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2009年2月27日 (金)

正当防衛についての最高裁決定

 このブログでは、ほとんど刑事事件は書かないのですが、何故かたまに、正当防衛関係の裁判例を紹介しています。別に私が「正当防衛フェチ」とか「正当防衛オタク」というわけではなく、ブログのネタとしては書きやすい、というところかもしれません。独占禁止法の記事が続いたので、ちょっと気分転換・・・

 で、最高裁のサイトで新しい正当防衛関係の決定が出ていました。

 平成21年2月24日最高裁第一小法廷決定

 この事案は、覚せい剤取締法違反の罪により勾留中の男(被告人)が、拘置所の同室にいた別の男(被害者)に暴行を加えて傷害を負わせた、というものです。

 原審の大阪高裁は、過剰防衛による傷害罪を認め、有罪としました。これに対して、弁護人は、一連の暴行の内、第1暴行によって傷害を生じさせたが、第1暴行は正当防衛であり、その後の第2暴行が過剰なものであったとしても、傷害罪には問えず、暴行罪が成立するにすぎない、と最高裁において主張しました。
 そして、最高裁決定は、弁護人の主張は上告理由(刑訴405)に該当しないとしたうえで、職権で上記の弁護人の主張について判断をしています。原審の大阪高裁判決を支持したものです。

 ちょっと長くなりますが、この最高裁決定の判断部分を下に貼り付けておきます。

(最高裁決定の理由から職権判断部分を抜粋)

  1.  本件は,覚せい剤取締法違反の罪で起訴され,拘置所に勾留されていた被告人が,同拘置所内の居室において,同室の男性(以下「被害者」という。)に対し,折り畳み机を投げ付け,その顔面を手けんで数回殴打するなどの暴行を加えて同人に加療約3週間を要する左中指腱断裂及び左中指挫創の傷害(以下「本件傷害」という。)を負わせたとして,傷害罪で起訴された事案である。
  2.  原判決は,上記折り畳み机による暴行については,被害者の方から被告人に向けて同机を押し倒してきたため,被告人はその反撃として同机を押し返したもの(以下「第1暴行」という。)であり,これには被害者からの急迫不正の侵害に対する防衛手段としての相当性が認められるが,同机に当たって押し倒され,反撃や抵抗が困難な状態になった被害者に対し,その顔面を手けんで数回殴打したこと(以下「第2暴行」という。)は,防衛手段としての相当性の範囲を逸脱したものであるとした。そして,原判決は,第1暴行と第2暴行は,被害者による急迫不正の侵害に対し,時間的・場所的に接着してなされた一連一体の行為であるから,両暴行を分断して評価すべきではなく,全体として1個の過剰防衛行為として評価すべきであるとし,罪となるべき事実として,「被告人は,被害者が折り畳み机を被告人に向けて押し倒してきたのに対し,自己の身体を防衛するため,防衛の程度を超え,同机を被害者に向けて押し返した上,これにより転倒した同人の顔面を手けんで数回殴打する暴行を加えて,同人に本件傷害を負わせた」旨認定し,過剰防衛による傷害罪の成立を認めた。その上で,原判決は,本件傷害と直接の因果関係を有するのは第1暴行のみであるところ,同暴行を単独で評価すれば,防衛手段として相当といえることを酌むべき事情の一つとして認定し,被告人を懲役4月に処した。
  3.  所論は,本件傷害は,違法性のない第1暴行によって生じたものであるから,第2暴行が防衛手段としての相当性の範囲を逸脱していたとしても,過剰防衛による傷害罪が成立する余地はなく,暴行罪が成立するにすぎないと主張する。
     しかしながら,前記事実関係の下では,被告人が被害者に対して加えた暴行は,急迫不正の侵害に対する一連一体のものであり,同一の防衛の意思に基づく1個の行為と認めることができるから,全体的に考察して1個の過剰防衛としての傷害罪の成立を認めるのが相当であり,所論指摘の点は,有利な情状として考慮すれば足りるというべきである。以上と同旨の原判断は正当である。
     よって,刑訴法414条,386条1項3号,181条1項ただし書により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。

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