占禁止法を積極的に執行する方針を表明 」

2009年5月19日 (火)

平成21年度新司法試験問題公表(法務省)

 新型インフルエンザへの対応も大変になってきました。昨日に通知をもらったところでは、大阪弁護士会も職員がマスク着用を決めたようです。法律相談の際には我々もマスク着用ということのようですが・・・。いつも行っている梅田近くのビルの受付の女性も警備員もマスクしてました。私も鞄にマスクを一つ放り込んではいますが、今の所付けてはいません。
 電車内などでは、軽い咳を一つするのも肩身が狭い感じで困ったもんです。修学旅行などの対応を見ていると、関西地方は、日本の「メキシコ」になってしまった感があります。
 免疫の有無の問題はわかるのですが、「通常」インフルエンザも最初は「新型」インフルエンザだったに違いない。とすれば、この「新型」はいつになれば「通常」に格下げ(?)されるのでありましょうか。

 で、本題は一行(笑)→ 法務省サイトへどうぞ 

 論文問題も出たもので・・・・手抜きしすぎました?

【追記】(6/4)
 短答式(新・旧)結果発表等はこちらへ
 → 「平成21年新・旧司法試験短答式試験結果等公表(法務省)」

2009年5月18日 (月)

NBL905号より

 昨日は悪天候の中、無事に「第14回鯖街道マウンテンマラソン」を制限内に完走できました。コースは福井県小浜市~京都市出町柳の約76キロ。タイムは11時間25分08秒(制限時間12時間)。おかげで、今日は太ももの筋肉痛で歩くのが不自由です。

 さて、NBL905号が出て、いくつか興味を引く記事がありましたので、ご紹介いたします(もちろん、まだ、ちゃんと読んでません。)。

 まず先日(4/29)行われたシンポジウム「債権法改正の基本方針」の骨子のレポート(上)が掲載されています(児島幸良弁護士)。コンパクトなサマリーになっているので、短時間に全体を概観するのにはいいと思います。

 また、著作権との関係で話題となっているGoogleブック検索のアメリカでの和解の内容の解説として、「Google Book Searchクラスアクション和解の実務的検討(上)」(松田政行弁護士、増田雅史弁護士)が掲載されています。今回の上編だけでも、20ページほどになっていますが。

 また、日弁連の民事裁判シンポジウムでのパネルディスカッション記事「集合的金銭請求訴訟制度、訴訟手数料の低・定額化」も、現在の消費者契約法に見られるような適格団体による集団的訴訟での金銭請求(現在は差止請求のみ)の検討などがなされています。

 「新型インフルエンザの広がりで企業に求められる喫緊の対応策」(中野明安弁護士)という、誠にタイムリーな記事もありました。

2009年5月15日 (金)

「犬・猫用ペットフードの安全性に関する相談」(国民生活センター)

 極めて個人的には、この日曜日の天気が悪くなりそうなのが大変気がかりなのですが、それはそれとして、

 国民生活センターが、昨日付で、「犬・猫用ペットフードの安全性に関する相談」という報告を公表しています。
 → 国民生活センターのサイト公表記事
 → 報告書本文(PDF)

 国民生活センターによれば、
「最近はペットが家族の一員となり、ペットフードの安全性についての国民的関心は高い。昨年「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」が制定され、今年6月より施行される。それにより、犬・猫用のペットフードに関しては、国が基準・規格を定め、表示義務や検査体制の整備を行う。PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)にも、「ペットフードを食べてペットの具合が悪くなった」、「腐敗していた」、「異物が混入していた」等、毎年多くの苦情が寄せられている。そこで、犬・猫用ペットフードの安全・衛生及び品質に関する消費生活相談の傾向をまとめた。」ということです。

 また、相談事例からの問題点として、次の3点を挙げています。

  1. 飼い主はペットフードの品質に関心が高く、人間の食品と同じくらいの安全性を求めている。
  2. 安全性や品質については法律である程度確保されるが、個人が相談したり調査を依頼できる体制はこれからの課題。
  3. ペットフードがペットの体質に合っていなかったり、与え方が正しくないと体調不良を引き起こす。

