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2008年11月 8日 (土)

亜鉛めっき鋼板カルテルの刑事告発について(独禁法)

 昨日(11/7)は、大阪国際会議場で「上場会社コンプライアンス・フォーラム」というのに参加してきました。普段の私の守備範囲とは少し違う大企業の法務関係のテーマなのですが、それだけにいくつか参考になった点もありました。基調講演の冒頭で國廣正弁護士が、最近の企業不祥事事件の食品偽装も不正会計も談合・カルテルも、市場での虚偽の表示、欺まん行為の問題であり、市場におけるフェアプレイができているかの問題であり、実害が生じたかどうかの問題ではない、市場競争への参加資格の問題である、と指摘されていたところは、なるほどとうなずいてしまいました。

 さて、そこでも出てきたカルテル事件ですが、建材向けの亜鉛めっき鋼板カルテルで、公正取引委員会が独占禁止法違反で、関与した大手鋼板メーカー3社を来週にも刑事告発へ、と報道されています。(※11/11に告発されました。本記事末尾追記参照)

 この事件に関しては、今年1月、公正取引委員会が、犯則調査権に基づいて、日新製鋼、日鉄住金鋼板、JFE鋼板、淀川製鋼所の4社の鋼板メーカーに対し、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで家宅捜索を行った、と報道されていたことについて、当ブログでも、今年1月24日付記事「亜鉛鋼板カルテルについての犯則調査(公取委)」で書きました。

 関与事業者4社の内、JFE鋼板だけが告発対象からはずれる見通しと報じられているのは、最初に公取委に自主申告したからのようですね。

 実は、独占禁止法上は、自主申告によって責任が減免されるのは、課徴金についてだけです。刑事罰に関して、法文上はどこにも減免制度は存在しません(民事責任についても存在しませんが)。

 しかし、課徴金の減免だけで、刑事罰については原則通りに課せられるとすると、自主申告制度の実効性があがらない結果となるため、政策上、課徴金減免制度の対象となる自主申告を最初に行った事業者については、公取委による刑事告発を行わない方針をとっているのです。独占禁止法違反の犯罪は、公取委による専属告発ですので、公取委の告発がない以上、検察庁も起訴できない、ということになります。

 これに関しては、自主申告制度を有効なものとするため、という目的は大変よくわかります。しかし、刑事罰を受けるかどうかというのは、企業にとっても個人にとっても重大なことです(前科者になるわけですしね)。したがって、最初に自主申告をした企業および個人については刑事罰が科せられず、その他の者は刑事罰が科せられるという差は非常に大きいものです。このような大きな差異が生じることを法律上の直接の根拠無しにやってもいいものか、というのは以前から疑問をもっています。
 例えば、カルテルを行うにあたって主導的な立場をもっていた、いわば主犯的な企業が、一転して最初に自主申告を行ったケースを考えてみれば、その主犯格企業や役職員のみが刑事責任を免れて、それに付き従ってきた他の企業や役職員が刑事責任を問われる、というのは、不公平に過ぎるように思えるのですが。もし、それでもこういった制度が必要だというのならば、法律によって、告発が免除されるような規定を明確に規定すべきだと考えます。刑事告発についての裁量権がそこまで許されるとは思えません。

 この公取委の刑事告発に関する方針は、平成17年10月7日公表の「独占禁止法違反に対する刑事告発及び犯則事件の調査に関する公正取引委員会の方針」に示されており、下記に該当する者については告発しない、というものです。
 なお、この「方針」を探してみましたが、正式版は公取委サイトでも見つかりませんでした。ただ、平成18年5月に公取委が告発した「し尿処理施設建設工事入札談合事件」の告発の公表時の資料の最後に付いていましたので参考のためリンクしておきます。
 → こちら(PDF)
 また、方針公表時の「概要」は、平成17年10月6日付公取委報道発表「独占禁止法改正法の施行に伴い整備する公正取引委員会規則等の公表について」の下のほうにある「別紙」からリンクされているPDFの「別紙6」にあります。

  • 調査開始日(当該違反行為に係る事件について立入検査又は臨検・捜索等が最初に行われた日)前に最初に課徴金の免除に係る報告及び資料の提出を行った事業者(ただし,①当該報告又は資料に虚偽の内容が含まれていたこと,②追加して求められた報告若しくは資料の提出をせず,又は虚偽の報告若しくは資料の提出をしたこと及び③他の事業者に対し違反行為をすることを強要し,又は他の事業者が違反行為をやめることを妨害していたこと(独占禁止法第7条の2第12項各号)のいずれかに該当する事実があると認められる事業者を除く。)

  • 当該事業者の役員,従業員等であって当該独占禁止法違反行為をした者のうち,当該事業者の行った公正取引委員会に対する報告及び資料の提出並びにこれに引き続いて行われた公正取引委員会の調査における対応等において,当該事業者と同様に評価すべき事情が認められるもの

【追記】(11/11)
 報道によれば、公正取引委員会が、上記3社につき、正式に検事総長宛に刑事告発を行ったようですね。今回は法人のみですが、過去の例からいって、今後、関与役職員個人についての追加告発がなされるものと考えられます。根拠事実と罰条は下記の通り。
 → 公取委サイト報道発表資料(PDF)

◎告発の根拠事実と罰条

  1. 事実

    被告発会社3社は,不特定多数の需要者向け溶融55パーセントアルミニウム亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯の製造販売等の事業を営む事業者であるが,その従業者らは,本件商品の製造販売等の事業を営む他の事業者の従業者らとともに,本件商品に関し,平成18年4月ころから同年6月ころまでの間,東京都内で会合を開催するなどして,同年7月1日以降出荷分の本件商品の販売価格を,同年6月時点における各社販売価格から1キログラム当たり10円引き上げる旨合意し,もって,各社が共同して,本件商品の販売に関し,その事業活動を相互に拘束することにより,公共の利益に反して,本件商品の販売に係る取引分野における競争を実質的に制限した。

  2. 罰条
    独占禁止法89条1項1号,95条1項1号,3条

【追記の追記】(11/18)
 この刑事告発に関して、公取委事務総長の定例記者会見の内容が公表されていますので、リンクしておきます。
 → 公取委サイト事務総長定例会見記録(11/12)

【追記の追記の追記】(12/8)
 12月8日付で、公取委は検事総長に対して、日新製鋼、淀川製鋼所、(日鉄住金鋼板の前身である)日鉄鋼板、住友金属建材の各従業者として販売業務に従事していた者計6名の追加告発を行いました。

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コメント

一切の罰を免れられない以上、当事者も絶対に告発できないですよね。
刑事罰も問題ないよう、明文化すべきですよね。
けど、鋼板メーカーに限らずそこに納めている塗料メーカーのNもBもおなじことしてますよね。
やはり、フェアプレイに徹して負けたら素直に反省して再度立ち向かうというスタンスでないと駄目ですよね。

コメントありがとうございます。
自主申告(リニエンシー)制度というのは、従来の日本的な制度とは違うので、いろいろと齟齬が出てくるのは仕方ないのかもしれませんが、あまり、そのあたりを見て見ぬ振りをして通過するのもどうかなぁ、と思います。
また、企業のコンプライアンスの体制も、この不況でどうなっていくのか心配です。

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