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2008年11月15日 (土)

「卑わいな言動」(北海道条例)の最高裁決定と田原裁判官の反対意見

 マスコミでも取り上げられましたが、北海道の「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」の違反の刑事事件についての最高裁決定です。
 ズボンをはいた女性の臀部(お尻ですね)を撮影した行為について、条例にいう「卑わいな言動」に該当するかどうか、が争点となっていましたが、最高裁はこの該当性を認めて、札幌高裁の有罪判決の判断を支持しました。
 ただし、後記の通り、5人の裁判官のうち田原睦夫判事が被告人無罪の反対意見を述べています。

 最高裁判所第3小法廷 平成20年11月10日決定(上告棄却)
     公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反被告事件

 事案は、
 A市内のショッピングセンター1階の出入口付近から女性靴売場にかけて、若い女性客に対して、その後を少なくとも約5分間、40m余りにわたって付けねらい、背後の約1ないし3mの距離から、右手に所持したデジタルカメラ機能付きの携帯電話を自己の腰部付近まで下げて、細身のズボンを着用した同女の臀部を同カメラでねらい、約11回これを撮影した、
 というものです。

 この行為が本件条例の
第2条の2
 何人も,公共の場所又は公共の乗物にいる者に対し,正当な理由がないのに,著しくしゅう恥させ,又は不安を覚えさせるような次に掲げる行為をしてはならない。
 (1) 衣服等の上から,又は直接身体に触れること。
 (2) 衣服等で覆われている身体又は下着をのぞき見し,又は撮影すること。
 (3) 写真機等を使用して衣服等を透かして見る方法により,衣服等で覆わ
  れている身体又は下着の映像を見,又は撮影すること。
 
(4) 前3号に掲げるもののほか,卑わいな言動をすること。
2 何人も,公衆浴場,公衆便所,公衆が使用することができる更衣室その他公衆が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場所における当該状態の人の姿態を,正当な理由がないのに,撮影してはならない。」

の1項4号に該当するとして起訴されたものです。

☆ 最高裁の多数意見は、
 「被告人の本件撮影行為は,被害者がこれに気付いておらず,また,被害者の着用したズボンの上からされたものであったとしても,社会通念上,性的道義観念に反する下品でみだらな動作であることは明らかであり,これを知ったときに被害者を著しくしゅう恥させ,被害者に不安を覚えさせるものといえる」から、条例にいう「卑わいな言動」に当たるというべきとしたものです。

☆ 田原睦夫裁判官反対意見は、
 本件の被告人の行為は,条例の構成要件には該当せず、被告人は無罪とするものです。概要は、以下の通りですが(文章の要約は川村の文責です)、できれば原文を読んでいただくと味わい深いものです(微笑)。かなり説得力のある反対意見だと私は思いましたが、いかがでしょうか。

【田原裁判官反対意見概要】
 本件条例第2条の2(以下「本条」)の規定内容から明らかなように、本条1項4号(以下「本号」)に定める「卑わいな言動」とは,同項1号から3号に定める行為に匹敵する内容の「卑わい」性が認められなければならないというべきである。そして,その「卑わい」性は,行為者の主観の如何にかかわらず,客観的に「卑わい」性が認められなければならない。かかる観点から本件における被告人の行為を評価した場合,以下に述べるとおり,「卑わい」な行為と評価すること自体に疑問が存するのみならず,被告人の行為が同条柱書きに定める「著しくしゅう恥させ,又は不安を覚えさせるような行為」には当たるとは認められない。

〈「臀部」を「視る」行為とその「卑わい」性について〉
 ズボンをはいた「臀部」は、誰でも「視る」ことができる状態にあり、本条1項2号にいう「衣服等で覆われている部分をのぞき見」する行為とは全く質的に異なる性質の行為である。
 「卑わい」という言葉は、「いやらしくてみだらなこと。下品でけがらわしいこと」(広辞苑(第6版))と定義され,性や排泄に関する露骨で品のない様をいうものと解されているが、衣服をまとった状態を前提にした「臀部」それ自体は、性的な意味合いははるかに低く、排泄に直接結びつくものでもない。
 「臀部を視る」という行為それ自体につき「卑わい」性が認められない場合、それが時間的にある程度継続しても、「視る」行為の性質が変じて「卑わい」性を帯びると解することはできない。
 したがって、「臀部を視る」行為自体には,本条1項1号から3号に該当する行為と同視できるような「卑わい」性は,到底認められない。

〈「写真を撮る」行為と「視る」行為との関係について〉
 対象物を「視る」行為それ自体に「卑わい」性が認められないときに,それを「写真に撮影」する行為が「卑わい」性を帯びるとは考えられない。その行為の「卑わい」性の有無という視点からは,その間に質的な差は認められないものというべきである。
 本条1項2号は、「のぞき見」する行為と撮影することを同列に評価して規定しており、本件条例の規定の仕方からも、本条1項は「視る」行為「撮影」する行為の間に質的な差異を認めていない。
 なお本条1項3号は、特殊な撮影方法をもって撮影することを規制するものであり、本件行為の評価において参照すべきものではない。

〈「卑わい」な行為が被害者をして「著しくしゅう恥させ、又は不安を覚えさせるような」行為である点について〉
 本号の構成要件に該当するためには、本条1項柱書きの「著しくしゅう恥させ、又は不安を覚えさせるような行為」でなければならない。
 被害者が現に「著しくしゅう恥し,又は不安を覚える」ことは必要ではないが、被害者の主観の如何にかかわらず、客観的に「著しくしゅう恥させ、又は不安を覚えさせるような行為」と認められるものでなければならない。
 ところで、軽犯罪法が本件規制行為に類する行為(同法1条23号、1条28号後段)を規定しているが、その法定刑の著しい差からすれば、本条1項柱書きの「著しくしゅう恥させ、又は不安を覚えさせる行為」とは、軽犯罪法の上記規制行為に比して、真に「著しく」「しゅう恥、又は不安」を覚えさせる行為をいうものと解すべきである。

〈本件における被告人の行為〉
 本件撮影行為は、携帯電話のカメラを右手で所持して自己の腰部付近まで下げて、レンズの方向を感覚で被写体に向け、約3mの距離から約11回にわたって被害者の臀部等を撮影したというものである。外見からして撮影していることが一見して明らかな行為とは異なり、外形的には撮影行為自体が直ちに認知できる状態ではなく、撮影行為の態様それ自体には、「卑わい」性が認められない。
 また、その撮影行為は、被害者に不快の念を抱かしめることがあるとしても、それは客観的に「著しくしゅう恥させ,又は不安を覚えさせるような行為」とは評価し得ないものというべきである。
 加えて、「臀部」を撮影する行為それ自体の「卑わい」性に疑義が存するところ、撮影した写真は、腰の中央部から下半身、背部から臀部等を撮影しているものであり、「専ら」臀部のみを撮影したものとは認められず、一見して「卑わい」との印象を抱くことはできない。

〈結論〉
 本件撮影行為それ自体を本号の「卑わい」な行為と評価できず、また本条1項柱書きの「著しくしゅう恥させ,又は不安を覚えさせる」行為ということはできないのであって、被告人は無罪である。

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コメント

田原睦夫裁判官反対意見(原文)が、ネット上では最高裁の判決文も含めて見当たらなかったのですが、どこかにありますでしょうか?

下記にはないですよね。
> http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=37011&hanreiKbn=02

今、判決文を読み直していたら、後半部分が完全に反対意見になっていたことに気づきました。

私の勘違いでしたね。すみません。

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