 私は、子供の頃から犬や猫などを飼ったことはなく、魚、小鳥、昆虫、小動物程度しか経験はありませんので(今はシマリス1匹飼ってます)、ペットフードの品質については良くわかりませんが、愛犬家、愛猫家にとっては、人間の食品の安全の問題と同じように問題と考えるのでしょうね。 

2009年5月14日 (木)

違法ダウンロードについての「スリーストライク法案」可決(フランス)

 前回の記事で、著作権法改正案の衆議院通過に触れましたが、この改正案の内容については、3月に書きました。
 → 「著作権侵害コンテンツのダウンロードの違法化など(著作権法改正案)」
    (3/19)

 この問題について、フランスの議会で厳格な対策法案が可決されたことが報じられています。サルコジ大統領の署名によって成立とのことですが、もともとサルコジ大統領が推進していた法案らしいので成立する見通しのようです。
 → ITmedia
  「違法DLでネット切断の「スリーストライク法案」、仏議会で可決」

 これは、違法ダウンロードユーザーに2度警告し、3度目の違反でそのユーザーのネット回線を切断するらしく、それで「スリーストライク法案」(フランス語じゃないですよね?)と呼ばれているようです。
 国の機関によって、違法ダウンロードユーザーの身元を突き止めて警告し、3回違反すると、最高で1年間インターネット接続を停止されたり、ブラックリストに載せられて、別のプロバイダへの移行などが制限されるようです。
 やはり、フランスでも、この法案についてはいろいろと意見があるようです。4月には、いったん議会の最終票決で否決されていたようです(どうも、賛成派の油断を突いてのドタバタだったようですが)。今回はその再議決らしい。
 この否決のニュースについては → こっちのITmedia記事をどうぞ

 ついでといっては何ですが、著作権法の改正について、日本では、この問題とともに、フェアユース条項の導入が検討されていますが、
 → 当ブログ「「フェアユース」規定制定の報告書(著作権)」
      (08/12/25)
5月12日には、文化庁文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の今年度第1回会合が開催され、フェアユース規定の導入についても議論が始まったようです。
 → 文化庁サイト議事録

【追記】(6/11)
 時事がAFPの報として、上記のダウンロード規制法について、フランスの違憲審査機関の憲法会議は10日、この規制条項は人権侵害と判断して、法施行に待ったをかけた、と伝えています。

改正法案等審議状況まとめ(独禁法、著作権法、消費者庁関連)

 何日か前から、このブログに毎日2回くらい訪問してきて、その都度、何十ページかをわずかの時間で閲覧していく巡回ロボット(クローラー)らしき者が現れていました。利用しているリモートホストが「marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp」なのですが、ちょっと調べると、どうやら評判の悪い奴のように思えます。
 Googleなどの検索業者がたまに巡回してくるのは、仕方ないと思ってますが、実害はなくとも気持ち悪いし、そんなのにアクセス数を増やしてもらっても邪魔なだけなので、アクセス解析(アクセス状況のデータ)の対象から昨晩はずしておきました。解析対象からはずしただけなので、今日も回ってきているのかもしれませんけれども。

 マクラが長くなってしまいましたが・・・・
 民主党の代表選挙やら鴻池のおっちゃんの騒動やらで、相変わらず見通しのつきにくい国会情勢ですが、このブログでウォッチしている改正法案などの審議状況を衆議院サイトをもとにひとまずメモしておきます。

 独占禁止法改正案
   衆議院可決 参議院経済産業委員会付託(5/13)

 著作権法改正案
   衆議院可決(5/12)

 消費者庁関連法案
   衆議院(修正)可決 参議院特別委員会付託(4/22)

 果たして今国会でゴールまで無事にたどりつけるか。

2009年5月12日 (火)

JASRACの独占禁止法問題についての公取委インタビュー記事など(日経BP ITpro)

