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2008年5月27日 (火)

「自招危難」に正当防衛を認めなかった最高裁決定

 たまには、刑事事件の裁判の紹介を。。。

 以前、ここで、正当防衛が認められた無罪判決を紹介しました。
 → 「正当防衛を認めた無罪判決」(07/4/24)
 これは奈良地裁の判決で、大学構内の学生同士の喧嘩における一方の傷害行為についての刑事事件で、正当防衛(刑法36条)の成否が問題となり、その要件の内、「侵害の急迫性が認められるか否か」という点が争点となったものでした。この奈良地裁判決は、侵害の確実な予期がなく、侵害の単なる可能性を予期していたにすぎないときや、不意打ちといえるほど予想外の場面で侵害を受けたときは、たとえ行為者に積極的加害意思があったとしても、急迫性は否定されない、として正当防衛の成立を認めて無罪を言い渡したものです。

 さて、今回の最高裁決定は、喧嘩ともいえるケースですが、こちらは、結論として正当防衛を認めませんでした。

 最高裁第2小判平成20年5月20日決定( 上告棄却)
 傷害被告事件

 事案は、
 本件被害者A(51)が、朝、ごみ集積所にごみを捨てていたところに徒歩で通り掛かった被告人(41)が、Aの姿を不審と感じて声を掛けるなどしたことから、言い争いとなり、被告人が、いきなりAの左ほおを手拳で1回殴打し、すぐ走って立ち去りました。
 Aは「待て。」などと言いながら自転車で被告人を追い掛け、「殴打現場から約26.5m先を左折して約60m進んだ歩道上」で被告人に追い付き、自転車に乗ったまま、後方から被告人の背中の上部又は首付近を強く殴打したため、被告人は前方に倒れました。
 起きあがった被告人は(ここからが被告人の傷害行為)、護身用に携帯していた特殊警棒を衣服から取り出し、Aの顔面や防御しようとした左手を数回殴打する暴行を加えて、加療約3週間を要する顔面挫創、左手小指中節骨骨折の傷害を負わせました。
 というものです。
 つまり、
 最初のごみ集積場での言い争い → そこでの被告人による暴行
 → 被告人の立ち去り → 被害者が自転車で追いかけて暴行
 → 起きあがって、被告人が特殊警棒による殴打(本件傷害行為)
となります。

 最高裁決定は、この事実関係によれば、「被告人は,Aから攻撃されるに先立ち,Aに対して暴行を加えているのであって,Aの攻撃は,被告人の暴行に触発された,その直後における近接した場所での一連,一体の事態ということができ,被告人は不正の行為により自ら侵害を招いたものといえる」とし、「Aの攻撃が被告人の前記暴行の程度を大きく超えるものでないなどの本件の事実関係の下においては,被告人の本件傷害行為は,被告人において何らかの反撃行為に出ることが正当とされる状況における行為とはいえないというべきである。」として、正当防衛の成立を否定した原審判決の判断は、結論において正当としたものです。

 本件は、正当防衛の成立に関し、いわゆる「自招危難」の場合に正当防衛を否定した事例、ということになります。

 しかし、本件の事実関係において、被害者Aが最初の現場から、100メートルほど自転車で被告人を追いかけて暴行をしたという行為が、「被告人の暴行に触発された,その直後における近接した場所での一連,一体の事態」と評価できるかどうか、というのは評価が分かれるところかもしれません。
 なお、本件事案では、仮に上記論点で(最高裁の結論とは反対に)正当防衛を否定しないとしても、被告人の行為は相当性を欠き過剰防衛ではないか(刑法36条2項参照)、などという議論もあるかと思います。

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