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2009年4月29日 (水)

殺害後20年経過事案の時効・除斥期間の最高裁判決

 債権の「消滅時効」「除斥期間」との違いというのは、民法上の基本的なところではあるのですが、専門外の一般の人に説明するのは結構むずかしいかもしれません。

 マスコミでも報道されましたように、最高裁判所は、殺害後20年を経過した事案について、遺族からの加害者に対する損害賠償請求について、新たな判断を行っています。今回も第3小法廷の判決ですね。裁判所サイトに掲載されています。
 平成21年4月28日最高裁第3小法廷判決

 民法724条後段には、不法行為後20年を経過すると損害賠償請求ができないように規定されており、従来、この規定は、「消滅時効」ではなく「除斥期間」と解されていました。これまでの判例も、この規定は、不法行為による損害賠償請求権の除斥期間を定めたものであり、不法行為による損害賠償を求める訴えが除斥期間の経過後に提起された場合には、裁判所は、除斥期間の経過により請求権が消滅したものと判断すべき、としてきました。

 今回の最高裁判決は、「(前略)民法724条後段の規定を字義どおりに解すれば,不法行為により被害者が死亡したが,その相続人が被害者の死亡の事実を知らずに不法行為から20年が経過した場合は,相続人が不法行為に基づく損害賠償請求権を行使する機会がないまま,同請求権は除斥期間により消滅することとなる。」と、これまでの考え方を維持したうえで、

 「被害者を殺害した加害者が,被害者の相続人において被害者の死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出し,そのために相続人はその事実を知ることができず,相続人が確定しないまま除斥期間が経過した場合にも,相続人は一切の権利行使をすることが許されず,相続人が確定しないことの原因を作った加害者は損害賠償義務を免れるということは,著しく正義・公平の理念に反する。このような場合に相続人を保護する必要があることは,前記の時効の場合と同様であり,その限度で民法724条後段の効果を制限することは,条理にもかなうというべきである」とし、

 「そうすると,被害者を殺害した加害者が,被害者の相続人において被害者の死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出し,そのために相続人はその事実を知ることができず,相続人が確定しないまま上記殺害の時から20年が経過した場合において,その後相続人が確定した時から6か月内に相続人が上記殺害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは,民法160条の法意に照らし,同法724条後段の効果は生じないものと解するのが相当である。

 としました。被害者救済的な面に重きを置いた判断と言えますが、これについては、相続人不確定の場合の民法160条の解釈という問題もかまされており、ちょっと私としてはすぐにコメントしにくいところです。

 ここのところ、第3小法廷は興味深い判断をしており、各裁判官の意見も注目されますが、今回も、大阪弁護士会出身の田原裁判官が、多数意見と結論には賛成するが、理由は異なるとして、補足意見を述べております。
 これは、民法724条後段の規定は、「除斥期間」ではなく、法文通りに「時効」と解すべきであって、民法160条が直接適用されるので、請求が認容されるべきというものです。
 私もちゃんと田原裁判官の補足意見を検討できたわけではありませんが、この意見は、傾聴すべきものと思います。補足意見の後半部分を引用しておきます。

「民法724条の文意からすれば,後段の規定は時効と解するのが自然な解釈であり,また,学説が指摘するようにその立法経緯からしても時効と解すべきものであることに加え,学界では,平成元年判決に対しては批判が強く,今日では,民法724条後段の規定は除斥期間ではなく,時効期間を定めたものと解する説が多数を占めており,また,近年,債権法改正の一環として時効制度の見直しを含めた法改正がなされたドイツ,フランス,オランダ等の欧州諸国においても,不法行為による損害賠償請求権について,民法724条と同様,二重の期間制限を設ける場合において,長期の期間については,何れも「時効」とする制度が設けられているのである。
 このように,民法724条後段の規定を,除斥期間と解する場合には,本件に典型的に見られる如く具体的妥当な解決を図ることは,法論理的に極めて難しく,他方,時効期間を定めたものと解することにより,本件において具体的に妥当な解決を図る上で理論上の問題はなく,また,そのように解しても上記のとおり不法行為法の体系に特段の支障を及ぼすとは認められないのであり,さらに,そのように解することが,今日の学界の趨勢及び世界各国の債権法の流れに沿うことからすれば,平成元年判決は変更されるべきである。
 そして,上記のように解することによって,今後,不法行為時から20年以上経過した損害賠償請求訴訟が提起された場合には,上記のとおり既に確立している権利濫用,信義則違反の法理に則って適切な解決を図ることができるのである。
 なお,実務上は,上記の平成元年判決を受け,その後の下級審裁判例が,民法724条後段の規定を除斥期間と解する運用をなしているところから,ここで上記判例変更をなす場合には,一定の混乱が生じかねない可能性がある。しかし,上記の判例変更の結果を受けて真に救済せざるを得ない事案は,社会的には極く僅かに止まり,また,それは個別に対応することが可能であると推察されるのであって,判例変更が社会的に相当な混乱を引き起こすおそれはないと思われる。
 おって,現在,法務省において債権法の改正作業が開始されているところ,時効制度の見直しに当たっては,かかる観点を踏まえた見直しがなされることを望むものである。」

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