 明日(5月13日)は、前に書きましたように、大阪弁護士会で「ドロップ・シッピング110番」が開設されます。
 → 「「ドロップ・シッピング被害110番」(大阪弁護士会)」(4/28)
 結構いろんなメディアで紹介されて、この手の110番(ホットライン)としては、マスコミ受けの良いテーマだったようです。目新しさもあったのでしょうね。忙しくなりそうですが、お手伝いできなくてスミマセン。

 さて、話題になっている日本音楽著作権協会(JASRAC)の事件ですが、公正取引委員会が立入検査の後、独占禁止法違反として排除措置命令を出し、これを不服としてJASRACが審判請求をした、という問題については、その都度、当ブログでご紹介してきました。
 → 「JASRACの私的独占行為容疑での立入検査(公取委)」(08/4/23)
 → 「JASRACへの排除措置命令(私的独占・公取委)」(2/27)
 → 「JASRACが排除措置命令に対して審判請求(独禁法)」(5/4)

 このたび、この問題について、公正取引委員会の担当者である岩成博夫氏(事務総局審査局第四審査長)に対するインタビュー記事を、日経BPITproが配信しています。
 → 「公取委が語るJASRACを問題視した理由」

 ITproによる全体的な記事(JASRAC側の言い分を含む)は、
 → 「「一体,我々のどこが悪い」,JASRACが公取委と全面対決へ 」

【追記】(5/14)
 ITproの関連記事にこんなのもありました。
 → 「監督官庁の責任は皆無,見守るのみ」
 この問題に関する文化庁長官官房著作権課長山下和茂氏のインタビュー記事です。ちょっと、わかりずらいタイトルですね。

2009年5月11日 (月)

インテルに対して巨額制裁金の方針(欧州委員会)

 先日、ちょっと書いた次の日曜に参加予定の鯖街道マウンテンマラソンですが、コース紹介のため、昨年参加した知人のサイトにリンクしておきます。GPSデータや写真が載ってます。今年は一緒に参加予定です。
 → Aさんのページ
 → Bさんのページ

 さて本題ですが、アメリカの半導体大手インテル社が、パソコンメーカー各社に対して、ライバル企業の部品を使わないよう要請し不法にリベートを払ったとして、欧州連合(EU)欧州委員会が巨額な制裁金(fine)を科す方向となったことが報じられています。

 報道では、制裁金は、過去最高額のマイクロソフトに対する制裁金額を超えて、史上最高額となる可能性があるとのことです。

 欧州委員会インテル社に対して違反告知書を送ったことについては、以前、当ブログで書いているのですが、約2年前の2007年7月です。
 → 「インテルの独禁法違反事件の新たな報道」(07/7/27)

 このブログ記事にもあるように、日本の公正取引委員会からも2005年3月に同社は独占禁止法違反(私的独占)で勧告を受けています。

 2005年にAMDがインテルに対して提起した東京地裁の訴訟は、まだ続いているのでしょうか?
 → 提起当時のAMD社プレスリリース

【追記】(5/13)
 10億6000万ユーロ(約1400億円)となりましたね。
 インテルは、不服申立するようです。

21年度旧司法試験短答式試験問題(法務省)

 今年度の旧司法試験短答式試験問題が法務省サイトにて公表されています。

 憲法、民法、刑法が各20問ずつです。参考のため、民法、刑法の各1問を下に載せておきます。私が受けた当時の短答式試験問題とは違って、1問が長いです。全部に挑戦したいかたは
 → こちらへ

