フォト

weathernews

ツイッターでつぶやく

無料ブログはココログ

« 東京マラソン(無駄話) | トップページ | 「We make people happy.」が「商品等表示」か?の判決(不正競争防止法) »

2008年11月10日 (月)

同乗のペット犬の負傷に対する交通事故損害賠償判決

 たまにペットの犬を車に乗せているのを見ますが、同乗していた犬の傷害についての損害賠償の裁判が最高裁サイトに出ていました。珍しいので、ご紹介します。
 愛犬の負傷(後肢麻痺)についての損害算定と、犬の同乗の際の態様に関して運転自体には過失のない被害者側に過失相殺1割を認めている点が興味を引きます。

 名古屋高等裁判所 平成20年9月30日判決 損害賠償請求控訴事件

 事案としては、大型犬(ラブラドールレトリーバー)の飼い主の車が赤信号で停まっていたところ、相手方の車が追突して、飼い主らが負傷するとともに、同乗の愛犬も腰椎骨折の傷害を負って、後ろ足の麻痺が生じているというもの。

 これにより、飼い主である夫婦2名が原告となって、相手方運転手及び雇い主を被告として、約990万円の損害賠償請求訴訟を起こした結果、1審判決(名古屋地裁)は、飼い主の請求の一部を認容しましたが、相手方らがこれを不服として控訴したのが本件控訴審です。1審が損害賠償として認めたのは約104万円でした。

 控訴審判決は、まず、犬の傷害による損害も、「物」の損害であることを前提としながら、「しかしながら,愛玩動物のうち家族の一員であるかのように遇されているものが不法行為によって負傷した場合の治療費等については,生命を持つ動物の性質上,必ずしも当該動物の時価相当額に限られるとするべきではなく,当面の治療や,その生命の確保,維持に必要不可欠なものについては,時価相当額を念頭に置いた上で,社会通念上,相当と認められる限度において,不法行為との間に因果関係のある損害に当たるものと解するのが相当である。」としました。
 つまり、車のような物の損害の算定であれば、原則として、車が壊れて修理費が高額になったとしても、当時の時価相当額(通常は下取り相当価額)を上限として算定されるのが原則になります。つまり高いコストをかけて修理するより、同等の中古車を買えばよいという考え方ですね。この高裁の判決は、愛犬であっても、(人の傷害とは違って)「物」の損害ではあり、時価相当額を念頭に置く必要はあるけれども、「社会通念上、相当と認められる限度において」生命の確保、維持に必要不可欠な治療費などは損害と認められるのが相当だとしたものです。車などと違って、買い換えれば同じでしょ、とは言えないという考え方ですね。

 そして、判決によれば、犬の時価相当額は、子犬で購入した6万5000円を下回るか、少なくとも、大きく上回ることはない、ということを念頭に置いて、治療状況を検討して、治療費、車いす製作料13万6500円を交通事故との間に相当因果関係のある損害と認めました。

 さらに、慰謝料も認めています。「慰謝料」というのは、精神的な損害に対する賠償のことですが、ここでいう「精神的な損害」というのは、愛犬自身の精神的な損害ではなく、もちろん、愛犬が重大な傷害を負ったことについての飼い主の精神的な損害です。これについて、判決は「近時,犬などの愛玩動物は,飼い主との間の交流を通じて,家族の一員であるかのように,飼い主にとってかけがえのない存在になっていることが少なくないし,このような事態は,広く世上に知られているところでもある(公知の事実)。そして,そのような動物が不法行為により重い傷害を負ったことにより,死亡した場合に近い精神的苦痛を飼い主が受けたときには,飼い主のかかる精神的苦痛は,主観的な感情にとどまらず,社会通念上,合理的な一般人の被る精神的な損害であるということができ,また,このような場合には,財産的損害の賠償によっては慰謝されることのできない精神的苦痛があるものと見るべきであるから,財産的損害に対する損害賠償のほかに,慰謝料を請求することができるとするのが相当である。」としました。そして、飼い主両名が我が子のように愛情を注いで飼育し、かけがえのない存在になっていたことを認め、犬の負傷の内容、程度、介護の内容、程度等からすれば、犬が死亡した場合に近い精神的苦痛を受けているものといえるとして、両名20万円ずつの慰謝料を認めました。

 次に、過失相殺ですが(事故そのものは追突事故なので、飼い主側に過失はありません)、判決は、「自動車に乗せられた動物は,車内を移動して運転の妨げとなったり,他の車に衝突ないし追突された際に,その衝撃で車外に放り出されたり,車内の設備に激突する危険性が高いと考えられる。そうすると,動物を乗せて自動車を運転する者としては,このような予想される危険性を回避し,あるいは,事故により生ずる損害の拡大を防止するため,犬用シートベルトなど動物の体を固定するための装置を装着させるなどの措置を講ずる義務を負うものと解するのが相当である。」として、このような措置をとっていなかった飼い主らには過失があるとして、1割の過失相殺を認めています。「犬用シートベルト」というのがあるんですね。この判決の考え方だと、被害者側の運転に過失がない場合でも、このようなことをしていないと、犬の損害賠償については、1割ほどの過失相殺がされるということになります。

 結局、飼い主らには、弁護士費用を含め、1人当たり26万6425円の合計53万2850円の賠償請求が認められたことになります。ただ、実際の弁護士費用を含めた経費などを考えれば、飼い主としては、満足できる結果とはいえなかっただろうと想像いたします。

【追記】(11/10)
 蛇足ですが、ペットの動物に関する法律問題を扱う「ペット法学会」という学会があり、今年で10年目になるそうです。で、先週の土曜に大阪の高槻で10周年記念の大会があったようですね。私は会員ではありませんが、ご紹介しておきます。
 蛇足の蛇足ですが、当ブログで最近、ペット関係で記事を書いたと言えば、
 → 「ペットの取引表示の実態調査報告(公取委)」(6/23)

« 東京マラソン(無駄話) | トップページ | 「We make people happy.」が「商品等表示」か?の判決(不正競争防止法) »

法律」カテゴリの記事

裁判」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/183277/43069658

この記事へのトラックバック一覧です: 同乗のペット犬の負傷に対する交通事故損害賠償判決:

« 東京マラソン(無駄話) | トップページ | 「We make people happy.」が「商品等表示」か?の判決(不正競争防止法) »