〔No.22〕(民法)
 AB間の契約により,BはBの所有する掛け軸の所有権をCに移転し,代金はAがBに支払うこととされた。この場合において,次のアからオまでの記述のうち,正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
ア CがAをだましてBに対する意思表示をさせたとき,Bがこの
 ことを知らなかったとしても,Aはその意思表示を取り消すこと
 ができる。
イ CがBをだましてAに対する意思表示をさせたとき,Aがこの
 ことを知らなかったとしても,Bはその意思表示を取り消すこと
 ができる。
ウ 第三者であるDがBをだましてAに対する意思表示をさせたと
 き,Aがこのことを知っていたなら,Bはその意思表示を取り消
 すことができ,この場合,DがBをだましたことをCが知らなか
 ったとしても,BはCに対してその意思表示の取消しを対抗する
 ことができる。
エ 第三者であるDがBをだましてAに対する意思表示をさせたと
 き,Aがこのことを知っていたなら,Bはその意思表示を取り消
 すことができ,この場合,BがCに掛け軸を現実に引き渡し,か
 つ,引渡しの時点でDがBをだましたことをCが知らず,また知
 らないことに過失がなかったとしても,BはCに対してその意思
 表示の取消しを対抗することができる。
オ 第三者であるDがBをだましてAに対する意思表示をさせたと
 き,Aがこのことを知らなかったとしても,Cが知っていたなら,
 Bはその意思表示を取り消すことができる。

  1.アイ  2.アウ  3.イオ  4.ウエ  5.エオ

〔No.52〕(刑法)
 学生AないしEは,次のⅠ及びⅡの事例における甲の罪責に関して検討し,後記結論に至った。
 AないしEのうち,後記アからエまでのいずれの見解とも矛盾しない結論に至った学生として正しいものは,後記1から5までのうちどれか。

【事例】
Ⅰ 甲は,強姦目的で,殺意をもってX女を絞殺した上,Xを姦淫し
 たが,その後,更に金品を領得する意思を生じ,Xの肩に掛かっ
 ているバッグを持って逃走した。
Ⅱ 甲は,強盗目的で,X女の顔面を殴打している最中,Xを殺害し
 て姦淫する意思が生じ,Xを絞殺した上,Xを姦淫し,その後,
 Xの肩に掛かっているバッグを持って逃走した。
【結論】
学生A Ⅰ:強姦未遂・殺人・窃盗Ⅱ:強盗強姦未遂・殺人
学生B Ⅰ:強姦・殺人・窃盗Ⅱ:強盗強姦・強盗殺人
学生C Ⅰ:強姦・殺人・遺失物等横領Ⅱ:強盗強姦・殺人・遺失物
     等横領
学生D Ⅰ:強姦・殺人・遺失物等横領Ⅱ:強盗強姦・強盗殺人
学生E Ⅰ:強姦致死・殺人・遺失物等横領Ⅱ:強盗強姦致死・殺人
【見解】
ア 死者に対する姦淫行為であっても,姦淫の目的をもってした行
 為によりその者を死亡させた者との関係においては,それを刑法
 第177条の「女子を姦淫した」とみるべきである。
イ 結果的加重犯は,重い結果の発生について故意があるときは,
 成立する余地がない。
ウ 死者については,現実の占有が認められず,その生前の占有も
 保護する余地もない。また,その相続人の占有を認める余地もな
 い。
エ 財物奪取の意図で人を故意に死に至らせた場合,被害者の死亡
 と同時に財物の占有は犯人に移る。

  1.A   2.B   3.C   4.D   5.E

2009年5月 9日 (土)

ドメイン使用差止を認めた動物愛護団体の不正競争事件判決

 裁判所サイトの知的財産裁判例集に、動物愛護団体(NPO法人)が別の動物愛護団体(任意団体→被告は代表者個人)に不正競争防止法に基づく差止と損害賠償を求めた訴訟の大阪地裁判決が出ています。

 平成21年4月23日 大阪地裁判決 不正競争行為差止等請求事件

 差止請求としては、簡単に言えば、原告の活動と紛らわしい被告の表示をやめさせるというものですが、その中に、被告が使用しているドメイン「※※※※.jp」(念のため、伏せ字にしました。)を使用するな、というのが含まれていて、判決は、この部分も認容しました。

 争点はいろいろとあるのですが、まず、動物愛護団体が不正競争防止法上の「事業者」に該当するか否か(原告・被告それぞれ)、という点について、判決は、

「不正競争防止法1条の「事業者」であるためには,その者が営利目的を有する必要はなく,経済上の収支計算の上に立った事業であれば足りると解される。不正競争防止法1条は,同法の目的が事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため,不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ,もって国民経済の健全な発展に寄与することにあると定めるところ,この目的に照らすと,営利目的がなくても,経済上の収支計算の上に立った事業であれば,営利目的のある事業と同様にその競争秩序を維持すべきであり,同法によって保護するのが相当だからである。」

と判示して、原告、被告とも、経済上の収支計算の上に立った事業を行っているとして、事業者性を認めました。さらに、以下のようにも述べています。

「被告は,原告及び被告の本来の活動は不正競争防止法上の事業活動と評価されるものではないし,グッズの販売等は,本来的な動物愛護活動と密接不可分であって,事業活動とみなされるべきではない旨主張するが,原告及び被告の行っている物品の販売等は,それによって得た資金が動物愛護のために使われるにしても,物品の販売等自体は動物愛護活動そのものではなく,動物愛護活動と密接不可分であるとは認められないから,被告の上記主張は採用することができない。」

 また、ドメインが、不正競争防止法の対象となる被告の営業表示としての機能を有するか、という点については、

「インターネット上のアドレス「http://※※※※.jp」において開設するウェブサイトにおいて,ドメイン名「※※※※.jp」を使用しているが,上記ドメイン名は,大文字と小文字の違いはあるものの被告表示1と全く同じものに「.jp」が付加しているに過ぎないこと,上記のとおり,被告各表示は営業表示として使用されていること,上記ウェブサイトにおいて,被告各表示を付した物品を販売していることなども併せ考えると,被告の上記ドメイン名は,被告の営業表示としての機能を有していると認めるのが相当である。」

としています。

 なお、損害賠償請求については、原告が550万円(慰謝料500万円、弁護士費用50万円)の支払を請求していたのに対し、判決は、被告が本件の各表示を使用することにより、被告と原告との混同が認められ、しかも、ある事件に原告が関与しているとの誤解が生じていたことなどから、動物愛護活動について築いてきた原告の信用を傷つけられ、無形の損害を被ったということができるとして、不正競争行為の期間は2年以上になっていること、混同の事例が生じていること等一切の事情を総合すると、無形損害について100万円、弁護士費用について10万円と認めるのが相当である、としました。
 慰謝料は精神的な損害についての賠償であることから、法人について慰謝料が認められるか、という論点がありますが、本件判決は原告が「慰謝料」としていた損害について、「原告は慰謝料と表現するが,個人の慰謝料に相当する無形損害の賠償を認めるべきである。」として、信用毀損についての無形損害という形で評価しています。

2009年5月 8日 (金)

2ちゃんねるで話題のコピペ(コメントなし)

こんちには みさなん おんげき ですか? わしたは げんき です。
この ぶんょしう は いりぎす の ケブンッリジ だがいく の けゅきんう の けっか
にんんげ は もじ を にしんき する とき その さしいょ と さいご の もさじえ あいてっれば
じばんゅん は めくちちゃゃ でも ちんゃと よめる という けゅきんう に もづいとて
わざと もじの じんばゅん を いかれえて あまりす。
どでうす? ちんゃと よゃちめう でしょ?
ちんゃと よためら はのんう よしろく

たまには裁判所や検察庁のイベントも紹介

 17日開催の鯖街道のマラソンの案内がやっと届いて、気を引き締め直しているところですが、それとは全く関係なく、以下は、司法関係の今月のイベント紹介です(今日は弁護士会関係はなしです。すみません。)。どちらも東京です。

 まず、来週木曜日(5/14)に東京家庭裁判所が主催する「家庭裁判所ってどんなとこ?」。ただし、これは定員制で事前申込が必要なようで今日(5/8)が申込締切となっています。現在の申込状況は知りませんので、興味のある方はお問い合せください(問い合わせ先は、下記サイトにあります。)。

 日 時 5月14日(木)
 場 所 東京家庭裁判所(東京都千代田区霞が関1-1-2)

   午前の部 少年審判や被害者配慮制度に関する説明会
   午後の部 模擬家事調停・模擬人訴裁判見学会
 → 東京家庭裁判所の案内ページ

 次に、今年も法務省・最高検察庁「赤れんがまつり」を開催するので、ご案内。

 日 時 5月31日(日)午前10時から午後5時まで
 場 所 法務省(東京都千代田区霞が関1-1-1)

 入場無料ですが、イベントによっては整理券が必要だったりしますので、法務省サイトをご覧ください。「刑務所食事体験」というのもあるのですね。重要文化財の赤れんが棟のツアーもあります。
  法務省サイト「赤れんがまつり」

2009年5月 5日 (火)

Googleブック検索の和解案に関して2題(米司法省調査・日本の著者対応)

 Googleにおるブック検索のサービスと著作権に関して提起されていたクラスアクションにおける和解案が日本でも波紋をよんでいることは、当ブログの2月25日付記事3月4日付記事に書きました。
 そして、この和解案について、アメリカの消費者団体が独占禁止法違反として司法省に書簡を送ったことについても紹介しました。
 → 「Googleブック検索をめぐる和解と独占禁止法(アメリカ)」(4/8)

 この消費者団体の動きによるものかどうかはわかりませんが、日本のネット・ニュースITmediaなどが報じているところでは、ロイターニューヨークタイムズウォールストリートジャーナルなどで、Googleブック検索のクラスアクションでの和解案について、アメリカの司法省 独占禁止法に違反する可能性があるとして調査を始めたことについて報道されているようです。

 アメリカという国は、この問題に限らず、立法、行政、司法の三権(これだって、連邦と州の二重構造ですが)の相互の積極的なチェックが特徴ですね。日本も制度的には三権分立ですが、どちらかというと、お互いの領分を侵さないような抑制的なものになっています。

 上記の司法省の調査に関する報道に関して、(いつまで読めるかわかりませんが)ひとまず各メディア記事をリンクしておきます。

 → ITmedia (ロイター記事の翻訳)
 → hon.jp DayWatch (ニューヨークタイムズ記事より)
 → ニューヨークタイムズ記事 (もちろん英語)
 → ウォールストリートジャーナル記事 (これも英語)

 さて、上の独占禁止法の問題とは視点は別の話ですが、日本の著作権者や業者、団体などが和解案を批判したり、ブック検索対象からはずれる手続をする方針をとろうとしていることにつき、一般の著者たちに誤解があるのではないかと、町村教授がブログで批判的な立場から書いておられます。

 確かにロングテール(死に筋商品、ニッチ商品、少数関係者向け商品と考えていただければ結構です。)に位置する書籍にとっては、ブック検索の対象となっているほうが営業上はかえってメリットが大きいと思われるし、Googleが行っているのは全文公開ではないので、事情もよく理解できないまま和解案に感情的に反対している著作権者なども結構いるのではないか、という点は私も同意見です。ただでさえ、理解しにくい和解案ですし。
 けれども、和解の対象となることによって、少なくともGoogleが合法的に全文を複製して保存してしまうことには違いなく、たとえ現状では第三者がタダ読みできるようなシステムではないとしても、将来的なことを考えれば、複製・保存がいったんされてしまうという事実については警戒しておくべき問題が含まれていると思います。したがって、一般の著者たちが感覚的に嫌な感じを持つというところは、単に誤解ということだけで片づけられないようにも思えるのです。

【追記】(7/3)
 司法省調査についての続報がありましたので、別記事にしました。
 → 「Googleブック検索についての米司法省調査(続報)」(7/3)

2009年5月 4日 (月)

JASRACが排除措置命令に対して審判請求(独禁法)

 今年2月27日に公正取引委員会社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)に対して、独占禁止法違反(私的独占)として排除措置命令を出したことは、当ブログでも書きました。
 → 「JASRACへの排除措置命令(私的独占・公取委)」(2/27)

 この排除措置命令を不服として、4月28日にJASRACが審判請求をしたことを公表しています。
 → JASRACサイト・プレスリリース
   「公正取引委員会に対する審判請求の申立について」(4/28)

 このプレスリリースによれば、「排除措置命令は、著作権及び著作権管理事業の本質並びに我が国の著作権管理事業者が置かれている現状を理解しないまま、私人間の交渉事項(市場)に介入するものであり、大局的な目でみれば、権利者のみならず利用者の利益をも害するものと考えられます。」としたうえで、「このため、権利者と利用者双方の利益に資する著作権管理事業のあり方という観点を中心に、審判において当協会の考え方を説明し、公正な判断を求めていきます。」と争う姿勢を見せています。

 公表されているJASRACの主張概要は、

  1.  代替可能な商品・役務とは異なり、音楽の著作物は基本的に代替性を欠くこと。
  2.  放送事業者が放送使用料の追加的な発生を回避するために、他の管理事業者の管理楽曲を利用しないということはなく、利用しないと考えることに合理性がないこと。
  3.  包括契約及び1曲1回の個別契約の双方にそれぞれ存在理由があり、また、包括契約は諸外国のほとんどの著作権管理団体で採用されていること。
  4.  包括徴収する使用料に他の管理事業者分が含まれていないこと。また、このことは管理事業法の施行又は他の管理事業者参入前後で変わりないこと。
  5.  包括契約の対象となる当協会の管理楽曲数は一定ではなく、年々増大していること。
  6.  我が国の放送使用料は、国際的にみて極めて低い水準にあり、諸外国の著作権管理団体からの求めにより、その改善に取り組んでいる最中であること。
  7.  当協会は、本件について、排除措置命令という方法ではなく、公正取引委員会との協議を通じて実行可能で効果のある徴収方法を検討することが適当だと考えており、排除措置命令の必要性についても正しい判断を求めること。

 

2009年5月 1日 (金)

独禁法改正案衆議院通過(のぞみ車内から投稿)

 独占禁止法改正案が衆議院を通過したようですが、このまま今国会で成立まで行くのでしょうか。政局・解散の見通しがつかないうえに、新型インフルエンザの問題まで出てきて、ますます先行きが不透明ですね。

 今日は朝から日弁連消費者問題対策委員会の会議で東京です。今週は火曜も裁判で東京往復しましたが、GWの真ん中の平日のためか、新幹線も東京の地下鉄もずいぶん人が少ないように思えました。今朝の新幹線も同じくで、ゆったりとしています。平日とはいえ、ビジネス客が少ないのでしょうね。

 さて、N700系のぞみで初めて無線LAN接続して利用することができました(前回失敗したのですが。ちょっとした勘違いが原因でした。)。車内で仕事をするには大変便利になりました。

 ということで、のぞみ車内からブログへ初投稿です。

 新横浜を出ました。今朝は、少し霞み気味でしたけど、富士山がきれいに見えました。

「体罰」に該当しないとした最高裁判決

 これも先日マスコミで大きく取り上げられた最高裁判決。前回記事の除斥期間についての判決と同じ日の同じ第3小法廷による判決です。

 新聞記事などでは、「胸ぐらをつかむ」指導行為が体罰かどうか、というような表現をしていて、ネット上などでも同様の視点からの意見が多いようです。ただ、以下の判決文を見てもらえばわかるように、最高裁も単純に「胸ぐらをつかむ」指導は体罰ではなく許されるとしているわけではありません。あくまでも本件のケースにおいて本件の態様での当該行為に違法性がない、と判断したわけで、具体的な事情によっては、「胸ぐらをつかむ」指導行為であっても、行き過ぎた体罰だと判断される可能性は否定できません。本件に関しては、最高裁判決は妥当なものではないか、と思います。

 平成21年4月28日 最高裁第3小法廷判決(破棄自判)

 事案は、当時、市立小学校2年生男子の原告(被上告人)が、小学校の教員Aから体罰を受けたと主張して、市(上告人)に対して、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めた裁判です。原審福岡高裁は、この男子生徒の請求について、慰謝料10万円など合計21万4145円と遅延損害金の支払を命ずる限度で認容していました。

 最高裁判決に掲げられた、原審判決の認定事実の概要は、

  1.  被上告人は,平成14年11月当時,本件小学校の2年生の男子であり,身長は約130㎝であった。Aは,その当時,本件小学校の教員として3年3組の担任を務めており,身長は約167㎝であった。Aは,被上告人とは面識がなかった。
  2.  Aは,同月26日の1時限目終了後の休み時間に,本件小学校の校舎1階の廊下で,コンピューターをしたいとだだをこねる3年生の男子をしゃがんでなだめていた。
  3.  同所を通り掛かった被上告人は,Aの背中に覆いかぶさるようにして肩をもんだ。Aが離れるように言っても,被上告人は肩をもむのをやめなかったので,Aは,上半身をひねり,右手で被上告人を振りほどいた。
  4.  そこに6年生の女子数人が通り掛かったところ,被上告人は,同級生の男子1名と共に,じゃれつくように同人らを蹴り始めた。Aは,これを制止し,このようなことをしてはいけないと注意した。
  5.  その後,Aが職員室へ向かおうとしたところ,被上告人は,後ろからAのでん部付近を2回蹴って逃げ出した。
  6.  Aは,これに立腹して被上告人を追い掛けて捕まえ,被上告人の胸元の洋服を右手でつかんで壁に押し当て,大声で「もう,すんなよ。」と叱った。
  7.  被上告人は,同日午後10時ころ,自宅で大声で泣き始め,母親に対し,「眼鏡の先生から暴力をされた。」と訴えた。
  8.  その後,被上告人には,夜中に泣き叫び,食欲が低下するなどの症状が現れ,通学にも支障を生ずるようになり,病院に通院して治療を受けるなどしたが,これらの症状はその後徐々に回復し,被上告人は,元気に学校生活を送り,家でも問題なく過ごすようになった。
  9.  その間,被上告人の母親は,長期にわたって,本件小学校の関係者等に対し,Aの本件行為について極めて激しい抗議行動を続けた。

 そして、原審福岡高裁は、次の通り判断して、損害賠償請求を一部認容しました。

  1.  胸元をつかむという行為は,けんか闘争の際にしばしば見られる不穏当な行為であり,被上告人を捕まえるためであれば,手をつかむなど,より穏当な方法によることも可能であったはずであること,
  2.  被上告人の年齢,被上告人とAの身長差及び両名にそれまで面識がなかったことなどに照らし,被上告人の被った恐怖心は相当なものであったと推認されること等を総合すれば,本件行為は,社会通念に照らし教育的指導の範囲を逸脱するものであり,学校教育法11条ただし書により全面的に禁止されている体罰に該当し,違法である。

これに対して、今回の最高裁判決は原審の判断は是認できないとして、原審の一部認容判決を取り消して、請求棄却の自判をしました。最高裁の判断は以下の通り。

 前記事実関係によれば,被上告人は,休み時間に,だだをこねる他の児童をなだめていたAの背中に覆いかぶさるようにしてその肩をもむなどしていたが,通り掛かった女子数人を他の男子と共に蹴るという悪ふざけをした上,これを注意して職員室に向かおうとしたAのでん部付近を2回にわたって蹴って逃げ出した。そこで,Aは,被上告人を追い掛けて捕まえ,その胸元を右手でつかんで壁に押し当て,大声で「もう,すんなよ。」と叱ったというのである。そうすると,Aの本件行為は,児童の身体に対する有形力の行使ではあるが,他人を蹴るという被上告人の一連の悪ふざけについて,これからはそのような悪ふざけをしないように被上告人を指導するために行われたものであり,悪ふざけの罰として被上告人に肉体的苦痛を与えるために行われたものではないことが明らかである。Aは,自分自身も被上告人による悪ふざけの対象となったことに立腹して本件行為を行っており,本件行為にやや穏当を欠くところがなかったとはいえないとしても,本件行為は,その目的,態様,継続時間等から判断して,教員が児童に対して行うことが許される教育的指導の範囲を逸脱するものではなく,学校教育法11条ただし書にいう体罰に該当するものではないというべきである。したがって,Aのした本件行為に違法性は認められない。

 この判決には、補足意見、反対意見等は付されていません。

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